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サカダイ編
1164.余念の幅
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ミスズとシゲンが視線を交わし合っている頃、まだ見ぬ至高の強敵に思いを馳せていたソフィがようやく冷静に戻り、再びミスズに言われた『金色の目』の発動音について考えを巡らせていた。
(我の『魔瞳』の回避を行う上でミスズ殿は『金色の目』の発動音を頼りに避けたと言っていた。 『魔瞳』は相手の目さえみる事が出来れば術中に陥らせる事が出来る為に、僅かな時間ではあるが相手の視覚を封じられるという事も期待出来る技法な筈だが、まさか別の五感である聴覚を用いて『回避』をして見せるとはな)
視覚を封じるというのならば聴覚で避けてやるというミスズの発想に、舌を巻く思いを抱いたソフィは感心する以上に感銘を受けていた。
「おいソフィ、そこまで気落ちするような事でもねぇだろう。戦闘の最中なら悠長に音を聴いている余裕なんざねぇだろうし、今回みてぇに発動のタイミングを相手に知らせる事もねぇんだからよ」
『魔瞳』を避けられる原因となった発動音の事についてソフィが考えていると、ソフィの元に近づいてきてそう告げるヌーであった。
「クックック、やけに優しいではないか」
「勘違いしてんじゃねえよ、誰もてめぇの心配をしてるわけじゃねぇ。俺達魔族の使う『魔瞳』をこんな試験的な取り組みだけで計れねぇって事を言いたかっただけだ」
ヌーはソフィにそう告げると鼻を鳴らして去って行った。
(戦闘の最中なら悠長に音を聴いている余裕はない……か。確かにこれまで用いてきた我々の尺度であればそうだろうが、この世界の者達ならば『回避』をする事が当たり前になってくるかもしれぬのだ。 『金色の目』を絶対的なものとして考える時代は終わりに近づいているのかもしれぬな)
アレルバレルの世界で数千年に渡ってこれまで使用されてきた『魔瞳』である『金色の目』は『相殺』されないだけの魔力を身につける事で他者を支配出来る絶対的な力の一つだった。
だからこそここまで廃れずに技法として残り続けて来たのである。しかし術者よりも魔力が高くなくても『音』という一つの因子から『相殺』ではなく『回避』が出来るようになる時代が来るかもしれないという、その可能性もまた否定は出来ないだろう。
(ふむ『エヴィ』を連れ戻して落ち着いた後に、またじっくりと『魔瞳』について考えるとしようか)
この世界に来てから多くの学びを得る事が出来たソフィは、別世界の常識はとても重要な事だと理解するに至った。中でも三色併用に用いていたオーラに効力が別にある事を知り、その中の青のオーラにも多数の種類が確認出来たことに加えて、更には今回の『魔瞳』の事は、アレルバレルの世界に居るだけでは決して考える事はなかっただろう。
自分がこれまで身につけていた技法に謎がある事を知り、その謎を究明していく中で新たな疑問を覚える事になり、解決向けた対策案に考えを巡らせる。ソフィは単にすっきりとしたいだけではあるが、これらは最終的にソフィを更に強くさせていく研鑽の一つに繋がっている。
まだ自身が強くなろうとしている事を自覚出来てはいないが、その自覚がないからこそ苦もなく学びを得られていくのだろう。
大魔王ヌーも努力や研鑽を惜しまない側の魔族ではあるが、決めつけや余念と考える幅が広すぎてしまい、小さなことであれば考えるに値しないと、最初から思考を放棄してしまっている。
僅かな事ではあるが、こういった積み重ねによって、大魔王ヌーと大魔王ソフィの間に差が少しずつ開いてしまっているのかもしれない。
ソフィと行動を共にする事で徐々にその余念の幅は狭まりつつはあったが、まだヌーの強さへの渇望自体には、ソフィの抱く理念を持つまでには至ってはいない様子であった。
……
……
……
ソフィの『魔瞳』で眠らされた後に、スオウとサシャに別室に運んでもらったシグレがゆっくりと目を覚ました。
「ここは、何処でしょう」
「目が覚められましたかシグレ隊士。ここは『サカダイ』の『妖魔退魔師』本部の建物の中ですよ」
寝かされていた布団の上で独り言を言ったつもりのシグレだが、そのシグレの疑問に答える返事が入り口の方から聞こえてきた事で、慌ててそちらを見る為に上体を起こすシグレであった。
……
……
……
(我の『魔瞳』の回避を行う上でミスズ殿は『金色の目』の発動音を頼りに避けたと言っていた。 『魔瞳』は相手の目さえみる事が出来れば術中に陥らせる事が出来る為に、僅かな時間ではあるが相手の視覚を封じられるという事も期待出来る技法な筈だが、まさか別の五感である聴覚を用いて『回避』をして見せるとはな)
視覚を封じるというのならば聴覚で避けてやるというミスズの発想に、舌を巻く思いを抱いたソフィは感心する以上に感銘を受けていた。
「おいソフィ、そこまで気落ちするような事でもねぇだろう。戦闘の最中なら悠長に音を聴いている余裕なんざねぇだろうし、今回みてぇに発動のタイミングを相手に知らせる事もねぇんだからよ」
『魔瞳』を避けられる原因となった発動音の事についてソフィが考えていると、ソフィの元に近づいてきてそう告げるヌーであった。
「クックック、やけに優しいではないか」
「勘違いしてんじゃねえよ、誰もてめぇの心配をしてるわけじゃねぇ。俺達魔族の使う『魔瞳』をこんな試験的な取り組みだけで計れねぇって事を言いたかっただけだ」
ヌーはソフィにそう告げると鼻を鳴らして去って行った。
(戦闘の最中なら悠長に音を聴いている余裕はない……か。確かにこれまで用いてきた我々の尺度であればそうだろうが、この世界の者達ならば『回避』をする事が当たり前になってくるかもしれぬのだ。 『金色の目』を絶対的なものとして考える時代は終わりに近づいているのかもしれぬな)
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だからこそここまで廃れずに技法として残り続けて来たのである。しかし術者よりも魔力が高くなくても『音』という一つの因子から『相殺』ではなく『回避』が出来るようになる時代が来るかもしれないという、その可能性もまた否定は出来ないだろう。
(ふむ『エヴィ』を連れ戻して落ち着いた後に、またじっくりと『魔瞳』について考えるとしようか)
この世界に来てから多くの学びを得る事が出来たソフィは、別世界の常識はとても重要な事だと理解するに至った。中でも三色併用に用いていたオーラに効力が別にある事を知り、その中の青のオーラにも多数の種類が確認出来たことに加えて、更には今回の『魔瞳』の事は、アレルバレルの世界に居るだけでは決して考える事はなかっただろう。
自分がこれまで身につけていた技法に謎がある事を知り、その謎を究明していく中で新たな疑問を覚える事になり、解決向けた対策案に考えを巡らせる。ソフィは単にすっきりとしたいだけではあるが、これらは最終的にソフィを更に強くさせていく研鑽の一つに繋がっている。
まだ自身が強くなろうとしている事を自覚出来てはいないが、その自覚がないからこそ苦もなく学びを得られていくのだろう。
大魔王ヌーも努力や研鑽を惜しまない側の魔族ではあるが、決めつけや余念と考える幅が広すぎてしまい、小さなことであれば考えるに値しないと、最初から思考を放棄してしまっている。
僅かな事ではあるが、こういった積み重ねによって、大魔王ヌーと大魔王ソフィの間に差が少しずつ開いてしまっているのかもしれない。
ソフィと行動を共にする事で徐々にその余念の幅は狭まりつつはあったが、まだヌーの強さへの渇望自体には、ソフィの抱く理念を持つまでには至ってはいない様子であった。
……
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……
ソフィの『魔瞳』で眠らされた後に、スオウとサシャに別室に運んでもらったシグレがゆっくりと目を覚ました。
「ここは、何処でしょう」
「目が覚められましたかシグレ隊士。ここは『サカダイ』の『妖魔退魔師』本部の建物の中ですよ」
寝かされていた布団の上で独り言を言ったつもりのシグレだが、そのシグレの疑問に答える返事が入り口の方から聞こえてきた事で、慌ててそちらを見る為に上体を起こすシグレであった。
……
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