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サカダイ編

1159.外された期待と、その先の言葉

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「魔法が使えない以上は持って生まれた保有する魔力で劣る『妖魔召士ようましょうし』の使う『魔瞳まどう』に対して『相殺』を行うという選択肢は存在しない……か」

 ソフィは先程ミスズが口にしていた事を理解し、再び彼女と同じ言葉を告げるとミスズも同意を示すようにコクリと頷いていた。

「付け加えるとするならば前時代までの『妖魔召士ようましょうし』達は、今よりも恐ろしく『魔力』自体も現代の『妖魔召士ようましょうし』達とは比べ物にならなかった程でしたので、もし前時代までの『妖魔召士ようましょうし』と我々『妖魔退魔師ようまたいまし』が武力衝突を起こしていたならば、我々は勝敗が分からない以上、戦争は泥沼化していたかもしれません」

「成程『相殺』が現実的ではないという事はよく理解が出来た。ではお主が言っていた目に頼らない『魔瞳まどう』の対処法という物はどういったモノなのだ?」

 ソフィ達の世界の『魔瞳まどう』の対策では、確かにこの世界の現実はどう足掻いても覆せない。

ことわり』を生み出す存在が居ない以上は『魔法』を扱う事は出来ず魔力を伸ばす事も難しい。先程自身が出した『魔瞳まどう』に対しての結論が行き詰まりを迎えた以上、ミスズ達妖魔退魔師の対策を今度はしっかりと聞かせてもらおうとするソフィであった。

「その言葉通りの意味となりますね。 『妖魔召士ようましょうし』の使う『魔瞳まどう』ですが、単純に相手の『』さえ見なければその効果を受ける事もありません」

「いや、それは、そうかも知れぬが……」

 確かにミスズが告げた言葉の通りに行動をする上では、これ程単純明快な話は無いがソフィはミスズの言葉に少しばかり落胆するのだった。

 彼女ほどの者が自信を溢れさせるような言葉の言い回しを行っていた事を踏まえて、更にはソフィの出した結論に対してもソフィ自身が納得させられたくらいであった為『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』に対しての対抗策は『相殺』ではなく、何かもっと妖魔退魔師らしい技法。その何か秘密が隠されているのかとソフィは大変期待を寄せていたのだから、至極当然の発言を用意されてしまった事でがっかりとして項垂れたくなるのだった。

 先程まで反論を述べていた時と違い、精彩を欠くような様子をソフィが見せた事でミスズは眼鏡をくいっとあげながら、薄く笑みを浮かべ始めた。

「ふふ、私の言葉は?」

「むっ……、そうだな。確かにお主の言う通り『魔瞳まどう』に対して相手の目を見なければ、その術中にかかる事も無いであろう……が、それを戦闘時に確実に行える筈がない」

 自分よりも遥か格下な相手であれば視線を外しながら戦う事も可能かもしれないが、同等の強さもしくは格上と戦う場において視線を向けずに戦える筈がない。

 ミスズの出した答えとは、あくまで限定された場面での話であった為に、ソフィが期待していた言葉通りの結果とは行かなかったのであった。

 ようやく自分の思い通りの言葉をソフィから引き出せたミスズは大きく頷きながら、どうやら用意していたのであろう、その先の続きの言葉を紡ぎ始めるのだった。

「それが確実に行えるとしたらどうですか?」

「ほう?」

 ミスズの言葉に落胆を見せていたソフィだったが、その続きがありそうなミスズに再びその目の奥に淡い期待を宿した光を灯らせるソフィであった。

「対策を講じられなかった過去に於いてこの『魔瞳まどう』の技法はまさに敵なしと言えたのでしょうが、現代においては決してそのような事はありません。 『魔瞳まどう』というモノはやはり『魔力』を用いて使われる戦闘技法である以上、発動が行われる瞬間は僅かですがタイムラグが生じます。そして『妖魔召士ようましょうし』達の『魔瞳まどう』発動から数秒程のタイムラグは我々からすれば十分に対抗が出来る時間なのです。この発動のタイミングについては『妖魔召士ようましょうし』側も理解してはいるでしょうが『魔瞳まどう』の性質上においては簡単に変更出来る事でもありません』

 確かに相手が『魔瞳まどう』を放つ瞬間が分かれば、彼ら程の戦闘技術を持つ集団『妖魔退魔師ようまたいまし』たちであれば、机上の空論という事はなくなるであろう。

 しかしそのいつ使うか分かるという事が最優先事項であり、そんな事が誰でも毎回分かるのであれば『魔瞳まどう』は使に成り下がっていただろう。

 この世界の『妖魔召士ようましょうし』だけではなく、ソフィ達の居る『アレルバレル』の世界やレキの居た『リラリオ』の世界に、レアやフルーフ達の『レパート』の世界であっても、この『魔瞳まどう』の力は失われずに強者の間に、脅威として現存を許されている。

 つまりそれはミスズの言う対策が確実性ではない、という事を表しているのと同義である。そう考えるソフィは静かにこのミスズの言う、発動のタイミングが使い物になるのかどうか、それを確かめて見たいと静かに思い始めるのであった。

 ……
 ……
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