最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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サカダイ編

1155.聞き逃せない言葉

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 ソフィは『旅籠町』でコウゾウから頼まれて預かって来た書簡をミスズに渡し終えた。書かれている内容をソフィは知らなかったが、どうやらミスズの様子を見るにコウゾウからの思いは無事にミスズに届けられたのだろう。

 読み終えたミスズに感謝の言葉と笑顔を向けられたソフィは、この女性はこのように笑うのかとばかりに、これまでの戦闘の最中に感じたミスズの印象を一変させるに至っているのだった。 

「クックック、どうやらその手紙は余程お主を喜ばせる内容だったようだな」

 上機嫌になっていく様子を見ていたソフィはミスズと会話を続ける。

「ソフィ殿はコウゾウと共に行動をしていて、彼が戦っているところを見ましたか?」

「『煌鴟梟こうしきょう』と名乗る者達のアジトで『妖魔召士ようましょうし』と戦う場面は見たが、あれは戦うところを見たとは言えぬな、何故なら……」

「その『妖魔召士ようましょうし』に『魔瞳まどう』を使われでもして、コウゾウは戦いにならなかったと?」

 どうやらソフィが全てを告げずとも言いたい事はミスズに伝わったようで、ソフィが話を終える前に被せるように、ミスズがそう告げた。

 ソフィの言葉に食い気味に被せてきたミスズだったが、何やら彼女にしては珍しくむすっとしていた。眼鏡を外している時であればいざ知らず、眼鏡を掛けている時に彼女がこんな顔を他人に見せるのは珍しい事だった。

「成程『魔瞳まどう』を使う『妖魔召士ようましょうし』との戦闘以外にどうやらソフィ殿は、コウゾウの戦いぶりは見られなかったのですね?」

「そうだな。コウゾウ殿が戦ったところは、そこまで記憶に残っておらぬな。先程ここに現れたシグレ殿が戦うところの方が、多く見た程だったと記憶しておる」

 ソフィからコウゾウの戦いぶりをよく知らないと聞かされた事で、彼女は残念そうに首を傾げるのだった。

「そうですか。貴方程の力量を持つ者でしたら、しっかりとコウゾウが戦うところを見て頂けていたら、相手が『妖魔召士ようましょうし』であっても、私と同じ感想を抱いて下さるとそう思ったのですがね……。 『魔瞳まどう』を使う者が相手では、まぁ今の段階では仕方がありませんでしたね」

 この世界に居る者達やサイヨウから、ある程度の話を聞かされてきた事で『予備群よびぐん』と『妖魔退魔師ようまたいまし』。それに対立する『妖魔召士ようましょうし』の力量差をある程度理解してきているソフィにとって、今この場で告げるミスズの言葉に疑問を持った為、ソフィはその疑問を解消するべくミスズに口を開くのであった。

「明確にランク差という物は分からぬが『予備群よびぐん』は『妖魔召士ようましょうし』には勝てぬと聞いておる。我の世界でいえばこの世界の『予備群よびぐん』とやらが大魔王の最上位に位置する者達で、我が戦った『妖魔召士ようましょうし』程の相手が『準魔神級』と呼べる者達なのだがな? 我らの世界の常識でいえば大魔王領域に居る者では『準魔神級』の領域に居る相手に現段階ではどう研鑽を積んだところで、まず勝つという事は有り得ぬ程に難しいのだ。しかしお主の口振りでは『魔瞳まどう』を使われさえしなければ、相手が『妖魔召士ようましょうし』であってもコウゾウ殿であれば勝てると、ミスズ殿がそう言いたいように感じられたのだが」

「失礼。誤解を招くような発言をしてしまったようです。 『妖魔召士ようましょうし』の『魔瞳まどう』も立派に脅威的な技法な事に間違いはありません。よって現段階ではコウゾウは妖魔召士ようましょうし相手に何度戦っても勝てないでしょう。それは間違いはないのですが『魔瞳まどう』という力だけに絞れば対抗しようと思えば、いくらでも対抗が出来る技法な為、少しコツを教えればコウゾウであれば『魔瞳まどう』は脅威的には映らず、僅かな期間で『妖魔召士ようましょうし』達に勝ると言いたかったのです」

「『魔瞳まどう』は対抗しようと思えば、……?」

 何気ない解説のように聞こえるが『魔瞳まどう』を扱う『魔族』にとって今のミスズの発言は決して聞き逃せる話ではなかった。
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