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サカダイ編

1146.副総長ミスズの誘導尋問

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「この様子ではこの方からは、事情を聞く事すら出来ませんか」

 ミスズに訊ねられた『妖魔召士ようましょうし』の男はミスズを見て怯えており、まともに会話が出来る状態ではなくなってしまっていた。

「仕方がありませんね。ではこちらの方からお話を聞くとしましょう」

 そう言って隣で同じように寝かされている『妖魔召士ようましょうし』の方に視線を送ると、もう一人の方の男は慌ててミスズの視線から逃れるように目を瞑る。答えたくないという意思の表れなのだろうが、お構いなしにミスズは口を開いた。

「素直に答えた方が、貴方がたの為だと思いますよ?」

「わ、分かった! 『妖魔退魔師ようまたいまし』の『ミスズ』殿! 言うから、ご、拷問をするのだけはやめてくれ!」

 どうやら直接ミスズに訊ねられた『妖魔召士ようましょうし』は、二人共組織に余程長く在籍していたのだろう。まだ何も手を出してすらいないというのに、拷問をしないでくれと頼み込む姿や、先程の男のように震えて会話すら出来ない様子を見せたのには、どうやらミスズの本性を正しく理解しているからだったようである。

「お客様がいらっしゃる前でそのような、をするのは止めて頂きたいのですが……」

 そう言った後ミスズは小さく溜息を吐いた。

「まぁいいでしょう……。それで貴方達は何故我々を監視していたのですか?」

「げ、ゲンロク様の命令だ! あんたらを監視するようにとかなり前になるが指示を受けたんだ」

「ほう?」

「う、うちとあんたらとの組織の間で、武力による戦争が始まるかもしれないんだろ? 組織があんたらの情報を少しでも得ようと考える事は、至極当然の事じゃないか!」

 男の言葉を聞いたミスズはちらりとシゲンの方を見る。シゲンはミスズの視線を受けて直ぐにミスズに頷きで返すと、ミスズは男に視線を向け直して口を開いた。

「それはおかしい話ですね。うちの隊士を襲った一件については、今回のゲンロク殿の『妖魔召士ようましょうし』との会合で、一応の落着となった筈ですが」

「え?」

 『妖魔召士ようましょうし』の男の目に彼女に対する怯え以外の色が宿ったのを当然の事ながら副総長ミスズは見逃さなかった。

「あ……、い、いや……、そうだったのか、それは知らなかった……! 俺達はその会合が行われる前から、このサカダイに潜伏していたからな」

「なるほど、そういう事でしたか。数日前の会合で決まった事ですからね、まだここまで情報が伝わるには時間が足りていなかったという事でしょう」

「どうやら、そのようだ……。そ、そうか……、もう話はついていたんだな」

 ミスズは男の言い訳をする様子や態度を見て、直ぐにこの男が嘘を吐いていると理解出来たがその事に言及せずに、

「ええ、どうやらお互いに勘違いが生じていたようですね」

「そ、そのようだな。そうとは知らずに申し訳なかった、我々も組織の今後の事を考えて何かをしなければと必死だったのだ」

 ミスズは男の言葉にニコリと笑みを浮かべた。そしてその笑みを見た男は、どこかほっとした表情で相対する。

「そういえばその会合の終わりに、殿なのですが、どうやら貴方がた『妖魔召士ようましょうし』の組織が追っている『イダラマ』殿を捕えるために、各地に散らばっている『妖魔召士ようましょうし』から情報を集めているみたいですね。貴方がたはそちらの方面では何か掴んでいたりするのですか?」

「『殿? いや、そんな話は聞かされてはいないが……」

「そうなのですか? 今回の会合で我々『妖魔退魔師ようまたいまし』側が『妖魔山』の管理を行わせて頂く事に決まったのですが、その事で『ヒュウガ』殿が我々に仰っていただいたのが『イダラマ』殿が『妖魔山』に向かっているという事でして、その事で何か知っている事があれば是非教えて頂きたかったのですが残念です」

(こいつらはヒュウガ側についている『妖魔召士ようましょうし』達か。しかし私のかまかけに対して視線や仕草に、そこまでおかしなところは見かけられなかった。この者達が演技をしていればこの私が気づけない筈がないですし、どうやら本当にイダラマ殿の事は知らないようですね。こいつらの『魔瞳まどう』は僅かな間だったとはいえ、総長の動きを止められた者達です。少なく見積もっても中位以上から最上位未満の『妖魔召士ようましょうし』だと思われるますが、このランクの者達で知らないという事であるならば、ヒュウガ派とイダラマ殿との間に、直接の繋がりはないと見るべきでしょうか)

 完全に繋がりがないと決めつけたわけではないが、目の前のある程度の強さを持つ『妖魔召士ようましょうし』達が知らされていない程であるならば、もしも万が一に繋がりがあった時にはイダラマが『妖魔山ようまざん』に向かった事に関して、両者の間には余程隠しておかなければならない事があるという証左でもある為、この者達を捕らえた事でまた一つ、貴重な情報の欠片を得るに至るミスズであった。

 ……
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