1,161 / 1,915
サカダイ編
1144.ヒノエと素性の知れない女
しおりを挟む
間諜を行っていた三人の『妖魔召士』の内、その代表格であったリュウジがヒノエ達に追いかけられていた頃、他の逃げた二人はあっさりと『妖魔退魔師衆』達に捕縛されていた。
しかし彼らは単なる暴漢とは違い、手や足を縛って捕らえたとしてもそこで完全に抵抗が出来なくなるわけではない。何故なら彼ら『妖魔召士』には『魔瞳』という力が備わっているからである。
この『妖魔召士』達が扱う『魔瞳』というものは、ソフィが使う通称『死の結界』の中でも『理』を使用しての魔法というわけでは無い為に、普段通りに使う事が出来る術である。
つまり『妖魔召士』を取り押さえる為には、手や足を縛る事だけに意識を向けるのではなく『魔瞳』を封じるために目も隠すように封じなければならない。だが、その事は当然というべきか対立する組織である『妖魔退魔師』達は十分に理解している。
直接『妖魔召士』と命のやり取りをするような真似は、前回の一件以外ではこれまでの歴史ではなかったが、互いに『妖魔』という共通する敵を討伐する間柄であった為に、昨今では『妖魔退魔師』と呼ぶ事を許される領域に居る者達であれば、誰であってもその対応は難しくない程までに対策のレベルが達してきている。
今回のように相手が少数で逆に仲間が大勢いる場合では、それこそ確実と言っていい程に対策は万全であった。そもそも大勢の『妖魔退魔師』に追われるという事自体、間諜の『妖魔召士』達は慣れては居なかった為に、今回のように冷静に対処されてしまえば、手も足もそれこそ目も出す事が出来ぬままに、目隠しされた状態であっさりと手足も縛られて『妖魔退魔師』達に捕らえられてしまうのであった。
「総長、副総長! ご命令通りに怪しい行動を取っていた『妖魔召士』達を『二名』だけですが取り押さえてきました」
そして逃げた三人組の内の二人が、総長シゲンの居た場所に連行されてくるのであった。
「ご苦労様。後はヒノエ達が追っていった方の露店商の主に成りすましていた男だけですね」
あっさりと『妖魔召士』二名を捕らえてきた部下達を労うと、ミスズはヒノエに追わせた方も直ぐに連れ戻させる事が出来るだろうと信じて疑わずに笑みを浮かべるのだった。
「よし、では後はヒノエ達に任せて、俺達は本部に戻るぞ」
そして総長のシゲンもミスズと同じように、ヒノエ達が取り逃がす事はないだろうと判断して、その場に居る者達に指示を出し始めると『妖魔退魔師衆』達は、一糸乱れぬ隊列を組みながら総長に敬礼するのだった。
……
……
……
逃げた『妖魔召士』三人の内、リーダー格であったリュウジは、人質にされた少女に滅多刺しにされて既に絶命していた。
「お前、どういうつもりだよ?」
ヒノエはその惨劇を生んだ少女から刃物を奪い取り、そのまま地面に組み伏せて完全に動けなくしながら詰問を行う。少女は地面を舐めるように地面に顔を押し付けられている。
まるでこのリュウジと同じように逃げた、他の二名の取り押さえられた『妖魔召士』と同じ扱いを受ける少女であったが、素性が分からない以上はこうでもしなければ何をしでかすか分からないと判断した為であった。
「どういう……つもり、ですか? 自分の身の安全の為に行ったつもりでしたがどうして私が責められているのでしょうか、人質にされていたのは私なのですよ?」
「馬鹿! それにしてもあれはどう見てもやり過ぎだろう! 相手を動けなくさせた時点で十分だった筈だ。あんな風に……、何度も刺突を繰り返すのは、異常過ぎるぞお前!」
確かに人質をとった『妖魔召士』が一番悪いのは間違いはないだろうが、それでもあの惨劇を行った少女は、ヒノエの言う通り異常過ぎる行為と言えた。
まるであの『妖魔召士』の男に親でも殺されたかの如く、怨嗟をまき散らしながら刺突する彼女には、明確な殺意が孕まれていた。あの姿を見ていた者達であれば彼女が異常過ぎると判断するのは、何も間違ってはいない事だったであろう。
「……」
ヒノエの言葉を聞いて黙り込んだ少女。しかし次の瞬間、少女の目が先程と同じようにどす黒い目に変わっていく。
「やり過ぎですって? 足りないくらいだ!! お前が余計な真似をしなければ、この男の首を斬り落として、何度も何度も……っ!!」
突然大声をあげて取り押さえられた格好で暴れ始めた少女をヒノエは、覆いかぶさるように全体重をかけて動きを止める。
「くっ……!!」
地面に顔を擦り付けられながらも少女は暴れ始めていたが、ヒノエにそのまま腕の関節を極められて、やがては大人しくなるのであった。
「こいつは私が本部へ連れて行く、お前らは先に戻っていろ」
「わ、分かりました!」
言うが早いか『妖魔退魔師衆』はヒノエの命令を遂行して、その場から離れて行くのであった。
「ったくもう……! この町に戻って来てから、ワケの分かんねぇ事ばっかりだよ」
その場に一人残ったヒノエは自分の下に居る少女の顔を見ながら、小さく愚痴を零した後に溜息を吐くのであった。
……
……
……
しかし彼らは単なる暴漢とは違い、手や足を縛って捕らえたとしてもそこで完全に抵抗が出来なくなるわけではない。何故なら彼ら『妖魔召士』には『魔瞳』という力が備わっているからである。
この『妖魔召士』達が扱う『魔瞳』というものは、ソフィが使う通称『死の結界』の中でも『理』を使用しての魔法というわけでは無い為に、普段通りに使う事が出来る術である。
つまり『妖魔召士』を取り押さえる為には、手や足を縛る事だけに意識を向けるのではなく『魔瞳』を封じるために目も隠すように封じなければならない。だが、その事は当然というべきか対立する組織である『妖魔退魔師』達は十分に理解している。
直接『妖魔召士』と命のやり取りをするような真似は、前回の一件以外ではこれまでの歴史ではなかったが、互いに『妖魔』という共通する敵を討伐する間柄であった為に、昨今では『妖魔退魔師』と呼ぶ事を許される領域に居る者達であれば、誰であってもその対応は難しくない程までに対策のレベルが達してきている。
今回のように相手が少数で逆に仲間が大勢いる場合では、それこそ確実と言っていい程に対策は万全であった。そもそも大勢の『妖魔退魔師』に追われるという事自体、間諜の『妖魔召士』達は慣れては居なかった為に、今回のように冷静に対処されてしまえば、手も足もそれこそ目も出す事が出来ぬままに、目隠しされた状態であっさりと手足も縛られて『妖魔退魔師』達に捕らえられてしまうのであった。
「総長、副総長! ご命令通りに怪しい行動を取っていた『妖魔召士』達を『二名』だけですが取り押さえてきました」
そして逃げた三人組の内の二人が、総長シゲンの居た場所に連行されてくるのであった。
「ご苦労様。後はヒノエ達が追っていった方の露店商の主に成りすましていた男だけですね」
あっさりと『妖魔召士』二名を捕らえてきた部下達を労うと、ミスズはヒノエに追わせた方も直ぐに連れ戻させる事が出来るだろうと信じて疑わずに笑みを浮かべるのだった。
「よし、では後はヒノエ達に任せて、俺達は本部に戻るぞ」
そして総長のシゲンもミスズと同じように、ヒノエ達が取り逃がす事はないだろうと判断して、その場に居る者達に指示を出し始めると『妖魔退魔師衆』達は、一糸乱れぬ隊列を組みながら総長に敬礼するのだった。
……
……
……
逃げた『妖魔召士』三人の内、リーダー格であったリュウジは、人質にされた少女に滅多刺しにされて既に絶命していた。
「お前、どういうつもりだよ?」
ヒノエはその惨劇を生んだ少女から刃物を奪い取り、そのまま地面に組み伏せて完全に動けなくしながら詰問を行う。少女は地面を舐めるように地面に顔を押し付けられている。
まるでこのリュウジと同じように逃げた、他の二名の取り押さえられた『妖魔召士』と同じ扱いを受ける少女であったが、素性が分からない以上はこうでもしなければ何をしでかすか分からないと判断した為であった。
「どういう……つもり、ですか? 自分の身の安全の為に行ったつもりでしたがどうして私が責められているのでしょうか、人質にされていたのは私なのですよ?」
「馬鹿! それにしてもあれはどう見てもやり過ぎだろう! 相手を動けなくさせた時点で十分だった筈だ。あんな風に……、何度も刺突を繰り返すのは、異常過ぎるぞお前!」
確かに人質をとった『妖魔召士』が一番悪いのは間違いはないだろうが、それでもあの惨劇を行った少女は、ヒノエの言う通り異常過ぎる行為と言えた。
まるであの『妖魔召士』の男に親でも殺されたかの如く、怨嗟をまき散らしながら刺突する彼女には、明確な殺意が孕まれていた。あの姿を見ていた者達であれば彼女が異常過ぎると判断するのは、何も間違ってはいない事だったであろう。
「……」
ヒノエの言葉を聞いて黙り込んだ少女。しかし次の瞬間、少女の目が先程と同じようにどす黒い目に変わっていく。
「やり過ぎですって? 足りないくらいだ!! お前が余計な真似をしなければ、この男の首を斬り落として、何度も何度も……っ!!」
突然大声をあげて取り押さえられた格好で暴れ始めた少女をヒノエは、覆いかぶさるように全体重をかけて動きを止める。
「くっ……!!」
地面に顔を擦り付けられながらも少女は暴れ始めていたが、ヒノエにそのまま腕の関節を極められて、やがては大人しくなるのであった。
「こいつは私が本部へ連れて行く、お前らは先に戻っていろ」
「わ、分かりました!」
言うが早いか『妖魔退魔師衆』はヒノエの命令を遂行して、その場から離れて行くのであった。
「ったくもう……! この町に戻って来てから、ワケの分かんねぇ事ばっかりだよ」
その場に一人残ったヒノエは自分の下に居る少女の顔を見ながら、小さく愚痴を零した後に溜息を吐くのであった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる