1,159 / 1,915
サカダイ編
1142.追う者と、追われる者
しおりを挟む
「はぁっ……、はぁっ……! クソッ……! 流石に『妖魔退魔師』の幹部達を振り切れないか」
一般の人間達とは魔力も体力も異なる彼らだったが、それでも後を追って来ている『妖魔退魔師』はそんな彼らよりも更に体力が上なようであり、このままでは追いつかれると理解する。
シゲンやミスズ達が話をしていた通り、彼はゲンロクを長とする『妖魔召士』組織に、少し前まで所属していた『妖魔召士』達であった。
それも彼らはチアキやキネツグ達とは比較にもならぬ魔力を持った者達で、ゲンロクやエイジ達とまではいかないが、それでも立派に『上位』に位置づけられる『妖魔召士』達である。
だが、そんな彼らであっても後ろから追いかけて来るヒノエ達と真っ向から戦うという選択肢は選ぶ事は出来ない。たとえ彼らが『妖魔退魔師』から上位と呼ばれる『妖魔召士』であっても、追いかけてきているヒノエ達と戦闘という事になれば、彼らがいくら『魔瞳』や『捉術』を使ったとしても一切の勝ち目がないからである。
このままではいずれ追いつかれるだろうが、それでも立ち止まって戦う事を選ぶよりもこのままで走り続けた方が、僅かでも逃げ切れる確率は高いという事を彼ら『妖魔召士』は、理解しているのだった。
そんな上位『妖魔召士』の彼の名前は『リュウジ』。現在シゲンやソフィ達と一緒に居るミスズがふと頭の中で思い過らせた人物『ヒュウガ・アキサメ』の側近の一人『キクゾウ』の忠実な配下で、ヒュウガ派と呼ばれる『妖魔召士』達の幹部であった者である。
リュウジはヒュウガがゲンロクを裏切り、新たな組織を確立させる前より早くこのサカダイの町に潜り込んで間諜としての役割を担っていたのである。
そんな彼はこれまでサカダイで集めた情報を持って、キクゾウの元へ向かおうとしていた所であった。しかしあと数日でヒュウガの元へ戻ろうとしたタイミングで『妖魔召士』の会合に出ていた筈のシゲン達が、この町に戻って来たかと思えば、何か特務の施設の方で無視が出来ない魔力の奔流をリュウジは、いち早く感じ取りその原因を詳しく調べようと表に出てきて露店商に扮したところであった。
これまでは今回のように目立つような真似はせずに裏から裏へ、人から人へと情報を隠れ潜みながら、仕入れて来たリュウジだったが、突然の事であった事に加えて、総長、副総長が揃い踏みという事もあり、この場を離れる前にもう一つ何か土産となるような話を持って帰ろうと近くで何があったかを探ろうと姿を現してしまったのであった。
これまでの活動が上手く行っていたという事もあったのかもしれないが、気のゆるみが許されない『妖魔退魔師』組織の総本山であるという事を失念し、ここが『旅籠町』や他の町で行う間諜活動のように甘く見てしまった事が今の状況を招いてしまったのであった。
万事上手く行っている時こそ、徹底して任務を遂行する事を優先しなければならない。9割9分の作戦成功に喜んで、1つの取り返しがつかないミスで全てが水の泡になってしまっては、一体何の為に間諜をやっているのか分からない。ヒュウガ派の中でも出来る者として上位『妖魔召士』として自負しているからこそ、気が大きくなって気が緩んでしまったのだろうか。
――リュウジは頭の中で後悔をしながら、町を駆けまわり続ける。
(他の連中と合流をしたかったが、もうそんな余裕はない。俺をまだ追って来ているのは……、クソッ! ヒノエ組長がいやがるのか)
どうやら他の連中は若い『妖魔退魔師衆』のようだが、最高幹部が追って来ている事で、自分が一番の外れくじを引いてしまったのだと更に彼の心に後悔が生まれるのだった。
『妖魔退魔師衆』だけであったならば、逃げながらも契約している『式』を使い、それを囮にサカダイから脱出して逃げようと考えが過ったのだが『妖魔退魔師』組織『一組』組長『ヒノエ』が居る以上は彼の契約している一番強い妖魔の『式』を出したとしても時間稼ぎにもなりはしないだろう。
(な……、何かないか! 奴らが一時的にでも足を止めるような、何か!)
「ククッ……! 悪いが副総長に命令された以上は、私がお前を逃す真似はしねぇよ! さっさと諦めて神妙に縄につけ」
「くそっ! ん……?」
顔を歪めながら声を漏らしたリュウジだったが、サカダイの町を守る二の門が見えてきた辺りで、逃げるリュウジの目に若い一人の女性がこちらに向かって歩いてくるのが見えたのだった。
……
……
……
一般の人間達とは魔力も体力も異なる彼らだったが、それでも後を追って来ている『妖魔退魔師』はそんな彼らよりも更に体力が上なようであり、このままでは追いつかれると理解する。
シゲンやミスズ達が話をしていた通り、彼はゲンロクを長とする『妖魔召士』組織に、少し前まで所属していた『妖魔召士』達であった。
それも彼らはチアキやキネツグ達とは比較にもならぬ魔力を持った者達で、ゲンロクやエイジ達とまではいかないが、それでも立派に『上位』に位置づけられる『妖魔召士』達である。
だが、そんな彼らであっても後ろから追いかけて来るヒノエ達と真っ向から戦うという選択肢は選ぶ事は出来ない。たとえ彼らが『妖魔退魔師』から上位と呼ばれる『妖魔召士』であっても、追いかけてきているヒノエ達と戦闘という事になれば、彼らがいくら『魔瞳』や『捉術』を使ったとしても一切の勝ち目がないからである。
このままではいずれ追いつかれるだろうが、それでも立ち止まって戦う事を選ぶよりもこのままで走り続けた方が、僅かでも逃げ切れる確率は高いという事を彼ら『妖魔召士』は、理解しているのだった。
そんな上位『妖魔召士』の彼の名前は『リュウジ』。現在シゲンやソフィ達と一緒に居るミスズがふと頭の中で思い過らせた人物『ヒュウガ・アキサメ』の側近の一人『キクゾウ』の忠実な配下で、ヒュウガ派と呼ばれる『妖魔召士』達の幹部であった者である。
リュウジはヒュウガがゲンロクを裏切り、新たな組織を確立させる前より早くこのサカダイの町に潜り込んで間諜としての役割を担っていたのである。
そんな彼はこれまでサカダイで集めた情報を持って、キクゾウの元へ向かおうとしていた所であった。しかしあと数日でヒュウガの元へ戻ろうとしたタイミングで『妖魔召士』の会合に出ていた筈のシゲン達が、この町に戻って来たかと思えば、何か特務の施設の方で無視が出来ない魔力の奔流をリュウジは、いち早く感じ取りその原因を詳しく調べようと表に出てきて露店商に扮したところであった。
これまでは今回のように目立つような真似はせずに裏から裏へ、人から人へと情報を隠れ潜みながら、仕入れて来たリュウジだったが、突然の事であった事に加えて、総長、副総長が揃い踏みという事もあり、この場を離れる前にもう一つ何か土産となるような話を持って帰ろうと近くで何があったかを探ろうと姿を現してしまったのであった。
これまでの活動が上手く行っていたという事もあったのかもしれないが、気のゆるみが許されない『妖魔退魔師』組織の総本山であるという事を失念し、ここが『旅籠町』や他の町で行う間諜活動のように甘く見てしまった事が今の状況を招いてしまったのであった。
万事上手く行っている時こそ、徹底して任務を遂行する事を優先しなければならない。9割9分の作戦成功に喜んで、1つの取り返しがつかないミスで全てが水の泡になってしまっては、一体何の為に間諜をやっているのか分からない。ヒュウガ派の中でも出来る者として上位『妖魔召士』として自負しているからこそ、気が大きくなって気が緩んでしまったのだろうか。
――リュウジは頭の中で後悔をしながら、町を駆けまわり続ける。
(他の連中と合流をしたかったが、もうそんな余裕はない。俺をまだ追って来ているのは……、クソッ! ヒノエ組長がいやがるのか)
どうやら他の連中は若い『妖魔退魔師衆』のようだが、最高幹部が追って来ている事で、自分が一番の外れくじを引いてしまったのだと更に彼の心に後悔が生まれるのだった。
『妖魔退魔師衆』だけであったならば、逃げながらも契約している『式』を使い、それを囮にサカダイから脱出して逃げようと考えが過ったのだが『妖魔退魔師』組織『一組』組長『ヒノエ』が居る以上は彼の契約している一番強い妖魔の『式』を出したとしても時間稼ぎにもなりはしないだろう。
(な……、何かないか! 奴らが一時的にでも足を止めるような、何か!)
「ククッ……! 悪いが副総長に命令された以上は、私がお前を逃す真似はしねぇよ! さっさと諦めて神妙に縄につけ」
「くそっ! ん……?」
顔を歪めながら声を漏らしたリュウジだったが、サカダイの町を守る二の門が見えてきた辺りで、逃げるリュウジの目に若い一人の女性がこちらに向かって歩いてくるのが見えたのだった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる