最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
1,146 / 1,985
サカダイ編

1129.聞く耳を貸さない、副総長ミスズ

しおりを挟む
 ソフィに疑問を投げられかけてもミスズは返答をせずままに、これから自分が行おうとする行動の為に準備を推し進めていく。くいっと眼鏡を上げた後、先程のナギリが行って見せた様に刀に『天色』の青のオーラを創成付与させていく。

 ナギリと違うところはその同じ青のオーラでも色合いが薄く、ソフィ達魔族が使う『青』と全く同じ色であった為、それを見たソフィはどうやら先程ナギリに抱いた『青』の色合いの種類は、この世界の人間と別世界の魔族が扱う青のオーラに違いがあるわけではなく、ナギリだけが特別だったのかもしれないと冷静に戦闘の最中に思い抱くのであった。

「むっ!」

 そしてどうやら天色の青のオーラを纏った事で眼鏡を掛けた女性は、先頭の準備が整ったようで先程までとまた空気が一変していった。ソフィは警戒心を怠らないままで、ミスズに『漏出サーチ』を放つ。

 【種族:人間 名前:ミスズ 魔力値:47万 年齢:25歳 
 状態:青『天色』練度5.0 戦力値:測定不能 地位:妖魔退魔師ようまたいまし副総長】。

(クックック、そうかそうか……。この者が噂にあがっていた、この『妖魔退魔師ようまたいまし』とやらの『殿』か)

 ソフィは目の前のズレた眼鏡を何度も直し続ける女性に『漏出サーチ』を用いて名前と地位からようやくこの場に現れた彼女が、何者なのかを理解するのであった。 

(それにしても、まさかこの形態の我の『漏出サーチ』であっても戦力値の数値が反映されぬとは……『隠蔽いんぺい魔法』が施されているようなわけでもなし、つまりはこの今の我よりもミスズ殿とやらの強さは数値上で上回っているという事か)

 ミスズがいつ襲ってきてもいいように警戒を怠らぬままでソフィは、真顔でミスズの力について分析を行っていたが、そこで『アレルバレル』の世界でさえ、過去に数度しか出していない形態で『三色併用』を纏っている今の自分の魔力を用いた『漏出サーチ』で『妖魔退魔師ようまたいまし』の『副総長ふくそうちょう』であるミスズの戦力値が測れないと知り、ゆっくりとソフィは口角を吊り上げて笑みを浮かべ始めるのであった。

「……」

 突然自分を見て不敵な笑みを浮かべ始めたソフィに、ミスズは不快感を露にするのであった。そのミスズの示した不快感はソフィの見せた笑み自体にではなく、先程のやり取りを行った後に対してこうまで余裕のある態度を見せられた事に対して、ソフィを厄介な存在なのだと判断した事により、取るべき対処を考えた事で非常に面倒この上ないと考えた事によって、表面上に無意識に出たようである。

 本来のミスズは無意識に出そうになる態度でさえ、人が居る前では表面上に出す事さえしないように気を付けているが、どうやら今の彼女にはその余裕がない様子であった。

 こうした彼女の一面を見る事で彼女をよく知る者が、今のミスズを見れば普段の余裕ある『妖魔退魔師ようまたいまし』の副総長ミスズではないのだと気づけるかもしれない。 

 そして再びミスズが足を一歩前に踏み入れた瞬間、ひゅっという空気を切るような音と共に、ソフィとミスズの間にスオウが割り込んできた。

「どういうつもりですか? スオウ組長!!」

「ま、待ってください副総長! 彼は俺の客人なのです、刀を収めて下さい!」

 突然割り込んできて大事な部下を殺そうとしていた存在を守るように、両手を横に出しながら信じられない事を口にするスオウに、ミスズの蟀谷が、ピク、ピクっと二度、三度と動くのであった。

「彼にナギリを殺すつもりはありませんよ、ミスズ副総長。あくまでソフィ殿はナギリに腕試しを行っていただけに過ぎないのですから……!」

「ほう? 私の目にはそうは映りませんでしたね。そちらの方があれだけの殺意を込めてナギリを攻撃しようとしていたモノを貴方の言うように単なる腕試しだというのなら、ランク『6』以上の妖魔との殺し合いもまた全て腕試しになってしまいますよ?」

「そ、それは、タイミングが……」

「ほう、スオウ組長? あのタイミングで私が戻って来なければ、ナギリはとんでもない大怪我を負っていたでしょうね。貴方はナギリが取り返しのつかない怪我をしてもいいと、それが貴方の言うそう私に言いたいのですね?」

「ち、ちがっ……!」

「何が違うのですか、スオウ組長? 私は何か間違っている事を言っていますか? 間違っているというのならばそんな風に口ごもらずに、しっかりと私の目を見て私が納得するように、もっとですね!!」

 舌打ちを交えながら恐ろしい程の威圧をスオウに向けながらミスズがそう告げると『妖魔退魔師ようまたいまし』組織の最高幹部であり、敵対する『妖魔召士ようましょうし』組織からも恐れられるスオウが、部下を傷つけられそうになった事で本性を露にしている副総長を前にしては、どうにも出来ずにあたふたと狼狽を続ける。

 しかしそれでも何とか必死にソフィを守る為に、その場から動かずにスオウは考えを張り巡らせる。

 彼はミスズとソフィの間に割って入った時から、多くの弁明をするような言葉を用意していた。

 ――だが、今の副総長ミスズはどうやら大事な部下を殺されそうになっていた事で、表面上では冷静に会話が出来る状態のようには見えるが、その内心では相当に苛立ちスオウがいくら正論や、それに準じた言い訳をしようともその全てのスオウの口にする言葉を否定し、苛立ちをぶつけるように論破する対応をしようとしている。

 つまりミスズはスオウの言葉に、という表れであった。

 普段であればスオウも言葉巧みに誘導して、自分が優位に立つように言葉を回すのは得意な方だが、それが副総長ミスズの前ではまるで形無しであった。

 ――十代にして『妖魔退魔師』組織の『副総長』の座についたミスズ隊士。

 その本気になったミスズが相手になってしまえば、口ではスオウ程度ではどうにも出来ない。雄弁で抑揚をつけた滑らかな口ぶりで喋りながらもミスズは、相手の仕草から考えている事への予測、それらを喋りながら同時に情報として頭に叩き込みながら、次に相手の話したがっている内容を先読みして、その全てを論破する為の言論の道筋を立てている。

 まるでミスズという人間の中にが同時に存在していて、一つの身体を共有しあっているかの如く『スオウ』を責め立て続ける。ミスズの放つ言葉の波状攻撃に、徐々にではあるが『スオウ』は泣きそうになっていく。

 今の目の前のミスズは激昂しながらも、スオウをいい負かそうとある意味で冷静であり、先の『妖魔召士ようましょうし』の会合の時にゲンロク達を相手にしていた時よりも、数段以上に面倒な事この上ない状態になってしまっていた。

 こんな事になるならばソフィ殿をナギリに会わせに来るんじゃなかったと、激しく後悔をしながらもスオウは、ソフィは何も悪くないのだという事を理解している為、自分の所属する組織の副総長の恐ろしい威圧を受けながらも『妖魔退魔師ようまたいまし』の『二組組長』である『スオウ』は、ソフィを必死に守ろうと前に立ち続ける。

 口ではいくら勝てないとはいっても、それでも大事な客人と認めたソフィの前で、これ以上彼を悪者にしたくないとスオウは考えて自分は本気だという事を示す為に、
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...