1,137 / 1,985
サカダイ編
1120.ソフィが気になった、一人の妖魔退魔師
しおりを挟む
「驚いたな……。この世界で『青』の体現者は初めて見た」
サカダイの町の入り口で囲まれた時に居たその男は、ソフィの言うように確かに青のオーラを身に纏って刀を構えている。どうやら傍目からでも分かるほど、その青は洗練されているようで、練度は少なく見積もっても『4』以上、あれ程のコントロールを見るに、練度『5』に到達していてもおかしくはないだろう。
ソフィ達が探していたナギリが中に居た事でスオウがナギリを呼ぼうと声を出そうとしたが、それをソフィがスオウの顔の前にすっと手を出して止める。
「ん?」
呼びかけようとしていたスオウだが、突然のソフィの制止に小さく声をあげた。
「あれ程に集中している者の邪魔をするのは流石に忍びない。もう少しだけ待ってあげようではないか」
「ふふっ、やっぱりキミって優しいね。キミたちが良いって言うなら別に俺はそれでいいよ」
そう言ってスオウはナギリを呼ぶのを止めて、その場で腕を組んでナギリを見る。ナギリという男は目を閉じたままで、持っている刀に青のオーラをゆっくりと行き渡らせ始めていく。
(丁寧で綺麗な魔力コントロールだ。周囲を覆うオーラから形を崩さずに、同一精度を保ったまま得物に移しておる)
ソフィがナギリの『基本研鑽演義』は、相当なモノだと感心していると、目を瞑って精神統一していたナギリの目が見開き、目の前の竹で出来た打ち込み台のような的に向けて、ナギリの青のオーラを纏った刀で振り切るのだった。
力の入れ具合。それに振り切る寸前の体重移動に振り切った後の終姿勢。どれをとっても惚れ惚れする程で、正に達人と呼ぶに相応しい動作であった。刀を腰鞘に戻した後にナギリは、ゆっくりとこちらに視線を向ける。
「待って頂いてすみませんね。お陰でとても集中が出来ましたよ」
そう丁寧に告げたナギリは、スオウ達に向けて一礼するのだった。
「こちらこそ鍛錬中の邪魔をして悪いね、素晴らしい一撃だったよナギリ」
そう言ってスオウが褒めるとナギリは、もう一度丁寧に頭を下げた後に横に居るソフィ達に視線を向けて来るのだった。
「確かこの人は町の入り口で戦意を放ってきた……?」
どうやらナギリも町の中に入って来たソフィが、自分に向けて試すような視線を放って来た時の事を覚えていたようで、直ぐに思い出す事が出来たようである。
「そうだよナギリ、彼は俺の大事な客人でね。どうやら町でキミを一目見た時からきになっていたようでね。町の案内がてらキミに会わせようとここに連れて来たんだ」
「スオウ組長の客人が何故俺に?」
町の中でその姿を見ただけで特別言葉を交わしたわけでもないのに、わざわざ自分に会いに来たというのだから、ナギリがそういう反応を示すのは仕方のない事であった。そこでようやくソフィは、視線を向けて来たナギリに口を開いた。
「町の中での事といい。今も研鑽を積んでおる最中に急に押し掛けてすまぬな」
「はぁ……。別にそれは構わないのだが、何故俺に会いに来たのかを聞いてもいいか?」
至極当然の疑問を告げるナギリに、ソフィは頷いて口を開き始める。
「そうだな。どうやらお主だけは、我の本当の実力を見抜いていたような気がしてな。一度町に入った時に確かめはしたのだが……、より詳しく確かめて見たかった。というのが我の本音だ」
「成程。あんたはやっぱり徒者じゃないな」
このナギリという男はソフィに対して、何か感じるものがあったようで、今のソフィの言葉を受けて、その感じていたモノに確信を得た様子であった。
――サカダイの町に入ったあの時、他の『妖魔退魔師』達は、ソフィを見ているというよりもこの町に入って来た新顔に対して、それぞれ警戒を示していた様子であった。
しかしこの目の前に居るナギリだけは、ソフィ個人に対して実力を看破していたような、そんな視線を最初からソフィは感じ取っていたようである。
そしてそれが偶然なのかどうかソフィは、確かめようと魔力を行使した。他の『妖魔退魔師』達は、そこでようやくソフィの変わり様を察知して慌てるように、ソフィに視線を向き直したが、この目の前に居るナギリだけは、ソフィが力を行使する前と変わらぬ余裕を持ったまま、視線を向け続けていた。その時にソフィはこのナギリという男だけは、他の者達とは別格だと判断してこうして興味を持って、会ってみたいと感じたのであった。
サカダイの町の入り口で囲まれた時に居たその男は、ソフィの言うように確かに青のオーラを身に纏って刀を構えている。どうやら傍目からでも分かるほど、その青は洗練されているようで、練度は少なく見積もっても『4』以上、あれ程のコントロールを見るに、練度『5』に到達していてもおかしくはないだろう。
ソフィ達が探していたナギリが中に居た事でスオウがナギリを呼ぼうと声を出そうとしたが、それをソフィがスオウの顔の前にすっと手を出して止める。
「ん?」
呼びかけようとしていたスオウだが、突然のソフィの制止に小さく声をあげた。
「あれ程に集中している者の邪魔をするのは流石に忍びない。もう少しだけ待ってあげようではないか」
「ふふっ、やっぱりキミって優しいね。キミたちが良いって言うなら別に俺はそれでいいよ」
そう言ってスオウはナギリを呼ぶのを止めて、その場で腕を組んでナギリを見る。ナギリという男は目を閉じたままで、持っている刀に青のオーラをゆっくりと行き渡らせ始めていく。
(丁寧で綺麗な魔力コントロールだ。周囲を覆うオーラから形を崩さずに、同一精度を保ったまま得物に移しておる)
ソフィがナギリの『基本研鑽演義』は、相当なモノだと感心していると、目を瞑って精神統一していたナギリの目が見開き、目の前の竹で出来た打ち込み台のような的に向けて、ナギリの青のオーラを纏った刀で振り切るのだった。
力の入れ具合。それに振り切る寸前の体重移動に振り切った後の終姿勢。どれをとっても惚れ惚れする程で、正に達人と呼ぶに相応しい動作であった。刀を腰鞘に戻した後にナギリは、ゆっくりとこちらに視線を向ける。
「待って頂いてすみませんね。お陰でとても集中が出来ましたよ」
そう丁寧に告げたナギリは、スオウ達に向けて一礼するのだった。
「こちらこそ鍛錬中の邪魔をして悪いね、素晴らしい一撃だったよナギリ」
そう言ってスオウが褒めるとナギリは、もう一度丁寧に頭を下げた後に横に居るソフィ達に視線を向けて来るのだった。
「確かこの人は町の入り口で戦意を放ってきた……?」
どうやらナギリも町の中に入って来たソフィが、自分に向けて試すような視線を放って来た時の事を覚えていたようで、直ぐに思い出す事が出来たようである。
「そうだよナギリ、彼は俺の大事な客人でね。どうやら町でキミを一目見た時からきになっていたようでね。町の案内がてらキミに会わせようとここに連れて来たんだ」
「スオウ組長の客人が何故俺に?」
町の中でその姿を見ただけで特別言葉を交わしたわけでもないのに、わざわざ自分に会いに来たというのだから、ナギリがそういう反応を示すのは仕方のない事であった。そこでようやくソフィは、視線を向けて来たナギリに口を開いた。
「町の中での事といい。今も研鑽を積んでおる最中に急に押し掛けてすまぬな」
「はぁ……。別にそれは構わないのだが、何故俺に会いに来たのかを聞いてもいいか?」
至極当然の疑問を告げるナギリに、ソフィは頷いて口を開き始める。
「そうだな。どうやらお主だけは、我の本当の実力を見抜いていたような気がしてな。一度町に入った時に確かめはしたのだが……、より詳しく確かめて見たかった。というのが我の本音だ」
「成程。あんたはやっぱり徒者じゃないな」
このナギリという男はソフィに対して、何か感じるものがあったようで、今のソフィの言葉を受けて、その感じていたモノに確信を得た様子であった。
――サカダイの町に入ったあの時、他の『妖魔退魔師』達は、ソフィを見ているというよりもこの町に入って来た新顔に対して、それぞれ警戒を示していた様子であった。
しかしこの目の前に居るナギリだけは、ソフィ個人に対して実力を看破していたような、そんな視線を最初からソフィは感じ取っていたようである。
そしてそれが偶然なのかどうかソフィは、確かめようと魔力を行使した。他の『妖魔退魔師』達は、そこでようやくソフィの変わり様を察知して慌てるように、ソフィに視線を向き直したが、この目の前に居るナギリだけは、ソフィが力を行使する前と変わらぬ余裕を持ったまま、視線を向け続けていた。その時にソフィはこのナギリという男だけは、他の者達とは別格だと判断してこうして興味を持って、会ってみたいと感じたのであった。
0
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる