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サカダイ編
1107.同じ発言と、異なる影響力
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「成程、確かにうちが管理権を得たとして『妖魔退魔師』だけでこれからずっと管理を行うのにも限界はある筈だとお主はそう言いたいのだな? エイジ殿」
これまで話を聞いていた総長シゲンは、エイジが対話を行うに値する乱入者だと認めた上でしっかりとその視線を向けた。
「主らが『妖魔山』の『禁止区域』の調査が目的なのであれば、こちらは妖魔山の管理権限を渡すわけにはいかぬ。何度も言うが小生は決して『妖魔召士』の組織を庇おうとしているわけではなく、この世界に生きる多くの人間達の安全を最優先している発言と考えて頂きたい」
しっかりと視線を『妖魔退魔師』の総長であるシゲンに向けながら『エイジ』は、確固たる決意を滲ませながら毅然とした態度で話し始める。
「お主ら『妖魔退魔師』の言い分も分かるが『妖魔退魔師』側の隊士に手を出した事で『妖魔召士』側への制裁を課すというのであれば、ここは今一度『妖魔山』の管理権を移す事を抜きにした然るべき罰則の熟考を検討して頂きたい」
シゲンもミスズもエイジの言葉に対して、直ぐに言い返す真似はしなかった。
総長シゲンは腕を組んだまま、視線だけをエイジに向けており、副総長ミスズは元々ゲンロクのコウヒョウ権益案に賛成していた為、勿論の事決定権を持つ総長次第ではあるのだが『妖魔山』の管理を除外した別の賠償案でも構わないと再び考え始めていた。
(今エイジが言っている事は、前回ワシが言っていた事と同じではないか! 何故シゲン殿もあの小賢しく口が回るミスズ殿も即座に何も言い返さないのだ!)
ゲンロクはシゲンとミスズ達が黙ってエイジの話に耳を傾け始めた事で、自分が前回の時、いくら弁論をしても直ぐ様反論をされて言い包められてしまったというのに、何故エイジの発言に対してはこうも自分と差が出ているのかそれが分からず、口をモゴモゴとさせながら歯痒さを噛みしめていた。
彼自身はまだ気づいてはいないようだが、既に前回の会合で彼はシゲン達にその判断能力等を試されている。そしてシゲンからはもう、この現在の暫定の『妖魔召士』の長の立場に居るゲンロクという男は、判断力が乏しく敵ではないと判断されていた。
分かりやすく言うと既に『妖魔退魔師』の総長の座に居るシゲンから、現在の『妖魔召士』の長である『ゲンロク』は、舐められているのである――。
年はシゲンの倍近く上であり、長く生きている筈のゲンロクだが、平和な期間を長く経験して更には既に現場から離れつつあった為、今のゲンロクには交渉の座においては何も怖さは感じられない。
それどころか交渉の場以外であってもシゲンやミスズが強く言えば、ゲンロクは簡単に考えを変えて、こちら側の意志に従いそうですらある。
――組織の上に立つ者は、たった一度だけでも舐められてしまえば終わりである。
まさかそんな一度くらいでと思うかもしれないが、印象というものは組織が大きければ大きい程、非常に厄介に付き纏う。
新米や中堅どころの印象がいくら変わろうがそこまで大した影響は出ないが、それが組織の長という位置に居る者であればこれ程までに面倒な事はない。
ゲンロクという器が如何に優れていたとしても既に彼は、明確な印象を持ったシゲンを除いたとしても『ミスズ』『ヒノエ』その他の『幹部』連中達からも今のゲンロクは、判断力が乏しく敵ではないと判断され始めている。
一度ついた印象は簡単には払拭をされず、こうして現在も同じような発言を行ったエイジに対しては、検討の余地はあると判断されているのだが、ゲンロクに対しては正直に言えばどうでもいいと思われている。
舐められてしまえば終わりという事を現在ゲンロクは身を以て感じている筈だが、その事には長という偉い立場に就いてから長く居る彼にとっては、そう簡単には気づく事もないだろう。
――それどころか下手をすれば、最後まで気づく事はないかもしれない。
『妖魔退魔師』組織の『シゲン』や『ミスズ』に『ヒノエ』。そして『妖魔召士』のエイジ達が対等の立場で話をしている中で『妖魔召士』のトップの座に居る筈のゲンロクだけが、全く彼らと違う事を考えながら、歯痒さを隠そうともせずにエイジを睨んでいるのであった。
これまで話を聞いていた総長シゲンは、エイジが対話を行うに値する乱入者だと認めた上でしっかりとその視線を向けた。
「主らが『妖魔山』の『禁止区域』の調査が目的なのであれば、こちらは妖魔山の管理権限を渡すわけにはいかぬ。何度も言うが小生は決して『妖魔召士』の組織を庇おうとしているわけではなく、この世界に生きる多くの人間達の安全を最優先している発言と考えて頂きたい」
しっかりと視線を『妖魔退魔師』の総長であるシゲンに向けながら『エイジ』は、確固たる決意を滲ませながら毅然とした態度で話し始める。
「お主ら『妖魔退魔師』の言い分も分かるが『妖魔退魔師』側の隊士に手を出した事で『妖魔召士』側への制裁を課すというのであれば、ここは今一度『妖魔山』の管理権を移す事を抜きにした然るべき罰則の熟考を検討して頂きたい」
シゲンもミスズもエイジの言葉に対して、直ぐに言い返す真似はしなかった。
総長シゲンは腕を組んだまま、視線だけをエイジに向けており、副総長ミスズは元々ゲンロクのコウヒョウ権益案に賛成していた為、勿論の事決定権を持つ総長次第ではあるのだが『妖魔山』の管理を除外した別の賠償案でも構わないと再び考え始めていた。
(今エイジが言っている事は、前回ワシが言っていた事と同じではないか! 何故シゲン殿もあの小賢しく口が回るミスズ殿も即座に何も言い返さないのだ!)
ゲンロクはシゲンとミスズ達が黙ってエイジの話に耳を傾け始めた事で、自分が前回の時、いくら弁論をしても直ぐ様反論をされて言い包められてしまったというのに、何故エイジの発言に対してはこうも自分と差が出ているのかそれが分からず、口をモゴモゴとさせながら歯痒さを噛みしめていた。
彼自身はまだ気づいてはいないようだが、既に前回の会合で彼はシゲン達にその判断能力等を試されている。そしてシゲンからはもう、この現在の暫定の『妖魔召士』の長の立場に居るゲンロクという男は、判断力が乏しく敵ではないと判断されていた。
分かりやすく言うと既に『妖魔退魔師』の総長の座に居るシゲンから、現在の『妖魔召士』の長である『ゲンロク』は、舐められているのである――。
年はシゲンの倍近く上であり、長く生きている筈のゲンロクだが、平和な期間を長く経験して更には既に現場から離れつつあった為、今のゲンロクには交渉の座においては何も怖さは感じられない。
それどころか交渉の場以外であってもシゲンやミスズが強く言えば、ゲンロクは簡単に考えを変えて、こちら側の意志に従いそうですらある。
――組織の上に立つ者は、たった一度だけでも舐められてしまえば終わりである。
まさかそんな一度くらいでと思うかもしれないが、印象というものは組織が大きければ大きい程、非常に厄介に付き纏う。
新米や中堅どころの印象がいくら変わろうがそこまで大した影響は出ないが、それが組織の長という位置に居る者であればこれ程までに面倒な事はない。
ゲンロクという器が如何に優れていたとしても既に彼は、明確な印象を持ったシゲンを除いたとしても『ミスズ』『ヒノエ』その他の『幹部』連中達からも今のゲンロクは、判断力が乏しく敵ではないと判断され始めている。
一度ついた印象は簡単には払拭をされず、こうして現在も同じような発言を行ったエイジに対しては、検討の余地はあると判断されているのだが、ゲンロクに対しては正直に言えばどうでもいいと思われている。
舐められてしまえば終わりという事を現在ゲンロクは身を以て感じている筈だが、その事には長という偉い立場に就いてから長く居る彼にとっては、そう簡単には気づく事もないだろう。
――それどころか下手をすれば、最後まで気づく事はないかもしれない。
『妖魔退魔師』組織の『シゲン』や『ミスズ』に『ヒノエ』。そして『妖魔召士』のエイジ達が対等の立場で話をしている中で『妖魔召士』のトップの座に居る筈のゲンロクだけが、全く彼らと違う事を考えながら、歯痒さを隠そうともせずにエイジを睨んでいるのであった。
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