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サカダイ編
1095.仲間への信頼と、現状打破をする為の模索
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自身が動きを止めているコウゾウの前でヒュウガは、遅いと苛立ちを感じ始めていた。それを見ていたコウゾウは、口には出さないがその理由を分かっていた。本来であれば『妖魔召士』を相手に『妖魔退魔師』でもない『予備群』が束になったところで、決して敵う相手ではない。
それは『予備群』の中でトップ帯に居るコウゾウを含めても例外ではないし、更にそのコウゾウにも及ばないシグレであれば推して知るべしである。
だが、この旅籠町にある『予備群』の屯所内であれば、その前提条件が覆り、話はまた変わって来る事になる。
――何故ならばこの屯所内には今『魔』を司る者達にとっては『死の結界』と呼べるモノが施されているからである。
コウゾウは退魔士ではない為に『魔力』を使って戦う事には慣れてはいない。それどころか慣れる慣れない以前に『コウゾウ』は魔力を扱えない。
どんな人間であっても少なからず『魔力』は持っている。それはコウゾウであっても例外ではなく、彼も微弱ながら魔力は有している事だろう。しかしこの世界では『理』を司る精霊という存在が、すでに居なくなってしまっており『理』自体が無くなってしまった世界である為、当然魔法という概念は消失している。
消失された事柄の存在を今を生きるノックスの世界の人間達が知りようもある筈がなく、魔力というモノはあれどもそれは『妖魔召士』や、その『妖魔召士』の下部組織に所属している『妖魔退魔士』のように『捉術』を使う為のものだと幼少時から認識させられている。
これは子供に対して大人が騙す騙さないではなく、そのものを教える大人自体が知らないのである。つまり幼少期に魔力の量が少ないと判断されて『妖魔召士』になる事を許されなかった者は一生、持って生まれた魔力の使い方などを教えられる事はない。
ゲンロクが『妖魔召士』の長の座に就いた事で、少しは知られるようにはなったとはいえ、既にコウゾウのような年齢に達した人間達は、身近に退魔組に属する退魔士の知り合いでもいない限り、魔力の扱いなど理解しようがないのであった。
そんなコウゾウはソフィがこの屯所に張った『結界』一つで捕らえている『妖魔召士』の二人が抵抗出来なくなるだろうと言われても、どのような風にあの恐ろしい『妖魔召士』達の魔力を封じる事が出来るのかなど、そういった事は全く理解が及んでいない。
ただ『妖魔召士』達の扱う結界で本当に蔓延る妖魔が、町の中に入ってこれなくするのを目の当たりにしている現状を省みて、それと似たような原理があの屯所の中では行われているのだろうなと、それだけをコウゾウは理解していたのだった。
そしてどうやらそれは本当の事だったようで、目の前に居るヒュウガと呼ばれていた『妖魔召士』達の仲間達は、シグレ達の抵抗にあって苦戦を強いられて時間を掛けさせられているのだろう。
いくら『妖魔召士』が恐ろしい『捉術』を使って、高ランクの妖魔すら倒せるとはいってもその力の根源である『魔』を封じられてしまえば、シグレ程の『予備群』であれば、十分に対抗できる相手に成り下がる事だろう。
『予備群』達もランク『3』に居る妖魔を討伐できる人間の者達である。更に言えばシグレはランク『4』に匹敵する力量を有しており、退魔組に属する『特別退魔士』が相手であっても十分に渡り合える達人である。
魔力を使えない『妖魔召士』が相手であれば、如何に格上の存在であってもシグレであれば問題なく倒せるだろう。
コウゾウはそこまで考えて後は、目の前に居る彼だけを何とか出来ないものかと、動けなくされている状態で模索を始めたが、そこに屯所の扉が開かれた。
コウゾウは身体を動かせない状態だが、屯所の正面に居る為に出て来る人影の姿を見る事が出来た。その人物はやはり、コウゾウの想像通りにシグレだった。
(流石シグレ達だ!)
屯所から出てきたシグレの姿に、内心で嬉しそうな声をあげたコウゾウだったが、襲撃してきた来訪者の『妖魔召士達を倒してこの場に現れた筈のシグレは次の瞬間、白目を剥いてドサリと倒れ伏せるのだった。
(は……?)
「どうやら力尽きてしまったようだな、お主がやり過ぎたせいだぞ『王連』」
「シッシッシ! 魔力を使えぬお主を殺さずに手を貸してやったのだ。その儂に感謝こそすれどそのように、でかい口を叩くでないぞ主よ」
「ふん、別にお主を出さずとも何とでもなったわ」
「ククッ……! そうは見えんかったがの」
シグレの後に屯所から出てきたのは、先程の『妖魔召士』達だけではなく、屯所の中に入る前にはその姿を見せてはいなかった一体の『妖魔』が居た。
その妖魔の顔は鳥のような嘴が特徴的で背中から羽を生やしており、コウゾウよりも高い『妖魔召士』が更に子供に見えるほどに背丈のある『天狗』の妖魔であった。
それは『予備群』の中でトップ帯に居るコウゾウを含めても例外ではないし、更にそのコウゾウにも及ばないシグレであれば推して知るべしである。
だが、この旅籠町にある『予備群』の屯所内であれば、その前提条件が覆り、話はまた変わって来る事になる。
――何故ならばこの屯所内には今『魔』を司る者達にとっては『死の結界』と呼べるモノが施されているからである。
コウゾウは退魔士ではない為に『魔力』を使って戦う事には慣れてはいない。それどころか慣れる慣れない以前に『コウゾウ』は魔力を扱えない。
どんな人間であっても少なからず『魔力』は持っている。それはコウゾウであっても例外ではなく、彼も微弱ながら魔力は有している事だろう。しかしこの世界では『理』を司る精霊という存在が、すでに居なくなってしまっており『理』自体が無くなってしまった世界である為、当然魔法という概念は消失している。
消失された事柄の存在を今を生きるノックスの世界の人間達が知りようもある筈がなく、魔力というモノはあれどもそれは『妖魔召士』や、その『妖魔召士』の下部組織に所属している『妖魔退魔士』のように『捉術』を使う為のものだと幼少時から認識させられている。
これは子供に対して大人が騙す騙さないではなく、そのものを教える大人自体が知らないのである。つまり幼少期に魔力の量が少ないと判断されて『妖魔召士』になる事を許されなかった者は一生、持って生まれた魔力の使い方などを教えられる事はない。
ゲンロクが『妖魔召士』の長の座に就いた事で、少しは知られるようにはなったとはいえ、既にコウゾウのような年齢に達した人間達は、身近に退魔組に属する退魔士の知り合いでもいない限り、魔力の扱いなど理解しようがないのであった。
そんなコウゾウはソフィがこの屯所に張った『結界』一つで捕らえている『妖魔召士』の二人が抵抗出来なくなるだろうと言われても、どのような風にあの恐ろしい『妖魔召士』達の魔力を封じる事が出来るのかなど、そういった事は全く理解が及んでいない。
ただ『妖魔召士』達の扱う結界で本当に蔓延る妖魔が、町の中に入ってこれなくするのを目の当たりにしている現状を省みて、それと似たような原理があの屯所の中では行われているのだろうなと、それだけをコウゾウは理解していたのだった。
そしてどうやらそれは本当の事だったようで、目の前に居るヒュウガと呼ばれていた『妖魔召士』達の仲間達は、シグレ達の抵抗にあって苦戦を強いられて時間を掛けさせられているのだろう。
いくら『妖魔召士』が恐ろしい『捉術』を使って、高ランクの妖魔すら倒せるとはいってもその力の根源である『魔』を封じられてしまえば、シグレ程の『予備群』であれば、十分に対抗できる相手に成り下がる事だろう。
『予備群』達もランク『3』に居る妖魔を討伐できる人間の者達である。更に言えばシグレはランク『4』に匹敵する力量を有しており、退魔組に属する『特別退魔士』が相手であっても十分に渡り合える達人である。
魔力を使えない『妖魔召士』が相手であれば、如何に格上の存在であってもシグレであれば問題なく倒せるだろう。
コウゾウはそこまで考えて後は、目の前に居る彼だけを何とか出来ないものかと、動けなくされている状態で模索を始めたが、そこに屯所の扉が開かれた。
コウゾウは身体を動かせない状態だが、屯所の正面に居る為に出て来る人影の姿を見る事が出来た。その人物はやはり、コウゾウの想像通りにシグレだった。
(流石シグレ達だ!)
屯所から出てきたシグレの姿に、内心で嬉しそうな声をあげたコウゾウだったが、襲撃してきた来訪者の『妖魔召士達を倒してこの場に現れた筈のシグレは次の瞬間、白目を剥いてドサリと倒れ伏せるのだった。
(は……?)
「どうやら力尽きてしまったようだな、お主がやり過ぎたせいだぞ『王連』」
「シッシッシ! 魔力を使えぬお主を殺さずに手を貸してやったのだ。その儂に感謝こそすれどそのように、でかい口を叩くでないぞ主よ」
「ふん、別にお主を出さずとも何とでもなったわ」
「ククッ……! そうは見えんかったがの」
シグレの後に屯所から出てきたのは、先程の『妖魔召士』達だけではなく、屯所の中に入る前にはその姿を見せてはいなかった一体の『妖魔』が居た。
その妖魔の顔は鳥のような嘴が特徴的で背中から羽を生やしており、コウゾウよりも高い『妖魔召士』が更に子供に見えるほどに背丈のある『天狗』の妖魔であった。
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