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サカダイ編
1086.スオウに気に入られたソフィ
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「このお兄さんも大したものだったけれどキミは普通じゃないね。まさかうちの副組長に気づかせずに間合いに入り込んで刀を止めるなんて想像以上だったよ。キミたちが『妖魔召士』の人達を捕らえたっていう話は、もう疑いようがない事が分かったよ」
どうやらスオウと言う少年は、余程サシャという女の力を信頼していたようで、先程のソフィの動きを見てこれまでの話に嘘偽りは無いと確信を持った様子だった。
「信用してもらえたようで何よりだが、まさかヌーが力を出す前にこんなにもあっさりと気を失わせるとは、こちらこそ驚かされたぞ。スオウとやら……」
(しかしこの少年の殺気はヌー程の魔族の冷静さを欠かせる程に恐ろしいものであったことは理解出来るが、それでもあの場面であれば『紅』を纏うのならば『青』の方を優先すべきだったな。まだ『三色』の扱いが完全ではない以上、そこまでの判断を今のヌーに望むのは少々酷かもしれぬが……)
もしヌーが『三色併用』を『二色の併用』程に使う事に、慣れている状態であったならば、前段階となる『紅』や『青のオーラ』を『一色』ずつ発現させる手間を取らず、ソフィやレキのように、一気に魔力コントロールを用いて『三つの色』を発現出来ただろうが、それを『三色併用』の開花させたばかりのヌーに要求するのは少々酷ではあった。
しかしそうであってもヌーは、スオウの殺気にあてられた時、無自覚に『紅のオーラ』を纏わせられていた。
あの時にソフィはヌーが『紅』を纏うのを見て、まず得体の知れない相手と戦いになる以上、先を見越して『青』を使い、防御力を優先するべきだったと感じたのであった。
怒りによって攻撃力をあげる因子をヌーが、本能で無意識に選んだのだろうと想像する事は容易かったが、同じ攻撃力をあげるのであれば『紅のオーラ』よりも当然『三色併用』を纏った時の方が上昇幅は上で間違いはない。中途半端にあの場面で『紅』を使うのならば、防御力が上がる『青』を選ぶべきだっただろう。
しかしそれも無自覚で使っているのだから、仕方の無い事だとは思うが、いくら攻撃力がとんでもない程に上げられたとしても、そのまま意識を失わされたのでは全く意味がない。
彼が今の状態からもう一つ上の領域を目指すのであれば、そう言った面も含めて更に考えられるようにならなければならないのである。
ソフィは過去にサイヨウから『妖魔退魔師』は自分達より強いと知らされていた。この世界に来てから『予備群』や『妖魔召士』達。それにソフィ自身が戦った『動忍鬼』や『英鬼』といった妖魔の強さを省みて、今のヌーがもう一つ上の段階に行くためには、この『妖魔退魔師』と直接手を合わせさせた方が、今後の事を考えて利になると考えていたのであった。
――だからこそ言い争いを始めた時にソフィはあえて止めなかった。
今はまだ勝てないかもしれないが、今後の彼の成長には役に立ついい機会だった。そして想像していた事とは少し違った結果にはなったが、やはり今のヌーはまだ覚えるべき『基本研鑽演義』が多い状態だと、ソフィは再確認する事が出来たのだった。
後は意識を失わされたヌーがどこまで今回の事を考えられるか、それが一番大事な事であろう。こういった事は自分で反省をしなければ、他者から言われたところで真の意味で身にはつかない。
意識を取り戻した時に再びスオウに対して怒りを募らせるだけであれば、それこそまだ『三色併用』を使いこなすような段階には向かえず『大魔王領域止まりだろうな』とソフィは考え判断を下すのだった。
今も安静にさせられている状態で『テア』と『セルバス』の二人に介抱されて寝かされているヌーを横目に見ながらソフィがそう考えていると、スオウは自分の力を認められた事を言われて嬉しかったのか、少しだけ照れながら嬉しそうにサシャの顔を見る。サシャも機嫌が良くなったスオウに頷き、微笑みかけた。
彼は褒められる事にそこまで慣れていないようで、どうやらソフィに認められた事で嬉しそうに笑みを浮かべて喜んでいた。
「どうやらお主は『妖魔退魔師』とやらの組織の中でも相当に上の立場のようだな? お主が上に立つ事で皆安心できておるのではないか?」
「そ、そんな事はないよ、俺なんて副総長達に比べたらまだまだだしね……!」
スオウはソフィにそう言われて謙遜するように答えてはいたが、そこでサシャが口を挟んでくる。
「その通りです、スオウ組長は『妖魔退魔師』の全組員が信頼するに値する素晴らしい組長です。今はヒノエ組の『ヒノエ』組長に一時的に『一組』の座を奪われはしましたが、これまで一組の座を守ってきた期間、その年季が違います。直ぐにスオウ組長は『一組』の座を取り戻して、在るべき場所に戻るでしょう」
サシャにそう言われたスオウは、分かりやすい程に目尻を下げて満悦の表情を隠せない様子であった。
「成程、お主の部下がこれほどまでに慕っておる様子からもお主がよく信頼されているという事は、よく伝わったぞ」
「え、そ、そう? ま、まぁ俺は『妖魔退魔師』の最高幹部で、一つの組を預かる組長だからね。これくらい出来ないと、自分の組の皆の命を預かるなんて言えないよ。あ、ソフィ殿って言ったっけ? 何か食べるかい? サシャ、美味しいお菓子がまだ残っていたよね。ちょっと持ってきてくれないかい? あ、そうだ。それとまだ寝ている彼の為に特別な柔らかい布団を出してあげてよ!」
「分かりました。少々お待ち下さい」
水に浸した布を額に乗せられて横になっているヌーの方を見て、スオウはそう提案すると直ぐにサシャは頷きを見せた。
――どうやらソフィに褒められ続けた事で、スオウはえらくソフィを気に入った様子であった。
……
……
……
どうやらスオウと言う少年は、余程サシャという女の力を信頼していたようで、先程のソフィの動きを見てこれまでの話に嘘偽りは無いと確信を持った様子だった。
「信用してもらえたようで何よりだが、まさかヌーが力を出す前にこんなにもあっさりと気を失わせるとは、こちらこそ驚かされたぞ。スオウとやら……」
(しかしこの少年の殺気はヌー程の魔族の冷静さを欠かせる程に恐ろしいものであったことは理解出来るが、それでもあの場面であれば『紅』を纏うのならば『青』の方を優先すべきだったな。まだ『三色』の扱いが完全ではない以上、そこまでの判断を今のヌーに望むのは少々酷かもしれぬが……)
もしヌーが『三色併用』を『二色の併用』程に使う事に、慣れている状態であったならば、前段階となる『紅』や『青のオーラ』を『一色』ずつ発現させる手間を取らず、ソフィやレキのように、一気に魔力コントロールを用いて『三つの色』を発現出来ただろうが、それを『三色併用』の開花させたばかりのヌーに要求するのは少々酷ではあった。
しかしそうであってもヌーは、スオウの殺気にあてられた時、無自覚に『紅のオーラ』を纏わせられていた。
あの時にソフィはヌーが『紅』を纏うのを見て、まず得体の知れない相手と戦いになる以上、先を見越して『青』を使い、防御力を優先するべきだったと感じたのであった。
怒りによって攻撃力をあげる因子をヌーが、本能で無意識に選んだのだろうと想像する事は容易かったが、同じ攻撃力をあげるのであれば『紅のオーラ』よりも当然『三色併用』を纏った時の方が上昇幅は上で間違いはない。中途半端にあの場面で『紅』を使うのならば、防御力が上がる『青』を選ぶべきだっただろう。
しかしそれも無自覚で使っているのだから、仕方の無い事だとは思うが、いくら攻撃力がとんでもない程に上げられたとしても、そのまま意識を失わされたのでは全く意味がない。
彼が今の状態からもう一つ上の領域を目指すのであれば、そう言った面も含めて更に考えられるようにならなければならないのである。
ソフィは過去にサイヨウから『妖魔退魔師』は自分達より強いと知らされていた。この世界に来てから『予備群』や『妖魔召士』達。それにソフィ自身が戦った『動忍鬼』や『英鬼』といった妖魔の強さを省みて、今のヌーがもう一つ上の段階に行くためには、この『妖魔退魔師』と直接手を合わせさせた方が、今後の事を考えて利になると考えていたのであった。
――だからこそ言い争いを始めた時にソフィはあえて止めなかった。
今はまだ勝てないかもしれないが、今後の彼の成長には役に立ついい機会だった。そして想像していた事とは少し違った結果にはなったが、やはり今のヌーはまだ覚えるべき『基本研鑽演義』が多い状態だと、ソフィは再確認する事が出来たのだった。
後は意識を失わされたヌーがどこまで今回の事を考えられるか、それが一番大事な事であろう。こういった事は自分で反省をしなければ、他者から言われたところで真の意味で身にはつかない。
意識を取り戻した時に再びスオウに対して怒りを募らせるだけであれば、それこそまだ『三色併用』を使いこなすような段階には向かえず『大魔王領域止まりだろうな』とソフィは考え判断を下すのだった。
今も安静にさせられている状態で『テア』と『セルバス』の二人に介抱されて寝かされているヌーを横目に見ながらソフィがそう考えていると、スオウは自分の力を認められた事を言われて嬉しかったのか、少しだけ照れながら嬉しそうにサシャの顔を見る。サシャも機嫌が良くなったスオウに頷き、微笑みかけた。
彼は褒められる事にそこまで慣れていないようで、どうやらソフィに認められた事で嬉しそうに笑みを浮かべて喜んでいた。
「どうやらお主は『妖魔退魔師』とやらの組織の中でも相当に上の立場のようだな? お主が上に立つ事で皆安心できておるのではないか?」
「そ、そんな事はないよ、俺なんて副総長達に比べたらまだまだだしね……!」
スオウはソフィにそう言われて謙遜するように答えてはいたが、そこでサシャが口を挟んでくる。
「その通りです、スオウ組長は『妖魔退魔師』の全組員が信頼するに値する素晴らしい組長です。今はヒノエ組の『ヒノエ』組長に一時的に『一組』の座を奪われはしましたが、これまで一組の座を守ってきた期間、その年季が違います。直ぐにスオウ組長は『一組』の座を取り戻して、在るべき場所に戻るでしょう」
サシャにそう言われたスオウは、分かりやすい程に目尻を下げて満悦の表情を隠せない様子であった。
「成程、お主の部下がこれほどまでに慕っておる様子からもお主がよく信頼されているという事は、よく伝わったぞ」
「え、そ、そう? ま、まぁ俺は『妖魔退魔師』の最高幹部で、一つの組を預かる組長だからね。これくらい出来ないと、自分の組の皆の命を預かるなんて言えないよ。あ、ソフィ殿って言ったっけ? 何か食べるかい? サシャ、美味しいお菓子がまだ残っていたよね。ちょっと持ってきてくれないかい? あ、そうだ。それとまだ寝ている彼の為に特別な柔らかい布団を出してあげてよ!」
「分かりました。少々お待ち下さい」
水に浸した布を額に乗せられて横になっているヌーの方を見て、スオウはそう提案すると直ぐにサシャは頷きを見せた。
――どうやらソフィに褒められ続けた事で、スオウはえらくソフィを気に入った様子であった。
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