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サカダイ編
1078.総長シゲンの器
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狼狽するゲンロクを見ていた総長シゲンは、やはり今代の『妖魔召士』は敵ではないと考えていた。
ゲンロクという男は組織の運営をする上では確かに他の者よりも優秀で、組織の更なる発展を目指して前時代までの流れを切ってでも『退魔組』なる組織も作ってみせた行動力もある。
前時代の『妖魔召士』という組織を知らない今の世代の者達であれば、このゲンロクという男は皆を引っ張っていける頼もしき男に見える事だろう。
しかし今この時のように一番大事な決断を迫られた時に、今ひとつ決断力が一歩届いていないとシゲンは確信を持った。
前時代から当代に変わった後、相当の月日が流れた事で、この平和な期間の所為でその重要なファクターを鈍らせてしまったのだろう。平和という事は素晴らしい事であり、世界に於いてはそれが望まれている。確かに全く火種の無い世界であれば、その平和は絶対的なものである。
しかし一定の期間だけの平和であり、今後を見据えた先にその平和が失われる可能性がある状態であるのならば、備えを怠って仮初の平和に現を抜かしていてはいけないのである。
ただ平和を享受するだけの一般人であれば、そういった平和を守る者達の声や行動に従っていればいいが、自分や目の前のゲンロクという男はその平和を守る為に、尽くさなければならない組織の代表という存在なのである。
暫定の長とはいえ、いや暫定の長だからこそ、本当の組織の頂点に立つ者よりも、より一層精進する覚悟を持っていなければ、いつまでたってもNo.2のような立ち位置を払拭させられないであろう。
彼はよく出来た『妖魔召士』だが、今のままでは所詮は次席の器なのだとシゲンは決断を下した。
決断力という一点に絞って考えるならば『妖魔退魔師』側の自分や、副総長のミスズを除外したとして、組を預かる最高幹部のヒノエ達にもゲンロクは劣る事だろう。
自分の考えをしっかりと持ち間違っていると判断したならば、即座に追求して間違いを正す。もしその結果、組織の者達を危険な目に遭わせる事になったとしても組織の長である以上は、それら全てを背負い込んで行くという気概を見せるべきである。
今シゲンの前で狼狽えている男のように、組織を危険な目に遭わせる事自体を避ける事が組織の長であるべきだと考える者達も居るだろう。もちろんそれが出来るのならば大層立派な事ではあるが、口で言うだけで行動が伴っていなければ、ただ逃げているだけにしかならない。
戦う前から負ける事を考える事は決して褒められた事では無いが、確かに重要な事であり、組織を想うのならば考えるに値するだろう。しかしこのゲンロクという男にしても、ヒュウガと言う男にしても今の『妖魔召士』のトップ連中はその不安から保険を重視しすぎている。
だからこそ現状のように、もう退けばつけこまれるような状況下で、目の前の男はどうしようかと悩み抜いてしまい決断を下せない。ここまで来た以上、組織の人間を大事だと思うのならば『妖魔山』の管理を移すしかないだろうし、それを頑なに拒むというのであれば、この場で私たちに嫌だと拒否する言葉を吐けばいい。それがあくまで武力で平和の安寧を保つ『妖魔召士』や『妖魔退魔師』だろう。
そこに『妖魔退魔師』や『妖魔召士』の組織の違いなどは関係が無い。私たちは武力を持って平和を作り出す組織の存在の筈である。前時代の『妖魔召士』達は、シゲンやサイヨウその他にも気骨のある者達が多く居た。戦力値や魔力値がどうとか、そんな事はどうでもいい。
相手が自分より遥か格上の存在であっても死ぬ覚悟を以て『嫌な事は嫌だ』と、『こうあるべきだ』と主張出来る者達が組織を更なる強固な物へと作り上げるのだ。
シゲンはこれ以上ゲンロクの言葉を待っているのは時間の無駄だと判断して、強引にゲンロクに決断させる為の言葉を吐き出すのであった。
「『妖魔山』の管理をこの場で渡さないというのであれば、前回の件の責任として『妖魔召士』のサテツの首。そして今回の『予備群』に手を出した件の責任として、直接手を出した者達。及び指示を出した者達の首を数日中に、私達『妖魔退魔師』の本部に届けてもらいたい。更にはゲンロク殿、ヒュウガ達を今の役職に就けた責任で今日を境に組織の長の座を自ら降りて頂きたい。それが出来ないのであれば、今日をもって『妖魔退魔師』と『妖魔召士』は、全てのこれまでの取り決めを破棄して、戦争状態へと入らせて頂くことになる」
ゲンロクの背中を押す形として、シゲンは明確な言葉を口にした。
――退がるというのであれば、戦争。
――拒否を行うならば、殲滅。
それを避ける選択肢は、妖魔山の管理権をこの場で渡すと口にする事。
唖然としながら『妖魔召士』の面々は、総長シゲンの顔を見るのであった。
そしてシゲンに付き従う副総長ミスズに最高幹部のヒノエ組長を含めたこの場に居る『妖魔退魔師』全員が、覚悟を決めた表情を浮かべてこの時を以て『妖魔』と同じ『敵対する存在』になる者達を睨みつけるのであった。
ゲンロクという男は組織の運営をする上では確かに他の者よりも優秀で、組織の更なる発展を目指して前時代までの流れを切ってでも『退魔組』なる組織も作ってみせた行動力もある。
前時代の『妖魔召士』という組織を知らない今の世代の者達であれば、このゲンロクという男は皆を引っ張っていける頼もしき男に見える事だろう。
しかし今この時のように一番大事な決断を迫られた時に、今ひとつ決断力が一歩届いていないとシゲンは確信を持った。
前時代から当代に変わった後、相当の月日が流れた事で、この平和な期間の所為でその重要なファクターを鈍らせてしまったのだろう。平和という事は素晴らしい事であり、世界に於いてはそれが望まれている。確かに全く火種の無い世界であれば、その平和は絶対的なものである。
しかし一定の期間だけの平和であり、今後を見据えた先にその平和が失われる可能性がある状態であるのならば、備えを怠って仮初の平和に現を抜かしていてはいけないのである。
ただ平和を享受するだけの一般人であれば、そういった平和を守る者達の声や行動に従っていればいいが、自分や目の前のゲンロクという男はその平和を守る為に、尽くさなければならない組織の代表という存在なのである。
暫定の長とはいえ、いや暫定の長だからこそ、本当の組織の頂点に立つ者よりも、より一層精進する覚悟を持っていなければ、いつまでたってもNo.2のような立ち位置を払拭させられないであろう。
彼はよく出来た『妖魔召士』だが、今のままでは所詮は次席の器なのだとシゲンは決断を下した。
決断力という一点に絞って考えるならば『妖魔退魔師』側の自分や、副総長のミスズを除外したとして、組を預かる最高幹部のヒノエ達にもゲンロクは劣る事だろう。
自分の考えをしっかりと持ち間違っていると判断したならば、即座に追求して間違いを正す。もしその結果、組織の者達を危険な目に遭わせる事になったとしても組織の長である以上は、それら全てを背負い込んで行くという気概を見せるべきである。
今シゲンの前で狼狽えている男のように、組織を危険な目に遭わせる事自体を避ける事が組織の長であるべきだと考える者達も居るだろう。もちろんそれが出来るのならば大層立派な事ではあるが、口で言うだけで行動が伴っていなければ、ただ逃げているだけにしかならない。
戦う前から負ける事を考える事は決して褒められた事では無いが、確かに重要な事であり、組織を想うのならば考えるに値するだろう。しかしこのゲンロクという男にしても、ヒュウガと言う男にしても今の『妖魔召士』のトップ連中はその不安から保険を重視しすぎている。
だからこそ現状のように、もう退けばつけこまれるような状況下で、目の前の男はどうしようかと悩み抜いてしまい決断を下せない。ここまで来た以上、組織の人間を大事だと思うのならば『妖魔山』の管理を移すしかないだろうし、それを頑なに拒むというのであれば、この場で私たちに嫌だと拒否する言葉を吐けばいい。それがあくまで武力で平和の安寧を保つ『妖魔召士』や『妖魔退魔師』だろう。
そこに『妖魔退魔師』や『妖魔召士』の組織の違いなどは関係が無い。私たちは武力を持って平和を作り出す組織の存在の筈である。前時代の『妖魔召士』達は、シゲンやサイヨウその他にも気骨のある者達が多く居た。戦力値や魔力値がどうとか、そんな事はどうでもいい。
相手が自分より遥か格上の存在であっても死ぬ覚悟を以て『嫌な事は嫌だ』と、『こうあるべきだ』と主張出来る者達が組織を更なる強固な物へと作り上げるのだ。
シゲンはこれ以上ゲンロクの言葉を待っているのは時間の無駄だと判断して、強引にゲンロクに決断させる為の言葉を吐き出すのであった。
「『妖魔山』の管理をこの場で渡さないというのであれば、前回の件の責任として『妖魔召士』のサテツの首。そして今回の『予備群』に手を出した件の責任として、直接手を出した者達。及び指示を出した者達の首を数日中に、私達『妖魔退魔師』の本部に届けてもらいたい。更にはゲンロク殿、ヒュウガ達を今の役職に就けた責任で今日を境に組織の長の座を自ら降りて頂きたい。それが出来ないのであれば、今日をもって『妖魔退魔師』と『妖魔召士』は、全てのこれまでの取り決めを破棄して、戦争状態へと入らせて頂くことになる」
ゲンロクの背中を押す形として、シゲンは明確な言葉を口にした。
――退がるというのであれば、戦争。
――拒否を行うならば、殲滅。
それを避ける選択肢は、妖魔山の管理権をこの場で渡すと口にする事。
唖然としながら『妖魔召士』の面々は、総長シゲンの顔を見るのであった。
そしてシゲンに付き従う副総長ミスズに最高幹部のヒノエ組長を含めたこの場に居る『妖魔退魔師』全員が、覚悟を決めた表情を浮かべてこの時を以て『妖魔』と同じ『敵対する存在』になる者達を睨みつけるのであった。
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