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サカダイ編

1077.妖魔山の禁止区域

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「そ、それは……」

 ゲンロクはシゲンの顔を見ながら口ごもる。

(※『妖魔山』の『禁止区域』とは、前時代までの『妖魔召士ようましょうし』や『妖魔退魔師ようまたいまし』が討伐をする事を諦めた高ランクの妖魔が居る区域。ランク『9』の妖狐や、見た目が鬼人の妖魔が居る場所である)。

 妖魔山の『禁止区域』の指定が行われたのは数百年も前の話の事であり、今更禁止区域を調べるなどと『妖魔退魔師ようまたいまし』側も誰一人として口にする事はなく、当代の『妖魔退魔師』の総長『シゲン』が言わなければ、今後も表立って告げる者は居なかっただろう。

 現在の妖魔山の管理を行っている『妖魔召士ようましょうし』組織の者達でさえ『妖魔山』の『禁止区域』には誰一人として近づくような事はせず、そして『禁止区域』の事などは既に常識の外側の事となっており、誰も見向きもしていない区域なのである。

 当然、その禁止区域内から外にランク『9』の『妖狐』や『鬼人』が出て来る事があれば、それは勿論対処せざるを得なくなるだろうが、これまで『禁止区域』の指定が行われてからただの一度も』は、縄張りから出てくることはなかった為、こちらから再び討伐に向かったり、危害を加えるような真似をしなければ、妖魔達は出て来る事はないと『妖魔退魔師ようまたいまし』と『妖魔召士ようましょうし』の両組織の間で常識となっていた。

 だからこそ前回ヒノエ組長に『妖魔山』の管理権を移せと言われた時も驚きを見せて渋ったものの、前回の不法侵入を行った事に対して、『妖魔山』の管理を移す事は仕方がないと考えていたゲンロクではあった。だが、まさかこの場で明確に『妖魔退魔師ようまたいまし』の組織のトップが『禁止区域』内を調べると言われては『ゲンロク』もおいそれと認めるわけにはいかなくなった。

 しかしだからと言って代替案があるわけでも無い。前回ヒノエ組長から『サカダイ』の土地に入り込んだ退魔組の者達や、その退魔組を取りまとめている現場の頭領である『サテツ』の首を差し出せと言われたが、そんな条件を呑むわけにもいかない。

 一応の代替案としてあの時にゲンロクが提示した内容は、コウヒョウの利益と毎月支払っている『予備群』達への町の護衛料の30%の上乗せだったが、それすらも今回は納得してもらう条件にはなり得ないだろう。

 妖魔山の管理を移すしかなかったわけだが、それすらも今はもう認めるわけにも行かなくなってしまった。

 ――『妖魔退魔師ようまたいまし』の総長『シゲン』は『

 当然に山の管理を行ってきたのは『妖魔召士ようましょうし』側なのだから知らなくて当然と言えば当然なのだが、それでもランク『9』以上の妖魔は、同じ高ランクではあっても、

 総長シゲンはであれば、あっさりと倒せる程の力量は持っているだろう。

 それはゲンロクも勿論理解をしてはいる。もしかすると本当にランク『9』にも匹敵するかもしれない。妖魔山の禁止区域に入ったことがない以上、ランク『9』以上の妖魔と対峙したことがないのだから、ゲンロクも当人であるシゲンもそれは分からないだろう。

 だが、だからといって『妖魔山』の『禁止区域』に実力試しのような軽い気持ちで彼らの縄張りに入り込んで討伐を行おうとすることで、禁止区域内の妖魔達を怒らせる事にでもなり、まだ見ぬランク『9』以上の妖魔が一斉に山を下ってきて、各町に攻め込んででも来ればそれこそ取り返しがつかないのである。

 ランク『9』の妖魔が一体どれだけの規模で存在しているのか? 妖狐や鬼人以外の種類は? そんな事も分からない状態で博打に近いような討伐を認めるわけにはいかないのであった。

 ――ゲンロクがここまで頑なに反対をする理由。

 それは表立って口にする事はこれまでなかった事だが、彼が若かりし頃に前時代の『妖魔召士ようましょうし』の長『シギン』と、そのシギンの右腕であった『サイヨウ』。この両名に連れられてゲンロクは一度だけ、禁止区域内に入り込んだことがあったのである。

 当時のゲンロクはすでに『妖魔召士ようましょうし』として活躍しており、現役で活動を行っていたという自負があったし、それに魔力でも相当の自信があった。だからこそ『妖魔山』に強引に連れられた時も反対をせずに『禁止区域』内まで足を運んだのである。

 これまで入る事を禁じられていた『妖魔山』であっても、それは過去の『妖魔召士ようましょうし』達が自分より弱いからこそ『禁止区域』を定めたのだとゲンロクは当時本気で信じて疑わなかった。禁止区域内の妖魔が相手になったとしてもそれなりに対抗出来る自信があり、シギンやサイヨウと共にであれば、ランク『9』の妖魔も倒して見せると意気込んでいた。

 ――

 当時のゲンロクは、を一目見た時に戦う戦わないの問題ではなく、同じ場所に居る事すら不可能だと、そして『これは無理だ』と、瞬時に理解をさせられてしまい、あっさりと格付けが行われてしまったのであった。
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