最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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サカダイ編

1076.総長シゲンが放つ、恐ろしい重圧

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 妖魔山の管理をまだ『妖魔退魔師ようまたいまし』に移すと言う前に、シゲンがこの事を口にしたのには明確な理由があった。

 それは前時代の『妖魔召士ようましょうし』であるゲンロクであれば、妖魔山の禁止区域の情報を少なからず持っているのではないかとシゲンは考えていたからであった。

 数年前から数十年前の『妖魔召士ようましょうし』達、つまり今のゲンロクが若かりし頃に『妖魔召士ようましょうし』達が『妖魔山』の『禁止区域』に入ったという話を前時代の『妖魔退魔師ようまたいまし』の者達に聞いている。

 結果がどうなったかまでは知らされていないシゲンだが、どうやらその先輩の『妖魔退魔師ようまたいまし』たちも内容までは得てはいなかった事だろう。

 前時代の『妖魔退魔師ようまたいまし』と『妖魔召士ようましょうし』が同盟に近い間柄だったとはいえ『禁止区域』の情報の内容までは共有をしていない様子だった。

 そこら辺があくまで『妖魔山』の管理を得ている『妖魔召士ようましょうし』と管理権を持たざる『妖魔退魔師ようまたいまし』組織との差であった。

 こうして組織のトップとなったシゲンではあるが『妖魔召士ようましょうし』のトップであるゲンロクよりも『妖魔山』に関する知識は遥かに劣っている。

 しかしこれ程の機会であれば何らかの情報を聞き出せる筈だと、シゲンはゲンロクに対して考えた様子であった。そんなシゲンの考えている事を知らないゲンロクや、同じ組織のミスズは互いに焦りを感じているのであった。

 ――しかし同じ焦り方でも両者の内容は全く違う。

 ゲンロクはシゲンが『妖魔山』の『禁止区域』を調べようとしている事に焦りを生じさせている様子であったが、同じ組織に属するミスズは、全くゲンロクの抱く焦りとは異なっており、あくまでこのタイミングで総長シゲンが、少し前にミスズに話をしてくれた『妖魔山』を得る好機だと思う内容。その全貌を包み隠さずにこの場で発言した事によって、ゲンロクが手放そうとしていた様子の山の管理権を手放さない選択肢に手を掛けかねないと考えたからである。

 しかしそこで更にミスズは、頭の機転を利かし始める。

(い、いや、確かに総長が仰っていた『禁止区域』の話も魅力的ではあるが、やはりここは『コウヒョウ』の話を取った方が得策かもしれない……!)

 退魔組の連中や『妖魔召士ようましょうし』のサテツの首などいくら貰ったところで嬉しくもなんともないが『コウヒョウ』の権益の話は大きい。

 それにまだ今回のコウゾウを襲った件に関してもまるまる残っている。ここでコウヒョウの話を足がかりに、更に利益を引き出させられるかもしれないと、ミスズはこの大きくなった『妖魔退魔師ようまたいまし』組織全体の運営を秤にかけながら、一瞬の間にあらゆる計算を行い始めるのであった。

 一人の戦闘員としてのミスズは総長と共に高ランクが蔓延る妖魔山。その『禁止区域』内を見てみたい更にはどんな妖魔が居るのか確認したい。そんな気持ちを当然に持ってはいるのだが『妖魔退魔師ようまたいまし』組織の『』という立場のミスズでは、組織全体のこれからを考えてここでどう動く事が組織全体の利や益に、繋がるのかを天秤にかけ始めたのであった。

 リアルタイムでミスズは総長やゲンロク達の言動や、態度を確認しながらも、頭の中ではこの場で誰よりも考えを張り巡らせているのであった。

「では、ゲンロク殿達はどうなさるつもりなのだ? サカダイの森への不法侵入に加えて、今回はこちらの隊士に怪我を負わせた。更にはその怪我を負わせた連中は、文句があるならゲンロク殿に言えとまで話していたようではないか。一体どういうつもりでそんな事を言わせたのか、そしてこちらに対してどういうケジメを取るつもりなのか。しっかりと聞かせてもらおうかゲンロク殿」

 シゲンの言葉は先程までとは違い、聞く者に恐ろしい程の圧力を感じさせていた。それは前回のイダラマやエヴィ達に対して放っていた圧力と同様もしくはそれ以上であった。

 さらに今回は一つ言葉を間違えれば、武力を伴った戦争もありえる。むしろ『妖魔退魔師ようまたいまし』側の『副総長』や格『組長格』に『副組長』達もそのつもりで来ている。

 脅しやハッタリでは無く、本当にやりかねない対立する者達を前に、これ程までの圧力を掛けられながら間違える事を許されない状況下でゲンロクや、その仲間の『妖魔召士ようましょうし』達は、難しい決断に迫られるのであった。
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