上 下
1,087 / 1,906
サカダイ編

1070.到着、サカダイの町

しおりを挟む
 サカダイの町の門前でサシャという女性に呼び止められたソフィ達だったが、そこにスオウが姿を見せる。

「組長、お帰りなさい」

 ソフィ達もその声に背後を振り返る。そこには長い太刀を帯刀する小柄な少年が、石段をのぼってきていた。

「ああ、ただいまサシャ。どうやら俺の勘違いだったみたい、残念ながら何も収穫は無かったよ」

 何やらがっかりした表情を浮かべながら大きく溜息を吐く少年だったが、やがてそこに居るソフィ達に視線を向け始める。

「そうでしたか……。このタイミングで『妖魔召士ようましょうし』の方が居るというのは、何か関係がありそうではありますが。ところで組長、彼らは例の旅籠町の護衛の『予備群よびぐん』と共に行動を行っていた者達のようで、何やら副総長に渡す為の書簡を『予備群よびぐん』の者から預かって来ているそうですが、どうなされますか?」

「君たちがエイジ殿に、道案内をさせていたっていう連中か。やれやれ君たちが何者かは知らないけどさ、天才『妖魔召士ようましょうし』に道案内をさせるなんてホント大した連中だよね。とりあえず中で詳しい話を聞かせてもらうよ」

 ソフィが頷いたのを確認したスオウという少年は、そのままサシャを伴って門の前まで歩いて行った。
 ソフィ達がそのままその場に立っているとスオウと言う少年は、中に居る者に門を開けるように指示を出し始める。

 するとゆっくりと門が開き中に居た数人の男が、少年に頭を下げているところが見えた。スオウと呼ばれていた少年は、男たちに頭を上げるように言った後、そのまま門の中へと入っていくのであった。

「ソフィよ。あいつどことなく『天衣無縫エヴィ』の野郎に雰囲気が似てやがるヤツだと思わねぇか?」

 隣に居たヌーはこっそりとソフィにそう告げて来るのだった。

「クックック、お主もそう感じたか?」

「何をしているの? 君たちも一緒に入りなよ」

 門の中に入っていったスオウ達だが、一向にソフィ達が入ってこないのを見て、ひょいっと門の中から顔を出しながらスオウはそう告げるのだった。

 ソフィとヌーは互いに苦笑いを浮かべながら彼の後について行き、サカダイの門の内側へと足を踏み入れるのであった。

 サシャに組長といわれていたスオウという少年についていき、町の内側に入ったソフィ達だったが、その城郭都市のような造りに驚かされる事となった。

 ソフィ達が入って来た門は一の門と言われており、町の一部ではあるのだが、その周囲は高い壁がそびえ立ち、中は『妖魔退魔師ようまたいまし』の屯所があるだけで、他には何もない事から町と言うより、まるで軍事用の施設のような印象であった。

 そしてスオウ達の歩く前方を見てみると再び大きな門が見える。下の門の上部に櫓が立てられており、五メートル程の高さの所に一の門側を見ている者や、高さを活かして外を見張る者。二の門の内側の町を見張る者といった見張りが数人いるのが分かる。

 そしてそのどの者達も単なる見張りとは思えない程の実力者なのだろう。ソフィが『旅籠町』の『予備群よびぐん』の屯所の中に入った時に感じたような、強い力を持つ者達の気配を感じ取るのだった。

 横に居るヌーもまたソフィが感じていたものを同じようにひしひしと感じていた様子で、眉を寄せながら門の上の人間数人を睨みつけている。

 流石に『代替身体だいたいしんたい』の身ではあっても中身は生粋の大魔王のようで、セルバスもまた、この町の人間はと感じているようだ。

 スオウ達が二の門の前に居る人間に門を開けるように命令すると、直ぐに門番たちは頭を下げて、言う通りに門を開き始めた。振動が地面を伝わり、厳かなサカダイの二の門が開いて行くと、ようやくその内側は町らしい町並みが広がっているのが見えた。

「町の中まで物々しい造りなのかと思ったが、どうやらそういうわけでもなかったようだな」

 ソフィが二の門の内側にある『サカダイ』の町並みにそう感想を漏らしていると、スオウ達が早くおいでとばかりに、こちらを見て手招きをしているのが見えた。

 ソフィはスオウに頷きを見せて、二の門の内側へと一歩足を踏み入れた。

 ――そして次の瞬間。
 至る所からソフィ達に向けて突き刺さるような視線を感じるのであった。

「は……、ははっ……! な、何なんだよここは!?」

 セルバスは背中に冷たい物が流れたのを感じた。それは決して池に落ちた時の水の所為ではなく、視線を受けたセルバスがこの町の脅威を感じ取った所為なのだろう。

 一の門の見張り達も実力者の気配を放っていたが、そんな見張り達とは比べ物にならない『』に近い視線が向けられたのであった。

「おいセルバス。てめぇ今回は大人しくしておけよ? 『旅籠町』でのような騒ぎを起こすと、面倒な事になりそうだ」」

 突然声を掛けられたセルバスは『サカダイ』の人間達を見て、どうやら『煌鴟梟こうしきょう』のアジト内で紫色の虎を見ていた時のように、真剣な表情を浮かべながらヌーに無言で頷いて見せるのであった。

(多くの視線が我らに向いているが、右奥の方から感じる者の視線は、どうやら徒者ではないな。魔力はそこまで大きくはないが、自分の力に対して相当の自信に満ちている者達が居るのが分かる)

 そこまで読み取ったソフィは肩を震わせて笑い始めるのだった。

(クックック! 何と心地良い視線なのだろうか!! どれどれ少し試してみるか?)

 ソフィの目が鋭く細められたかと思うと、右奥の方の視線に対して合わせるようにソフィは視線をそちらに向けて、少しだけソフィは自身に『魔力』を宿して見せるのだった。

「「!!」」

 ――次の瞬間、刀を差した大勢の者達が一斉にソフィ達を取り囲み始めるのであった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...