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サカダイ編
1053.乱暴な譲歩的要請法
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「ふっ、ふざけるなよ!」
その場に居た『妖魔召士』達は、一斉に立ち上がって激昂した。
ヒュウガは座ったままではあったが、彼の目は立ち上がった者達と同じく怒りに火を灯していた。
「ヒノエ殿。貴方は『妖魔退魔師』の『シゲン』殿の名代で、この場に来ていると言っていたが、つまりそれは貴方だけの言葉ではなく『シゲン』殿の言葉と受け取っていいのか?」
――ゲンロクの目がヒノエを射貫く。
その目は冗談でしたでは済まさないとゲンロクの目が告げていた。戦ってもいないというのに、これ程までの威圧を発する事が出来るのであれば、確かに『妖魔召士』を束ねる長として認めても差し支えない領域だろう。
ヒノエの隣に居るヒノエ組の副組長である『ヒナギク』はそう考えて薄く笑うのだった。
「勿論だ。この場は私に一任されている。条件が呑めないというのであれば仕方がないな……」
そう言ってヒノエが話し合いは終わりだとばかりに立ち上がると『妖魔召士』達の周囲に『魔力』が灯り始めたのをヒノエは感じた。
この場に居る『妖魔召士』全員の目が青く輝き、場に魔力が立ちこめると同時『妖魔召士』達が『結界』に身を包み始める。
どうやらこのまま『ヒノエ』達を無事に帰させるつもりがないかのような態度であった。
「もう一度言っておくが私は『総長』の『名代』でここに来ているんだ。その私に手を出す事の意味が分かるな?」
――次の瞬間『ヒノエ』組長は殺気を放った。
『妖魔召士組織』がその気なのであれば『妖魔退魔師組織』も殺し合いは辞さないと、そう謂わんばかりの『妖魔退魔師』最高幹部の『ヒノエ』組長の明確な殺気であった。
「お前ら止めるんだ」
「げ、ゲンロク様……!」
ゲンロクは座ったままで『妖魔召士』達を諫める声をあげると、他の『妖魔召士』達は『魔力』をこの場に残したまま、自分達の長を名前を呼ぶのであった。
「ヒノエ殿、そろそろ本音を聞かせてもらおうか。アンタも『シゲン』殿の『名代』だと明確に言葉に出しているんだ。実際のところはこのまま帰るつもりはないんだろう?」
ヒノエは数秒程に渡って座っているゲンロクを見下ろしていたが、やがて出している殺気を止めると、笑みを浮かべてその場に座り直した。
「ふふ、バレていたか。ゲンロク殿、アンタやっぱやるねぇ?」
「さっきの言葉をそっくりそのまま返すが、うちとアンタの組織の関係性は分かってんだろ。最初からそんなつもりだったならば、とっくの昔に戦争は起きてるだろうよ」
ヒノエの言葉に即座にそう返すゲンロクであった。
「……ふっ。気に入ったぜ。ゲンロク殿」
にやりと笑ったヒノエを見てヒナギクは小さく溜息を吐いた。立っていた『妖魔召士』達も互いに首を傾げながら座り直していく。
「まぁ『コウヒョウ』の上乗せの件の話も悪くはねぇんだがな? ちょっとあんた達全員にじっくりと考えて欲しい事があるんだ」
そうしてヒノエは『妖魔山』の管理の内容を口に出し始めるのであった。
……
……
……
「「ご苦労様です!!」」
ゲンロク達との話を終えた『ヒノエ』と『ヒナギク』が屋敷を出ると、外で待機していたヒノエ組の組員達が一斉に挨拶をして彼女たちを迎えるのだった。
「おう。お前ら待たせて悪かったな『サカダイ』に帰るぞ!」
「「はい! 組長!!」」
怒鳴るような大声でヒノエに挨拶をする組員達。
そして来た時と同じように、堂々とした態度で里を出ていくヒノエ達であった。
――こうして『妖魔退魔師』側と『妖魔召士』側との一度目の話し合いは終わった。
ヒノエが最後に口にした『妖魔山』の管理権の移転問題は、直ぐには可決されずにひとまずは保留という形にはなったが、当然の如く最初に提示した条件を呑むわけにはいかない『妖魔召士』側は、最終的にはこの条件を呑む事になるだろう。
…………
そして里を出た後に『ヒナギク』副組長は、静かにヒノエ組長に声を掛けた。
「組長、あまり心配させないで下さいよ」
「何がだ? ちゃんと総長達に言われた通りに伝えたじゃねぇか」
そう言ってヒノエは苦言をぶつけてくるヒナギクに笑みで返した。
「まぁいきなり『妖魔山』の管理を移せと私達が口にしたところで『妖魔召士』達も素直に首を縦に振る筈がねぇだろうからよ。あれくらいの事を言って引き合いに出さねぇと、話が進まなかっただろう」
「まぁ、組長らしいと言えばらしいですが、あの時にゲンロク殿が止めなければ、本当に奴ら手を出してきそうでしたよ?」
ヒナギク副組長は会合の時に激昂して立ち上がった『妖魔召士』の何人かが、攻撃をするつもりで『魔力』を纏わせていたのを見ていたのであった。
「馬鹿言うなよ、ヒナギク。これまでうちとあっちが本気でやり合った事なんざ、歴史上で一度もねぇのは、お前も知ってんだろ? それにあんな挑発で本当に奴らが私達に手を出してきたらそれこそ困る事になるのは手を出した側の方さ」
そう言ってヒノエはヒナギクの肩を軽く叩き、再び歩を進め始めるのだった。
確かにこれまで『妖魔退魔師』の組織と『妖魔召士』の組織が、本気の武力で対立した歴史は存在していない。
しかしこの時ヒナギクはヒノエの背中を見ながら、何やら予感めいた物が心の中で疼き始めるのを感じ取るのであった。
――そしてこの時にヒナギクが感じた予感は、この後ソフィ達が『煌鴟梟』を捕らえた日に現実の物となるのであった。
その場に居た『妖魔召士』達は、一斉に立ち上がって激昂した。
ヒュウガは座ったままではあったが、彼の目は立ち上がった者達と同じく怒りに火を灯していた。
「ヒノエ殿。貴方は『妖魔退魔師』の『シゲン』殿の名代で、この場に来ていると言っていたが、つまりそれは貴方だけの言葉ではなく『シゲン』殿の言葉と受け取っていいのか?」
――ゲンロクの目がヒノエを射貫く。
その目は冗談でしたでは済まさないとゲンロクの目が告げていた。戦ってもいないというのに、これ程までの威圧を発する事が出来るのであれば、確かに『妖魔召士』を束ねる長として認めても差し支えない領域だろう。
ヒノエの隣に居るヒノエ組の副組長である『ヒナギク』はそう考えて薄く笑うのだった。
「勿論だ。この場は私に一任されている。条件が呑めないというのであれば仕方がないな……」
そう言ってヒノエが話し合いは終わりだとばかりに立ち上がると『妖魔召士』達の周囲に『魔力』が灯り始めたのをヒノエは感じた。
この場に居る『妖魔召士』全員の目が青く輝き、場に魔力が立ちこめると同時『妖魔召士』達が『結界』に身を包み始める。
どうやらこのまま『ヒノエ』達を無事に帰させるつもりがないかのような態度であった。
「もう一度言っておくが私は『総長』の『名代』でここに来ているんだ。その私に手を出す事の意味が分かるな?」
――次の瞬間『ヒノエ』組長は殺気を放った。
『妖魔召士組織』がその気なのであれば『妖魔退魔師組織』も殺し合いは辞さないと、そう謂わんばかりの『妖魔退魔師』最高幹部の『ヒノエ』組長の明確な殺気であった。
「お前ら止めるんだ」
「げ、ゲンロク様……!」
ゲンロクは座ったままで『妖魔召士』達を諫める声をあげると、他の『妖魔召士』達は『魔力』をこの場に残したまま、自分達の長を名前を呼ぶのであった。
「ヒノエ殿、そろそろ本音を聞かせてもらおうか。アンタも『シゲン』殿の『名代』だと明確に言葉に出しているんだ。実際のところはこのまま帰るつもりはないんだろう?」
ヒノエは数秒程に渡って座っているゲンロクを見下ろしていたが、やがて出している殺気を止めると、笑みを浮かべてその場に座り直した。
「ふふ、バレていたか。ゲンロク殿、アンタやっぱやるねぇ?」
「さっきの言葉をそっくりそのまま返すが、うちとアンタの組織の関係性は分かってんだろ。最初からそんなつもりだったならば、とっくの昔に戦争は起きてるだろうよ」
ヒノエの言葉に即座にそう返すゲンロクであった。
「……ふっ。気に入ったぜ。ゲンロク殿」
にやりと笑ったヒノエを見てヒナギクは小さく溜息を吐いた。立っていた『妖魔召士』達も互いに首を傾げながら座り直していく。
「まぁ『コウヒョウ』の上乗せの件の話も悪くはねぇんだがな? ちょっとあんた達全員にじっくりと考えて欲しい事があるんだ」
そうしてヒノエは『妖魔山』の管理の内容を口に出し始めるのであった。
……
……
……
「「ご苦労様です!!」」
ゲンロク達との話を終えた『ヒノエ』と『ヒナギク』が屋敷を出ると、外で待機していたヒノエ組の組員達が一斉に挨拶をして彼女たちを迎えるのだった。
「おう。お前ら待たせて悪かったな『サカダイ』に帰るぞ!」
「「はい! 組長!!」」
怒鳴るような大声でヒノエに挨拶をする組員達。
そして来た時と同じように、堂々とした態度で里を出ていくヒノエ達であった。
――こうして『妖魔退魔師』側と『妖魔召士』側との一度目の話し合いは終わった。
ヒノエが最後に口にした『妖魔山』の管理権の移転問題は、直ぐには可決されずにひとまずは保留という形にはなったが、当然の如く最初に提示した条件を呑むわけにはいかない『妖魔召士』側は、最終的にはこの条件を呑む事になるだろう。
…………
そして里を出た後に『ヒナギク』副組長は、静かにヒノエ組長に声を掛けた。
「組長、あまり心配させないで下さいよ」
「何がだ? ちゃんと総長達に言われた通りに伝えたじゃねぇか」
そう言ってヒノエは苦言をぶつけてくるヒナギクに笑みで返した。
「まぁいきなり『妖魔山』の管理を移せと私達が口にしたところで『妖魔召士』達も素直に首を縦に振る筈がねぇだろうからよ。あれくらいの事を言って引き合いに出さねぇと、話が進まなかっただろう」
「まぁ、組長らしいと言えばらしいですが、あの時にゲンロク殿が止めなければ、本当に奴ら手を出してきそうでしたよ?」
ヒナギク副組長は会合の時に激昂して立ち上がった『妖魔召士』の何人かが、攻撃をするつもりで『魔力』を纏わせていたのを見ていたのであった。
「馬鹿言うなよ、ヒナギク。これまでうちとあっちが本気でやり合った事なんざ、歴史上で一度もねぇのは、お前も知ってんだろ? それにあんな挑発で本当に奴らが私達に手を出してきたらそれこそ困る事になるのは手を出した側の方さ」
そう言ってヒノエはヒナギクの肩を軽く叩き、再び歩を進め始めるのだった。
確かにこれまで『妖魔退魔師』の組織と『妖魔召士』の組織が、本気の武力で対立した歴史は存在していない。
しかしこの時ヒナギクはヒノエの背中を見ながら、何やら予感めいた物が心の中で疼き始めるのを感じ取るのであった。
――そしてこの時にヒナギクが感じた予感は、この後ソフィ達が『煌鴟梟』を捕らえた日に現実の物となるのであった。
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