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旅籠編
1005.解決に向けて
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その頃『煌鴟梟』の中庭に居た大勢の組員達が、旅籠町の護衛隊としてこの場に居た『コウゾウ』と『シグレ』の両名によって、あっさりと捕縛されてしまうのだった。
この場に居た者達はこれまで『煌鴟梟』に多大な功績を残してきた優秀な者達ではあったのだが、相手が旅籠に派遣されてきた『予備群』である事に加えてコウゾウは、その『予備群』でも目立つ上位側の人間である為、抵抗虚しく捕縛されてしまうのも無理はなかったようである。
「お前達を人攫い集団とみなし、旅籠町の屯所まで連行する。逆らって逃げるような真似をすれば、即座に足を切り落とす。無駄な抵抗は自分達を苦しめる物と知れ!」
方方から舌打ちや不満そうな声が聞こえてくるが、どうやら彼らは観念したらしく、誰一人として逆らうような声はあがらなかった。
『煌鴟梟』の組員達の手を後ろ手に縛った状態で、自分達で歩かせて帰らせるようだ。
どうやら捕縛する時のコウゾウの言った言葉が効いているようで、自由に歩ける様子であっても誰一人として逃げようとする素振りは見られなかった。
「よし、ひとまず外はこれでいい。シグレ! こいつらを連れて先に屯所まで戻れ。そしてアジトを発見した事を皆に伝えて応援を要請してこい」
「わっかりましたぁ! 今回で旅籠の護衛のお仕事は終了ですねぇ」
「そうだといいがな……」
どうにもコウゾウはシグレ程には楽観的にはなれず、溜息交じりにそう答えるのだった。
「よし、では早速中へ入るか。分かっているとは思うが、道中逃げられるなよ?」
「はい! 隊長も気を付けて下さいねぇ」
そう言い残した後にシグレは外に出て行こうとするが、そこで入り口に突っ立っていたセルバスに視線を向ける。
「うふふ」
目を細めながら自分に笑いかけてきたシグレに『セルバス』は、嫌そうに顔を歪めながらその場から一歩退いて舌打ちをする。
捕縛した者達が次々敷地の外へと出ていき、最後にシグレが門扉の引き戸のあった場所に立つと、セルバスに向けて声を掛ける。
「逃げたら承知しませんよ?」
「……」
嫌そうな表情をこれでもかと見せるセルバスを見て、シグレはご満悦と言った笑顔を見せながら、ゆっくりとアジトから出て行こうとするのであった。
しかしそこで『シグレ』は、セルバスから視線を外した後、突然、西の方角の空を見上げたまま、立ち止まるのであった。
……
……
……
ほとんどの組員はソフィ達の侵入者騒ぎで外に出てきているとは思うが、まだ肝心なこの組織のボスや、まだ残っているであろう幹部達の姿は見ていない。これからが本番だと、コウゾウは気を引き締め直して、まだ何やら会話を続けているソフィや、ヌー達の元へ向かう。
「ここまでの協力に感謝する。どうやらこのアジト内に居る連中が、人攫い集団の『巣窟』で間違いがない様だ」
「うむ、それはいいのだがコウゾウ殿。ヌーの件なんだが……」
「ああ。彼の地下での一件の事だろう? そうだな……。そもそもここの連中が、そこの彼女を攫おうとした事で彼の怒りを買った事が原因ではあるし、ここまで捜査に協力してもらえた事を考慮して彼の地下の一件は約束通りに不問にしようと思っている」
ソフィはまたやりすぎてしまったヌーの事を切り出そうとしたのだが、その事に関してではなく、旅籠町での交換条件の話を持ち出される。どうやらこの場での一件の事は、何とも思っていない様子であった。
不問にするという言葉を出した以上、彼もそのつもりなのだろう。そうであるならば、無理に蒸し返すような事は止めた方が賢明だとソフィは考えるのであった。
「うむっ! そうか、それならばありがたい」
「ふん」
ヌーもそっぽを向きながら鼻を鳴らすが、どうやらこれは彼なりの悪い気はしないといった、そういう態度の時に見せる仕草だった。
そんな事は当然『コウゾウ』や『ソフィ』には伝わらないが、横に居たテアは理解しているようで、ヌーの様子に笑っていた。
「しかしすまないが、この場に姿を見せていないボス達や、残党達を捕らえるまでは、もう少しだけ協力をしてもらえないか? 当然ここからはその分の対価を支払う」
どうやら本気でそう思っている様子だったのでソフィは、ヌーと一度だけ視線を交差させたが、コウゾウに協力する事に異論はなさそうだったので、協力する事に決めるのであった。
「エイジ殿もすまないが、もう少しだけよろしく頼む」
「ああ。小生は全く構わぬよ。旅籠屋は今ではこの世界に欠かせぬモノだ。その安全を取り戻す為ならば小生も協力は惜しまぬよ」
「かたじけない」
「膨大な魔力反応?」
話が綺麗に纏まり、これからいざアジトの施設内へというところでソフィが唐突にそう呟くと、空を見上げ始める。
「!!」
ヌーはソフィに遅れる事コンマ数秒。魔力感知を使って近づいてくる二つの反応を察知する。その直ぐ後、猛スピードで『旅籠町』のある方角の空から大きな鳥が近づいてくるのが見え始めるのだった。
……
……
……
この場に居た者達はこれまで『煌鴟梟』に多大な功績を残してきた優秀な者達ではあったのだが、相手が旅籠に派遣されてきた『予備群』である事に加えてコウゾウは、その『予備群』でも目立つ上位側の人間である為、抵抗虚しく捕縛されてしまうのも無理はなかったようである。
「お前達を人攫い集団とみなし、旅籠町の屯所まで連行する。逆らって逃げるような真似をすれば、即座に足を切り落とす。無駄な抵抗は自分達を苦しめる物と知れ!」
方方から舌打ちや不満そうな声が聞こえてくるが、どうやら彼らは観念したらしく、誰一人として逆らうような声はあがらなかった。
『煌鴟梟』の組員達の手を後ろ手に縛った状態で、自分達で歩かせて帰らせるようだ。
どうやら捕縛する時のコウゾウの言った言葉が効いているようで、自由に歩ける様子であっても誰一人として逃げようとする素振りは見られなかった。
「よし、ひとまず外はこれでいい。シグレ! こいつらを連れて先に屯所まで戻れ。そしてアジトを発見した事を皆に伝えて応援を要請してこい」
「わっかりましたぁ! 今回で旅籠の護衛のお仕事は終了ですねぇ」
「そうだといいがな……」
どうにもコウゾウはシグレ程には楽観的にはなれず、溜息交じりにそう答えるのだった。
「よし、では早速中へ入るか。分かっているとは思うが、道中逃げられるなよ?」
「はい! 隊長も気を付けて下さいねぇ」
そう言い残した後にシグレは外に出て行こうとするが、そこで入り口に突っ立っていたセルバスに視線を向ける。
「うふふ」
目を細めながら自分に笑いかけてきたシグレに『セルバス』は、嫌そうに顔を歪めながらその場から一歩退いて舌打ちをする。
捕縛した者達が次々敷地の外へと出ていき、最後にシグレが門扉の引き戸のあった場所に立つと、セルバスに向けて声を掛ける。
「逃げたら承知しませんよ?」
「……」
嫌そうな表情をこれでもかと見せるセルバスを見て、シグレはご満悦と言った笑顔を見せながら、ゆっくりとアジトから出て行こうとするのであった。
しかしそこで『シグレ』は、セルバスから視線を外した後、突然、西の方角の空を見上げたまま、立ち止まるのであった。
……
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ほとんどの組員はソフィ達の侵入者騒ぎで外に出てきているとは思うが、まだ肝心なこの組織のボスや、まだ残っているであろう幹部達の姿は見ていない。これからが本番だと、コウゾウは気を引き締め直して、まだ何やら会話を続けているソフィや、ヌー達の元へ向かう。
「ここまでの協力に感謝する。どうやらこのアジト内に居る連中が、人攫い集団の『巣窟』で間違いがない様だ」
「うむ、それはいいのだがコウゾウ殿。ヌーの件なんだが……」
「ああ。彼の地下での一件の事だろう? そうだな……。そもそもここの連中が、そこの彼女を攫おうとした事で彼の怒りを買った事が原因ではあるし、ここまで捜査に協力してもらえた事を考慮して彼の地下の一件は約束通りに不問にしようと思っている」
ソフィはまたやりすぎてしまったヌーの事を切り出そうとしたのだが、その事に関してではなく、旅籠町での交換条件の話を持ち出される。どうやらこの場での一件の事は、何とも思っていない様子であった。
不問にするという言葉を出した以上、彼もそのつもりなのだろう。そうであるならば、無理に蒸し返すような事は止めた方が賢明だとソフィは考えるのであった。
「うむっ! そうか、それならばありがたい」
「ふん」
ヌーもそっぽを向きながら鼻を鳴らすが、どうやらこれは彼なりの悪い気はしないといった、そういう態度の時に見せる仕草だった。
そんな事は当然『コウゾウ』や『ソフィ』には伝わらないが、横に居たテアは理解しているようで、ヌーの様子に笑っていた。
「しかしすまないが、この場に姿を見せていないボス達や、残党達を捕らえるまでは、もう少しだけ協力をしてもらえないか? 当然ここからはその分の対価を支払う」
どうやら本気でそう思っている様子だったのでソフィは、ヌーと一度だけ視線を交差させたが、コウゾウに協力する事に異論はなさそうだったので、協力する事に決めるのであった。
「エイジ殿もすまないが、もう少しだけよろしく頼む」
「ああ。小生は全く構わぬよ。旅籠屋は今ではこの世界に欠かせぬモノだ。その安全を取り戻す為ならば小生も協力は惜しまぬよ」
「かたじけない」
「膨大な魔力反応?」
話が綺麗に纏まり、これからいざアジトの施設内へというところでソフィが唐突にそう呟くと、空を見上げ始める。
「!!」
ヌーはソフィに遅れる事コンマ数秒。魔力感知を使って近づいてくる二つの反応を察知する。その直ぐ後、猛スピードで『旅籠町』のある方角の空から大きな鳥が近づいてくるのが見え始めるのだった。
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