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旅籠編
969.緊張感の中での潜伏
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そして遂にソフィ達はセルバスが『隠幕』を使って、隠れている場所の近くまで姿を見せ始める。
「ふむ、確かこの辺で大きな魔力を感知したのだがな……」
ソフィがきょろきょろと視線を這わせていると、前方をふらふらと捕らえられていた男が先を歩いて行くのが見えた。
「おかしいな、あやつだけか?」
旅籠町であの男を連れ去っていった魔族の姿が見えない。
先程、かなり離れた位置からではあったが、尾行している時には大きな魔力をこの辺で感知した筈だったのだが、現在はその姿どころか魔族の魔力すら探る事が出来なくなってしまっているのであった。
ソフィは訝しげに目を金色にさせながら、先程感知した魔族の魔力を頼りに、今度は『漏出』の魔法を試みる。
「これは……」
しかし『漏出』であっても、先程の魔族の感知が出来なくなっている。つまりここでようやく、ソフィはあの魔族の男が、ヌーの言っていた魔法『隠幕』という魔法を発動させたのだという確信が持てた。
「てめぇがのんびり尾行するとか抜かしやがるから、結局『隠幕』を使われたらしいな」
ソフィが魔族に対して魔力を探ろうと試みている様子を見ていたヌーは、その結末を見届けた後、言葉を投げかけてきたのであった。
「噂には聞いていたが、本当に『漏出』でも測れない事があるのだな」
「だから言っているだろう? 『隠幕』を一度使われてしまえば、見つけるのに難儀するって理解したか?」
「うむ、そのようだな」
彼の友人であるフルーフが編み出したとされる数々の魔法。
そのどれもがソフィを驚かせる魔法の数々ではあったが、ソフィは『魔瞳』を発動させながら、こうしてある程度本気で放った『漏出』で魔力の感知が出来なかった事に驚くと共に、その新魔法である『隠幕』という魔法を脅威と認めたのであった。
どうやらソフィが『隠幕』の効力を認めた事で、ヌーも満足そうに納得していた。
「しかし疑問が残ると思わぬか? 尾行に気づいた時点で『隠幕』とやらを使うのならば理解出来るが、わざわざ魔力を増幅させた狙いが分からぬ」
ソフィの顔に視線を向けて言葉を聞いていたヌーだったが、確かに逃げるつもりであるならば、わざわざ戦闘態勢に入るようにオーラを使ったり、魔力を増幅させる理由が無い。
考えられるとしたらこの場に自分達をおびき寄せて、仲間を待ち伏せさせておいて襲うつもりだったか、アジトから遠ざけるのが奴の狙いだったかである。
しかしそれが狙いの作戦だったとするならば、余りにもちぐはぐな印象を受けるヌーであった。
そして前方をふらふらと歩いて行く『煌鴟梟』の男の後ろ姿を見ながらヌーは、あの男を操ってそのままにしておく理由も理解出来ないでいた。
(元々こうしようと思っていたワケでは無く、何か予想だにしない出来事が起きて仕方無く姿を消したように感じられるな)
ヌーは口元に手をやりながら、徐々に推理を進めていくのであった。
……
……
……
(やはりヌーの野郎に大魔王ソフィで間違いなかったか。な、何故こいつらがこの世界に一緒に居やがるんだ!? そもそもこの化け物はミラ様の計画通りに別世界に追いやった筈ではなかったのか!)
近くの茂みに隠れながら『隠幕』で姿や気配を完全に隠している状態で、先程ソフィ達が行っていたように、魔力コントロールを使って更に間違いが起きないように、自身の魔力を探れないように消しながら疑問の言葉を胸中で浮かべるセルバスであった。
「しかしこれだけ探しても分からぬ以上、もう奴はこの辺には居ないのかもしれぬな。一先ずは、あの男は『魔瞳』で操られて何処かへ向かっているようだが、少し様子を見て背後をついて行ってみるか?」
ソフィがそう提案するが、ヌーはその言葉に全く反応を示さずに、何かを考える素振りをしたままその場から動こうとしなかった。
「――」(コイツがこういう仕草をとるときは、何か妙案を考えているときです)
「む……」
何やら返事が無いヌーの代わりに、隣に居たテアがソフィに対して必死に伝えようとしてくるのを見たソフィは、どうやら何かを考えている様子のヌーをもう少しだけ見守って欲しいと、テアがソフィに頑張って伝えようとしているのだろうなとソフィは判断するのであった。
(クックック、こやつらはまるでもう、家族のようではないか)
ソフィはかつてのヌーと、今のヌーを頭の中で比較するように思い描き、そして今のこうしてヌーの横で、フォローをしようとしているテアを見て、感慨深いものを感じたソフィは、言葉の意味は分からなくともそのテアに対して頷きを見せるのであった。
……
……
……
(よ、よし! どうやら俺の居る正確な位置まではバレてねぇようだな。このままこいつらから離れた後、バレても直ぐには手出し出来ない、大きな距離を稼いだ後に『概念跳躍』を使ってミラ様の元へ向かおう)
『隠幕』を用いていても、この場で膨大な魔力を費やすような大きな魔法を使えば、その魔力の奔流までは隠し切れない。この場で使うような馬鹿な真似は出来ない為、ソフィやヌー達にバレてしまう前にこの場から離れようとするセルバスであった。
……
……
……
「ふむ、確かこの辺で大きな魔力を感知したのだがな……」
ソフィがきょろきょろと視線を這わせていると、前方をふらふらと捕らえられていた男が先を歩いて行くのが見えた。
「おかしいな、あやつだけか?」
旅籠町であの男を連れ去っていった魔族の姿が見えない。
先程、かなり離れた位置からではあったが、尾行している時には大きな魔力をこの辺で感知した筈だったのだが、現在はその姿どころか魔族の魔力すら探る事が出来なくなってしまっているのであった。
ソフィは訝しげに目を金色にさせながら、先程感知した魔族の魔力を頼りに、今度は『漏出』の魔法を試みる。
「これは……」
しかし『漏出』であっても、先程の魔族の感知が出来なくなっている。つまりここでようやく、ソフィはあの魔族の男が、ヌーの言っていた魔法『隠幕』という魔法を発動させたのだという確信が持てた。
「てめぇがのんびり尾行するとか抜かしやがるから、結局『隠幕』を使われたらしいな」
ソフィが魔族に対して魔力を探ろうと試みている様子を見ていたヌーは、その結末を見届けた後、言葉を投げかけてきたのであった。
「噂には聞いていたが、本当に『漏出』でも測れない事があるのだな」
「だから言っているだろう? 『隠幕』を一度使われてしまえば、見つけるのに難儀するって理解したか?」
「うむ、そのようだな」
彼の友人であるフルーフが編み出したとされる数々の魔法。
そのどれもがソフィを驚かせる魔法の数々ではあったが、ソフィは『魔瞳』を発動させながら、こうしてある程度本気で放った『漏出』で魔力の感知が出来なかった事に驚くと共に、その新魔法である『隠幕』という魔法を脅威と認めたのであった。
どうやらソフィが『隠幕』の効力を認めた事で、ヌーも満足そうに納得していた。
「しかし疑問が残ると思わぬか? 尾行に気づいた時点で『隠幕』とやらを使うのならば理解出来るが、わざわざ魔力を増幅させた狙いが分からぬ」
ソフィの顔に視線を向けて言葉を聞いていたヌーだったが、確かに逃げるつもりであるならば、わざわざ戦闘態勢に入るようにオーラを使ったり、魔力を増幅させる理由が無い。
考えられるとしたらこの場に自分達をおびき寄せて、仲間を待ち伏せさせておいて襲うつもりだったか、アジトから遠ざけるのが奴の狙いだったかである。
しかしそれが狙いの作戦だったとするならば、余りにもちぐはぐな印象を受けるヌーであった。
そして前方をふらふらと歩いて行く『煌鴟梟』の男の後ろ姿を見ながらヌーは、あの男を操ってそのままにしておく理由も理解出来ないでいた。
(元々こうしようと思っていたワケでは無く、何か予想だにしない出来事が起きて仕方無く姿を消したように感じられるな)
ヌーは口元に手をやりながら、徐々に推理を進めていくのであった。
……
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(やはりヌーの野郎に大魔王ソフィで間違いなかったか。な、何故こいつらがこの世界に一緒に居やがるんだ!? そもそもこの化け物はミラ様の計画通りに別世界に追いやった筈ではなかったのか!)
近くの茂みに隠れながら『隠幕』で姿や気配を完全に隠している状態で、先程ソフィ達が行っていたように、魔力コントロールを使って更に間違いが起きないように、自身の魔力を探れないように消しながら疑問の言葉を胸中で浮かべるセルバスであった。
「しかしこれだけ探しても分からぬ以上、もう奴はこの辺には居ないのかもしれぬな。一先ずは、あの男は『魔瞳』で操られて何処かへ向かっているようだが、少し様子を見て背後をついて行ってみるか?」
ソフィがそう提案するが、ヌーはその言葉に全く反応を示さずに、何かを考える素振りをしたままその場から動こうとしなかった。
「――」(コイツがこういう仕草をとるときは、何か妙案を考えているときです)
「む……」
何やら返事が無いヌーの代わりに、隣に居たテアがソフィに対して必死に伝えようとしてくるのを見たソフィは、どうやら何かを考えている様子のヌーをもう少しだけ見守って欲しいと、テアがソフィに頑張って伝えようとしているのだろうなとソフィは判断するのであった。
(クックック、こやつらはまるでもう、家族のようではないか)
ソフィはかつてのヌーと、今のヌーを頭の中で比較するように思い描き、そして今のこうしてヌーの横で、フォローをしようとしているテアを見て、感慨深いものを感じたソフィは、言葉の意味は分からなくともそのテアに対して頷きを見せるのであった。
……
……
……
(よ、よし! どうやら俺の居る正確な位置まではバレてねぇようだな。このままこいつらから離れた後、バレても直ぐには手出し出来ない、大きな距離を稼いだ後に『概念跳躍』を使ってミラ様の元へ向かおう)
『隠幕』を用いていても、この場で膨大な魔力を費やすような大きな魔法を使えば、その魔力の奔流までは隠し切れない。この場で使うような馬鹿な真似は出来ない為、ソフィやヌー達にバレてしまう前にこの場から離れようとするセルバスであった。
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