973 / 1,915
旅籠編
958.態度の悪い男
しおりを挟む
そして屯所から遂に喧嘩沙汰という罪状で捕らえられていた『煌鴟梟』の男が三日ぶりに出てくるのであった。
当然見張っていた『煌鴟梟』の別の男たちは、慌ててミヤジの酒場にこの事を伝えに行った。
ミヤジの酒場は昨日も普段通りに営業を行っていて、朝になる数時間前に店を閉めたところであった。屯所を交代で見張っていた男は、直ぐに店の裏口から鍵を使って中へ入ると、そこはちょうど店の事務室に繋がっていた。見張っていた男が酒場の事務室に入ると、事務室に置いてある横長のソファーにふんぞり返りながら酒瓶を片手に寛いでいる長身の男が居た。
「おい、新入り! 出番だ、奴らが出て来たぞ」
見張りの男が扉から入ってきた時は、視線を一度だけ向けた長身の男だったが、見張りの男が仕事だと言ってもぐびっぐびっと喉を鳴らしながら酒を呷り続けている。
「おい! 聞こえてんのかてめぇ!」
自分より後に入ってきた新入りの余りの態度に見張りの男が怒鳴り声をあげると、店の酒を勝手に呑んでいた男は、持っていたその酒瓶を入り口に居る見張りの男に向けて投げ飛ばして来た。
男は慌ててその場から飛び退ると、酒瓶を投げた男を睨みつけて、注意しようと口を開きかけたが、その前にその相手から怒鳴り声を浴びらせられる。
「るっせぇんだよボケ!! んなでけぇ声で喚くんじゃねぇ殺すぞ」
怒鳴り声をあげた男は寝ころんでいたソファーから立ち上がると、注意しようとしていた見張りの男に近づいて行く。
「くっ、くぅ……!!」
自分に近づいてくる凄みのある男に言葉を出せなくなった見張りの男は、手を前に出しながら男が近づいてきた分だけ後ろへ下がっていく。
「ククッ、びびってんじゃねぇよ。ダサい野郎め」
「うぐっ……!!」
見張りの男が悔しそうに声をあげるが、そんな見張りの男の顔を覗き込みながら酒を呑んでいた男が、思いきり背後の壁をどんっと叩いた。
「今後、俺に舐めた口利くんじゃねぇぞ? 敬語を使えやボケ」
「ひ、ヒィッ……!!」
へにゃへにゃと壁にもたれ掛かって怯えていた見張りの男は、そのまま地面にずり落ちて行った。
『煌鴟梟』に最近入ってきた新入りで長身の男『セルバス』は、自分の脅しで震えあがっている『煌鴟梟』の先輩の姿を見て、嘲笑いながら馬鹿にするような視線を向けた。
「ヒャハハッ、まぁいいだろう。話にあった捕らえられている男が遂に出てきたか。じゃあ、ここからがようやく俺の仕事ってわけだ」
そう言って『セルバス』は壁を背もたれにして座って震えている男の肩を掴んで強引に立ち上がらせると、男は再び悲鳴のような声をあげた。
「おいおい、仮にもアンタは人攫いの組織の人間何だろう? そんなびびってちゃ、仕事なんてできねぇんじゃねぇのか先輩よぉ」
ひゃははははと再びセルバスは煽るように怯えている先輩を嘲笑し、そのまま見張りの男の腹に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐっ……! うえぇ……。ゲホッゲホッ……」
男に膝蹴りを腹に入れられて、情けない声をあげながら苦しみ出す。
「ヒャハハハ、仕方ねぇからお前の言う通りに仕事してやるよ。お前はそこで這いつくばって寝てろや、セ・ン・パ・イ」
『煌鴟梟』の先輩の男に向かって、馬鹿にするようにそう告げた後、男が入ってきた店の裏口からセルバスは屯所へ向けて出て行った。
見張りの男は床で倒れ伏しながら遠ざかっていく『セルバス』の背中を唇を噛んで、悔しそうに見ているだけしか出来なかった。
…………
「さぁてと。さっさと回収して、ミヤジとかいう奴の所へ届けに行くか」
ミヤジという『煌鴟梟』の幹部から命令されて、二、三日前からこの旅籠町の酒場に潜伏していたセルバスは、昨日から先程までノックスの世界にあるきつい酒を呑んでいた所為で、ふらふらする足元を見て気持ちよさそうに笑っていた。
この時に至ってもまだこの世界を侮っていたセルバスは、この後に信じられない光景を目の当たりにする事となるのであった。
……
……
……
当然見張っていた『煌鴟梟』の別の男たちは、慌ててミヤジの酒場にこの事を伝えに行った。
ミヤジの酒場は昨日も普段通りに営業を行っていて、朝になる数時間前に店を閉めたところであった。屯所を交代で見張っていた男は、直ぐに店の裏口から鍵を使って中へ入ると、そこはちょうど店の事務室に繋がっていた。見張っていた男が酒場の事務室に入ると、事務室に置いてある横長のソファーにふんぞり返りながら酒瓶を片手に寛いでいる長身の男が居た。
「おい、新入り! 出番だ、奴らが出て来たぞ」
見張りの男が扉から入ってきた時は、視線を一度だけ向けた長身の男だったが、見張りの男が仕事だと言ってもぐびっぐびっと喉を鳴らしながら酒を呷り続けている。
「おい! 聞こえてんのかてめぇ!」
自分より後に入ってきた新入りの余りの態度に見張りの男が怒鳴り声をあげると、店の酒を勝手に呑んでいた男は、持っていたその酒瓶を入り口に居る見張りの男に向けて投げ飛ばして来た。
男は慌ててその場から飛び退ると、酒瓶を投げた男を睨みつけて、注意しようと口を開きかけたが、その前にその相手から怒鳴り声を浴びらせられる。
「るっせぇんだよボケ!! んなでけぇ声で喚くんじゃねぇ殺すぞ」
怒鳴り声をあげた男は寝ころんでいたソファーから立ち上がると、注意しようとしていた見張りの男に近づいて行く。
「くっ、くぅ……!!」
自分に近づいてくる凄みのある男に言葉を出せなくなった見張りの男は、手を前に出しながら男が近づいてきた分だけ後ろへ下がっていく。
「ククッ、びびってんじゃねぇよ。ダサい野郎め」
「うぐっ……!!」
見張りの男が悔しそうに声をあげるが、そんな見張りの男の顔を覗き込みながら酒を呑んでいた男が、思いきり背後の壁をどんっと叩いた。
「今後、俺に舐めた口利くんじゃねぇぞ? 敬語を使えやボケ」
「ひ、ヒィッ……!!」
へにゃへにゃと壁にもたれ掛かって怯えていた見張りの男は、そのまま地面にずり落ちて行った。
『煌鴟梟』に最近入ってきた新入りで長身の男『セルバス』は、自分の脅しで震えあがっている『煌鴟梟』の先輩の姿を見て、嘲笑いながら馬鹿にするような視線を向けた。
「ヒャハハッ、まぁいいだろう。話にあった捕らえられている男が遂に出てきたか。じゃあ、ここからがようやく俺の仕事ってわけだ」
そう言って『セルバス』は壁を背もたれにして座って震えている男の肩を掴んで強引に立ち上がらせると、男は再び悲鳴のような声をあげた。
「おいおい、仮にもアンタは人攫いの組織の人間何だろう? そんなびびってちゃ、仕事なんてできねぇんじゃねぇのか先輩よぉ」
ひゃははははと再びセルバスは煽るように怯えている先輩を嘲笑し、そのまま見張りの男の腹に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐっ……! うえぇ……。ゲホッゲホッ……」
男に膝蹴りを腹に入れられて、情けない声をあげながら苦しみ出す。
「ヒャハハハ、仕方ねぇからお前の言う通りに仕事してやるよ。お前はそこで這いつくばって寝てろや、セ・ン・パ・イ」
『煌鴟梟』の先輩の男に向かって、馬鹿にするようにそう告げた後、男が入ってきた店の裏口からセルバスは屯所へ向けて出て行った。
見張りの男は床で倒れ伏しながら遠ざかっていく『セルバス』の背中を唇を噛んで、悔しそうに見ているだけしか出来なかった。
…………
「さぁてと。さっさと回収して、ミヤジとかいう奴の所へ届けに行くか」
ミヤジという『煌鴟梟』の幹部から命令されて、二、三日前からこの旅籠町の酒場に潜伏していたセルバスは、昨日から先程までノックスの世界にあるきつい酒を呑んでいた所為で、ふらふらする足元を見て気持ちよさそうに笑っていた。
この時に至ってもまだこの世界を侮っていたセルバスは、この後に信じられない光景を目の当たりにする事となるのであった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる