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旅籠編
956.煌聖の教団の出身
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「先程も言ったが数日以内にこの町の屯所に捕らえられた『煌鴟梟』の部下が数人釈放されてくるだろう。お前にはその者と合流して再びこの場所へ連れてきて欲しい」
サノスケが指定して呼び寄せた『旅籠町』の近くの洞穴の中で『煌鴟梟』の幹部であるミヤジは、新入りのセルバスにそう命令するのであった。
「ああ、それは別に構わねぇんだがよ。本当に釈放されるのか? そこに居るあんちゃんが報告をして喧嘩沙汰にしたっつー話は聞いたが、護衛隊とかいう奴らはそんな話を鵜呑みにしてるとは思わねぇんだがな」
セルバスの言う通り、この旅籠では彼ら『煌鴟梟』が目をつける前から宿に泊まる商売人を狙った人攫いの事件は起きていた。
たとえ喧嘩沙汰の報告があったとはいっても捕らえた連中から事情を聞き出す事もせずに、一般人の報告を鵜呑みにして、そのまま喧嘩案件で終わらせて解放するとはセルバスには思えなかった。
もし本当に何も調べる事もしないのであれば、余程、程度が知れる連中が護衛をやっているのか、もしくは仕事に怠慢で真面目にやる気がないと言えるだろう。
「その点は大丈夫だ。今捕らえられている奴らは最近組織に入った連中で、ボスの顔はおろか、名前すら知らないだろう。俺達が指示して動くただの雇われのような存在だ」
サノスケがそう説明をした後に隣に居るミヤジと言う男が、口角を吊り上げて嗤った後、何やら口を開き始めた。
「そもそもな、今の連中は知らねぇだろうが『煌鴟梟』の組織は裏切者に厳しい。余程のことが無い限り、拷問を受けたとしても口は割らないだろう。何せ煌鴟梟の前のボスは、相当の加虐性に溢れていたからねぇ。あの頃からの内の組員だったら、誰もが護衛隊の拷問の方がマシと答える」
「それは恐ろしい事だな」
セルバスは言葉ではそう言って、ミヤジに合わせたが、所詮人間達の拷問等どの組織も変わらんとばかりに内心では笑っていた。
『煌鴟梟』の前のボスが、どれだけの加虐性欲者だったかは知らないが『煌聖の教団』出身であるセルバスは、本当の地獄のような矯正を知っている。
煌聖の教団の『矯正』は何度も死の一歩手前まで苦しめられて、その都度『神聖魔法』を使える者達の回復魔法によって、何度も、そう何度も傷を癒されながら地獄のような『矯正』を続けられる。
人間達の拷問であれば、死んでしまえばそれで終わりだが『煌聖の教団』は死ぬことが無い為に、永遠に続くかと思える程の苦しみを延々と続けられてしまうのだから『煌鴟梟』の前のボスとやらの『拷問』よりも厳しいだろう。
左右の手足の爪を剥ぐ事や、目、鼻、口、耳といった顔の部位に、矯正を施す程度の拷問であれば『煌聖の教団』では、そこまで大した事とは思わずに加害者に笑顔すら見せていられるだろう。
精神がおかしくなり始めて、自分がどんな顔をしているか分からなくなって、それすらも気にならなくなってそれでも苦しいと思えた頃でようやく、そこからが本当の矯正の始まりといえる領域なのだから。
『煌鴟梟』の前のボスとやらの拷問について、得意げに話しているミヤジの前で『煌聖の教団』の性格矯正の現場を見せてやりたいものだとセルバスは考えるのであった。
「お前もボスが代わった後に、この組織に入れて良かったぞ。前のボスのままだったら、お前が何かミスをやらかせば酷い目に合わされていたかもしれないからな」
ソフィ達を宿へと案内していた人間と同じ人物なのかと、疑いたくなるようなミヤジの笑みであった。
「確かにそれ程ならば、口を割らずに本当に釈放されるかもな。それで俺は無事に釈放された奴らと接触して、ミヤジさん、あんたの所まで連れて来ればいいんだな?」
「ああ、そうだな。いや、落ち合う場所はボスの居るアジトにしよう」
「じゃあそいつが出て来る数日の間は、捕らえられている場所の付近に潜伏しておくが構わないか?」
「あ、ああ……。直ぐに連絡が取れるように移動するなら、事前に報告はしろよ」
「了解だ」
ミヤジはこのセルバスという新入りを怖がらせようと脅したのだが、あまり効果が無いのか、全然怖さを感じていないセルバスの顔を見て、少し気勢が削がれたとばかりに複雑な表情を浮かべながら、場所を指定するのであった。
(こいつは、相当の大物なのかもしれないな……)
横で見ていた宿の主人であるサノスケは、隣に居る彼の遣いの男と顔を見合わせながらそう考えるのであった。
サノスケが指定して呼び寄せた『旅籠町』の近くの洞穴の中で『煌鴟梟』の幹部であるミヤジは、新入りのセルバスにそう命令するのであった。
「ああ、それは別に構わねぇんだがよ。本当に釈放されるのか? そこに居るあんちゃんが報告をして喧嘩沙汰にしたっつー話は聞いたが、護衛隊とかいう奴らはそんな話を鵜呑みにしてるとは思わねぇんだがな」
セルバスの言う通り、この旅籠では彼ら『煌鴟梟』が目をつける前から宿に泊まる商売人を狙った人攫いの事件は起きていた。
たとえ喧嘩沙汰の報告があったとはいっても捕らえた連中から事情を聞き出す事もせずに、一般人の報告を鵜呑みにして、そのまま喧嘩案件で終わらせて解放するとはセルバスには思えなかった。
もし本当に何も調べる事もしないのであれば、余程、程度が知れる連中が護衛をやっているのか、もしくは仕事に怠慢で真面目にやる気がないと言えるだろう。
「その点は大丈夫だ。今捕らえられている奴らは最近組織に入った連中で、ボスの顔はおろか、名前すら知らないだろう。俺達が指示して動くただの雇われのような存在だ」
サノスケがそう説明をした後に隣に居るミヤジと言う男が、口角を吊り上げて嗤った後、何やら口を開き始めた。
「そもそもな、今の連中は知らねぇだろうが『煌鴟梟』の組織は裏切者に厳しい。余程のことが無い限り、拷問を受けたとしても口は割らないだろう。何せ煌鴟梟の前のボスは、相当の加虐性に溢れていたからねぇ。あの頃からの内の組員だったら、誰もが護衛隊の拷問の方がマシと答える」
「それは恐ろしい事だな」
セルバスは言葉ではそう言って、ミヤジに合わせたが、所詮人間達の拷問等どの組織も変わらんとばかりに内心では笑っていた。
『煌鴟梟』の前のボスが、どれだけの加虐性欲者だったかは知らないが『煌聖の教団』出身であるセルバスは、本当の地獄のような矯正を知っている。
煌聖の教団の『矯正』は何度も死の一歩手前まで苦しめられて、その都度『神聖魔法』を使える者達の回復魔法によって、何度も、そう何度も傷を癒されながら地獄のような『矯正』を続けられる。
人間達の拷問であれば、死んでしまえばそれで終わりだが『煌聖の教団』は死ぬことが無い為に、永遠に続くかと思える程の苦しみを延々と続けられてしまうのだから『煌鴟梟』の前のボスとやらの『拷問』よりも厳しいだろう。
左右の手足の爪を剥ぐ事や、目、鼻、口、耳といった顔の部位に、矯正を施す程度の拷問であれば『煌聖の教団』では、そこまで大した事とは思わずに加害者に笑顔すら見せていられるだろう。
精神がおかしくなり始めて、自分がどんな顔をしているか分からなくなって、それすらも気にならなくなってそれでも苦しいと思えた頃でようやく、そこからが本当の矯正の始まりといえる領域なのだから。
『煌鴟梟』の前のボスとやらの拷問について、得意げに話しているミヤジの前で『煌聖の教団』の性格矯正の現場を見せてやりたいものだとセルバスは考えるのであった。
「お前もボスが代わった後に、この組織に入れて良かったぞ。前のボスのままだったら、お前が何かミスをやらかせば酷い目に合わされていたかもしれないからな」
ソフィ達を宿へと案内していた人間と同じ人物なのかと、疑いたくなるようなミヤジの笑みであった。
「確かにそれ程ならば、口を割らずに本当に釈放されるかもな。それで俺は無事に釈放された奴らと接触して、ミヤジさん、あんたの所まで連れて来ればいいんだな?」
「ああ、そうだな。いや、落ち合う場所はボスの居るアジトにしよう」
「じゃあそいつが出て来る数日の間は、捕らえられている場所の付近に潜伏しておくが構わないか?」
「あ、ああ……。直ぐに連絡が取れるように移動するなら、事前に報告はしろよ」
「了解だ」
ミヤジはこのセルバスという新入りを怖がらせようと脅したのだが、あまり効果が無いのか、全然怖さを感じていないセルバスの顔を見て、少し気勢が削がれたとばかりに複雑な表情を浮かべながら、場所を指定するのであった。
(こいつは、相当の大物なのかもしれないな……)
横で見ていた宿の主人であるサノスケは、隣に居る彼の遣いの男と顔を見合わせながらそう考えるのであった。
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