上 下
970 / 1,915
旅籠編

955.不運な男

しおりを挟む
(今すぐにでも例の計画によって、魔神の力を手にして戻ってきている筈のミラ様の元へと戻る為に『アレルバレル』の世界に向かいたい所だが、今ので戻った所で何の役にも立たないだろう。

 もう少し体力と魔力の回復を待って、元の身体に戻るまではこの世界でもう少し遊んでいればいいだろう)

 元々セルバスは次の世界の支配をこのノックスの世界にしようと企んでいた事もあって、身体の回復を待ちながら、いつものように世界を一つ支配してやろうと考えるのであった。

 元々の魔族の身体の十分の一程度の戦力値しかないが、それでも彼は今の『代替身体だいたいしんたい』の状態でさえ『大魔王中位』の領域としての戦力値は持っている。

 程度の低いと呼ばれる世界にも色々とタイプはあるが、これまでの経験上では戦力値が100億から300億程もあれば、だいたいの程度の低い世界であれば十分に掌握出来る程である。

 この世界がどれほどの力を持つ者が居るかは分かってはいないが、彼の旧友であるヌーがいつも言っていた『』であるならば『金色のオーラ』を使えばあっさりと支配出来るだろう。

 この世界で蘇った後に最初に出会った人間が『煌鴟梟こうしきょう』とかいう組織のボスとか言っていたが、大魔王セルバスは『金色の目ゴールド・アイ』を使ってあっさりと洗脳して組織に入った。

 自分が代わりに『煌鴟梟こうしきょう』のボスとなってもよかったが、それはこの世界の情勢を把握してからでいいだろう。

 ――何も情報が無い状態で責任のある立場になるほど面倒な事は無いのだから。

 セルバスはそう考えてひとまずは怪しまれないように、このあまり褒められたものではない事を行っていた『煌鴟梟こうしきょう』という組織のその一員として活動を行おうと考えるのであった。

(ここのボスがやろうとしていた事は、かつてミラ様が行っていた事に酷似している。やり方や目的は崇高なるミラ様とは雲泥の差ではあるが、単なる犯罪者集団にしてはよく考えられているようだ)

 ボスが代わる前は少しまた方向性が異なる『窃盗』の集団ではあったが、今の『煌鴟梟こうしきょう』のボスは、中々に用意周到で野望に満ち溢れた男といえた。

 セルバスが聞きだした『煌鴟梟こうしきょう』のボスのこれからの組織の展望は、まずはミヤジの担当する分野で今までの一番の主な収入源であった『旅籠』を利用する客を攫って、奴隷にして売るという内容だが、今の『煌鴟梟こうしきょう』のボスとやらは、そのやり方自体は変えてはいないのだが、その仕事を円滑に行えるように、疑われないように施設を買い取ったりして、上手い事その仕事の成功率を上げようと考えていたようである。

(『煌鴟梟こうしきょう』のボスは中々に頭がいい人物だ。今は操っているが、後々ミラ様の配下として使える男になるかもしれん。人間というのもまたポイントだな……)

 『煌聖の教団こうせいきょうだん』は、教祖であるミラも元人間である。
 人間は魔族のように力や魔力が強いワケでは無いが、咄嗟に行える機転の利いた行動は、大したものだと考えていた。

(寿命が短い分『魔族』とは違って人間は、必死に物事にあたろうとする分、違いが生まれるのかもしれねぇな)

 セルバスはそう考えながら『煌鴟梟こうしきょう』のボスのやり方を真似て、まずは足場作りを行いつつ上手くボスや目の前の男を使って、それなりの地位まで『煌鴟梟こうしきょう』という組織を拡大させようと考えるのであった。

(まぁ、身体が回復するまでの暇潰しにはなるだろう)

 セルバスはにやりと笑いながら、今も尚説明を続けているミヤジの話に耳を傾けるのであった。

 …………

 だがしかし、彼はまだ気づいてはいない。このノックスの世界には、彼ら『煌聖の教団こうせいきょうだん』の天敵というべき男。』が居るという事に。

 それも運命のイタズラとしか思えない事に『煌鴟梟こうしきょう』という組織を選んだセルバスを嘲笑うかの如く、ソフィやヌー達は『煌鴟梟こうしきょう』に接触しようと試みている最中なのである。

 更にいえばヌーはテアを襲った事で『煌鴟梟こうしきょう』という人攫いの組織を壊滅させようとまで考えている。間が悪いセルバスはそんな事を知るよしもなく、ミヤジの説明を聞き続けるのであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...