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旅籠編
943.嘘と隠し階段
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先に地下へと降りて行ったコウゾウは、部屋の一室に連行された男たちの元に居た。屯所に連行されているとはいっても男たちを縛っているわけでも、牢の中に入れているわけでもない。この場に連れてこられた時点では、あくまで喧嘩騒動を引き起こしたお騒がせの片割れと思われていた為である。
しかし今はもうコウゾウはソフィから事情を聞いた事で、彼らがテアと呼ばれていた少女を攫おうと宿を襲ってきた人攫いの一味だと疑っている。
彼らと話をしてみて何か怪しい言動などを見せた場合、直ぐに彼らを改めて捕縛しようと考えているのであった。
「それでお前達は何故、彼らの泊まっている部屋に?」
どうやらソフィ達が泊まっていた部屋の二階から投げ飛ばされた男達は、軽い捻挫と腰の打撲だけですんでいたようで、現在は軽い治療を受けた事で事無きを得たようである。
今は腰辺りを押さえながら護衛衆達に囲まれた状態で、その隊長のコウゾウから直に尋問を受けるのだった。
「……」
数人の男たちは互いに視線を向け合った後、だんまりを決め込んでいる。
「どうした……? お前達は何か揉めたから喧嘩を行ったのだろう?」
コウゾウは彼らが人攫いの可能性がある事は、事前にソフィから事情を聞いている為に知ってはいるが、その事を黙ってあくまで喧嘩を行っていたから取り押さえたという体で話す。
数人の取り押さえた男の一人が口を開いた。
「俺達もあの宿に泊まっていたんだが、隣の部屋であいつらが騒いでうるさかったから、注意しにいったんだ。そしたらアイツらが手を出してきてこのざまだ」
コウゾウは黙って彼の言葉に耳を傾けているが、直ぐにこれは嘘だと気づいた。コウゾウはソフィ達の部屋に乗り込んだ時に、部屋の中にあった複数の靴跡と、外の砂が散らばっているのを見ている。
あの宿に拘わらずこの旅籠町にある宿は履物は入り口で脱ぐ。しかし部屋の中を土足で上がり込んだ痕跡があった。
あの時コウゾウがソフィ達の部屋に踏み込んだ時、砂が散らばっているのを確認したコウゾウは、窓の割れ具合を見る前にソフィ達の足元を確認していた。テアと呼ばれた女性もソフィという青年も裸足であったのは間違いない。
目の前の彼らがまだ人攫いだとコウゾウは決めつけるような真似はしないが、彼らがコウゾウに嘘を吐いたというその事実だけは確認が取れた。
今、コウゾウの中では、目の前の目を逸らしながら証言を言う男たちよりも、ソフィ達の方の証言を信じられるに値すると考えている。
この旅籠町では最近実際に、人攫いの事案が増えている。だからこそ自分達が、要請を受けてこの旅籠町の護衛に派遣されているのである。
しかしたとえ目の前の男たちが人攫いの一味だったとしても、犯行が今後ピタリとやむとは限らない。どうせ彼らも氷山の一角に過ぎないだろうからである。
だが、それでも人攫いの一味を捕まえる事が出来たならば、そこから芋づる式に組織ごと捕縛する事も可能かもしれないのである。コウゾウはその好機の一端を得たりと見て、彼らの尋問に更なる意欲を高めるのであった。
――更にコウゾウが彼らに質問をしようとしたその時だった。
上の階で何やら大きな物音がしたかと思えば、ドタドタと騒がしく走り回る足音が鳴り響くのだった。
「何だ? 上で何かあったのか?」
コウゾウは椅子から立ち上がり、ゆっくりとした足取りで部屋の外に出ると、見張りの男たち数人に、上で何があったのかを調べてこいと命令を出すのであった。
護衛隊の見張り数人は隊長であるコウゾウの言葉に頷き、壁を数回叩いて、中から折り畳みの梯子のようなモノを取り出すと、それを使って器用に登っていき、天井の壁を同じように叩くと、ぼこんっという音と共に穴が開いた。
護衛の男たちはその穴を通って、ソフィ達の居る階層へと上がっていった。それを見届けたコウゾウは頭を掻きながら先程の男たちの居る部屋へと、戻っていくのであった。
しかし今はもうコウゾウはソフィから事情を聞いた事で、彼らがテアと呼ばれていた少女を攫おうと宿を襲ってきた人攫いの一味だと疑っている。
彼らと話をしてみて何か怪しい言動などを見せた場合、直ぐに彼らを改めて捕縛しようと考えているのであった。
「それでお前達は何故、彼らの泊まっている部屋に?」
どうやらソフィ達が泊まっていた部屋の二階から投げ飛ばされた男達は、軽い捻挫と腰の打撲だけですんでいたようで、現在は軽い治療を受けた事で事無きを得たようである。
今は腰辺りを押さえながら護衛衆達に囲まれた状態で、その隊長のコウゾウから直に尋問を受けるのだった。
「……」
数人の男たちは互いに視線を向け合った後、だんまりを決め込んでいる。
「どうした……? お前達は何か揉めたから喧嘩を行ったのだろう?」
コウゾウは彼らが人攫いの可能性がある事は、事前にソフィから事情を聞いている為に知ってはいるが、その事を黙ってあくまで喧嘩を行っていたから取り押さえたという体で話す。
数人の取り押さえた男の一人が口を開いた。
「俺達もあの宿に泊まっていたんだが、隣の部屋であいつらが騒いでうるさかったから、注意しにいったんだ。そしたらアイツらが手を出してきてこのざまだ」
コウゾウは黙って彼の言葉に耳を傾けているが、直ぐにこれは嘘だと気づいた。コウゾウはソフィ達の部屋に乗り込んだ時に、部屋の中にあった複数の靴跡と、外の砂が散らばっているのを見ている。
あの宿に拘わらずこの旅籠町にある宿は履物は入り口で脱ぐ。しかし部屋の中を土足で上がり込んだ痕跡があった。
あの時コウゾウがソフィ達の部屋に踏み込んだ時、砂が散らばっているのを確認したコウゾウは、窓の割れ具合を見る前にソフィ達の足元を確認していた。テアと呼ばれた女性もソフィという青年も裸足であったのは間違いない。
目の前の彼らがまだ人攫いだとコウゾウは決めつけるような真似はしないが、彼らがコウゾウに嘘を吐いたというその事実だけは確認が取れた。
今、コウゾウの中では、目の前の目を逸らしながら証言を言う男たちよりも、ソフィ達の方の証言を信じられるに値すると考えている。
この旅籠町では最近実際に、人攫いの事案が増えている。だからこそ自分達が、要請を受けてこの旅籠町の護衛に派遣されているのである。
しかしたとえ目の前の男たちが人攫いの一味だったとしても、犯行が今後ピタリとやむとは限らない。どうせ彼らも氷山の一角に過ぎないだろうからである。
だが、それでも人攫いの一味を捕まえる事が出来たならば、そこから芋づる式に組織ごと捕縛する事も可能かもしれないのである。コウゾウはその好機の一端を得たりと見て、彼らの尋問に更なる意欲を高めるのであった。
――更にコウゾウが彼らに質問をしようとしたその時だった。
上の階で何やら大きな物音がしたかと思えば、ドタドタと騒がしく走り回る足音が鳴り響くのだった。
「何だ? 上で何かあったのか?」
コウゾウは椅子から立ち上がり、ゆっくりとした足取りで部屋の外に出ると、見張りの男たち数人に、上で何があったのかを調べてこいと命令を出すのであった。
護衛隊の見張り数人は隊長であるコウゾウの言葉に頷き、壁を数回叩いて、中から折り畳みの梯子のようなモノを取り出すと、それを使って器用に登っていき、天井の壁を同じように叩くと、ぼこんっという音と共に穴が開いた。
護衛の男たちはその穴を通って、ソフィ達の居る階層へと上がっていった。それを見届けたコウゾウは頭を掻きながら先程の男たちの居る部屋へと、戻っていくのであった。
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