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ゲンロクの里編
906.一触即発の状況
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ヒュウガに迎え入れられてゲンロクの待つ部屋に通されたソフィ達。ソフィ達の視線の先にケイノトや、この里を治める『妖魔召士』である『ゲンロク』の姿があった。
特徴的な長い髭はリラリオの世界のグランの町にある、ギルドの管理者である『ディラック』を思い起こさせた。年齢もそこそこに重ねているようで見た目から言えば、ディラックと同じくらいの年齢に見えた。
「久しぶりだな、エイジ」
(むっ!)
エイジに向けて声を掛けてきたゲンロクだが、その視線はソフィやヌー達を捉えている。
この場に現れた余所者のソフィ達を吟味するようなその視線は、別に魔瞳を使われた訳でも無いというのに、その視線に晒された事でソフィであっても、少しばかり身構えるに値する程であった。
リラリオの世界にある人間達の大陸『ミールガルド』大陸の王族達を相手にするというよりは、どちらかと言えば『アレルバレル』の『魔界』に居る魔王たちを相手にしているような感覚で、ここまで魔族に近い威圧感を人間が出せるのかとソフィはそう感じたのであった。
そしてそれはソフィだけでは無く、隣に居るヌーも感じているだろう。
『たかが人間風情』と、いつかの彼はソフィにそう告げた事があったが目の前の人間を目の当たりにした今、同じセリフはそうやすやすと吐けないのではないだろうか。
「ああ、師が居なくなってお前が好き勝手し始めてからは会うことが無かったからな。今後も会う事は無いと思っていたんだがな」
「ふっ、好き勝手とは言ってくれるな。ワシは『ケイノト』に住む者達を想って色々と手を焼いてきたのだがな。お前らこそ妖魔召士の癖にワシらに協力もせずのうのうとケイノトの町で、生きておるではないか」
「小生は小生なりに町を守っているつもりだ。お前の作った『退魔組』の苦情を聞いてやったりしてな」
どうやらエイジとゲンロクの間には、過去に何らかの軋轢があったのだろう。その会話を聞いていて、とても懇意の間柄という風には思えなかった。
「ふぁっふぁっふぁっ、それはワシに言われても困るな。ケイノトの現場は『サテツ』に全て任せているのだからな」
豪快な笑いを見せたゲンロクだったが、そこで再びソフィに視線を向けるのだった。
「まぁ、そんな事はどうでもいい。それでお前が連れてきたというそこの若者たちは何なのだ?お前の大事な客人というから会ってやることにしたが、ワシはお前が思っている以上に忙しいのだがな」
「ソフィ殿」
「うむ」
ようやくエイジとゲンロクの会話は一区切りついたようで、エイジからソフィに事情を話すようにと促されるのであった。
「忙しい所に時間をとってもらって感謝する。まずは自己紹介といこうか、我はソフィと言う」
「ふむ。ワシはゲンロクじゃ。ケイノトの町と、ここを含めた複数の里を治めておる」
(若い見た目によらず、このソフィという小僧は侮れぬな)
ゲンロクはソフィの自己紹介に合わせて自分の事を告げながら、決して甘くはない威圧を掛けているのにも拘わらず、堂々と言葉を話す青年の様子に、少しだが関心を示すのだった。
「実は我達はとある者を探して、各地を転々と移動して探しておったのだが、ケイノトでエイジ殿と知り合った時にもしかすると、我の探し人はここに来れば何か分かるかもしれないと教えてもらったのだ。」
「これはエイジも異なことを言うものだな。何故ワシがソフィ殿の探しておる者とやらを知っておると思ったのだ?」
ソフィの言葉を聞いたゲンロクは、ジロリとエイジに向けて口を開いた。
「ゲンロクよ、お主は最近賊に『転置宝玉』を奪われたそうだな」
エイジがその言葉を発した瞬間、ゲンロクの眉が吊り上がったのを見た。そしてゲンロクはちらりと、入り口に居るヒュウガに視線を移した。
ゲンロクに視線を向けられたヒュウガは首を縦に振ると、音も立てずにそのまま開けていた扉から退室していった。当然ソフィもヌーもテアも、ヒュウガが出て行った理由に見当がついている。
「何の事を言っているのか分からないな。確かに転置宝玉の多くは私が管理しているが、今もしっかりと手元にあるぞ」
「それは妙だな。そこに居る連中が里の入り口で、賊に襲撃されて転置宝玉を盗まれたと、話をしているのを聞いたのだが」
エイジがそう言って部屋の入口に視線を向けると、先程退室していったヒュウガが呼んできたのだろう最初に里の入り口で絡んできた赤い狩衣を着た男たちが、ぎょっとした表情をしたままエイジの方を見ていた。
「成程……」
ゆっくりと椅子から立ち上がったゲンロクは、後ろ手に手を組みながら自分の後ろの窓際まで歩いていき、外を見ながら静かに口を開いた。
「ソフィ殿と言ったか。お主の探している者というのは、青い髪をした少年の事かな?」
ゲンロクは窓の外に視線を向けたまま、背後に居るソフィに向けてそう言った。
「その通りだ。我の配下で名は『エヴィ』と言う。やはりこの屋敷にあやつは訪れたのだな」
ソフィがそう告げると、ゲンロクは無言で外を見つめたままだった。やがて少しの間の後、ソフィ達の方へ振り返った。
「なるほど、成程。あの少年はお主の配下なのか。という事はつまりお主があやつらに、転置宝玉を盗み出すように指示を出したわけだな?」
そして再び少しの間が場を支配した後、唐突に青筋を浮かべたゲンロクが怒号を発した。
「何が目的で貴様の仲間に転置宝玉を盗ませたのだ! イダラマと手を組んで、何を狙っている!!」
この部屋に入ってきた時に感じた圧とは比較にもならない程『ゲンロク』から威圧感が放たれて部屋を支配していく。
瞬時にヌーは金色を纏いながら『ゲンロク』の圧力から身を守り始める。そしてそんなヌーを守るように、黒いオーラを纏ったテアは、何も無い空間から自身の身の丈よりも遥かに大きい鎌を取り出す。
そんな中でソフィだけが、普段通りのまま冷静に口を開くのだった。
「お主が何を言っているのか分からぬが、エヴィの居場所を知っておるのなら教えてもらおうか?」
……
……
……
特徴的な長い髭はリラリオの世界のグランの町にある、ギルドの管理者である『ディラック』を思い起こさせた。年齢もそこそこに重ねているようで見た目から言えば、ディラックと同じくらいの年齢に見えた。
「久しぶりだな、エイジ」
(むっ!)
エイジに向けて声を掛けてきたゲンロクだが、その視線はソフィやヌー達を捉えている。
この場に現れた余所者のソフィ達を吟味するようなその視線は、別に魔瞳を使われた訳でも無いというのに、その視線に晒された事でソフィであっても、少しばかり身構えるに値する程であった。
リラリオの世界にある人間達の大陸『ミールガルド』大陸の王族達を相手にするというよりは、どちらかと言えば『アレルバレル』の『魔界』に居る魔王たちを相手にしているような感覚で、ここまで魔族に近い威圧感を人間が出せるのかとソフィはそう感じたのであった。
そしてそれはソフィだけでは無く、隣に居るヌーも感じているだろう。
『たかが人間風情』と、いつかの彼はソフィにそう告げた事があったが目の前の人間を目の当たりにした今、同じセリフはそうやすやすと吐けないのではないだろうか。
「ああ、師が居なくなってお前が好き勝手し始めてからは会うことが無かったからな。今後も会う事は無いと思っていたんだがな」
「ふっ、好き勝手とは言ってくれるな。ワシは『ケイノト』に住む者達を想って色々と手を焼いてきたのだがな。お前らこそ妖魔召士の癖にワシらに協力もせずのうのうとケイノトの町で、生きておるではないか」
「小生は小生なりに町を守っているつもりだ。お前の作った『退魔組』の苦情を聞いてやったりしてな」
どうやらエイジとゲンロクの間には、過去に何らかの軋轢があったのだろう。その会話を聞いていて、とても懇意の間柄という風には思えなかった。
「ふぁっふぁっふぁっ、それはワシに言われても困るな。ケイノトの現場は『サテツ』に全て任せているのだからな」
豪快な笑いを見せたゲンロクだったが、そこで再びソフィに視線を向けるのだった。
「まぁ、そんな事はどうでもいい。それでお前が連れてきたというそこの若者たちは何なのだ?お前の大事な客人というから会ってやることにしたが、ワシはお前が思っている以上に忙しいのだがな」
「ソフィ殿」
「うむ」
ようやくエイジとゲンロクの会話は一区切りついたようで、エイジからソフィに事情を話すようにと促されるのであった。
「忙しい所に時間をとってもらって感謝する。まずは自己紹介といこうか、我はソフィと言う」
「ふむ。ワシはゲンロクじゃ。ケイノトの町と、ここを含めた複数の里を治めておる」
(若い見た目によらず、このソフィという小僧は侮れぬな)
ゲンロクはソフィの自己紹介に合わせて自分の事を告げながら、決して甘くはない威圧を掛けているのにも拘わらず、堂々と言葉を話す青年の様子に、少しだが関心を示すのだった。
「実は我達はとある者を探して、各地を転々と移動して探しておったのだが、ケイノトでエイジ殿と知り合った時にもしかすると、我の探し人はここに来れば何か分かるかもしれないと教えてもらったのだ。」
「これはエイジも異なことを言うものだな。何故ワシがソフィ殿の探しておる者とやらを知っておると思ったのだ?」
ソフィの言葉を聞いたゲンロクは、ジロリとエイジに向けて口を開いた。
「ゲンロクよ、お主は最近賊に『転置宝玉』を奪われたそうだな」
エイジがその言葉を発した瞬間、ゲンロクの眉が吊り上がったのを見た。そしてゲンロクはちらりと、入り口に居るヒュウガに視線を移した。
ゲンロクに視線を向けられたヒュウガは首を縦に振ると、音も立てずにそのまま開けていた扉から退室していった。当然ソフィもヌーもテアも、ヒュウガが出て行った理由に見当がついている。
「何の事を言っているのか分からないな。確かに転置宝玉の多くは私が管理しているが、今もしっかりと手元にあるぞ」
「それは妙だな。そこに居る連中が里の入り口で、賊に襲撃されて転置宝玉を盗まれたと、話をしているのを聞いたのだが」
エイジがそう言って部屋の入口に視線を向けると、先程退室していったヒュウガが呼んできたのだろう最初に里の入り口で絡んできた赤い狩衣を着た男たちが、ぎょっとした表情をしたままエイジの方を見ていた。
「成程……」
ゆっくりと椅子から立ち上がったゲンロクは、後ろ手に手を組みながら自分の後ろの窓際まで歩いていき、外を見ながら静かに口を開いた。
「ソフィ殿と言ったか。お主の探している者というのは、青い髪をした少年の事かな?」
ゲンロクは窓の外に視線を向けたまま、背後に居るソフィに向けてそう言った。
「その通りだ。我の配下で名は『エヴィ』と言う。やはりこの屋敷にあやつは訪れたのだな」
ソフィがそう告げると、ゲンロクは無言で外を見つめたままだった。やがて少しの間の後、ソフィ達の方へ振り返った。
「なるほど、成程。あの少年はお主の配下なのか。という事はつまりお主があやつらに、転置宝玉を盗み出すように指示を出したわけだな?」
そして再び少しの間が場を支配した後、唐突に青筋を浮かべたゲンロクが怒号を発した。
「何が目的で貴様の仲間に転置宝玉を盗ませたのだ! イダラマと手を組んで、何を狙っている!!」
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瞬時にヌーは金色を纏いながら『ゲンロク』の圧力から身を守り始める。そしてそんなヌーを守るように、黒いオーラを纏ったテアは、何も無い空間から自身の身の丈よりも遥かに大きい鎌を取り出す。
そんな中でソフィだけが、普段通りのまま冷静に口を開くのだった。
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