最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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ケイノト編

889.退魔組の幹部達

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「クキ様、ヒイラギ様、ユウゲ様。それに『特別退魔士とくたいま』専属の護衛の方々にこの場に集まっていただいたのは、今『特別退魔士とくたいま』の皆様が就いておられる任務よりも優先すべき任務が発生した為、それをお知らせするべくこの場にお集まり頂きました」

 三人の『特別退魔士とくたいま』達は、話し始めたイツキに耳を傾けるが、優先事項を告げると言われた辺りで三白眼の男、ヒイラギが

「む?」

「どうした? ヒイラギ」

「いやね頭領。こんな重要な時にタクシンとイバキの姿が無いなと思って」

 この場に集められたのが『特別退魔士とくたいま』達だという事は、先程イツキが言っていたことからも理解は出来るが、現在の『退魔組』には五人の『特別退魔士とくたいま』が居る筈で自分を含めて三人しかいないという事を疑問に思ったようだった。

「これからその理由を話そうと思っていたところだ」

「あー、そうすか。そりゃすんません」

 サテツは溜息を吐いた後、ちらりとイツキを一瞥し続きを話すように視線で促す。イツキは咳払いをした後に再び口を開き始める。

「少し前『加護の森』に強力な力を持った妖魔が二体出現し、結界に反応したミカゲ殿が見回りを兼ねて、下位・中位の退魔士複数人を連れて加護の森に出向いたところ、二人組の妖魔に返り討ちにあいました」

 任務で遠い地域に居たヒイラギ達は、この場で初めて二人組について聞かされるのだった。

「あわや全滅といったところ、先程名前が出ました『タクシン』殿が、ミカゲ殿とは別に結界内の異変を察知し、加護の森にてミカゲ殿と合流を果たして二人組と交戦開始」

 イツキは加護の森で起きたこの数時間の『二人組』関連の出来事を事細かに事情を知らない『特別退魔士とくたいま』たちに説明をしていく。

「そして帰還を果たしたミカゲ殿から二人組の事情をきかされて、退魔組から討伐組を編成し、この緊急招集の数時間前に、加護の森に派遣しましたところ……」

「待てイツキ。その討伐組の指揮を執ったのは誰だ? タクシンの奴が現場に残って戦ったなら、この辺で任務に就いていた奴で『特別退魔士とくたいま』の奴と言えば、あれか? イバキの奴が指揮を執ったんだろう?」

 再びヒイラギの質問によって『イツキ』の報告は途中で止まる。他に集められた『クキ』と『ユウゲ』は『ヒイラギ』がこう言う性格をしている事を知っている為に特に何も言わなかったが、いちいち話の腰を折るヒイラギに『サテツ』が横から口を挟むのだった。

「違うな。討伐組にイバキを参加させたが現場の指揮は、ミカゲに執らせるように俺が指示を出した」

 そのサテツの言葉に、質問をしたヒイラギでは無く『クキ』と『ユウゲ』が同時に反応を示して、サテツの顔を一瞥する。そしてヒイラギは訝しそうに眉を寄せながら小声で独り言を呟く。

「たかが『上位退魔士じょうたいま』のミカゲが『特別退魔士とくたいま』のイバキを差し置いて現場の指揮を……?」

「何だ? 俺の決定に何か文句があるのかヒイラギ」

 だが小声で呟いたヒイラギの言葉を耳聡く反応をするサテツだった。

「あーいや、文句があるわけじゃないっすけど、何でイバキじゃなくて、ミカゲなのかなーって疑問に思っただけっす」

「直接二人組とやらと戦ったミカゲの方が、色々と指示を出すのに都合がいいだろうと思っただけだ。別にそれ以外に他意はねぇよ」

 後頭部を軽く掻きながら愛想笑いを浮かべてそう言うヒイラギに、少し苛立った様子でサテツは直ぐに言葉で答えを返すのだった。

 まだ何か言いたそうなヒイラギだったが、サテツはギロリとイツキの顔を一瞥する。細目のイツキはその視線に少しだけ目を開けて、慌てた様子で口を開いた。

「続きですが、加護の森に派遣した討伐組でしたが、少し前に件の『イバキ』殿の『式』の妖魔が、単身でこのケイノトに到着して出来事の報告に来たのです」

 ヒイラギたちはイツキの言葉に真剣に耳を傾けながら聞いていたが、その後のイツキの発言によって『特別退魔士とくたいま』達だけでは無く、背後に立っている護衛達も含めた全員が驚きで目を丸くするのだった。

「イバキ殿の『式』の報告によると、現場に残って戦っていたとみられる『タクシン』殿が……」

 ――「『加護の森で戦死し、その亡骸が見つかったそうです』」

 ……
 ……
 ……
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