最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
904 / 1,966
ケイノト編

889.退魔組の幹部達

しおりを挟む
「クキ様、ヒイラギ様、ユウゲ様。それに『特別退魔士とくたいま』専属の護衛の方々にこの場に集まっていただいたのは、今『特別退魔士とくたいま』の皆様が就いておられる任務よりも優先すべき任務が発生した為、それをお知らせするべくこの場にお集まり頂きました」

 三人の『特別退魔士とくたいま』達は、話し始めたイツキに耳を傾けるが、優先事項を告げると言われた辺りで三白眼の男、ヒイラギが

「む?」

「どうした? ヒイラギ」

「いやね頭領。こんな重要な時にタクシンとイバキの姿が無いなと思って」

 この場に集められたのが『特別退魔士とくたいま』達だという事は、先程イツキが言っていたことからも理解は出来るが、現在の『退魔組』には五人の『特別退魔士とくたいま』が居る筈で自分を含めて三人しかいないという事を疑問に思ったようだった。

「これからその理由を話そうと思っていたところだ」

「あー、そうすか。そりゃすんません」

 サテツは溜息を吐いた後、ちらりとイツキを一瞥し続きを話すように視線で促す。イツキは咳払いをした後に再び口を開き始める。

「少し前『加護の森』に強力な力を持った妖魔が二体出現し、結界に反応したミカゲ殿が見回りを兼ねて、下位・中位の退魔士複数人を連れて加護の森に出向いたところ、二人組の妖魔に返り討ちにあいました」

 任務で遠い地域に居たヒイラギ達は、この場で初めて二人組について聞かされるのだった。

「あわや全滅といったところ、先程名前が出ました『タクシン』殿が、ミカゲ殿とは別に結界内の異変を察知し、加護の森にてミカゲ殿と合流を果たして二人組と交戦開始」

 イツキは加護の森で起きたこの数時間の『二人組』関連の出来事を事細かに事情を知らない『特別退魔士とくたいま』たちに説明をしていく。

「そして帰還を果たしたミカゲ殿から二人組の事情をきかされて、退魔組から討伐組を編成し、この緊急招集の数時間前に、加護の森に派遣しましたところ……」

「待てイツキ。その討伐組の指揮を執ったのは誰だ? タクシンの奴が現場に残って戦ったなら、この辺で任務に就いていた奴で『特別退魔士とくたいま』の奴と言えば、あれか? イバキの奴が指揮を執ったんだろう?」

 再びヒイラギの質問によって『イツキ』の報告は途中で止まる。他に集められた『クキ』と『ユウゲ』は『ヒイラギ』がこう言う性格をしている事を知っている為に特に何も言わなかったが、いちいち話の腰を折るヒイラギに『サテツ』が横から口を挟むのだった。

「違うな。討伐組にイバキを参加させたが現場の指揮は、ミカゲに執らせるように俺が指示を出した」

 そのサテツの言葉に、質問をしたヒイラギでは無く『クキ』と『ユウゲ』が同時に反応を示して、サテツの顔を一瞥する。そしてヒイラギは訝しそうに眉を寄せながら小声で独り言を呟く。

「たかが『上位退魔士じょうたいま』のミカゲが『特別退魔士とくたいま』のイバキを差し置いて現場の指揮を……?」

「何だ? 俺の決定に何か文句があるのかヒイラギ」

 だが小声で呟いたヒイラギの言葉を耳聡く反応をするサテツだった。

「あーいや、文句があるわけじゃないっすけど、何でイバキじゃなくて、ミカゲなのかなーって疑問に思っただけっす」

「直接二人組とやらと戦ったミカゲの方が、色々と指示を出すのに都合がいいだろうと思っただけだ。別にそれ以外に他意はねぇよ」

 後頭部を軽く掻きながら愛想笑いを浮かべてそう言うヒイラギに、少し苛立った様子でサテツは直ぐに言葉で答えを返すのだった。

 まだ何か言いたそうなヒイラギだったが、サテツはギロリとイツキの顔を一瞥する。細目のイツキはその視線に少しだけ目を開けて、慌てた様子で口を開いた。

「続きですが、加護の森に派遣した討伐組でしたが、少し前に件の『イバキ』殿の『式』の妖魔が、単身でこのケイノトに到着して出来事の報告に来たのです」

 ヒイラギたちはイツキの言葉に真剣に耳を傾けながら聞いていたが、その後のイツキの発言によって『特別退魔士とくたいま』達だけでは無く、背後に立っている護衛達も含めた全員が驚きで目を丸くするのだった。

「イバキ殿の『式』の報告によると、現場に残って戦っていたとみられる『タクシン』殿が……」

 ――「『加護の森で戦死し、その亡骸が見つかったそうです』」

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる

岡崎 剛柔
ファンタジー
【あらすじ】 「龍信、貴様は今日限りで解雇だ。この屋敷から出ていけ」  孫龍信(そん・りゅうしん)にそう告げたのは、先代当主の弟の孫笑山(そん・しょうざん)だった。  数年前に先代当主とその息子を盗賊団たちの魔の手から救った龍信は、自分の名前と道士であること以外の記憶を無くしていたにもかかわらず、大富豪の孫家の屋敷に食客として迎え入れられていた。  それは人柄だけでなく、常人をはるかに超える武術の腕前ゆえにであった。  ところが先代当主とその息子が事故で亡くなったことにより、龍信はこの屋敷に置いておく理由は無いと新たに当主となった笑山に追放されてしまう。  その後、野良道士となった龍信は異国からきた金毛剣女ことアリシアと出会うことで人生が一変する。  とある目的のためにこの華秦国へとやってきたアリシア。  そんなアリシアの道士としての試験に付き添ったりすることで、龍信はアリシアの正体やこの国に来た理由を知って感銘を受け、その目的を達成させるために龍信はアリシアと一緒に旅をすることを決意する。  またアリシアと出会ったことで龍信も自分の記憶を取り戻し、自分の長剣が普通の剣ではないことと、自分自身もまた普通の人間ではないことを思い出す。  そして龍信とアリシアは旅先で薬士の春花も仲間に加え、様々な人間に感謝されるような行動をする反面、悪意ある人間からの妨害なども受けるが、それらの人物はすべて相応の報いを受けることとなる。  笑山もまた同じだった。  それどころか自分の欲望のために龍信を屋敷から追放した笑山は、落ちぶれるどころか人間として最悪の末路を辿ることとなる。  一方の龍信はアリシアのこの国に来た目的に心から協力することで、巡り巡って皇帝にすらも認められるほど成り上がっていく。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...