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ケイノト編
880.虐殺
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これまで普通に会話を行っていたイダラマから信じられない言葉が飛び出した事で、イバキやスーはもちろんこと、ミカゲ達も分かりやすい程に動揺する。
「ま、待ってください! 我々は貴方を追いかけて来たわけでは無いと、先程伝えたではありませんか!」
慌ててイバキがそう言うが、イダラマは何を言っていると謂わんばかりに、イバキの顔を見ながら笑った。
「ここでお前達を生かして帰ったら『ゲンロク』達に俺の居場所がバレる。だったら、口を封じておくのは当たり前の事だろう? なぁ?」
イダラマがちらりと隣に居るアコウの顔を見ると、アコウは確かにと頷く。
「その通りですね。元々『退魔組』はイダラマ様達を追っていた。俺達の敵である『退魔組』を生かす理由がない」
そう言ってアコウは刀を抜く。その瞬間にその場の空気が変わり、アコウが発する殺気に囚われたように感じられた。
「構いませんね?」
「ああ。全員殺れ」
アコウの確認の声にイダラマがそう答えると、アコウだけでは無く、その場に居る者達が一斉に戦闘態勢に入った。
イダラマの護衛たちについている者達は、全員がイダラマとそのイダラマの持つ野望に、殉ずる覚悟を持った者達である。
『妖魔召士』や『妖魔退魔師』に憧れるだけで命をかけるほどの覚悟を持たず、妖魔を術で強制的に従わせられるようになった事で自分達が強くなったと錯覚し、町の者達に対して威張り散らすだけのこの場に居る『退魔組』の多くの者達とはその心構えが違う。
そして更にイダラマの護衛達は、その覚悟を示すだけの、力を有している者達でもある。
長いピアスの男『アコウ』が脚に力を入れたと同時、その姿がオロオロと戸惑っていた退魔士達の視界から消えた。
「スーッ!」
「分かっているさ」
イバキの声が響き渡ると同時、戦闘態勢に入ったイバキの護衛剣士『スー』が、同志の一人に襲い掛かろうと向かってきた『アコウ』の前に立ち、その刀でアコウの刀を弾いて見せた。
「チッ……!」
アコウは自分の刀を止められるとは思っていなかったのか、止められた時点で直ぐに追撃を掛けずに、その場から一気に距離をとった。アコウが距離をとったのはただの偶然ではあったのだが、その回避行動は彼の足を守る事に繋がるのだった。
イダラマの居た所まで戻ったアコウは、自分の一太刀をスーに止められた事に驚いていたが、次の瞬間、自分の履いている袴の下に痛みが走り視界を足元に向ける。
「ぐっ……!」
長い袴を履いている為、見た目からは分からないが、走った痛みのせいで右足を伝っていくのが、自分の血だという事に気づくアコウだった。そこまで深い傷では無いが、全く斬られた瞬間が分からなかった。
長いピアスを耳につけた男『アコウ』は、目の前でこちらに視線を向けたままのスーを見て、自分と同等かそれ以上の剣客だと認めるのだった。しかし動いているのはアコウだけでは無く、他の護衛達も既に行動を開始している。
「う、うわああっっ!」
次々と自分達に襲い掛かってくる者達に、退魔組の退魔士達は震えあがり、情けない声をあげる。
「くそっ!」
イバキは悪態を吐きながら他の者達を助けようと動き始めるが、その瞬間に自分の首に向かってくる大きな手が視界に入ると、慌てて身体を捻りながらその大きな手を躱す。
「ほう? いい反射神経をしておる」
イバキに向かっていった大男は『ウガマ』であった。
ウガマはイバキを強敵と認めたのか、視線はイバキに向けたまま腰鞘からウガマも得物を抜く。そしてその構えを見た瞬間にイバキは、この大男が一筋縄ではいかない相手だと知る。片手間で戦ってなんとかなる相手では無いと判断するとイバキは声を張り上げる。
「お前達、戦え!! 戦場で臆病風を出した者から死ぬぞ! ミカゲ、お前も『式』を……!」
「ふふふ、いい覚悟を持っておる!」
イバキが指示しようとしていたが、最後まで言い切る前に刀を構えていたウガマが、そのままイバキを剣で襲い掛かり振りかぶってきた。
「ちっ……!!」
舌打ちをしながらイバキは、その袈裟斬りを躱して数歩距離をとる。
「ミカゲ……!」
「わ、分かりました!!」
イバキは視線をウガマに向けたまま、再びミカゲに『式』を使役するように怒鳴り声をあげる。
慌ててミカゲは戦闘する覚悟を受け入れたようで、懐から数枚の『式札』を取り出すと放り投げて見せる。ボンッという音と共に、三体の妖魔が出現するのだった。
しかしイバキの指示も虚しく、他の退魔士達はこの期に及んで誰も式札を取り出さずに、両手で頭を抱えたり嘆くような声をあげたり、情けない声をあげながらトチ狂ったように走って逃げだそうとする者も居た。
そしてこの場から逃げ出そうと、森の中を走っていく一人の退魔士は、逃げた先に突如現れた鬼に襲われたかと思うと、その鋭利な爪で薙ぎ払われた。そのまま鬼の手によって吹き飛ばされた人間は、大きな森の樹に当たった後に、首の骨が折れてそのまま絶命する。
「うわああっっ!!」
――森の中は混沌を極める。そこらかしこで戦う覚悟の無い者達が、泣きながら逃げ惑う。
イダラマはつまらない物を見るような呆れた目で、情けない声を上げ続ける『退魔組』の退魔士達を眺めていた。
その横に居る青い髪の少年は、この場に全く興味が無くなったのか、周りを見るどころか懐から取り出した『金色のメダル』を眺めてうっとりとしているのだった。
……
……
……
「ま、待ってください! 我々は貴方を追いかけて来たわけでは無いと、先程伝えたではありませんか!」
慌ててイバキがそう言うが、イダラマは何を言っていると謂わんばかりに、イバキの顔を見ながら笑った。
「ここでお前達を生かして帰ったら『ゲンロク』達に俺の居場所がバレる。だったら、口を封じておくのは当たり前の事だろう? なぁ?」
イダラマがちらりと隣に居るアコウの顔を見ると、アコウは確かにと頷く。
「その通りですね。元々『退魔組』はイダラマ様達を追っていた。俺達の敵である『退魔組』を生かす理由がない」
そう言ってアコウは刀を抜く。その瞬間にその場の空気が変わり、アコウが発する殺気に囚われたように感じられた。
「構いませんね?」
「ああ。全員殺れ」
アコウの確認の声にイダラマがそう答えると、アコウだけでは無く、その場に居る者達が一斉に戦闘態勢に入った。
イダラマの護衛たちについている者達は、全員がイダラマとそのイダラマの持つ野望に、殉ずる覚悟を持った者達である。
『妖魔召士』や『妖魔退魔師』に憧れるだけで命をかけるほどの覚悟を持たず、妖魔を術で強制的に従わせられるようになった事で自分達が強くなったと錯覚し、町の者達に対して威張り散らすだけのこの場に居る『退魔組』の多くの者達とはその心構えが違う。
そして更にイダラマの護衛達は、その覚悟を示すだけの、力を有している者達でもある。
長いピアスの男『アコウ』が脚に力を入れたと同時、その姿がオロオロと戸惑っていた退魔士達の視界から消えた。
「スーッ!」
「分かっているさ」
イバキの声が響き渡ると同時、戦闘態勢に入ったイバキの護衛剣士『スー』が、同志の一人に襲い掛かろうと向かってきた『アコウ』の前に立ち、その刀でアコウの刀を弾いて見せた。
「チッ……!」
アコウは自分の刀を止められるとは思っていなかったのか、止められた時点で直ぐに追撃を掛けずに、その場から一気に距離をとった。アコウが距離をとったのはただの偶然ではあったのだが、その回避行動は彼の足を守る事に繋がるのだった。
イダラマの居た所まで戻ったアコウは、自分の一太刀をスーに止められた事に驚いていたが、次の瞬間、自分の履いている袴の下に痛みが走り視界を足元に向ける。
「ぐっ……!」
長い袴を履いている為、見た目からは分からないが、走った痛みのせいで右足を伝っていくのが、自分の血だという事に気づくアコウだった。そこまで深い傷では無いが、全く斬られた瞬間が分からなかった。
長いピアスを耳につけた男『アコウ』は、目の前でこちらに視線を向けたままのスーを見て、自分と同等かそれ以上の剣客だと認めるのだった。しかし動いているのはアコウだけでは無く、他の護衛達も既に行動を開始している。
「う、うわああっっ!」
次々と自分達に襲い掛かってくる者達に、退魔組の退魔士達は震えあがり、情けない声をあげる。
「くそっ!」
イバキは悪態を吐きながら他の者達を助けようと動き始めるが、その瞬間に自分の首に向かってくる大きな手が視界に入ると、慌てて身体を捻りながらその大きな手を躱す。
「ほう? いい反射神経をしておる」
イバキに向かっていった大男は『ウガマ』であった。
ウガマはイバキを強敵と認めたのか、視線はイバキに向けたまま腰鞘からウガマも得物を抜く。そしてその構えを見た瞬間にイバキは、この大男が一筋縄ではいかない相手だと知る。片手間で戦ってなんとかなる相手では無いと判断するとイバキは声を張り上げる。
「お前達、戦え!! 戦場で臆病風を出した者から死ぬぞ! ミカゲ、お前も『式』を……!」
「ふふふ、いい覚悟を持っておる!」
イバキが指示しようとしていたが、最後まで言い切る前に刀を構えていたウガマが、そのままイバキを剣で襲い掛かり振りかぶってきた。
「ちっ……!!」
舌打ちをしながらイバキは、その袈裟斬りを躱して数歩距離をとる。
「ミカゲ……!」
「わ、分かりました!!」
イバキは視線をウガマに向けたまま、再びミカゲに『式』を使役するように怒鳴り声をあげる。
慌ててミカゲは戦闘する覚悟を受け入れたようで、懐から数枚の『式札』を取り出すと放り投げて見せる。ボンッという音と共に、三体の妖魔が出現するのだった。
しかしイバキの指示も虚しく、他の退魔士達はこの期に及んで誰も式札を取り出さずに、両手で頭を抱えたり嘆くような声をあげたり、情けない声をあげながらトチ狂ったように走って逃げだそうとする者も居た。
そしてこの場から逃げ出そうと、森の中を走っていく一人の退魔士は、逃げた先に突如現れた鬼に襲われたかと思うと、その鋭利な爪で薙ぎ払われた。そのまま鬼の手によって吹き飛ばされた人間は、大きな森の樹に当たった後に、首の骨が折れてそのまま絶命する。
「うわああっっ!!」
――森の中は混沌を極める。そこらかしこで戦う覚悟の無い者達が、泣きながら逃げ惑う。
イダラマはつまらない物を見るような呆れた目で、情けない声を上げ続ける『退魔組』の退魔士達を眺めていた。
その横に居る青い髪の少年は、この場に全く興味が無くなったのか、周りを見るどころか懐から取り出した『金色のメダル』を眺めてうっとりとしているのだった。
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