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ケイノト編
856.探し人の手掛かり
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現在裏路地にあるエイジの長屋の前で『イバキ』と『スー』。そして『エイジ』が会話を続けており、その様子を家の前の物陰から気配を消してソフィ達が覗き見ている状態である。
本来イバキ達はエイジの家の中で内容を話そうとしていたのだが、頑なに家に入れたがらないエイジの意思を尊重し、こうして周囲に『結界』を張って周りに話を聞かれないようにするのだった。
「先程、加護の森に現れた二人組の話はしましたね?」
どうやらもう近づいて会話をしても大丈夫と判断したのだろう。イバキとスーは、エイジの近くまで寄りながら口を開くのだった。
「ああ、ランク3の『動忍鬼』だったか? 鬼人が野に放たれたという事だったな」
イバキとスーはエイジの確認に真顔で頷く。
「現在『退魔組』では多くの問題事を抱えているという事は、エイジ殿もご存じだと思います。北の山にある妖魔達の監視をしている者達の報告では、再びランク2相当の妖魔達が集い始めているという事。かつての『妖魔団の乱』の二の舞になる事だけは絶対に防がなくてはなりませんし、最終的には上の判断ですが、どちらにせよそちらに人員を多く割く事が予想されます」
イバキ達の言う上とは『退魔組』の頭領である『サテツ』よりさらに上『退魔組』の創設者にして『妖魔召士』の『ゲンロク』と呼ばれる男や、その『ゲンロク』に付き従う『妖魔召士』達の事である。
退魔組は現場で指示を出したりしているのは『サテツ』と呼ばれる男なのだが、実質的に最終的な判断を下せるのはこの男ではなく『ゲンロク』と呼ばれる男なのであった。
ゲンロクからの指示でサテツが現場の指揮を執り、そして退魔組の幹部と呼べる『特別退魔士』がリーダーとなって、退魔組の隊士達を取り纏めるという組織形態なのだろう。
「そして先日騒ぎを起こした者達『退魔組』の御客分であった『イダラマ』の捜索。そのイダラマに逃走経路を用意し幇助したと思われる『サカダイ』の元『妖魔退魔師』達の割り出し、それを巡っての『サカダイ』への対処。他にもその『イダラマ』が逃亡するきっかけとなった『エヴィ』と名乗る謎の男の行方も調べなければなりません。我々『退魔組』だけでは全てを並行して作戦を続けるのは不可能なのです。是非『エイジ』殿の力をお借りしたいと思い、この場に来たという事なのです」
……
……
……
「エヴィだと!?」
(おい! 下手に声を出すな、気づかれんぞ!)
その頃、長屋の物陰からイバキ達の会話を聞いていたソフィは食事処で世話になった『イバキ』という男から、ソフィの配下である『エヴィ』の名が出た事で驚きを隠し切れず声を出してしまうのだった。
それを小声で諫めながらヌーは、イバキ達に気づかれていないか視線を送る。どうやらイバキはエイジとの話に集中していたようで、先程のソフィの声には気づいていなさそうだった。
――しかし問題はそちらの方では無く『スー』というイバキの護衛を務めるオールバックの男の方であった。
……
……
……
「ん?」
イバキとエイジから一歩離れて『スー』は『エイジ』の住居である長屋の方に視線を向ける。左手は腰鞘の刀にあてていた。
スーの視線に気づいたエイジは、目の前の二人に聞こえない程度の舌打ちをする。
「どうした、スー?」
突然鋭い視線を長屋に向け始めた相方に、イバキという若い少年は疑問を持って声を掛ける。
「いや、何やら物音と視線を感じたものでな。殺気ではないから問題はなさそうだが……」
注意深くエイジの長屋を見ながら、スーはそう口にする。
……
……
……
(我の声よりお主の視線で気づかれたようではないか!)
(うるせぇっ! 元はといえばてめぇが反応するからバレたんだろうが!)
今度は小声で静かに罵り合うソフィとヌーの二人であった。
ゆっくり、ゆっくりとではあるが、スーという男はこちらに向けて一歩ずつ歩いてくる。
どうやら先程のヌーが向けた視線に思うところがあったのか、注意深いという言葉がよく似合う程に、刀に手をあてながら近づいてくる。
(どうする? 下手に攻撃をされる前に出ていくか?)
(そうだな、我達はすでに食事処で顔を合わせておる。単に知り合いを探していて、ここに辿り着いたという事にすれば誤魔化せるだろう)
二人がそう結論を出すと互いに頷き合う。そして二人が物陰から、立ち上がろうとしたその時であった。
……
……
……
本来イバキ達はエイジの家の中で内容を話そうとしていたのだが、頑なに家に入れたがらないエイジの意思を尊重し、こうして周囲に『結界』を張って周りに話を聞かれないようにするのだった。
「先程、加護の森に現れた二人組の話はしましたね?」
どうやらもう近づいて会話をしても大丈夫と判断したのだろう。イバキとスーは、エイジの近くまで寄りながら口を開くのだった。
「ああ、ランク3の『動忍鬼』だったか? 鬼人が野に放たれたという事だったな」
イバキとスーはエイジの確認に真顔で頷く。
「現在『退魔組』では多くの問題事を抱えているという事は、エイジ殿もご存じだと思います。北の山にある妖魔達の監視をしている者達の報告では、再びランク2相当の妖魔達が集い始めているという事。かつての『妖魔団の乱』の二の舞になる事だけは絶対に防がなくてはなりませんし、最終的には上の判断ですが、どちらにせよそちらに人員を多く割く事が予想されます」
イバキ達の言う上とは『退魔組』の頭領である『サテツ』よりさらに上『退魔組』の創設者にして『妖魔召士』の『ゲンロク』と呼ばれる男や、その『ゲンロク』に付き従う『妖魔召士』達の事である。
退魔組は現場で指示を出したりしているのは『サテツ』と呼ばれる男なのだが、実質的に最終的な判断を下せるのはこの男ではなく『ゲンロク』と呼ばれる男なのであった。
ゲンロクからの指示でサテツが現場の指揮を執り、そして退魔組の幹部と呼べる『特別退魔士』がリーダーとなって、退魔組の隊士達を取り纏めるという組織形態なのだろう。
「そして先日騒ぎを起こした者達『退魔組』の御客分であった『イダラマ』の捜索。そのイダラマに逃走経路を用意し幇助したと思われる『サカダイ』の元『妖魔退魔師』達の割り出し、それを巡っての『サカダイ』への対処。他にもその『イダラマ』が逃亡するきっかけとなった『エヴィ』と名乗る謎の男の行方も調べなければなりません。我々『退魔組』だけでは全てを並行して作戦を続けるのは不可能なのです。是非『エイジ』殿の力をお借りしたいと思い、この場に来たという事なのです」
……
……
……
「エヴィだと!?」
(おい! 下手に声を出すな、気づかれんぞ!)
その頃、長屋の物陰からイバキ達の会話を聞いていたソフィは食事処で世話になった『イバキ』という男から、ソフィの配下である『エヴィ』の名が出た事で驚きを隠し切れず声を出してしまうのだった。
それを小声で諫めながらヌーは、イバキ達に気づかれていないか視線を送る。どうやらイバキはエイジとの話に集中していたようで、先程のソフィの声には気づいていなさそうだった。
――しかし問題はそちらの方では無く『スー』というイバキの護衛を務めるオールバックの男の方であった。
……
……
……
「ん?」
イバキとエイジから一歩離れて『スー』は『エイジ』の住居である長屋の方に視線を向ける。左手は腰鞘の刀にあてていた。
スーの視線に気づいたエイジは、目の前の二人に聞こえない程度の舌打ちをする。
「どうした、スー?」
突然鋭い視線を長屋に向け始めた相方に、イバキという若い少年は疑問を持って声を掛ける。
「いや、何やら物音と視線を感じたものでな。殺気ではないから問題はなさそうだが……」
注意深くエイジの長屋を見ながら、スーはそう口にする。
……
……
……
(我の声よりお主の視線で気づかれたようではないか!)
(うるせぇっ! 元はといえばてめぇが反応するからバレたんだろうが!)
今度は小声で静かに罵り合うソフィとヌーの二人であった。
ゆっくり、ゆっくりとではあるが、スーという男はこちらに向けて一歩ずつ歩いてくる。
どうやら先程のヌーが向けた視線に思うところがあったのか、注意深いという言葉がよく似合う程に、刀に手をあてながら近づいてくる。
(どうする? 下手に攻撃をされる前に出ていくか?)
(そうだな、我達はすでに食事処で顔を合わせておる。単に知り合いを探していて、ここに辿り着いたという事にすれば誤魔化せるだろう)
二人がそう結論を出すと互いに頷き合う。そして二人が物陰から、立ち上がろうとしたその時であった。
……
……
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