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ケイノト編
846.恐ろしい裏路地
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あの後に渋々とこの町での滞在を認めたヌーだったが、宿は出来るだけ目立たない場所を選ぶことが条件だと告げてきた。
ソフィ達を妖魔として狙っているであろう『退魔組』の本拠地が、この『ケイノト』にある以上はヌーの条件は至極当然だといえるのだった。
ケイノトへ来た時に通った門から北を目指して歩いてきたが、表通りにはそこそこ宿が立ち並んでいた。どうやら同じ表通りに『退魔組』の屯所がある為、安全面を意識して立てられているのだろう。
当然ソフィ達はその表通りに立ち並ぶ宿を利用する事は出来ない。出来るだけ目立たぬように、滞在できる宿が望ましいからである。
どれだけの期間をこのケイノトで過ごす事になるかは、配下のエヴィ次第なのだが、そのエヴィがこの町に居るかどうかも分からない。しかしだからこそ根気よく探す為にも拠点を持つという事が重要になってくる。
表通りの宿に滞在するという選択肢を放棄したソフィ達は、この町に来た時に視線を感じた『ケイノト』の裏路地に入る事にするのだった。
表通りの長屋と長屋の間にある細い路地を入っていき、裏側の路地側に出るソフィ達。喧騒という程ではないが、そこそこに活気があった表通りとは違い、裏にある路地は提灯なども飾られていなかった。
しかし、裏路地に入っても変わらず長屋の数が多く見られる。このケイノトという町には、相当に住んでいる者が多いのだろうか。
この世界の前に跳んだ世界であるリラリオの世界では、商人ギルドや冒険者ギルドが多くあった為、その町で暮らしている住人というよりは、冒険者たちを泊める宿が盛んであった。
だがこの町はどちらかというと、その町に元から住んでいる者が多い印象を受ける。アレルバレルの世界にある『人間界』に近い町のようである。
ソフィは感慨深く裏路地を歩き始めたが、再びあの視線を感じて、ちらりと路地の奥の方に視線を向ける。
「……」
「……」
その視線の先には恐ろしく鋭い目つきをした少年が立っていた。少年の年の頃は十歳にも満たぬ程であろうか。リラリオの世界のソフィの見た目姿よりも更に幼く見える。しかし堂々とこちらを睨みつけている少年は、大人であっても後ずさる程の威圧感を感じさせた。
無言でこちらを睨みつけていた少年は、ソフィが直ぐに表通りへと引き返すだろうと思っていたが、その場から一向に動かないのを見て何やら口元を動かし始めた。
――ここから去れ。
少年の目が青く光り輝くと、ソフィ達の元に通常では見えない魔力の乗った波が押し寄せてきた。波打つ程の圧力。それはまるで魔族が使う『魔力圧』に酷似していた。
しかし少年がこの魔力圧を放ったのは目からである。魔法のように詠唱や瞬時に魔力を圧縮させて放つ類では無く、どうやらこれは『金色の目』や『紅い目』のような魔瞳の類なのだろう。
瞬時にヌーが『金色』を纏いテアは空間から大鎌を取り出すが、その前に立っていたソフィは左手を軽く上げて後ろへ合図を送る。
そしてソフィの目が金色へと輝いたと同時、少年の『青い目』から放たれた魔力の波は、ソフィの『金色の目』によって完全に支配されて消え去った。
「えっ!?」
鋭い目をしていた少年は信じられないとばかりに声をあげた。どうやら自分の思い描いた結果とは、全く違う結末を迎えた事で驚きが先に声となって漏れ出たといった様子だった。
しかし更に次の瞬間、裏路地一帯に別の場所から膨大な魔力が放たれた。後ろにいたヌー達は自分達が結界の内側へ取り込まれる感覚を味わう。
『結界』がソフィの元まで辿り着く瞬間、ソフィはその場から離脱する為に飛翔する。次元の狭間の中であっても全神経を集中している時のソフィは、コンマ数秒の意識を保ち動く事が出来るようになっている。
同じ大魔王であるヌーや死神貴族である『テア』であっても、反応の出来なかったその結界から、ソフィは一人離脱する事に成功するのだった。
ソフィ達を妖魔として狙っているであろう『退魔組』の本拠地が、この『ケイノト』にある以上はヌーの条件は至極当然だといえるのだった。
ケイノトへ来た時に通った門から北を目指して歩いてきたが、表通りにはそこそこ宿が立ち並んでいた。どうやら同じ表通りに『退魔組』の屯所がある為、安全面を意識して立てられているのだろう。
当然ソフィ達はその表通りに立ち並ぶ宿を利用する事は出来ない。出来るだけ目立たぬように、滞在できる宿が望ましいからである。
どれだけの期間をこのケイノトで過ごす事になるかは、配下のエヴィ次第なのだが、そのエヴィがこの町に居るかどうかも分からない。しかしだからこそ根気よく探す為にも拠点を持つという事が重要になってくる。
表通りの宿に滞在するという選択肢を放棄したソフィ達は、この町に来た時に視線を感じた『ケイノト』の裏路地に入る事にするのだった。
表通りの長屋と長屋の間にある細い路地を入っていき、裏側の路地側に出るソフィ達。喧騒という程ではないが、そこそこに活気があった表通りとは違い、裏にある路地は提灯なども飾られていなかった。
しかし、裏路地に入っても変わらず長屋の数が多く見られる。このケイノトという町には、相当に住んでいる者が多いのだろうか。
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だがこの町はどちらかというと、その町に元から住んでいる者が多い印象を受ける。アレルバレルの世界にある『人間界』に近い町のようである。
ソフィは感慨深く裏路地を歩き始めたが、再びあの視線を感じて、ちらりと路地の奥の方に視線を向ける。
「……」
「……」
その視線の先には恐ろしく鋭い目つきをした少年が立っていた。少年の年の頃は十歳にも満たぬ程であろうか。リラリオの世界のソフィの見た目姿よりも更に幼く見える。しかし堂々とこちらを睨みつけている少年は、大人であっても後ずさる程の威圧感を感じさせた。
無言でこちらを睨みつけていた少年は、ソフィが直ぐに表通りへと引き返すだろうと思っていたが、その場から一向に動かないのを見て何やら口元を動かし始めた。
――ここから去れ。
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しかし少年がこの魔力圧を放ったのは目からである。魔法のように詠唱や瞬時に魔力を圧縮させて放つ類では無く、どうやらこれは『金色の目』や『紅い目』のような魔瞳の類なのだろう。
瞬時にヌーが『金色』を纏いテアは空間から大鎌を取り出すが、その前に立っていたソフィは左手を軽く上げて後ろへ合図を送る。
そしてソフィの目が金色へと輝いたと同時、少年の『青い目』から放たれた魔力の波は、ソフィの『金色の目』によって完全に支配されて消え去った。
「えっ!?」
鋭い目をしていた少年は信じられないとばかりに声をあげた。どうやら自分の思い描いた結果とは、全く違う結末を迎えた事で驚きが先に声となって漏れ出たといった様子だった。
しかし更に次の瞬間、裏路地一帯に別の場所から膨大な魔力が放たれた。後ろにいたヌー達は自分達が結界の内側へ取り込まれる感覚を味わう。
『結界』がソフィの元まで辿り着く瞬間、ソフィはその場から離脱する為に飛翔する。次元の狭間の中であっても全神経を集中している時のソフィは、コンマ数秒の意識を保ち動く事が出来るようになっている。
同じ大魔王であるヌーや死神貴族である『テア』であっても、反応の出来なかったその結界から、ソフィは一人離脱する事に成功するのだった。
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