846 / 1,985
ノックス編
831.偶然か必然か
しおりを挟む
ソフィ達は加護の森を出た後、道なりに歩みを進めながらシクウに案内されて、ケイノトへ向かっている。もうここまで来ればケイノトまでは目と鼻の先であり、たとえシクウと言う道案内人が居なくともここからはソフィ達だけでも辿り着けるだろう。
ここに来るまでの道中にソフィ達が崖下に顔を覗かせたあの場所で、実はソフィ達がこの世界に来る事になった目的の配下である『エヴィ』が崖の向こうの森の先にあった洞穴に居たのだが、ソフィ達は気づく事が出来ずに、ケイノトの町の近くまで来てしまっていた。
しかしそれもまた仕方のない事ではあった。
あの崖を挟んだ向こう側は、ケイノトとは別の町の勢力圏だとシクウに告げられた事も大きかったが、それ以上の理由の一つに『イダラマ』というエヴィと行動を共にしている『妖魔召士』が、彼らの存在を稀薄にさせる結界を施していた為である。
イダラマが完全に異界と遮断させる程の結界を張っていれば、逆にその違和感にソフィ達が気づく可能性もあったが、人除け程度の結界であったことが逆に町に妖魔を近づけないようにしようと、人間達が張ったのだろうとソフィ達に思わせてしまったのである。
イダラマは『妖魔召士』の中でも相当の上位の魔力を持っている為、本気で結界を施せば異界と遮断させる程の結界を張る事は可能であった。
しかしそれをしない理由としては、先程ソフィに違和感を感じさせる可能性があると述べたように、ケイノトの町の実力者たちである『サテツ』や『ゲンロク』達にイダラマ達の居場所がバレる可能性がある為であった。
偶然ではあったが何か一つでもキッカケがあれば、このタイミングでソフィは、エヴィと直ぐに再会する事が出来て、そのままアレルバレルの世界へと戻る事が出来た可能性もあったのだが、現実はそう上手くはいかなかったようである。
再び両者は離れる事となり、ソフィはそのままケイノトの町へと案内されてエヴィと再会するという機会を失ってしまうのであった。
そしてようやくソフィ達は、高い山の上にあった森から、ケイノトの町が見下ろせる所まで降りて来る事が出来たのだった。
(どうやらケイノトとやらに辿り着いたようだな)
(ああ。それでここからどうするんだ?)
ソフィとヌーが歩く速度を緩めながら小声で話始めたが、前を歩いているシクウには聞こえていないようでこれまで通りの速度で歩いていく。少しずつソフィ達とシクウの間に距離が開き始めるのだった。
(このままあいつと町の中に行くのは、流石に不味いんじゃねぇのか?)
ソフィとヌー達は森の中で前を歩くシクウの属する組織の連中と戦っている。最初に出会った複数人の者達は町に戻っているだろうし、既に自分達の事は広まっているだろう。そこにシクウと共に町の中に入れば、どうなるかは火を見るより明らかである。
出来ればひっそりと町の中に入り情報を集めてエヴィを探し出し、そのままこの世界を離れるのが最善だと考えるとするならば、シクウを『金色の目』で操って一人で組織の元に向かわせて、シクウの仲間達に無事を知らせて何も無かったように振るませた後、自分達が中に入るべきだろう。
そう考えたソフィだったが、そこで背後から『テア』が声を掛けてきた。
「――」(邪魔なら私が殺してやろうか?)
テアは死神の言葉で話すが、ソフィはその言語を理解出来なかった。どうやら契約を交わしているヌーにしか死神のテアの言葉は通じないらしい。
「何と言っているのだ?」
「ああ。ここまで来ればもう奴は用済みだろうから、こいつが奴を殺そうかと言ってきている」
「……」
その言葉にソフィは目を丸くしてテアの方を見る。
「――」(も、もしかして怒っていますか? 差し出がましい事を言ってしまって申し訳ないです)
既に死神のテアはソフィを自分より格上の存在だと認めている。自分が短絡的な発言をした事でソフィに怒られるかもしれないと考えたテアは、ソフィに謝罪をしながらヌーに、何とか弁明してくれとばかりに視線を向けるのだった。
「クックック、別にこいつはてめぇに対して何とも思ってねぇよ。だがまぁそんな発言を繰り返し行えば、てめぇは消されるかもしれねぇがな」
テアはヌーの言葉に怖気が走り、顔を青くしていた。
「何を言っているか分からぬが、ひとまずあやつを殺すくらいならば、操って我達の事を忘れさせるぐらいでいいだろう。下手に殺してしまえば、その後が面倒な事になるしな」
最悪ケイノトの町の『退魔組』を全て敵に回してしまう。そうなればエヴィを探す事も困難となる事は間違いなかった。
「ああ。さっさと『天衣無縫』を探さなきゃならねぇしな?」
どうやらソフィの意図を汲み取ったであろうヌーは、静かに前を歩くシクウを見るのだった。
「じゃああやつを先に行かせるが、それでよいな?」
「ああ、勝手にしろ。俺はてめぇを元の世界に戻す為だけについてきているだけだ。面倒事は全部お前に任せる」
ヌーは面倒くさそうにそう告げると、それで会話は終わりだとばかりに歩を進める速度をあげるのだった。
「クックック、もう少し我との会話を楽しんでくれても良いでは無いか」
そう言ってソフィは自分の後ろに居た『テア』に視線を向けながら『なぁ?』とばかりに同意を求めると、テアは苦笑いを浮かべながらソフィが何を言っているか分からず、困った表情のまま首を傾げるのだった。
ここに来るまでの道中にソフィ達が崖下に顔を覗かせたあの場所で、実はソフィ達がこの世界に来る事になった目的の配下である『エヴィ』が崖の向こうの森の先にあった洞穴に居たのだが、ソフィ達は気づく事が出来ずに、ケイノトの町の近くまで来てしまっていた。
しかしそれもまた仕方のない事ではあった。
あの崖を挟んだ向こう側は、ケイノトとは別の町の勢力圏だとシクウに告げられた事も大きかったが、それ以上の理由の一つに『イダラマ』というエヴィと行動を共にしている『妖魔召士』が、彼らの存在を稀薄にさせる結界を施していた為である。
イダラマが完全に異界と遮断させる程の結界を張っていれば、逆にその違和感にソフィ達が気づく可能性もあったが、人除け程度の結界であったことが逆に町に妖魔を近づけないようにしようと、人間達が張ったのだろうとソフィ達に思わせてしまったのである。
イダラマは『妖魔召士』の中でも相当の上位の魔力を持っている為、本気で結界を施せば異界と遮断させる程の結界を張る事は可能であった。
しかしそれをしない理由としては、先程ソフィに違和感を感じさせる可能性があると述べたように、ケイノトの町の実力者たちである『サテツ』や『ゲンロク』達にイダラマ達の居場所がバレる可能性がある為であった。
偶然ではあったが何か一つでもキッカケがあれば、このタイミングでソフィは、エヴィと直ぐに再会する事が出来て、そのままアレルバレルの世界へと戻る事が出来た可能性もあったのだが、現実はそう上手くはいかなかったようである。
再び両者は離れる事となり、ソフィはそのままケイノトの町へと案内されてエヴィと再会するという機会を失ってしまうのであった。
そしてようやくソフィ達は、高い山の上にあった森から、ケイノトの町が見下ろせる所まで降りて来る事が出来たのだった。
(どうやらケイノトとやらに辿り着いたようだな)
(ああ。それでここからどうするんだ?)
ソフィとヌーが歩く速度を緩めながら小声で話始めたが、前を歩いているシクウには聞こえていないようでこれまで通りの速度で歩いていく。少しずつソフィ達とシクウの間に距離が開き始めるのだった。
(このままあいつと町の中に行くのは、流石に不味いんじゃねぇのか?)
ソフィとヌー達は森の中で前を歩くシクウの属する組織の連中と戦っている。最初に出会った複数人の者達は町に戻っているだろうし、既に自分達の事は広まっているだろう。そこにシクウと共に町の中に入れば、どうなるかは火を見るより明らかである。
出来ればひっそりと町の中に入り情報を集めてエヴィを探し出し、そのままこの世界を離れるのが最善だと考えるとするならば、シクウを『金色の目』で操って一人で組織の元に向かわせて、シクウの仲間達に無事を知らせて何も無かったように振るませた後、自分達が中に入るべきだろう。
そう考えたソフィだったが、そこで背後から『テア』が声を掛けてきた。
「――」(邪魔なら私が殺してやろうか?)
テアは死神の言葉で話すが、ソフィはその言語を理解出来なかった。どうやら契約を交わしているヌーにしか死神のテアの言葉は通じないらしい。
「何と言っているのだ?」
「ああ。ここまで来ればもう奴は用済みだろうから、こいつが奴を殺そうかと言ってきている」
「……」
その言葉にソフィは目を丸くしてテアの方を見る。
「――」(も、もしかして怒っていますか? 差し出がましい事を言ってしまって申し訳ないです)
既に死神のテアはソフィを自分より格上の存在だと認めている。自分が短絡的な発言をした事でソフィに怒られるかもしれないと考えたテアは、ソフィに謝罪をしながらヌーに、何とか弁明してくれとばかりに視線を向けるのだった。
「クックック、別にこいつはてめぇに対して何とも思ってねぇよ。だがまぁそんな発言を繰り返し行えば、てめぇは消されるかもしれねぇがな」
テアはヌーの言葉に怖気が走り、顔を青くしていた。
「何を言っているか分からぬが、ひとまずあやつを殺すくらいならば、操って我達の事を忘れさせるぐらいでいいだろう。下手に殺してしまえば、その後が面倒な事になるしな」
最悪ケイノトの町の『退魔組』を全て敵に回してしまう。そうなればエヴィを探す事も困難となる事は間違いなかった。
「ああ。さっさと『天衣無縫』を探さなきゃならねぇしな?」
どうやらソフィの意図を汲み取ったであろうヌーは、静かに前を歩くシクウを見るのだった。
「じゃああやつを先に行かせるが、それでよいな?」
「ああ、勝手にしろ。俺はてめぇを元の世界に戻す為だけについてきているだけだ。面倒事は全部お前に任せる」
ヌーは面倒くさそうにそう告げると、それで会話は終わりだとばかりに歩を進める速度をあげるのだった。
「クックック、もう少し我との会話を楽しんでくれても良いでは無いか」
そう言ってソフィは自分の後ろに居た『テア』に視線を向けながら『なぁ?』とばかりに同意を求めると、テアは苦笑いを浮かべながらソフィが何を言っているか分からず、困った表情のまま首を傾げるのだった。
0
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界の生き物が全員可愛すぎるので動物園ならぬ魔物園を開こうと思います!
パクパク
ファンタジー
動物を愛してやまない相原直樹(あいはら なおき)は、28歳の独身サラリーマン。
自宅で柴犬とゴールデンレトリバー、黒猫と三毛猫の計4匹を飼いながら、休日には動物園やアニマルカフェを巡るほどの筋金入りの動物好きだった。
そんな彼が、有給を使って向かったのは ケニアのサファリツアー。
野生動物たちの雄大な姿をこの目で見たい――そんな夢を叶えるはずだったが、予期せぬ事故に巻き込まれ、命を落としてしまう。
だが、次に目を覚ますと――彼は異世界の貴族の赤ん坊「レオン・フォンティナ」として転生していた。
厳格ながら優しさを秘めた父、天使のように甘やかしてくれる母、過保護な兄、ツンデレな姉に囲まれながら、貴族としての生活を送ることになったレオン。
しかし、彼が最も気になったのは――この世界に「動物」が存在しないことだった。
だが、その代わりに存在するのは 「魔物」と呼ばれる生き物たち。
猫のような羽を持つ魔物フェルミナ、荷物を運ぶ獣バルガン、芸をする猿のような魔物トゥリック……。
かつての愛した動物たちの真実を求め、魔物たちの秘密を解き明かすため――
レオンの魔物探求の旅が、今始まる!
動物好き転生者が異世界で魔物と絆を築く、知的冒険ファンタジー!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。
後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。
その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。
世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。
王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる