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ノックス編

826.葛藤するシクウ

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 加護の森に居るソフィ達は、現在ケイノトにソフィ達の事を伝えに言ったミカゲの護衛の剣士『シクウ』に自分達の事情を話して、エヴィを探す為にシクウに『ケイノト』への道案内をしてもらおうと考えていた。

 シクウもまたソフィ達が魔族だという事を説明された後、ひとまずは意思の疎通が出来ているという事実の為、彼らの町であるケイノトに案内してもいいと考えるのだった。

 だが、彼がふと横たわっているタクシンを見つけたことでシクウは、ソフィ達をケイノトまで案内をする事に不安が生じ始めていた。

 『ケイノト』は昔から妖魔達と戦う人間達『妖魔召士ようましょうし』と呼ばれる者達が居る町である。

 現在その町には『ゲンロク』と呼ばれる古参の『妖魔召士ようましょうし』が創設した『退魔組たいまぐみ』という退魔士たちを集めた組織が存在する。

 ケイノトに居る退魔士の多くが一般的な人間より強い力を持ってはいるが、人型となれる『鬼』や『仙狐せんこ』と呼ばれる妖魔を討伐出来る程の力は持っていない。

 当然これまではそういう強い妖魔と戦う者達が『妖魔召士ようましょうし』や更に戦闘能力に特化した戦士『妖魔退魔師ようまたいまし』と呼ばれる者達である戦闘のエキスパートが、出向いていたのだが、昔より妖魔達が増加した事に加えて『妖魔召士ようましょうし』と『妖魔退魔師ようまたいまし』の間で多くの思想の見解の違いが起こり、かつてのように二つの組織が協力しあって連携にあたるという事が出来なくなってしまったのである。

 流石に数が膨れ上がる妖魔達の事を考えてこのままではまずいと『妖魔召士ようましょうし』側の人間『ゲンロク』が『妖魔召士ようましょうし』のサポートを行う『退魔士』達を集めて『退魔組たいまぐみ』と呼ばれる組織を創設したのである。

(この者達が人間を襲い喰う妖魔では無い魔族とやらだったとしても、こんな簡単に人殺める者達に我々の町へ案内する事は危険すぎる。ど、どうにかして誤魔化さなければ……!)

 現在の『ケイノト』は『退魔組衆』に属する退魔士の増加によって、増加の一途を辿っていた妖魔達を相手に何とか抵抗を続けられはしている。少し前にケイノトで起きた『妖魔団の乱』と呼ばれる事変では『妖魔召士ようましょうし』と『退魔組衆たいまぐみしゅう』達のお陰でケイノトは滅ぼされずに済んだ程である。

 だがそれでもケイノトの被害は、決して少なくは無かった。現在も『妖魔団の乱』によって怪我をした者達が数多く残っており、もう一度同じ規模の事変が起きれば今度こそ『ケイノト』は終わりだろう。

 だからこそこうして、加護の森を含めた多くの場所に偵察を増やして、少しずつ妖魔達を減らしていっているのである。

 そんな今の状況のケイノトに、タクシン程の力量を持つ退魔士をあっさりと倒した者達をケイノトへ案内するのは、余りにも危険すぎるとシクウは考えたのであった。

「お主が何を考えているのか、うっすらとではあるが理解している。だが我らとて突然襲って来られて何もせずにやられるわけにはいかぬ。それはお主も理解できるだろう?」

「!」

 シクウは図星を突かれて何も言えなかった。そしてソフィの言うように、自分達が逆の立場であったならば自己防衛の為に戦闘を余儀なくされるだろう。それは間違ってはいないし、これ以上ない程の正論であった。

「あなた方の目的は『魔族』とやらの『同胞』を見つけ出す事。妖魔に扮して町に入り込んで仲間を呼び寄せようとはしませんね?」

「当然だとも」

 ソフィがシクウの言葉に大きく頷きながらそう答えた。

「てめぇらの仲間が手を出してこなければ、こっちもわざわざ面倒な事はしねぇよ。俺はさっさとこんな用事を済ませて、その後に更に面倒な『』を片付けねぇといけないんだからな」

 同調するように話始めたヌーだったが、その話の最中にフルーフとの約束を思い出し、舌打ちをしながらもそう口にするのだった。

「わ、分かりました。あなた方を妖魔では無く『』だという言葉を信じて、我ら妖魔召士の町『ケイノト』へご案内しましょう」

 そしてようやく『上位退魔士じょうたいま』であり、ミカゲの護衛剣士であったシクウは、ソフィ達を自分達の町へと案内する事を決断するのであった。

 ……
 ……
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