上 下
795 / 1,915
封印式神編

781.根源の玉に刻まれた刻印

しおりを挟む
「それにしてもサイヨウよ、お主はこの世界にどうやってきたのだ。まさかお主も『世界間移動アルム・ノーティア』といった『時魔法タイム・マジック』の類を使えるのか?」

「確かにそのような秘術は小生の国にもが、今の小生の国では使える者は居らぬ。当然小生も使えぬよ」

「では、どうやってこのリラリオに来たのだ?」

 サイヨウは札を入れていた札とは別の場所から、あるマジックアイテムを取り出し始める。そのマジックアイテムは灰色の玉だった。

「その玉はか?」

 サイヨウの取り出したマジックアイテムを見たソフィは、自身も持っているそのマジックアイテムをサイヨウの前に出す。

「これは驚いた。少しみせてもらってもよいか?」

「ああ。これは組織の者達が持っていたモノを我の配下が手に入れた物のようなのだ」

「……」

 サイヨウはソフィから受け取った『根源の玉』の真贋を確かめるようにじっくりと観察し、表面に刻印されている文字を指で擦るようにしながら、読み進めるサイヨウだった。

 根源の玉に刻まれている文字は、ソフィ達では読めなかった為に、もしかするとサイヨウ達の世界の文字なのかもしれなかった。

「ソフィ殿。確かにこれは小生の国の物で間違いはない。小生の国の数代前の当主が何者かにこの転置宝玉を根こそぎ奪われたという話を聞いた事がある。そのがまさにこれなのだろう。他にいくつか持ってはいないだろうか?」

「ふむ。一つは配下が我を追ってこの世界へ来た時に使用したようで、現在はこの二つしか我は持ってはおらぬ」

「そうか。出来ればお主の持つ『転置宝玉てんちほうぎょく』を回収させてもらいたいのだが、構わぬだろうか?」

「うむ。別に我が持っていても使いどころが無いしな。しかしこれの出所が分かって少しだけ安心したよ。その転置宝玉とやらの所為で、我がこの世界に来ることになったのだからな」

 アレルバレルの世界に居た頃に勇者マリスの仲間が、大賢者エルシスにこのマジックアイテムを持たされた事により、使用されてソフィはリラリオの世界に来る事となったのだ。

 謎に包まれたマジックアイテムだったが、ようやく出所が分かった事で、色々と解決できそうだと考えるソフィであった。

「そうだったか。しかしその組織とやらの者達は、どうして小生達の国のこの秘宝の存在を知ったのだろうな」

 この場にある三つの『転置宝玉てんちほうぎょく』と呼ばれた『マジックアイテム』を見ながらサイヨウは首を傾げるのだった。

「それは分からぬが、組織の者達に持たされたであろう我の世界の勇者が、そのマジックアイテムの事を根源の玉と呼んでいた。組織の生き残りが居れば、何か知っているかもしれんな」

「で、あるか」

 ソフィから受け取った方の『根源の玉』を懐に入れて、サイヨウが取り出した方の『転置宝玉てんちほうぎょく』をソフィに渡す。

「その『転置宝玉てんちほうぎょく』に魔力を込めながら、お主の居た世界を思い浮かべてみるがよい」

 サイヨウに言われた通りに渡された『転置宝玉てんちほうぎょく』に魔力を込めて『アレルバレル』の世界をイメージする。

 ――すると『転置宝玉てんちほうぎょく』は色を持ち始めたかと思えば、ツルツルの表面に先程の『根源の玉』と同じく刻印が刻まれ始めた。

 しかし次の瞬間には『転置宝玉てんちほうぎょく』はピシッピシッと、ガラスが割れるような音が鳴り始めた。

「むっ……! ソフィ殿、魔力が強すぎる! もうよい、魔力を分散させよ」

 ソフィはサイヨウの言葉に慌てて込めていた魔力を消し始めた。

「おお、色が変わっておるし、何やら文字が刻まれておるぞ!」

 先程まで灰色であった『転置宝玉てんちほうぎょく』は、ソフィの魔力によって青色の光の輝きを放ち、ソフィが持っていた根源の玉と同じように、刻印が刻まれるのだった。

「全くお主の魔力はどうなっておるのか。もう少し遅ければ、この貴重な宝玉は割れて使い物にならなくなっておったぞ……」

 サイヨウは溜息を吐きながら、額の汗を拭うのだった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...