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封印式神編
767.封印式神・鬼女
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サイヨウの式札から現れたのは、先程までラルフが相手をしていたような一つ目の鬼や蛇ではなく、人型の女性の姿だった。男であるリディアやラルフと同じくらい背が高く、白装束を着ているその妖魔の女性は、頭に少し大きな角が生えており、目は三白眼で長い髪をサイドに束ねている。
「ねぇ、キーリ。札から人間みたいなのが出てきたけど、あれもサイヨウさんの使い魔なのかしらぁ……?」
「ああ、きっとそうだろう。俺も人間みたいな奴を見るのは初めてだ」
結界の外側に居るレアとキーリは、サイヨウの出した人型の式に興味津々のようであった。
札から出た妖魔の女性は、自分の身体を見回していたが、やがて目の前で刀を構えるリディアを見て笑った。
「さて、リディア殿、準備は宜しいか? この鬼女は、これまでの低位妖魔とは異なる強さをしておる。心してかかるがいい」
「準備は出来ている。一瞬で斬り伏せてやるから早く始めろ」
リディアの余裕綽々な態度が気に入らなかったのか、鬼女は浮かべていた笑みを消した後に、眉を寄せながら腰鞘から刀を抜いた。
サイヨウは互いに準備が整った事を確認して、開始の合図を告げた。
リディアの刀は金色のオーラに包まれているが、これは自在に金色を操れるようになった彼が、只の刀に纏わせているだけであり、オーラで作り出す彼の『特異』の刀の『柄のない光り輝く二刀の刀』ではなかった。どうやらまずはこの妖魔である鬼女の強さを軽く測ろうという事だろう。
構えているだけで仕掛けてこないリディアを見て、鬼女は抜いた刀を中段に構えながら右足をゆっくりと前へと広げていく。
その瞬間、対峙しているリディアの額から汗が流れ始めた。鬼女が構えたと同時に恐ろしい重圧がリディアに圧し掛かったのである。
(どうやら眉唾ではないようだな)
リディアは刀のみに纏わせていたオーラを全身に纏わせる。鬼女が通常の状態では、相手に出来る存在ではないと判断したようであった。
鬼女は物珍しそうな目でオーラを纏わせたリディアを見て口角を吊り上げた後、そのリディアに向かって斬りかかるのだった。
斜め上から振り下ろされる、鬼女の刀をリディアは真っ向から受け止める。切先同士が擦れ合い、キリキリキリと音を立てる。今のリディアはエルシスとの厳しい修行を乗り越えており、自在に金色を操れるようになっている上に、戦力値も以前とは比較にならない程に上昇している為、相手が『真なる魔王』領域の魔族であっても、今のリディアには全く相手にならない程である。
しかしそんなリディアと鍔迫り合いを行い続けている鬼女は、平然とオーラを纏うリディアの刀に力負けをしておらず、むしろ鬼女は余裕そうに笑いを浮かべていた。
「くっ……!」
リディアは刀に込める力を強めて一気に押し返そうとするが、その様子を見た鬼女は逆に力を緩めながらリディアを前に出させる。
しかしリディアも剣士として長く刀を扱ってきており、鬼女の狙いはよく理解している。わざと身を引いて体を泳がせたところに、一太刀を浴びせようとしているのだと判断したリディアは、引いていく鬼女の刀を追いかけるのではなく、自身の刀も引いてみせる。
互いに鍔迫り合いで力の拮抗していた状態から抜け出した。そしてリディアは、右足を前方へ踏み出しながら刀を横水平に思いきり斬り込んだ。鬼女は持っている刀を縦に構えながら、再びリディアの刀を受け止める。今のリディアの全力に振り切った刀でも鬼女の持つ刀は折れはしなかった。
リディアが刀を引こうとしたタイミングを見計らって、今度は鬼女が仕掛ける。左足を前に出して重心を右足に掛けながら右手に構えた刀を下段から突き上げる。
リディアは中途半端な態勢のまま鬼女の刀を受けきれず、合わせた刀が鬼女の力に負けて、バキンッと音を立てて折れてしまうのだった。そしてそのまま首を切り落とす勢いで迫って来る鬼女の刀の切先を首を何とか捻って躱そうとする。
――しかし完全には躱しきれず、そのまま首の皮膚を数ミリ程ではあるが、浅く切られて血が流れ出るのだった。
小さく悪態を吐きながらリディアは躱した勢いそのままに、後ろへ転がって左手を地面について鬼女から距離を取りながら立ち上がる。鬼女は追撃をせずにリディアが自分の刀を避けた後の始終の行動を観察していた。
…………
「ちょ、ちょっとキーリ! あの人間、私より強いわよねぇ!?」
「ああ。というより『リディア』が、あのオーラを纏っている状態で苦戦してんだぜ? 間違い無いだろうよ」
そう言うキーリも真顔になり、ゆっくりとレアを守れる位置に移動する。レアは『漏出』で式の鬼女を測ろうとしたが、案の定『測定不能』と表記されるのだった。
測定不能と表記された後、直ぐに『漏出』の影響を避けるためにレアは解除をするが、その結果に驚きの顔を浮かべるのであった。
……
……
……
「ねぇ、キーリ。札から人間みたいなのが出てきたけど、あれもサイヨウさんの使い魔なのかしらぁ……?」
「ああ、きっとそうだろう。俺も人間みたいな奴を見るのは初めてだ」
結界の外側に居るレアとキーリは、サイヨウの出した人型の式に興味津々のようであった。
札から出た妖魔の女性は、自分の身体を見回していたが、やがて目の前で刀を構えるリディアを見て笑った。
「さて、リディア殿、準備は宜しいか? この鬼女は、これまでの低位妖魔とは異なる強さをしておる。心してかかるがいい」
「準備は出来ている。一瞬で斬り伏せてやるから早く始めろ」
リディアの余裕綽々な態度が気に入らなかったのか、鬼女は浮かべていた笑みを消した後に、眉を寄せながら腰鞘から刀を抜いた。
サイヨウは互いに準備が整った事を確認して、開始の合図を告げた。
リディアの刀は金色のオーラに包まれているが、これは自在に金色を操れるようになった彼が、只の刀に纏わせているだけであり、オーラで作り出す彼の『特異』の刀の『柄のない光り輝く二刀の刀』ではなかった。どうやらまずはこの妖魔である鬼女の強さを軽く測ろうという事だろう。
構えているだけで仕掛けてこないリディアを見て、鬼女は抜いた刀を中段に構えながら右足をゆっくりと前へと広げていく。
その瞬間、対峙しているリディアの額から汗が流れ始めた。鬼女が構えたと同時に恐ろしい重圧がリディアに圧し掛かったのである。
(どうやら眉唾ではないようだな)
リディアは刀のみに纏わせていたオーラを全身に纏わせる。鬼女が通常の状態では、相手に出来る存在ではないと判断したようであった。
鬼女は物珍しそうな目でオーラを纏わせたリディアを見て口角を吊り上げた後、そのリディアに向かって斬りかかるのだった。
斜め上から振り下ろされる、鬼女の刀をリディアは真っ向から受け止める。切先同士が擦れ合い、キリキリキリと音を立てる。今のリディアはエルシスとの厳しい修行を乗り越えており、自在に金色を操れるようになっている上に、戦力値も以前とは比較にならない程に上昇している為、相手が『真なる魔王』領域の魔族であっても、今のリディアには全く相手にならない程である。
しかしそんなリディアと鍔迫り合いを行い続けている鬼女は、平然とオーラを纏うリディアの刀に力負けをしておらず、むしろ鬼女は余裕そうに笑いを浮かべていた。
「くっ……!」
リディアは刀に込める力を強めて一気に押し返そうとするが、その様子を見た鬼女は逆に力を緩めながらリディアを前に出させる。
しかしリディアも剣士として長く刀を扱ってきており、鬼女の狙いはよく理解している。わざと身を引いて体を泳がせたところに、一太刀を浴びせようとしているのだと判断したリディアは、引いていく鬼女の刀を追いかけるのではなく、自身の刀も引いてみせる。
互いに鍔迫り合いで力の拮抗していた状態から抜け出した。そしてリディアは、右足を前方へ踏み出しながら刀を横水平に思いきり斬り込んだ。鬼女は持っている刀を縦に構えながら、再びリディアの刀を受け止める。今のリディアの全力に振り切った刀でも鬼女の持つ刀は折れはしなかった。
リディアが刀を引こうとしたタイミングを見計らって、今度は鬼女が仕掛ける。左足を前に出して重心を右足に掛けながら右手に構えた刀を下段から突き上げる。
リディアは中途半端な態勢のまま鬼女の刀を受けきれず、合わせた刀が鬼女の力に負けて、バキンッと音を立てて折れてしまうのだった。そしてそのまま首を切り落とす勢いで迫って来る鬼女の刀の切先を首を何とか捻って躱そうとする。
――しかし完全には躱しきれず、そのまま首の皮膚を数ミリ程ではあるが、浅く切られて血が流れ出るのだった。
小さく悪態を吐きながらリディアは躱した勢いそのままに、後ろへ転がって左手を地面について鬼女から距離を取りながら立ち上がる。鬼女は追撃をせずにリディアが自分の刀を避けた後の始終の行動を観察していた。
…………
「ちょ、ちょっとキーリ! あの人間、私より強いわよねぇ!?」
「ああ。というより『リディア』が、あのオーラを纏っている状態で苦戦してんだぜ? 間違い無いだろうよ」
そう言うキーリも真顔になり、ゆっくりとレアを守れる位置に移動する。レアは『漏出』で式の鬼女を測ろうとしたが、案の定『測定不能』と表記されるのだった。
測定不能と表記された後、直ぐに『漏出』の影響を避けるためにレアは解除をするが、その結果に驚きの顔を浮かべるのであった。
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