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新たな展望編
756.同じ感性
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「会合ではなく会議か」
どうやら両国間での話合いはある程度、進んでいたのだろうとソフィは直ぐに悟る。
「ここまで来るまでにも相当に時間と努力を要しましたが、ようやく話合いの場が用意されただけで交流戦の事や、今後の展望については何も決まってはいません」
しかし話が進まないのは仕方がないだろう。少し前まで戦争状態にあった大陸間同士なのだ。
ソフィという存在が緩衝材の役割を務めた事で少しはプラスに働いてはいただろうが、それでもレルバノンの手腕があったからこその会議の場が用意出来たという事だろう。
そしてせっかくの場を設ける事が出来たのだからレルバノンとしては、成功を収めたいと思う気持ちは分からなくはない。
「やはり我がこの世界に戻って来る事を誰かから聞いていたという事なのだな?」
「いえ、貴方がこの世界にいつ戻って来るかは分かりませんでした。貴方の屋敷のある『セグンス』に私の息のかかった部下を数人派遣し、貴方が戻ってきたら直ぐに伝えるようにと指示を出していたのです」
「お主。いつ戻って来るか分からぬというのに、そこまでしていたのか……」
レルバノンが本気で人間達と親睦を深めたいと考えているという事だろう。そこまで聞かされたソフィは、自分が浮かんだ疑問を尋ねてみたくなった。
「レルバノンよ。お主がそこまでして『ミールガルド』大陸の人間達と、交流を図る理由は何なのだ?」
この『リラリオ』の世界は『アレルバレル』の世界と情勢が酷似している。
『アレルバレル』ではかつての『ダルダオス』が行った戦争によって『人間界』を除いたほぼ全ての大陸が魔族達の住む大陸である。
そしてこちらの世界も過去のレアの所業によって、龍族が復活した最近までは魔族と人間の大陸しか存在していなかった。
簡単にいえば『リラリオ』の世界の『ヴェルマー』大陸が『アレルバレル』の世界での『魔界』であり『ミールガルド』大陸が『アレルバレル』の世界の『人間界』のようなものなのである。
つまりこれだけの大陸であれば『ヴェルマー』大陸の各々の魔国だけで生活していく分には、全く問題が無い。過去とは違い現在は『三大魔国』とも同盟関係にあり戦争を行う事も無い。つまり『ヴェルマー』大陸だけで、自給自足の生活が完結できるのである。
無理をして人間達の住む『ミールガルド』大陸と、交流するメリットが感じられないのである。
「そうですね。どうやら私も長くミールガルド大陸に居たものですから、どこか人間達を好きになってしまい、交流を続けていたいと、思ってしまったのかもしれません」
そしてレルバノンは、視線でソフィに本質を語る様に見やる。
――『貴方』が人間を好んでいるようなものですよ』
――と。
「クックック、なるほどな」
ソフィは自分とレルバノンがどこか似たような感性を持っているとは思っていたが、本質はやはり似た魔族なのかもしれないと感じるのであった。
そしてまたソフィは自分が数多ある世界の中で、何故この世界に跳ばされたのかは分からないが、この世界の情勢もまた酷似している為、全くの偶然でこの世界に跳ばされたのではなく、何らかの理由で自分がこの世界に引き寄せられたのではないだろうかと考えるのであった。
「理由はある程度理解した。我に協力出来る事は協力しよう」
ソフィがそう言うと、レルバノンは再び頭を下げる。
「感謝致します。ソフィ様」
レルバノン魔国王がそう言うと、他の面々もソフィに頭を下げるのであった。
「しかし悪いが、今すぐにというワケにも行かぬのだ」
ソフィの突然の言葉に、レルバノンは下げていた頭をあげる。
「どういう事でしょう?」
「我がこの世界に跳ばされた原因である『煌聖の教団』の事は知っているな?」
「もちろんですよ。そもそもあれだけの魔力のぶつかり合いをこの『ヴェルマー』大陸でなさっていたのです。事情はある程度調べてありますし、理解もしています」
「そうか。では話を続けるが、その『煌聖の教団』の者によって、我の仲間が我と同じように別世界へ散り散りに跳ばされていたのだが、その中の一体が見つかりそうなのだ」
頭の聡いレルバノンは、それだけの言葉で全てを理解し、そしてタイミングが悪い時に話を持ち掛けてしまったと後悔するのだった。
「そうだったのですね……。分かりました。ではソフィ様のお仲間を見つけられた後、もう一度お話をさせて頂いても構いませんか?」
ソフィもまたレルバノンが、こちらの意図を汲み取ってくれたのだと理解する。
「すまぬな、だが最大限の協力はしよう。悪いが少しの間待っていて欲しい」
「ありがとうございます。ではその時の為にレイズ魔国からミールガルドのギルドへと冒険者を派遣し、ある程度は話を進めておきます」
「そうだな。派遣するギルドなどがまだ決まっていないのであれば、我が懇意にしているギルドを紹介するがどうする?」
「宜しいのですか? しかし出来ればなのですが『ケビン』王国側の冒険者ギルドが好ましいのですが」
レルバノンは元々『ルードリヒ』王国よりも『ケビン』王国の貴族たちと個人的な交流がある為、ケビン王国領の冒険者ギルドの方が、話を通しやすいと考えていたのだろう。
「ああ、それならば問題は無い。我の紹介しようとしていたギルドは『ケビン』王国側だからな」
「成程。それならば是非宜しくお願いしたいと思います」
「うむ! ではまた話をしたらお主に伝えよう」
「宜しくお願いします」
突然のレルバノンの招致だったが、無事に用件は片付いたようであった。
会議が終了し『レヴトン』や『ゲバドン』達が、いつもの業務に戻る為に部屋を出て行った。
この場に残ったのがレルバノンとソフィだけになった時、静かにレルバノンはソフィの元へゆっくりと近づき、そしてそのソフィにこっそりと小声で話しかける。
「別件なのですが、ソフィ様の耳に入れておきたい事があります」
……
……
……
どうやら両国間での話合いはある程度、進んでいたのだろうとソフィは直ぐに悟る。
「ここまで来るまでにも相当に時間と努力を要しましたが、ようやく話合いの場が用意されただけで交流戦の事や、今後の展望については何も決まってはいません」
しかし話が進まないのは仕方がないだろう。少し前まで戦争状態にあった大陸間同士なのだ。
ソフィという存在が緩衝材の役割を務めた事で少しはプラスに働いてはいただろうが、それでもレルバノンの手腕があったからこその会議の場が用意出来たという事だろう。
そしてせっかくの場を設ける事が出来たのだからレルバノンとしては、成功を収めたいと思う気持ちは分からなくはない。
「やはり我がこの世界に戻って来る事を誰かから聞いていたという事なのだな?」
「いえ、貴方がこの世界にいつ戻って来るかは分かりませんでした。貴方の屋敷のある『セグンス』に私の息のかかった部下を数人派遣し、貴方が戻ってきたら直ぐに伝えるようにと指示を出していたのです」
「お主。いつ戻って来るか分からぬというのに、そこまでしていたのか……」
レルバノンが本気で人間達と親睦を深めたいと考えているという事だろう。そこまで聞かされたソフィは、自分が浮かんだ疑問を尋ねてみたくなった。
「レルバノンよ。お主がそこまでして『ミールガルド』大陸の人間達と、交流を図る理由は何なのだ?」
この『リラリオ』の世界は『アレルバレル』の世界と情勢が酷似している。
『アレルバレル』ではかつての『ダルダオス』が行った戦争によって『人間界』を除いたほぼ全ての大陸が魔族達の住む大陸である。
そしてこちらの世界も過去のレアの所業によって、龍族が復活した最近までは魔族と人間の大陸しか存在していなかった。
簡単にいえば『リラリオ』の世界の『ヴェルマー』大陸が『アレルバレル』の世界での『魔界』であり『ミールガルド』大陸が『アレルバレル』の世界の『人間界』のようなものなのである。
つまりこれだけの大陸であれば『ヴェルマー』大陸の各々の魔国だけで生活していく分には、全く問題が無い。過去とは違い現在は『三大魔国』とも同盟関係にあり戦争を行う事も無い。つまり『ヴェルマー』大陸だけで、自給自足の生活が完結できるのである。
無理をして人間達の住む『ミールガルド』大陸と、交流するメリットが感じられないのである。
「そうですね。どうやら私も長くミールガルド大陸に居たものですから、どこか人間達を好きになってしまい、交流を続けていたいと、思ってしまったのかもしれません」
そしてレルバノンは、視線でソフィに本質を語る様に見やる。
――『貴方』が人間を好んでいるようなものですよ』
――と。
「クックック、なるほどな」
ソフィは自分とレルバノンがどこか似たような感性を持っているとは思っていたが、本質はやはり似た魔族なのかもしれないと感じるのであった。
そしてまたソフィは自分が数多ある世界の中で、何故この世界に跳ばされたのかは分からないが、この世界の情勢もまた酷似している為、全くの偶然でこの世界に跳ばされたのではなく、何らかの理由で自分がこの世界に引き寄せられたのではないだろうかと考えるのであった。
「理由はある程度理解した。我に協力出来る事は協力しよう」
ソフィがそう言うと、レルバノンは再び頭を下げる。
「感謝致します。ソフィ様」
レルバノン魔国王がそう言うと、他の面々もソフィに頭を下げるのであった。
「しかし悪いが、今すぐにというワケにも行かぬのだ」
ソフィの突然の言葉に、レルバノンは下げていた頭をあげる。
「どういう事でしょう?」
「我がこの世界に跳ばされた原因である『煌聖の教団』の事は知っているな?」
「もちろんですよ。そもそもあれだけの魔力のぶつかり合いをこの『ヴェルマー』大陸でなさっていたのです。事情はある程度調べてありますし、理解もしています」
「そうか。では話を続けるが、その『煌聖の教団』の者によって、我の仲間が我と同じように別世界へ散り散りに跳ばされていたのだが、その中の一体が見つかりそうなのだ」
頭の聡いレルバノンは、それだけの言葉で全てを理解し、そしてタイミングが悪い時に話を持ち掛けてしまったと後悔するのだった。
「そうだったのですね……。分かりました。ではソフィ様のお仲間を見つけられた後、もう一度お話をさせて頂いても構いませんか?」
ソフィもまたレルバノンが、こちらの意図を汲み取ってくれたのだと理解する。
「すまぬな、だが最大限の協力はしよう。悪いが少しの間待っていて欲しい」
「ありがとうございます。ではその時の為にレイズ魔国からミールガルドのギルドへと冒険者を派遣し、ある程度は話を進めておきます」
「そうだな。派遣するギルドなどがまだ決まっていないのであれば、我が懇意にしているギルドを紹介するがどうする?」
「宜しいのですか? しかし出来ればなのですが『ケビン』王国側の冒険者ギルドが好ましいのですが」
レルバノンは元々『ルードリヒ』王国よりも『ケビン』王国の貴族たちと個人的な交流がある為、ケビン王国領の冒険者ギルドの方が、話を通しやすいと考えていたのだろう。
「ああ、それならば問題は無い。我の紹介しようとしていたギルドは『ケビン』王国側だからな」
「成程。それならば是非宜しくお願いしたいと思います」
「うむ! ではまた話をしたらお主に伝えよう」
「宜しくお願いします」
突然のレルバノンの招致だったが、無事に用件は片付いたようであった。
会議が終了し『レヴトン』や『ゲバドン』達が、いつもの業務に戻る為に部屋を出て行った。
この場に残ったのがレルバノンとソフィだけになった時、静かにレルバノンはソフィの元へゆっくりと近づき、そしてそのソフィにこっそりと小声で話しかける。
「別件なのですが、ソフィ様の耳に入れておきたい事があります」
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