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序列部隊の選定編
735.Aクラスの試験開始
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「それでは、試験開始だ!」
再びブラストが試合開始の合図を出すとAクラスの試験は開始された。しかしBクラスの者達とは違い、試合開始と同時に動き出して向かっていくものは居なかった。
だが、その代わりに全員がオーラを纏い、彼らはステアの周囲に集まったかと思うと、防御を固め始めるのだった。元々Aクラスに居る者達はステアの周囲に居た者達であった。つまり彼らはBクラスの者達のように組織の者達から身を守る為に、比較的に最近になって集まったというワケでは無く、元々中立の組織の中でステアの側近と言える者達だったのだろう。
そしてその中心人物はこの『魔界』の一つのオアシスとして君臨する事を目的とした、中立組織の創設者『ステア』であった。
これまで『煌聖の教団』の強引な勧誘にも靡かず、頑なに中立を保ち続けて来たステアは、彼ら側近達からの信望も厚いようだった。
「いいか? 試験に合格する為には、あのイリーガル殿に一撃を入れなければならない。序列入りというモノに拘らなくても構わないが、我々中立であった者達が誰一人として合格が出来ないという結果だけは出来るだけ避けておきたい。AとBクラスを含めて誰一人として合格出来ないとなれば、ソフィ様を落胆させてしまうからだ」
「確かに……。我々もある程度は役に立つというところを見せておきたいところですね。分かりました、ではステア殿に一撃を託すとして我々はそのフォローをさせていただきます」
側近達から返ってきた言葉にステアは頷くが、そこで少しだけ訂正を入れる。
「私が一撃を入れる為にお前達の助力は必要だが、何も一撃を入れる役割が私だけと決める必要はない。臨機応変にイリーガル殿の攻撃を躱しつつ、全員で協力して全員で一撃を入れる努力をするのだ。イリーガル殿に傷をつけた時点で、我々Aクラスの全員の勝利だと思え」
「分かりました!」
試合の開始から数分が経ったが彼らはぼそぼそと何かを話し合っているだけで、攻めて来る気配が無い。しかしそれでもイリーガルは『二色の併用』を纏いながら右手を背中の大刀にあてて構えをとり続けている。
「……」
Aクラスの者達も戦力値はBクラスの魔族達とは比べ物にならない。
『煌聖の教団』の本隊に居ても可笑しくはない程の強さを持つ者も少なからずいる。
そしてその中心に居るステアは、先程のクラス分けの時に見せた力の片鱗を見るに戦力値が1000億を越える『大魔王最上位』領域に匹敵しているだろう。ステアが動けば周囲に固まっている魔族達も一斉に動く。そうなれば『二色の併用』を纏っている今のイリーガルといえども気は抜けない。
当然『金色』を纏えば、一切の全ての心配は取り除かれるだろうが、今度は仲間である魔王軍所属となった彼らAクラスの魔族達に、冗談では済まない怪我を負わせてしまう可能性がある。
その懸念を考えてイリーガルは、出来るだけ手加減をできる程度に、戦力値コントロールに力を入れた上で『二色の併用』を纏い続けるのだった。
そしてイリーガルとステアが互いに視線を交差させた瞬間。ステアの周囲に居た魔族達が、一斉にイリーガルに向かっていった。
…………
「む、動いたか……」
Aクラスの試験に注目していたソフィは、Aクラスの魔族達がイリーガルに向かったのを見て、そう言葉に出した。
Aクラスの魔族達は『高速転移』を使いながらイリーガルの周囲をかく乱するように動いていた。イリーガルはそんな彼らを一瞥したが、攻撃の意思を感じられなかった為、彼らに対しての防衛手段はとらず視線を再びステアに向ける。
しかしすでに先程までの位置にステアは居ない。彼らが動いたと同時にステアも静かに移動していたのだろう。
イリーガルは仕方なくステアに対して『魔力探知』を行うが、ステアの魔力を探知出来なかった。
「何?」
イリーガルは完全にステアを見失ってしまった。
そこへイリーガルの背後から『隠幕』を纏ったステアが顔を見せる。
「卑怯だとは言わないで下さいよ? イリーガル殿!」
そして背後からイリーガルに向けて、ステアが攻撃を繰り出してきた。ステアの得物は脇差程の長さの所謂『小太刀』だった。
「む……っ!」
イリーガルは何とか体を捻って、背後からのステアの一撃を躱して見せる。
「今だお前達! イリーガル殿はバランスを崩したぞ!」
ステアはそう叫ぶと周囲を動き回っていたAクラスの者達が、イリーガルに斬りかかってくるのだった。
「!?」
イリーガルはステアの攻撃を強引にかわした事で身体が泳いでしまっているが、その態勢のままで背中から大刀を引き抜いた。
――次の瞬間。
「ウオオオッ!!」
型も何もなくイリーガルは強引に大刀を横凪ぎに振り切った。イリーガルに迫っていたAクラスの魔族達は、イリーガルに攻撃を仕掛けようとしていたが、イリーガルの殺気をまともに受けてしまい慌ててその場から離脱した。
『金色』を纏っていない現在のイリーガルでさえ、戦力値コントロールによって戦力値は1000億に近い。
ステアであればイリーガルの殺気にも対応出来ただろうが、他の魔族には逃げるのが精一杯だった。
それでもイリーガルの殺気を浴びて即座に回避行動をとれたこと自体が褒められた事だろう。
結局イリーガルが強引に振った事により出来た三日月型の衝撃波は、Aクラスの魔族達に避けられた後に施設の端の方まで飛んでいき、ブラストの張っている結界の壁まで辿り着いて、結界とせめぎ合っていたが、結界に打ち消されてやがて消えた。
「いやはやこれがイリーガル殿か……! とんでもありませんな」
いつの間にか再びイリーガルから離れた場所に移動していたステアは、イリーガルの一撃を見て汗を流した。
それでもステアは『煌聖の教団』の追手から守ってくれた時に、イリーガルの本当の一撃を見ている為、今回のは本気でも何でも無い一撃だという事は知っている。
しかしそれでもAクラスの魔族達に怖気を走らせる程の『九大魔王』である『イリーガル』の一撃を見て、改めてとんでもないモノだと『ステア』は言葉を漏らすのだった。
……
……
……
再びブラストが試合開始の合図を出すとAクラスの試験は開始された。しかしBクラスの者達とは違い、試合開始と同時に動き出して向かっていくものは居なかった。
だが、その代わりに全員がオーラを纏い、彼らはステアの周囲に集まったかと思うと、防御を固め始めるのだった。元々Aクラスに居る者達はステアの周囲に居た者達であった。つまり彼らはBクラスの者達のように組織の者達から身を守る為に、比較的に最近になって集まったというワケでは無く、元々中立の組織の中でステアの側近と言える者達だったのだろう。
そしてその中心人物はこの『魔界』の一つのオアシスとして君臨する事を目的とした、中立組織の創設者『ステア』であった。
これまで『煌聖の教団』の強引な勧誘にも靡かず、頑なに中立を保ち続けて来たステアは、彼ら側近達からの信望も厚いようだった。
「いいか? 試験に合格する為には、あのイリーガル殿に一撃を入れなければならない。序列入りというモノに拘らなくても構わないが、我々中立であった者達が誰一人として合格が出来ないという結果だけは出来るだけ避けておきたい。AとBクラスを含めて誰一人として合格出来ないとなれば、ソフィ様を落胆させてしまうからだ」
「確かに……。我々もある程度は役に立つというところを見せておきたいところですね。分かりました、ではステア殿に一撃を託すとして我々はそのフォローをさせていただきます」
側近達から返ってきた言葉にステアは頷くが、そこで少しだけ訂正を入れる。
「私が一撃を入れる為にお前達の助力は必要だが、何も一撃を入れる役割が私だけと決める必要はない。臨機応変にイリーガル殿の攻撃を躱しつつ、全員で協力して全員で一撃を入れる努力をするのだ。イリーガル殿に傷をつけた時点で、我々Aクラスの全員の勝利だと思え」
「分かりました!」
試合の開始から数分が経ったが彼らはぼそぼそと何かを話し合っているだけで、攻めて来る気配が無い。しかしそれでもイリーガルは『二色の併用』を纏いながら右手を背中の大刀にあてて構えをとり続けている。
「……」
Aクラスの者達も戦力値はBクラスの魔族達とは比べ物にならない。
『煌聖の教団』の本隊に居ても可笑しくはない程の強さを持つ者も少なからずいる。
そしてその中心に居るステアは、先程のクラス分けの時に見せた力の片鱗を見るに戦力値が1000億を越える『大魔王最上位』領域に匹敵しているだろう。ステアが動けば周囲に固まっている魔族達も一斉に動く。そうなれば『二色の併用』を纏っている今のイリーガルといえども気は抜けない。
当然『金色』を纏えば、一切の全ての心配は取り除かれるだろうが、今度は仲間である魔王軍所属となった彼らAクラスの魔族達に、冗談では済まない怪我を負わせてしまう可能性がある。
その懸念を考えてイリーガルは、出来るだけ手加減をできる程度に、戦力値コントロールに力を入れた上で『二色の併用』を纏い続けるのだった。
そしてイリーガルとステアが互いに視線を交差させた瞬間。ステアの周囲に居た魔族達が、一斉にイリーガルに向かっていった。
…………
「む、動いたか……」
Aクラスの試験に注目していたソフィは、Aクラスの魔族達がイリーガルに向かったのを見て、そう言葉に出した。
Aクラスの魔族達は『高速転移』を使いながらイリーガルの周囲をかく乱するように動いていた。イリーガルはそんな彼らを一瞥したが、攻撃の意思を感じられなかった為、彼らに対しての防衛手段はとらず視線を再びステアに向ける。
しかしすでに先程までの位置にステアは居ない。彼らが動いたと同時にステアも静かに移動していたのだろう。
イリーガルは仕方なくステアに対して『魔力探知』を行うが、ステアの魔力を探知出来なかった。
「何?」
イリーガルは完全にステアを見失ってしまった。
そこへイリーガルの背後から『隠幕』を纏ったステアが顔を見せる。
「卑怯だとは言わないで下さいよ? イリーガル殿!」
そして背後からイリーガルに向けて、ステアが攻撃を繰り出してきた。ステアの得物は脇差程の長さの所謂『小太刀』だった。
「む……っ!」
イリーガルは何とか体を捻って、背後からのステアの一撃を躱して見せる。
「今だお前達! イリーガル殿はバランスを崩したぞ!」
ステアはそう叫ぶと周囲を動き回っていたAクラスの者達が、イリーガルに斬りかかってくるのだった。
「!?」
イリーガルはステアの攻撃を強引にかわした事で身体が泳いでしまっているが、その態勢のままで背中から大刀を引き抜いた。
――次の瞬間。
「ウオオオッ!!」
型も何もなくイリーガルは強引に大刀を横凪ぎに振り切った。イリーガルに迫っていたAクラスの魔族達は、イリーガルに攻撃を仕掛けようとしていたが、イリーガルの殺気をまともに受けてしまい慌ててその場から離脱した。
『金色』を纏っていない現在のイリーガルでさえ、戦力値コントロールによって戦力値は1000億に近い。
ステアであればイリーガルの殺気にも対応出来ただろうが、他の魔族には逃げるのが精一杯だった。
それでもイリーガルの殺気を浴びて即座に回避行動をとれたこと自体が褒められた事だろう。
結局イリーガルが強引に振った事により出来た三日月型の衝撃波は、Aクラスの魔族達に避けられた後に施設の端の方まで飛んでいき、ブラストの張っている結界の壁まで辿り着いて、結界とせめぎ合っていたが、結界に打ち消されてやがて消えた。
「いやはやこれがイリーガル殿か……! とんでもありませんな」
いつの間にか再びイリーガルから離れた場所に移動していたステアは、イリーガルの一撃を見て汗を流した。
それでもステアは『煌聖の教団』の追手から守ってくれた時に、イリーガルの本当の一撃を見ている為、今回のは本気でも何でも無い一撃だという事は知っている。
しかしそれでもAクラスの魔族達に怖気を走らせる程の『九大魔王』である『イリーガル』の一撃を見て、改めてとんでもないモノだと『ステア』は言葉を漏らすのだった。
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