最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

序列部隊の選定編

727.Ｂクラスの試験官リーシャ

「ねぇレア、あの魔族の事どう思う？」

　唐突にリーシャがレアに話しかけてくるが、レアは『そらきた』とばかりに天を仰ぐ。

「どうって、何がかしらぁ？」

　リーシャがミデェールという魔族に、エイネをとられたと思っている事を理解した上で、あえて知らぬふりでそう口にすると、やはりリーシャは愚痴を言い始めるのだった。

「何でエイネさんは、あ・ん・な・魔・族・を気に入ってるのかなぁ」

「そうねぇ。でもエイネのあの子の見る目は、親愛そのものって感じだしぃ。エイネの跳んだ世界で、何かあったのは間違いないでしょうねぇ」

　リーシャの疑問に対してそう答えるレアだったが、リーシャは不満そうに口を尖らせる。

「何かって、何？」

「さぁねぇ……。気になるなら直接エイネから聞いたらどうかしらぁ？」

「それしか、ないわよねぇ」

　本人に直接聞かなければ結局は、何も分からないという事を悟ったのだろう。リーシャはレアの言葉に頷きを見せるのだった。

　そしてその後は二人で他愛も無い雑談をしていたが、そろそろ模擬戦が始まる頃になり、二人は戻っていくのだった。

　……
　……
　……

　その頃施設内では、模擬戦の説明がブラストから説明が行われていた。

　Ａクラスに選出された平均戦力値５００億の『大魔王中位領域』の者達の相手を務めるのは、九大魔王であるイリーガルである。

　このイリーガルと戦い彼に僅かながらでも傷をつける事が出来れば『序列部隊』入りが確定する。

　Ｂクラスに選出された平均戦力値２００億の『大魔王下位領域』の者達の相手を務めるのは、同じく九大魔王であるリーシャであった。

　しかしまだＢクラスの試験内容は決まっていないらしく、どうやらリーシャが居ない為に保留となっていた。

「おいリーシャ、何処へ行っていた？　直ぐにこっちへ来い」

　レアと共に外に出ていたリーシャに対して、説明を行っていたブラストがリーシャを呼ぶ。

「えぇ？　今回は私が試験官なのですか？」

「そうだ。ディアトロス殿は今回は居ないし、俺は結界を維持するのに忙しい」

　どうやらリーシャは自分が試験官になると言う事を今説明されて知ったようである。
　リーシャはレアに手を振って別れた後、詳しい話をブラストから聞きに行くのだった。

　今までも魔王軍の選定となる試験官は、今回と同じく九大魔王が務めていた。

　しかし前回も前々回も三大魔王である『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』が試験官を務めていた為、リーシャが試験官となるのは、今回が初めてであった。

　ブラストに選定の試験内容を詳しく聞きに行ったリーシャだったが、どうやら試験の内容は試験官となる者が好きに決めていいらしく、直ぐに試験の内容を決めろとリーシャに告げるブラストであった。

「あたしが決めていいのねぇ。どうしようかしら……」

　Ａクラスの試験内容はいつもと同じく、イリーガルに傷をつけた者が序列入りという事らしい。

　しかしＢクラスも同じ試験内容では、誰も合格出来ないだろうとリーシャは考える。

　Ａクラスの者達は先程のクラス分けで平均戦力値が５００億を越える中位領域の者達である為、一撃を入れる事が出来る者や結託次第では傷をつける事も可能だろう。

　しかしＢクラスの者達はオーラ有でも、平均戦力値は２００億の下位領域の者達である。

　戦力値が１４００億を越えるリーシャを相手に、僅かな傷をつける事でも容易ではない。

「まぁ今回は暫定だから、気軽に試験内容を決めてもいいぞ。ある程度の強さは、クラス分けでもう分かっているしな」

　試験内容を決め兼ねているリーシャを見て、そうアドバイスを送るブラストだった。

「うーん。じゃあ、あ・た・し・に・触・れ・ら・れ・た・ら・『序列入り』って事で」

「結界をもう少し広げる事は出来るが、全員を一斉に相手にするか、それとも何組かに分けてやるか？」

「面倒なので一斉でいいですよ。制限時間内に私に触れられたら合格で触れられなかったら、不合格ってことでいいですか？」

「分かった。ではＢクラスの試験はリーシャの体に触れられたら合格だ。ＡよりもＢの方が人数が多い。お前から先に始めるが構わないか？」

「はい。それでいいですよぉ」

　――こうしてＡとＢ共に試験内容が決められるのだった。