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消えた龍王編
713.間違った交渉の言葉
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エイネとミデェールが話をしている最中、イルベキアの上空ではガウル龍王とヴァルーザ龍王が、本格的に戦闘を始めようとしていた。
「ヴァルーザの今の残っている魔力では、流石に任せられないわね」
エイネはそう呟くと二体の龍王の居る空に向かう。
あっという間に、ヴァルーザ達の元に辿り着いたエイネ。そしてそれを見たガウル龍王は、視線をヴァルーザからエイネへと向ける。
「次から次へと……。何だお前は?」
「無事に貴方を見つけられてよかった」
突然現れたエイネが自分の姿を見た瞬間にそう言ってきた為、意味が分からずにガウルは、さらに口を開こうとするが……。
「纏まりかけている話を、潰すわけにはいかないのよね。貴方を生かしておくと碌な事にならなそうだし、死んでもらおうかしら?」
そう言うとエイネの周囲に『二色のオーラ』が纏わっていく。
そしてガウル龍王はエイネの目を見て気づいた。
――コイツが例の魔族だ!
「ま、待て! お前……、お前がイーサ龍王を襲った魔族だな!! 話があるんだ! お前にとっても有意義な話だ!!」
「言ってみなさい?」
エイネの戦力値などを数値化して測る事は、ガウル龍王には出来ない。
しかしガウル龍王は、ブルードラゴンの最上位に居る龍族であり、相手が自分より強いかどうかを、見極める目は確かだった。
――目の前の魔族は自分より遥かに強い。
「わ、私と手を組まないか!? お前が私と手を組みさえしてくれたならば、この世界の半分をお前にやろう!!」
「興味がないわ」
「ま、待て!! よく考えるのだ! この大陸だけでは無く、全ての大陸が思うままになるのだぞ!? この世界に生きる多くの人間族も魔人族も精霊族も、そして魔族も奴隷にさせて従わせられる! 全てが、本当に全てが私たちの思いのままだ!」
エイネが黙り込んだのを見たガウル龍王は笑いを浮かべた。
自分の交渉の言葉で、エイネを迷わせられたと、そしてあともう少しでこちら側につかせられると思ったのである。
隣に居る同じ龍族の王ヴァルーザは、ガウルの言葉に首を横に振った。
エイネという大魔王の事を知らなければ、生き残れないと悟っているヴァルーザは、エイネという魔族に対して必ず言ってはいけない禁句が存在する事を嫌という程に理解している。
魔族という種族を見下す事を決してせず、蔑むような言葉を吐かず対等に扱え。
これこそがヴァルーザという龍族が、エイネという大魔王から生き残る為に必死に学んだ事である。
これまでこの世界を支配出来る種族という立場であった龍族に、この言葉を告げたところで、実行する事は難しいだろう。
例に漏れずガウル龍王も、理解は出来ない側の存在であった。
――エイネはガウルの言葉に迷っているのではない。
すでにエイネの考えている事を理解しているヴァルーザは、震えそうになっている体を必死に抑えながら、ガウルを諦観した目で見つめるのだった。
「ど、どうだ? イーサ龍王亡き今、そこのヴァルーザさえ倒してしまえば、この私こそがこの大陸の支配者という立場になる! その私が魔族のお前を迎え入れてやると言っているのだぞ!」
(魔族を下に見ている限り、お前には無理だ……)
ヴァルーザ龍王が心の中でガウル龍王に助言じみた言葉を浮かばせていた頃、エイネが顔をあげて口を開くのだった。
「……もういい。喋るな」
「は? そ、それはどう……い」
エイネの目が金色に輝いた瞬間。いつの間にかエイネの具現化した鎖が、ガウル龍王の首に巻き付いていた。
そしてエイネが強引に右手を引っ張ると、まだ喋ろうとしていたガウルの首から上が引き千切れて、そのままガウル龍王は絶命するのだった。
エイネは手を動かして器用に鎖を操作すると、残っていたガウルの大きな龍の体は、細切れにされていった。そして切り刻まれたそのガウルの体を再び金色に輝く目で一瞥すると、その場からガウルの胴体は消滅していった。
「ヴァルーザ。コイツの治めていた国はどこだったかしら……?」
「ま、待ってくれエイネ殿! だ、大丈夫だ!! この私とシェイザー王子が、上手くまとめてみせる!!」
「そう? 今後間違っても魔族を奴隷にしようとか言い出す奴をコイツの国のトップに出さないようにお願いね」
エイネがそう言うと、慌ててヴァルーザは頷くのだった。
ここでヴァルーザが止めなければ、エイネはハイウルキア国を滅ぼしてしまったかもしれない。
そんなつもりがエイネには無かったのかもしれないが、ヴァルーザは本能でそう口にしていたのだった。
「それじゃあ、イルベキアに案内してもらってもいいかしら?」
そう言ってエイネはもう普段通りの顔に戻るのだった。
「う、うむ……」
ヴァルーザは周囲で震えているイルベキアの兵士達に街に戻るように指示し、全員でイルベキア城に戻るのであった。
……
……
……
「ヴァルーザの今の残っている魔力では、流石に任せられないわね」
エイネはそう呟くと二体の龍王の居る空に向かう。
あっという間に、ヴァルーザ達の元に辿り着いたエイネ。そしてそれを見たガウル龍王は、視線をヴァルーザからエイネへと向ける。
「次から次へと……。何だお前は?」
「無事に貴方を見つけられてよかった」
突然現れたエイネが自分の姿を見た瞬間にそう言ってきた為、意味が分からずにガウルは、さらに口を開こうとするが……。
「纏まりかけている話を、潰すわけにはいかないのよね。貴方を生かしておくと碌な事にならなそうだし、死んでもらおうかしら?」
そう言うとエイネの周囲に『二色のオーラ』が纏わっていく。
そしてガウル龍王はエイネの目を見て気づいた。
――コイツが例の魔族だ!
「ま、待て! お前……、お前がイーサ龍王を襲った魔族だな!! 話があるんだ! お前にとっても有意義な話だ!!」
「言ってみなさい?」
エイネの戦力値などを数値化して測る事は、ガウル龍王には出来ない。
しかしガウル龍王は、ブルードラゴンの最上位に居る龍族であり、相手が自分より強いかどうかを、見極める目は確かだった。
――目の前の魔族は自分より遥かに強い。
「わ、私と手を組まないか!? お前が私と手を組みさえしてくれたならば、この世界の半分をお前にやろう!!」
「興味がないわ」
「ま、待て!! よく考えるのだ! この大陸だけでは無く、全ての大陸が思うままになるのだぞ!? この世界に生きる多くの人間族も魔人族も精霊族も、そして魔族も奴隷にさせて従わせられる! 全てが、本当に全てが私たちの思いのままだ!」
エイネが黙り込んだのを見たガウル龍王は笑いを浮かべた。
自分の交渉の言葉で、エイネを迷わせられたと、そしてあともう少しでこちら側につかせられると思ったのである。
隣に居る同じ龍族の王ヴァルーザは、ガウルの言葉に首を横に振った。
エイネという大魔王の事を知らなければ、生き残れないと悟っているヴァルーザは、エイネという魔族に対して必ず言ってはいけない禁句が存在する事を嫌という程に理解している。
魔族という種族を見下す事を決してせず、蔑むような言葉を吐かず対等に扱え。
これこそがヴァルーザという龍族が、エイネという大魔王から生き残る為に必死に学んだ事である。
これまでこの世界を支配出来る種族という立場であった龍族に、この言葉を告げたところで、実行する事は難しいだろう。
例に漏れずガウル龍王も、理解は出来ない側の存在であった。
――エイネはガウルの言葉に迷っているのではない。
すでにエイネの考えている事を理解しているヴァルーザは、震えそうになっている体を必死に抑えながら、ガウルを諦観した目で見つめるのだった。
「ど、どうだ? イーサ龍王亡き今、そこのヴァルーザさえ倒してしまえば、この私こそがこの大陸の支配者という立場になる! その私が魔族のお前を迎え入れてやると言っているのだぞ!」
(魔族を下に見ている限り、お前には無理だ……)
ヴァルーザ龍王が心の中でガウル龍王に助言じみた言葉を浮かばせていた頃、エイネが顔をあげて口を開くのだった。
「……もういい。喋るな」
「は? そ、それはどう……い」
エイネの目が金色に輝いた瞬間。いつの間にかエイネの具現化した鎖が、ガウル龍王の首に巻き付いていた。
そしてエイネが強引に右手を引っ張ると、まだ喋ろうとしていたガウルの首から上が引き千切れて、そのままガウル龍王は絶命するのだった。
エイネは手を動かして器用に鎖を操作すると、残っていたガウルの大きな龍の体は、細切れにされていった。そして切り刻まれたそのガウルの体を再び金色に輝く目で一瞥すると、その場からガウルの胴体は消滅していった。
「ヴァルーザ。コイツの治めていた国はどこだったかしら……?」
「ま、待ってくれエイネ殿! だ、大丈夫だ!! この私とシェイザー王子が、上手くまとめてみせる!!」
「そう? 今後間違っても魔族を奴隷にしようとか言い出す奴をコイツの国のトップに出さないようにお願いね」
エイネがそう言うと、慌ててヴァルーザは頷くのだった。
ここでヴァルーザが止めなければ、エイネはハイウルキア国を滅ぼしてしまったかもしれない。
そんなつもりがエイネには無かったのかもしれないが、ヴァルーザは本能でそう口にしていたのだった。
「それじゃあ、イルベキアに案内してもらってもいいかしら?」
そう言ってエイネはもう普段通りの顔に戻るのだった。
「う、うむ……」
ヴァルーザは周囲で震えているイルベキアの兵士達に街に戻るように指示し、全員でイルベキア城に戻るのであった。
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