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アサの世界の戦争編
701.決死の戦力値コントロール
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地面に叩きつけられて動かなくなっている『シェアーザ』の元に辿り着いた『ヴァルーザ』龍王は、無事かどうかを確認しようとするが、そこで迫りくる『龍ノ息吹』に気づき、空を見上げた。
「このままでは、シェアーザが……!」
自分だけであればそのまま回避する事は可能だが、この場には地面に倒れ伏している『シェアーザ』がいる。
ヴァルーザ龍王はガウル龍王の『龍ノ息吹』からシェアーザの盾となる為に、その場で自身も『龍ノ息吹』をガウル龍王の火に向けて放った。
互いの『龍ノ息吹』は拮抗し轟轟と燃え盛るが、やがて互いの火は相殺するかの如く消えていった。
ヴァルーザ龍王とガウル龍王。互いにこのまま戦い続けたとしても、延々と勝負はつかないと周囲に思わせるような、そんな互いの『龍ノ息吹』の威力であった。
しかしこれは単なる力比べの戦闘では無い。スベイキア大国や連なる同盟国とイルベキアの戦争なのである。
ネスコー元帥とその一部の兵士たちは、既にヴァルーザ龍王をはじめとする『イルベキア』との交戦はしなくはなっているが、それでもまだ数多くの者達が、イルベキアに対して攻撃を続けている状態である。
孤軍奮闘という状況の中で戦い続けるイルベキアだが、そのイルベキアの王『ヴァルーザ』龍王は腹に据えかねるものがあった。ハイウルキアの『ガウル』龍王の事である。
これまでも同盟関係を結んでいる時から本当に同盟関係を結んでいるのかと、疑いたくなるような真似をされ続けて来た。
イーサ龍王は何かあれば、すぐにイルベキアの『ヴァルーザ』龍王を頼り命令を下してきた。
その事が同じ同盟国であるハイウルキアのガウル龍王にとっては、面白くなかったのだろう。どこかでヴァルーザが、失態を起こす事を願っていた節がある。
これまではハイウルキアの嫌がらせにも耐えてきたが、流石にシェイザー王子を利用したりするのはやりすぎである。確かにイーサ龍王が魔族エイネに対して、禁止発言をした事は抜きにしても魔族達の都合によってスベイキアの国王を手にかけた事は、到底許される事ではないだろう。
しかしこちらに弁明の場を設ける機会すら与えず、一方的にイルベキアがスベイキア国家の転覆を狙い、魔族と手を組んで襲ったなどと都合のいいように吹聴をしてまわり、シェイザー王子を利用して、戦争を起こさせて、スベイキアと同盟を結んでいる国々に強制的に参加させてイルベキアを襲わせるのは、曲がりなりにも、同盟を結んでいた国のやる事ではない。
――それが個人の私怨であるならば、余計に性質が悪い。
(確かに脅されてやった事とはいっても、魔族エイネに従ってしまった私である。戦争が終わった後に、シェイザー王子に処刑される事となっても甘んじて私は、王子の決断を受け入れよう)
歯を食いしばりながらヴァルーザは、怒りの声を心の中であげる。
(しかし、しかしだ! 私はガウルの奴だけは、許すわけにはいかない!)
死んでいったイルベキアの民たちの為にも、この戦争を引き起こさせたガウルだけは決して許さない。これまでの全ての報いを、受けさせなければならない。
死を覚悟したイルベキアの龍王『ヴァルーザ』は、これまで行う事がなかった『戦力値コントロール』を行うのであった。
「クックック! 終わりだ、ヴァルー……ザ!?」
シェアーザを庇いながら空を飛んでいるヴァルーザの『緑のオーラ』が大きくなっていく。これまでヴァルーザの戦力値が40億を上回る事はなかった。
それが今、目を紅くしながらガウル龍王を睨みつけている『ヴァルーザ』龍王の戦力値がこれまでにない上昇を果たし始めていたのであった。
「よ、四十一……、四十二……、四十四……、四十七……、ご、五十億!?」
ガウル龍王の戦力値はこれまでのヴァルーザ龍王と同様に40億であった。
互いの国と同じように、ガウルとヴァルーザは、互角の存在であった筈なのである。
しかし今のヴァルーザ龍王は、戦力値50億を上回っていた。
「ば、馬鹿な……、奴は俺と同じ『ブルードラゴン』だぞ!? 戦力値50億などそんな『ブルードラゴン』が居る筈がない!!」
確かにブルードラゴンがここまで戦力値を上げる事が出来たのは、これまでの歴史上には存在していない。
戦力値40億でさえ『ブルードラゴン』がこれまでに出た事の無い数値であり、ガウルやヴァルーザが、この世界で原初であるといえる。
しかしその数値を一気に通り越しての50億。ガウル龍王が驚くのも無理はなかった。
――だが、この戦力値上昇には理由があった。
戦力値のコントロールとは、本来自身の力をパワーアップさせる為に行うモノではなく、元々持っている戦力値を可能な限り下げて、普段の不必要な魔力の消耗を抑えたり、相手の『漏出』や『魔力感知』等で自分の力を測られないように隠す目的で使われる事が多い。
だがヴァルーザは戦力値コントロールをそういった意味で使ってはおらず、自身の生命力を代償に一時的に戦力値を上昇させる事を可能としていた。
こんな戦力値コントロールをそのように扱う者も居ないし、しようと思っても簡単にできる事でもない。そして出来たとしても、やろうとは思えない理由がある。
――当然、本来の力を使うのではなく、普段使えない力を得る為には犠牲がつきものといえよう。
強引な戦力値上昇に身体がついていく筈がなく、そして生命力と引き換えに強引に戦力値を上昇させているのである。
どれだけ無理な事をしているか、今の彼を見れば少しは理解出来る。急激な戦力値の上昇により、戦ってもいないというのに目や口から血を流しており、体中の骨が悲鳴を上げて、激痛がヴァルーザ龍王を襲い続けている。このままもう少しこの状態が続けば、彼は何もせずとも絶命する事だろう。
「……ふ、ふふふ! どうやら虚仮威しだったようだな! 戦う事が出来なければ、一時的な見せかけの上昇など何の役にも立たぬ……、死ねぇっ!」
ガウル龍王はこの状態でヴァルーザが戦う事は出来ないと判断し、再び苦しそうにしているヴァルーザに向けて『龍ノ息吹』を放つのだった。
……
……
……
「このままでは、シェアーザが……!」
自分だけであればそのまま回避する事は可能だが、この場には地面に倒れ伏している『シェアーザ』がいる。
ヴァルーザ龍王はガウル龍王の『龍ノ息吹』からシェアーザの盾となる為に、その場で自身も『龍ノ息吹』をガウル龍王の火に向けて放った。
互いの『龍ノ息吹』は拮抗し轟轟と燃え盛るが、やがて互いの火は相殺するかの如く消えていった。
ヴァルーザ龍王とガウル龍王。互いにこのまま戦い続けたとしても、延々と勝負はつかないと周囲に思わせるような、そんな互いの『龍ノ息吹』の威力であった。
しかしこれは単なる力比べの戦闘では無い。スベイキア大国や連なる同盟国とイルベキアの戦争なのである。
ネスコー元帥とその一部の兵士たちは、既にヴァルーザ龍王をはじめとする『イルベキア』との交戦はしなくはなっているが、それでもまだ数多くの者達が、イルベキアに対して攻撃を続けている状態である。
孤軍奮闘という状況の中で戦い続けるイルベキアだが、そのイルベキアの王『ヴァルーザ』龍王は腹に据えかねるものがあった。ハイウルキアの『ガウル』龍王の事である。
これまでも同盟関係を結んでいる時から本当に同盟関係を結んでいるのかと、疑いたくなるような真似をされ続けて来た。
イーサ龍王は何かあれば、すぐにイルベキアの『ヴァルーザ』龍王を頼り命令を下してきた。
その事が同じ同盟国であるハイウルキアのガウル龍王にとっては、面白くなかったのだろう。どこかでヴァルーザが、失態を起こす事を願っていた節がある。
これまではハイウルキアの嫌がらせにも耐えてきたが、流石にシェイザー王子を利用したりするのはやりすぎである。確かにイーサ龍王が魔族エイネに対して、禁止発言をした事は抜きにしても魔族達の都合によってスベイキアの国王を手にかけた事は、到底許される事ではないだろう。
しかしこちらに弁明の場を設ける機会すら与えず、一方的にイルベキアがスベイキア国家の転覆を狙い、魔族と手を組んで襲ったなどと都合のいいように吹聴をしてまわり、シェイザー王子を利用して、戦争を起こさせて、スベイキアと同盟を結んでいる国々に強制的に参加させてイルベキアを襲わせるのは、曲がりなりにも、同盟を結んでいた国のやる事ではない。
――それが個人の私怨であるならば、余計に性質が悪い。
(確かに脅されてやった事とはいっても、魔族エイネに従ってしまった私である。戦争が終わった後に、シェイザー王子に処刑される事となっても甘んじて私は、王子の決断を受け入れよう)
歯を食いしばりながらヴァルーザは、怒りの声を心の中であげる。
(しかし、しかしだ! 私はガウルの奴だけは、許すわけにはいかない!)
死んでいったイルベキアの民たちの為にも、この戦争を引き起こさせたガウルだけは決して許さない。これまでの全ての報いを、受けさせなければならない。
死を覚悟したイルベキアの龍王『ヴァルーザ』は、これまで行う事がなかった『戦力値コントロール』を行うのであった。
「クックック! 終わりだ、ヴァルー……ザ!?」
シェアーザを庇いながら空を飛んでいるヴァルーザの『緑のオーラ』が大きくなっていく。これまでヴァルーザの戦力値が40億を上回る事はなかった。
それが今、目を紅くしながらガウル龍王を睨みつけている『ヴァルーザ』龍王の戦力値がこれまでにない上昇を果たし始めていたのであった。
「よ、四十一……、四十二……、四十四……、四十七……、ご、五十億!?」
ガウル龍王の戦力値はこれまでのヴァルーザ龍王と同様に40億であった。
互いの国と同じように、ガウルとヴァルーザは、互角の存在であった筈なのである。
しかし今のヴァルーザ龍王は、戦力値50億を上回っていた。
「ば、馬鹿な……、奴は俺と同じ『ブルードラゴン』だぞ!? 戦力値50億などそんな『ブルードラゴン』が居る筈がない!!」
確かにブルードラゴンがここまで戦力値を上げる事が出来たのは、これまでの歴史上には存在していない。
戦力値40億でさえ『ブルードラゴン』がこれまでに出た事の無い数値であり、ガウルやヴァルーザが、この世界で原初であるといえる。
しかしその数値を一気に通り越しての50億。ガウル龍王が驚くのも無理はなかった。
――だが、この戦力値上昇には理由があった。
戦力値のコントロールとは、本来自身の力をパワーアップさせる為に行うモノではなく、元々持っている戦力値を可能な限り下げて、普段の不必要な魔力の消耗を抑えたり、相手の『漏出』や『魔力感知』等で自分の力を測られないように隠す目的で使われる事が多い。
だがヴァルーザは戦力値コントロールをそういった意味で使ってはおらず、自身の生命力を代償に一時的に戦力値を上昇させる事を可能としていた。
こんな戦力値コントロールをそのように扱う者も居ないし、しようと思っても簡単にできる事でもない。そして出来たとしても、やろうとは思えない理由がある。
――当然、本来の力を使うのではなく、普段使えない力を得る為には犠牲がつきものといえよう。
強引な戦力値上昇に身体がついていく筈がなく、そして生命力と引き換えに強引に戦力値を上昇させているのである。
どれだけ無理な事をしているか、今の彼を見れば少しは理解出来る。急激な戦力値の上昇により、戦ってもいないというのに目や口から血を流しており、体中の骨が悲鳴を上げて、激痛がヴァルーザ龍王を襲い続けている。このままもう少しこの状態が続けば、彼は何もせずとも絶命する事だろう。
「……ふ、ふふふ! どうやら虚仮威しだったようだな! 戦う事が出来なければ、一時的な見せかけの上昇など何の役にも立たぬ……、死ねぇっ!」
ガウル龍王はこの状態でヴァルーザが戦う事は出来ないと判断し、再び苦しそうにしているヴァルーザに向けて『龍ノ息吹』を放つのだった。
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