693 / 1,915
大賢者エルシスVS煌聖の教団編
680.根源魔法
しおりを挟む
「面白い……。化け物と戦う前にアイツで試してやろう」
大賢者ミラはそう言うと、シスに向けて魔法を放った。その魔法はダールの世界の魔神から『魔法化』にして会得したモノである。
恐ろしい速度で放たれたその魔法は、高エネルギーの集合体といえるエネルギー波であった。
ミラの魔法が放たれた直後、直ぐに感知したシスは持っていたヌーをそれに向けて投げ飛ばして、そのままそこから離れた。
「チッ……!」
ミラは舌打ちをしたかと思うと、エネルギー波を曲げてヌーの命を庇う。強引に射線を変えた為、そのエネルギー波はシティアスの近くの拠点に向かって飛んで行った。
そのレーザーとも呼べるエネルギー波は、拠点を守るレイズ軍の者達には当たらなかったが、大陸を貫いて海へと消えていった。
ミラはそのまま意識を失っているヌーを掴むと、ルビリスにかけられている『聖動捕縛』を魔瞳で解除する。
自由に動けるようになったルビリスは、慌てて主であるミラの元へと転移してくる。
「お前はコイツを連れて下がっていろ、本気で『魔神の力』を使う」
「御意。しかしミラ様お気を付けください、奴は只者ではございません」
「そんな事は分かっている。もうお前達が手を出せる次元では無い事もな」
「お役に立てず、申し訳ありません……」
「構わん。行け」
最後にミラに頭を下げた後、ルビリスはヌーを抱き抱えたまま離脱するのだった。
あっさりと『アレルバレル』の世界でNo.2であったヌーを圧倒したシスに、ユファは呆けた表情を浮かべたまま固まっていたが、ようやく我に返り慌ててシスの元へと駆け寄っていく。
「シス! さっきとても苦しそうにしていたけど大丈夫なの? 魔力は、アレ……。戻ってる?」
この世界に跳躍してきた時に感じたシスの魔力は、枯渇寸前だったように思う。
それなのに今のシスの魔力は元通り、いやそれ以上の魔力のように感じられるのだった。
自分の魔力を遥かに凌駕する。その魔力値の正確な数値までは読み取れないが、今のシスは何も問題がないようだった。
心配をしてこの場に来てくれたユファに、理性を失っている大魔王状態のシスだったが、そのユファの首に手を回して抱き寄せる。
「え……、ちょ、ちょっと!」
突然のシスからの抱擁に顔を紅くして驚くユファだったが、何かを口にしようとした瞬間に、シスはユファから離れて口を開く。
「ヴェル、コノバカラハナレテ」
どこか片言で喋るシスに眉を寄せるユファだったが、次の瞬間――。
シスが何か詠唱を始めたかと思うと、ユファは眩い光に包まれていく。
「こ……、これは?」
――根源魔法、『ルート・ポイント』。
「ま、待ちなさいシス!!」
その魔法はかつてユファが『代替身体』の身であった頃に『ラルグ』魔国の魔族から、シスの命を救うために使った根源魔法であった。
今度は自分がその魔法を使われる立場となるとは思わなかったが、その光に包まれたが最後、何も言う事が出来ずにユファは、今彼女にとって、必要だと思う者の|ところへと強制的に連れていかれるのだった。
…………
「色々と確かめておきたいのだが、お前は一体何なのだ? 『アレルバレル』の世界でのお前は、どう見てもエルシスだったが、今のお前は明らかに違っている」
大賢者としての素養があるミラから見て、今のシスのオーラや魔力の質などを見て、明らかに『アレルバレル』の世界で戦った時とは別人だとエルシスは断言するのだった。
「……」
しかし今のシスは普段のシスでも無く、またエルシスの魂でもない。
ユファに対しては別だったようだが、闘争本能に忠実な大魔王である為、ミラに言葉を返す事は無かった。
「どうやらまずは、分からせなくてはいけないようだな」
このままだと何も話さないだろうと判断したミラは、オーラを纏いながら戦闘態勢に入る。
ミラが戦闘態勢に入った瞬間、今まで無言を貫いていた大魔王シスがギロリとミラに目を向けた。
(意識はあるようだが、どちらかといえば『金色の目』で操られている奴に近い反応だな)
ミラは今のシスの状態を冷静に分析する。
まともな状態とは言えないシスを見て、会話などで動揺させるような真似は、一切の意味が無いと理解する。
つまりあの魔族の動きを封じる為には戦いの中で、叩きのめすしかないと決断を下すのだった。
「では試してみようか」
ミラはそう言うと『スタック』を始める。
まずはセオリー通り、魔族を封じる『聖動捕縛』を試みるつもりであった。
先程のルビリスとヌーと戦うシスを見ていた彼は、どうやらヌーよりも上のようだと、理解はしているようだった。
それでも彼は今の状態のシスを『大魔王最上位領域』程度の実力だと見積もってしまった。
既に目の前の存在はソフィやレキと同じ『魔神級』であり、世界の調停者と呼ぶに相応しい、支配者の存在に昇華されていると気づくのは、もう少し後の事になるのであった。
大賢者ミラはそう言うと、シスに向けて魔法を放った。その魔法はダールの世界の魔神から『魔法化』にして会得したモノである。
恐ろしい速度で放たれたその魔法は、高エネルギーの集合体といえるエネルギー波であった。
ミラの魔法が放たれた直後、直ぐに感知したシスは持っていたヌーをそれに向けて投げ飛ばして、そのままそこから離れた。
「チッ……!」
ミラは舌打ちをしたかと思うと、エネルギー波を曲げてヌーの命を庇う。強引に射線を変えた為、そのエネルギー波はシティアスの近くの拠点に向かって飛んで行った。
そのレーザーとも呼べるエネルギー波は、拠点を守るレイズ軍の者達には当たらなかったが、大陸を貫いて海へと消えていった。
ミラはそのまま意識を失っているヌーを掴むと、ルビリスにかけられている『聖動捕縛』を魔瞳で解除する。
自由に動けるようになったルビリスは、慌てて主であるミラの元へと転移してくる。
「お前はコイツを連れて下がっていろ、本気で『魔神の力』を使う」
「御意。しかしミラ様お気を付けください、奴は只者ではございません」
「そんな事は分かっている。もうお前達が手を出せる次元では無い事もな」
「お役に立てず、申し訳ありません……」
「構わん。行け」
最後にミラに頭を下げた後、ルビリスはヌーを抱き抱えたまま離脱するのだった。
あっさりと『アレルバレル』の世界でNo.2であったヌーを圧倒したシスに、ユファは呆けた表情を浮かべたまま固まっていたが、ようやく我に返り慌ててシスの元へと駆け寄っていく。
「シス! さっきとても苦しそうにしていたけど大丈夫なの? 魔力は、アレ……。戻ってる?」
この世界に跳躍してきた時に感じたシスの魔力は、枯渇寸前だったように思う。
それなのに今のシスの魔力は元通り、いやそれ以上の魔力のように感じられるのだった。
自分の魔力を遥かに凌駕する。その魔力値の正確な数値までは読み取れないが、今のシスは何も問題がないようだった。
心配をしてこの場に来てくれたユファに、理性を失っている大魔王状態のシスだったが、そのユファの首に手を回して抱き寄せる。
「え……、ちょ、ちょっと!」
突然のシスからの抱擁に顔を紅くして驚くユファだったが、何かを口にしようとした瞬間に、シスはユファから離れて口を開く。
「ヴェル、コノバカラハナレテ」
どこか片言で喋るシスに眉を寄せるユファだったが、次の瞬間――。
シスが何か詠唱を始めたかと思うと、ユファは眩い光に包まれていく。
「こ……、これは?」
――根源魔法、『ルート・ポイント』。
「ま、待ちなさいシス!!」
その魔法はかつてユファが『代替身体』の身であった頃に『ラルグ』魔国の魔族から、シスの命を救うために使った根源魔法であった。
今度は自分がその魔法を使われる立場となるとは思わなかったが、その光に包まれたが最後、何も言う事が出来ずにユファは、今彼女にとって、必要だと思う者の|ところへと強制的に連れていかれるのだった。
…………
「色々と確かめておきたいのだが、お前は一体何なのだ? 『アレルバレル』の世界でのお前は、どう見てもエルシスだったが、今のお前は明らかに違っている」
大賢者としての素養があるミラから見て、今のシスのオーラや魔力の質などを見て、明らかに『アレルバレル』の世界で戦った時とは別人だとエルシスは断言するのだった。
「……」
しかし今のシスは普段のシスでも無く、またエルシスの魂でもない。
ユファに対しては別だったようだが、闘争本能に忠実な大魔王である為、ミラに言葉を返す事は無かった。
「どうやらまずは、分からせなくてはいけないようだな」
このままだと何も話さないだろうと判断したミラは、オーラを纏いながら戦闘態勢に入る。
ミラが戦闘態勢に入った瞬間、今まで無言を貫いていた大魔王シスがギロリとミラに目を向けた。
(意識はあるようだが、どちらかといえば『金色の目』で操られている奴に近い反応だな)
ミラは今のシスの状態を冷静に分析する。
まともな状態とは言えないシスを見て、会話などで動揺させるような真似は、一切の意味が無いと理解する。
つまりあの魔族の動きを封じる為には戦いの中で、叩きのめすしかないと決断を下すのだった。
「では試してみようか」
ミラはそう言うと『スタック』を始める。
まずはセオリー通り、魔族を封じる『聖動捕縛』を試みるつもりであった。
先程のルビリスとヌーと戦うシスを見ていた彼は、どうやらヌーよりも上のようだと、理解はしているようだった。
それでも彼は今の状態のシスを『大魔王最上位領域』程度の実力だと見積もってしまった。
既に目の前の存在はソフィやレキと同じ『魔神級』であり、世界の調停者と呼ぶに相応しい、支配者の存在に昇華されていると気づくのは、もう少し後の事になるのであった。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる