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大賢者エルシスVS煌聖の教団編
679.目覚めた力を解き放て
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「ガアアアアッ!!」
残像が見える程の動きでシスは、動けなくなっているヌーの右手を掴む。そして掴んだその手を、容易く引き千切った。
「ずぁっ……!! て、てめぇっ!」
次にシスはヌーの右手を空から放り投げると、そのままヌーの左肩を掴む。
悲鳴をあげる事は出来るヌーだが、先程から輝き続けているシスの『金色の目』の効力によって、一切動く事が出来ないヌーは、シスにあっさりと身体を壊され続ける。
「グガアアッ!!」
ヌーの肩をそのまま握ったかと思うと力を一層込めるシス。
次の瞬間、ヌーの肩がぐちゃぐちゃに握り潰された。
「あ……、あが……が、ぐぐっ……!」
ヌーはもう抵抗するどころではない。
次にシスはヌーの顔を掴みあげた。あと数秒でヌーの顔はシスの手によって、ぐちゃぐちゃに潰されてそのまま間違いなく絶命するだろう。
大魔王ヌーは、大魔王シスに全くといっていい程に歯が立たなかった。
現在のシスは、数秒程しか持たないエルシスの『二色の併用』状態の魔力と戦力値を遥かに凌駕している。
彼女の中に眠る大魔王が、表に出てきた時点で、普段のシスの何倍もの戦力値を誇る強さとなる。
その状態から更に『三色併用』を使っているのである。
もはや本当の彼女の力を体現している今の大魔王シスは、大魔王ヌー程度が抑えられる相手では無くなっている。
大魔王領域最上位の更にその先と呼べる領域。
――神の最上位領域『魔神級』。
レキやソフィの居る領域にシスは、片足を突っ込んでいるのであった。
…………
「何だあれは? 今のアイツはエルシスよりも……いや、あの化け物に、匹敵する程の圧力を感じる……」
大賢者ミラは信じられない物を見る目で、大魔王シスの姿を睨みつける。
「その手を離しなさい!!」
煌聖の教団の司令官であるルビリスが、ヌーを殺そうとしているシスに近寄り、魔族に効果絶大な『特効』となる『神聖魔法』を放とうとする。
そしてその背後からは『特異』でシスの動きを封じようとバルドも準備をしていた。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
ルビリスはまずシスの行動を封じようと神聖魔法を放つが、そのルビリスの魔法は、効力が反映されなかった。エルシスの力をトレースしたシスが、神聖魔法を『魔瞳』である『金色の目』を用いて強制解除したのである。
大賢者エルシスの力を誰よりも近い位置で常に見続けた事で、完全にトレースして見せるシスに対し、神聖魔法を使う事は、正に釈迦に説法である。
今のシスはエルシスの『神聖魔法』の全てを理解しているといえた。
更に今のシスの領域は『神の最上位領域』と呼べる『魔神級』である。
大魔王上位領域のルビリスの魔力など『魔神級』のシスには何があろうと通用する筈が無かった。
シスの目が一層眩さを増したかと思うと、先程のルビリスの『発動羅列』をそのままそっくり、トレースして発動された。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
こちらの魔法は完全に魔族であるルビリスの動きを封じる『特効』効果が反映された。
もう完全にルビリスに興味を失くしたシスは、持っていた『モノ』に再び目を移すが、そこに『特異』を発動させたバルドが、シスの身体を縛ろうとする。
少しだけ動きずらくなったのを感じたシスだったが、とくに何の支障も無いようだった。
「な……んじゃと? ワシの力が効いておらぬというのか!?」
バルドは驚いた目でシスを見るが、シスはそんなバルドを一瞥し、鼻で笑った後は完全に無視している。
「ふ、ふざけおってぇ!」
自分より遥かに若い年齢の魔族であるシスに、路傍の石を見るような目で一瞥されて、そのまま無視をされたバルドは、血管が沸騰するかと思う程の熱さを感じた。
そして後先考えずに怒り狂うバルドが、極大魔法である『普遍破壊』を放つ為に、魔力を『スタック』させ始める。
膨大な魔力を消費して放とうとするその姿に、ミラは遠くの空で溜息を吐いた。
どうやら決まりきった結果になるだろうという結論に行きついたミラは、バルドの行う姿が滑稽に映ってしまったのだろう。
「粉々に吹き飛べぃっ!!」
――神域魔法、『普遍破壊』。
迸る程の魔力が込められた魔法陣が高速回転をしたかと思うと、シスに向けて『極大魔法』が発動された。
恐ろしい程の魔力が込められたバルドの魔法が、真っすぐにシスに向かっていく。
面倒臭そうにその魔法を一瞥したシスは、ヌーを掴んでいる反対の手をその魔法に向ける。
――超越魔法、『終焉の炎』。
使う魔法は無詠唱で放たれた超越魔法。それも『スタック』すら最小限だった。
シスは確認するまでも無いとばかりに、バルドの方にはそれ以上視線すら送らなかった。
そして大魔王領域に居る者達にとっては、基本中の基本と呼べる超越魔法を受けたバルドは、自身の放った普遍破壊を完全に呑み込まれた後、シスによって燃やされたが、これ程までかという程に手加減された為に、とくに命に別状は無かった。
――シスはもうバルドが生きていようと、そうでなかろうと心底どうでもいい。
何の影響も及ばない程度の存在は、彼女は何の興味も示さない。
今の目覚めた力を解き放った暴走状態と呼べるシスは、まさに大魔王らしいといえば、らしい性格をしているのであった。
…………
「クカカカッ! 最高に面白い奴がいるじゃねーか。あいつはどうみても『魔神級』で間違いねぇな」
そう口にするのは、煌聖の教団の魔族の身体を奪った『リラリオ』の世界の魔族の始祖『レキ』であった。
レキは一度奪った相手の身体の魔法や、技といった能力を自分のモノにできる。それこそが彼の本当の意味での『特異』であった。
現在その『特異』を利用して、レキは『レパート』の世界のフルーフが編み出した魔法『隠幕』を纏いながらシスの姿を見て笑みを浮かべていた。
レキはシスではなくエルシスの『聖なる滅撃』の魔法に興味を示してこの場に現れたのであった。
しかしこの場に来た時。あのシスという魔族が『三色併用』を纏っているのを見たレキは、先程の『聖なる滅撃』を使ったエルシスより、余程興味を持つ事となった。
まさかこの世界で、自分とあのソフィ以外に『三色併用』を完全に使いこなせて見せる者が、いるとは思わなかったのである。
まだまだ同じ魔神級の力を有しているとはいっても、自分よりは遥かに劣っている大魔王状態のシスだが、そんなレキから見ても、大魔王状態のシスの魔力と戦力値はとても魅力的に映っていた。
「クククッ! だがあの人間もまた面白そうな匂いを感じる。ふふふ、この大陸に足を運んで正解だったな」
いい暇つぶしを見つけたと喜ぶ『リラリオ』の世界の魔族の始祖。大魔王『レキ』であった。
……
……
……
残像が見える程の動きでシスは、動けなくなっているヌーの右手を掴む。そして掴んだその手を、容易く引き千切った。
「ずぁっ……!! て、てめぇっ!」
次にシスはヌーの右手を空から放り投げると、そのままヌーの左肩を掴む。
悲鳴をあげる事は出来るヌーだが、先程から輝き続けているシスの『金色の目』の効力によって、一切動く事が出来ないヌーは、シスにあっさりと身体を壊され続ける。
「グガアアッ!!」
ヌーの肩をそのまま握ったかと思うと力を一層込めるシス。
次の瞬間、ヌーの肩がぐちゃぐちゃに握り潰された。
「あ……、あが……が、ぐぐっ……!」
ヌーはもう抵抗するどころではない。
次にシスはヌーの顔を掴みあげた。あと数秒でヌーの顔はシスの手によって、ぐちゃぐちゃに潰されてそのまま間違いなく絶命するだろう。
大魔王ヌーは、大魔王シスに全くといっていい程に歯が立たなかった。
現在のシスは、数秒程しか持たないエルシスの『二色の併用』状態の魔力と戦力値を遥かに凌駕している。
彼女の中に眠る大魔王が、表に出てきた時点で、普段のシスの何倍もの戦力値を誇る強さとなる。
その状態から更に『三色併用』を使っているのである。
もはや本当の彼女の力を体現している今の大魔王シスは、大魔王ヌー程度が抑えられる相手では無くなっている。
大魔王領域最上位の更にその先と呼べる領域。
――神の最上位領域『魔神級』。
レキやソフィの居る領域にシスは、片足を突っ込んでいるのであった。
…………
「何だあれは? 今のアイツはエルシスよりも……いや、あの化け物に、匹敵する程の圧力を感じる……」
大賢者ミラは信じられない物を見る目で、大魔王シスの姿を睨みつける。
「その手を離しなさい!!」
煌聖の教団の司令官であるルビリスが、ヌーを殺そうとしているシスに近寄り、魔族に効果絶大な『特効』となる『神聖魔法』を放とうとする。
そしてその背後からは『特異』でシスの動きを封じようとバルドも準備をしていた。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
ルビリスはまずシスの行動を封じようと神聖魔法を放つが、そのルビリスの魔法は、効力が反映されなかった。エルシスの力をトレースしたシスが、神聖魔法を『魔瞳』である『金色の目』を用いて強制解除したのである。
大賢者エルシスの力を誰よりも近い位置で常に見続けた事で、完全にトレースして見せるシスに対し、神聖魔法を使う事は、正に釈迦に説法である。
今のシスはエルシスの『神聖魔法』の全てを理解しているといえた。
更に今のシスの領域は『神の最上位領域』と呼べる『魔神級』である。
大魔王上位領域のルビリスの魔力など『魔神級』のシスには何があろうと通用する筈が無かった。
シスの目が一層眩さを増したかと思うと、先程のルビリスの『発動羅列』をそのままそっくり、トレースして発動された。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
こちらの魔法は完全に魔族であるルビリスの動きを封じる『特効』効果が反映された。
もう完全にルビリスに興味を失くしたシスは、持っていた『モノ』に再び目を移すが、そこに『特異』を発動させたバルドが、シスの身体を縛ろうとする。
少しだけ動きずらくなったのを感じたシスだったが、とくに何の支障も無いようだった。
「な……んじゃと? ワシの力が効いておらぬというのか!?」
バルドは驚いた目でシスを見るが、シスはそんなバルドを一瞥し、鼻で笑った後は完全に無視している。
「ふ、ふざけおってぇ!」
自分より遥かに若い年齢の魔族であるシスに、路傍の石を見るような目で一瞥されて、そのまま無視をされたバルドは、血管が沸騰するかと思う程の熱さを感じた。
そして後先考えずに怒り狂うバルドが、極大魔法である『普遍破壊』を放つ為に、魔力を『スタック』させ始める。
膨大な魔力を消費して放とうとするその姿に、ミラは遠くの空で溜息を吐いた。
どうやら決まりきった結果になるだろうという結論に行きついたミラは、バルドの行う姿が滑稽に映ってしまったのだろう。
「粉々に吹き飛べぃっ!!」
――神域魔法、『普遍破壊』。
迸る程の魔力が込められた魔法陣が高速回転をしたかと思うと、シスに向けて『極大魔法』が発動された。
恐ろしい程の魔力が込められたバルドの魔法が、真っすぐにシスに向かっていく。
面倒臭そうにその魔法を一瞥したシスは、ヌーを掴んでいる反対の手をその魔法に向ける。
――超越魔法、『終焉の炎』。
使う魔法は無詠唱で放たれた超越魔法。それも『スタック』すら最小限だった。
シスは確認するまでも無いとばかりに、バルドの方にはそれ以上視線すら送らなかった。
そして大魔王領域に居る者達にとっては、基本中の基本と呼べる超越魔法を受けたバルドは、自身の放った普遍破壊を完全に呑み込まれた後、シスによって燃やされたが、これ程までかという程に手加減された為に、とくに命に別状は無かった。
――シスはもうバルドが生きていようと、そうでなかろうと心底どうでもいい。
何の影響も及ばない程度の存在は、彼女は何の興味も示さない。
今の目覚めた力を解き放った暴走状態と呼べるシスは、まさに大魔王らしいといえば、らしい性格をしているのであった。
…………
「クカカカッ! 最高に面白い奴がいるじゃねーか。あいつはどうみても『魔神級』で間違いねぇな」
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レキは一度奪った相手の身体の魔法や、技といった能力を自分のモノにできる。それこそが彼の本当の意味での『特異』であった。
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レキはシスではなくエルシスの『聖なる滅撃』の魔法に興味を示してこの場に現れたのであった。
しかしこの場に来た時。あのシスという魔族が『三色併用』を纏っているのを見たレキは、先程の『聖なる滅撃』を使ったエルシスより、余程興味を持つ事となった。
まさかこの世界で、自分とあのソフィ以外に『三色併用』を完全に使いこなせて見せる者が、いるとは思わなかったのである。
まだまだ同じ魔神級の力を有しているとはいっても、自分よりは遥かに劣っている大魔王状態のシスだが、そんなレキから見ても、大魔王状態のシスの魔力と戦力値はとても魅力的に映っていた。
「クククッ! だがあの人間もまた面白そうな匂いを感じる。ふふふ、この大陸に足を運んで正解だったな」
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