最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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愛娘を探して編

648.まるで人形の如く

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 ゆっくりと近づいてくるエイネをみた『レドラー』は、直感で判断する。

 レドラーは軍の副司令官であると共に『スクアード』を纏える程の戦士である。

 バルザー・レドニックもまた『一流戦士』ではあったが、同じ『一流戦士』であっても、歴戦の猛者ともいうべきレドラーと、バルザーでは比較にもならない。

 そんなレドラーは『オーラ』も『金色』も纏っていない状態の『エイネ』を見て直ぐに、自分達は

 そしてトマス司令官が何故おかしくなったのかを理解した彼は、他の魔人達を無視して自分の元へと向かってくるエイネに抵抗を一切しなかった。

 この場に元々居た魔人達は、エイネを見て恐怖で震えている。どうやら彼らはすでにこの魔族が、どのような存在なのかを知っているようだった。レドラーは恐怖こそ感じはしないが、エイネを見た時から、全身を無力感が襲っている。そしてそんなレドラーの元に、後から合流した魔人達が守ろうと間に入ってくる。

 エイネがその様子を見て立ち止まり、レドラーをこの場の指揮官なのだと判断したのか、レドラーに視線を送ってくる。

「お前達! 彼女は私と話があるようだから少し外す」

「は……、は? わ、分かりました」

 守ろうとする魔人達の背中をレドラーは軽く叩き、ゆっくりとエイネの方へと歩み出す。

 二人の距離が縮まり会話が出来るくらいにまで『レドラー』がくるのを確認したエイネは口を開いた。

「どうやら貴方は物分かりがいいようだから単刀直入に聞くわ」

 戦闘態勢にすら入っていないというのにエイネが喋り始めた瞬間、先程まで感じていたエイネの『圧』が、更に増したように感じられるレドラーだった。

「この場に居た魔族達をどうしたの?」

 レドラーは何とか震えないように気をつけながら口を開いた。

「彼らは『トマス』司令官が、我々の本国へと移送した」

 なんとかそう口にするとエイネは首を縦に振る。

「そう。じゃあ私もその本国とやらへ案内しなさい」

 ……
 ……
 ……

 その頃魔人達の本国に到着した『トマス』は『エアル』王に会う為に城の中を歩いていた。

 彼は魔族達を本国にある基地に移送させた後に魔族達の手足を縛り、拘束をした状態で見張りを立てている。

 今のトマスは表面上はいつも通りだが、深層意識にはエイネの支配が続いている。エイネがこの場に戻ってくれば、すぐにトマスは魔族達を解放するだろう。

 そして王の居る部屋に辿り着いたトマスは、中に居る王に声を掛けた。

「入れ」

 すでにトマスがこの場に来るという連絡を受けていた『エアル』は、直ぐに部屋の中へと招き入れる。

「失礼致します。エアル王」

 恭しく一礼をした後、トマスはゆっくりと中央まで歩いてくる。

「それで部下たちからの連絡では、お前が魔族達を本国まで引き連れてきたという話だったが、どういう理由からそんな真似をしたのだ?」

 今は曲がりなりにも龍族との戦争中である。

 カストロL・K基地に軍の大半を配備して戦争に備えさせている重要な時に、その軍の最高司令官である『トマス』が現場を離れて魔族達を移送してきた理由を問うのであった。

「エアル王。貴方に直接会っていただきたい魔族が居ます」

「何だと? 質問の答えにもなっておらぬ上に、何の脈絡も無く私に魔族に会えだと?」

「はい、その通りです。は、彼女から直接お聞き頂きたく思います」

「よかろう。軍の司令官であるお主が、そう決めたのであれば、余程の事情があるという事なのだろう?」

「はい」

「それでその魔族とやらは何処にいる?」

「もうすぐこちらに向かってくる筈です。到着した後にこの城の中へ入る許可を頂きたいのですが、宜しいですか?」

「ああ、それは構わんが……」

 トマス・ハーベルという男は常に冷静で堂々としている魔人だったが、今のトマスはどこかいつもと違うような、まるで自分とは違うを受けた。

 エアル王が魔族を城の中に入れる事を許可した後、まるで人形のように無言になって虚空を見つめるトマスだった。

 その様子に、酷く狼狽させられる事になったエアルだったが、今のトマスに何を言ったところでしっかりとした返事が返ってきそうにもなく、どうしたものかと考えさせるのだった。

 エアル王は横に居る大臣と顔を見合わせるが、大臣も首を捻って『私にもさっぱり理由が分かりません』とでも言いたげな表情を浮かべていた。

 ……
 ……
 ……
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