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愛娘を探して編
647.違和感
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『アサ』の世界ではエイネが龍族達の大陸から空を飛びながら海を渡り、ようやく魔人達の大陸カストロL・K地域に戻ってきていた。
エイネは『高速転移』を用いて全速力で戻ってきた為、それ程時間を掛けはしなかったが、それでも高難度の魔法である『高等移動呪文』を使える魔族であったならば『高速転移』で移動をするよりも更に早く戻って来る事が出来るため『ブラスト』や『ディアトロス』といった『魔』に精通した者達を羨ましく思うのだった。
「さて、まずはフルーフ様の元へ向かうとしましょうか」
魔族達は魔人達の司令官『トマス』によって保護をされているだろうと判断し、まずはコテージでレアの魔力を探知しているであろう『フルーフ』に会いに行くのだった。
コテージの扉を開けるとベッドで寝ていた筈のフルーフが立ち上がって、窓際付近で何やら瞑想をしていた。
「フルーフ様。今戻りました」
エイネが声を掛けると、直ぐに閉じていた目を開けてエイネの方を見る。
「ああ、早かったな。それで龍族の方は上手く行ったのかな?」
「はい『龍族を束ねる王』には魔族達を保護してもらえるように話をしておきました。もうこの世界の魔族達は大丈夫でしょう」
エイネの言葉に笑みを見せて頷くフルーフだったが、エイネの目にはそのフルーフが無理して笑みを浮かべているようなそんな空元気のような印象を受けるのだった。
「レアさんはまだ見つかりませんか?」
「……」
表情を曇らせながら頷いて笑みを苦笑いに変えるフルーフを見て、エイネはやはりかと納得する。
「確かに世界は広く直ぐに見つける事はかなわぬじゃろうが、一度見つけたレアの魔力を見失い、再び探すのにここまで苦労するという事は『隠幕』を使って居るとワシは睨んでおる」
他にも色々と理由は考えられるが『エイネ』は、わざわざそれを口にする必要は無いと判断して、フルーフの言葉に頷きを返す。
「『隠幕』とは自身の『魔力』を遮断して、姿を晦ます事の出来る魔法でしたよね? その効果とは我々大魔王が全集中をしながら『漏出』をしたとして、それでも見つける事が出来ない程の魔法なのですか?」
「そうじゃな。同じ世界であったならば、もう少し見つかる確率は高まるだろうが、この世界から数多の世界を探知しようとすれば、それは雲を掴むような難易度じゃな」
「成程」
「しかしかなり探知に時間を掛けたおかげでワシの魔力は相当回復を果たした。もう少し待てばワシはお主を連れて『概念跳躍』で『アレルバレル』の世界に移動をする事も可能じゃろう」
その言葉はエイネにとっては、とてもありがたい言葉であった。
「そうですかっ! では今の内に魔人共の司令官とやらに魔族達を引き取り、そのまま龍族の元へ預けに行ってまいります」
「お主がこの世界の魔族達を龍族達に預けて戻って来る頃には、ワシの魔力は相当に回復できておるじゃろう」
エイネがコテージの出入口の扉を開けようとした時、フルーフからそんな声が掛けられた。
「その時は先にお主を『アレルバレル』の世界へと向かわせよう」
「宜しいのですか? レアさんは『アレルバレル』の世界には居ないのでしょう?」
「構わぬ『アレルバレル』の世界で再び、レアの魔力を探せばよい」
「ありがとうございます! 助かりますフルーフ様」
エイネがそう言うと、再びフルーフは頷くのであった。
「では、急いで魔人達の元へ向かいますね」
そう言ってエイネはコテージの外へ出て直ぐに、カストロL・K基地へと足を向けて走り出すのだった。
…………
その頃カストロ基地では魔人達の副司令官である『レドラー・クラシス』が、この場所に向かってくると思われる龍族達の襲撃に備えて基地の現場の指揮を執っていた。
レドラーは準備を整えつつも彼の頭の中では軍の司令官である『トマス』の様子がいつもと違う事に疑問を抱えていた。
(何故……トマス司令官は、暴れた魔族達を生かそうと考えられたのだろうか?)
レドラー副司令はどちらかといえば魔人らしい魔人であり、バルザーのように魔族に対しては、自分達の体のいい弾除け程度にしか思っていなかった。
そんな魔族が暴れたというのであれば、魔人達に逆らった罪で直ぐに処罰、いや、処刑を行うべきである筈だと考えていた。いつもであれば『レドラー』が『トマス』に何でも進言すれば『お前に任せる』と一任してくれて『レドラー』の好きにさせてくれていた。
しかし今回に限っては『レドラー』があれだけ『トマス』に進言しても頑なに認める素振りを見せなかった。別にそれならばそれで構わないのだが、あの『トマス』の態度には『レドラー』は喉に魚の小骨が刺さっているようなそんな違和感を感じていた。
(それにどこか目が虚ろだったのも気に掛かるのだが……)
まるで他者に意識を奪われているような、催眠状態のように感じられたのである。
そしてレドラーがそんな事を考えていると、彼らが今居る場所であるカストロL・K基地に向かって歩いてくる魔族の女性の姿が目に映るのだった。
……
……
……
エイネは『高速転移』を用いて全速力で戻ってきた為、それ程時間を掛けはしなかったが、それでも高難度の魔法である『高等移動呪文』を使える魔族であったならば『高速転移』で移動をするよりも更に早く戻って来る事が出来るため『ブラスト』や『ディアトロス』といった『魔』に精通した者達を羨ましく思うのだった。
「さて、まずはフルーフ様の元へ向かうとしましょうか」
魔族達は魔人達の司令官『トマス』によって保護をされているだろうと判断し、まずはコテージでレアの魔力を探知しているであろう『フルーフ』に会いに行くのだった。
コテージの扉を開けるとベッドで寝ていた筈のフルーフが立ち上がって、窓際付近で何やら瞑想をしていた。
「フルーフ様。今戻りました」
エイネが声を掛けると、直ぐに閉じていた目を開けてエイネの方を見る。
「ああ、早かったな。それで龍族の方は上手く行ったのかな?」
「はい『龍族を束ねる王』には魔族達を保護してもらえるように話をしておきました。もうこの世界の魔族達は大丈夫でしょう」
エイネの言葉に笑みを見せて頷くフルーフだったが、エイネの目にはそのフルーフが無理して笑みを浮かべているようなそんな空元気のような印象を受けるのだった。
「レアさんはまだ見つかりませんか?」
「……」
表情を曇らせながら頷いて笑みを苦笑いに変えるフルーフを見て、エイネはやはりかと納得する。
「確かに世界は広く直ぐに見つける事はかなわぬじゃろうが、一度見つけたレアの魔力を見失い、再び探すのにここまで苦労するという事は『隠幕』を使って居るとワシは睨んでおる」
他にも色々と理由は考えられるが『エイネ』は、わざわざそれを口にする必要は無いと判断して、フルーフの言葉に頷きを返す。
「『隠幕』とは自身の『魔力』を遮断して、姿を晦ます事の出来る魔法でしたよね? その効果とは我々大魔王が全集中をしながら『漏出』をしたとして、それでも見つける事が出来ない程の魔法なのですか?」
「そうじゃな。同じ世界であったならば、もう少し見つかる確率は高まるだろうが、この世界から数多の世界を探知しようとすれば、それは雲を掴むような難易度じゃな」
「成程」
「しかしかなり探知に時間を掛けたおかげでワシの魔力は相当回復を果たした。もう少し待てばワシはお主を連れて『概念跳躍』で『アレルバレル』の世界に移動をする事も可能じゃろう」
その言葉はエイネにとっては、とてもありがたい言葉であった。
「そうですかっ! では今の内に魔人共の司令官とやらに魔族達を引き取り、そのまま龍族の元へ預けに行ってまいります」
「お主がこの世界の魔族達を龍族達に預けて戻って来る頃には、ワシの魔力は相当に回復できておるじゃろう」
エイネがコテージの出入口の扉を開けようとした時、フルーフからそんな声が掛けられた。
「その時は先にお主を『アレルバレル』の世界へと向かわせよう」
「宜しいのですか? レアさんは『アレルバレル』の世界には居ないのでしょう?」
「構わぬ『アレルバレル』の世界で再び、レアの魔力を探せばよい」
「ありがとうございます! 助かりますフルーフ様」
エイネがそう言うと、再びフルーフは頷くのであった。
「では、急いで魔人達の元へ向かいますね」
そう言ってエイネはコテージの外へ出て直ぐに、カストロL・K基地へと足を向けて走り出すのだった。
…………
その頃カストロ基地では魔人達の副司令官である『レドラー・クラシス』が、この場所に向かってくると思われる龍族達の襲撃に備えて基地の現場の指揮を執っていた。
レドラーは準備を整えつつも彼の頭の中では軍の司令官である『トマス』の様子がいつもと違う事に疑問を抱えていた。
(何故……トマス司令官は、暴れた魔族達を生かそうと考えられたのだろうか?)
レドラー副司令はどちらかといえば魔人らしい魔人であり、バルザーのように魔族に対しては、自分達の体のいい弾除け程度にしか思っていなかった。
そんな魔族が暴れたというのであれば、魔人達に逆らった罪で直ぐに処罰、いや、処刑を行うべきである筈だと考えていた。いつもであれば『レドラー』が『トマス』に何でも進言すれば『お前に任せる』と一任してくれて『レドラー』の好きにさせてくれていた。
しかし今回に限っては『レドラー』があれだけ『トマス』に進言しても頑なに認める素振りを見せなかった。別にそれならばそれで構わないのだが、あの『トマス』の態度には『レドラー』は喉に魚の小骨が刺さっているようなそんな違和感を感じていた。
(それにどこか目が虚ろだったのも気に掛かるのだが……)
まるで他者に意識を奪われているような、催眠状態のように感じられたのである。
そしてレドラーがそんな事を考えていると、彼らが今居る場所であるカストロL・K基地に向かって歩いてくる魔族の女性の姿が目に映るのだった。
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