最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
660 / 1,985
愛娘を探して編

647.違和感

しおりを挟む
『アサ』の世界ではエイネが龍族達の大陸から空を飛びながら海を渡り、ようやく魔人達の大陸カストロL・K地域に戻ってきていた。

 エイネは『高速転移』を用いて全速力で戻ってきた為、それ程時間を掛けはしなかったが、それでも高難度の魔法である『高等移動呪文アポイント』を使える魔族であったならば『高速転移』で移動をするよりも戻って来る事が出来るため『ブラスト』や『ディアトロス』といった『魔』に精通した者達を羨ましく思うのだった。

「さて、まずはフルーフ様の元へ向かうとしましょうか」

 魔族達は魔人達の司令官『トマス』によって保護をされているだろうと判断し、まずはコテージでレアの魔力を探知しているであろう『フルーフ』に会いに行くのだった。

 コテージの扉を開けるとベッドで寝ていた筈のフルーフが立ち上がって、窓際付近で何やら瞑想をしていた。

「フルーフ様。今戻りました」

 エイネが声を掛けると、直ぐに閉じていた目を開けてエイネの方を見る。

「ああ、早かったな。それで龍族の方は上手く行ったのかな?」

「はい『』には魔族達を保護してもらえるように話をしておきました。もうこの世界の魔族達は大丈夫でしょう」

 エイネの言葉に笑みを見せて頷くフルーフだったが、エイネの目にはそのフルーフが無理して笑みを浮かべているようなそんな空元気のような印象を受けるのだった。

「レアさんはまだ見つかりませんか?」

「……」

 表情を曇らせながら頷いて笑みを苦笑いに変えるフルーフを見て、エイネはやはりかと納得する。

「確かに世界は広く直ぐに見つける事はかなわぬじゃろうが、一度見つけたレアの魔力を見失い、再び探すのにここまで苦労するという事は『隠幕ハイド・カーテン』を使って居るとワシは睨んでおる」

 他にも色々と理由は考えられるが『エイネ』は、わざわざそれを口にする必要は無いと判断して、フルーフの言葉に頷きを返す。

「『隠幕ハイド・カーテン』とは自身の『魔力』を遮断して、姿を晦ます事の出来る魔法でしたよね? その効果とは我々大魔王が全集中をしながら『漏出サーチ』をしたとして、それでも見つける事が出来ない程の魔法なのですか?」

「そうじゃな。同じ世界であったならば、もう少し見つかる確率は高まるだろうが、この世界から数多の世界を探知しようとすれば、それは雲を掴むような難易度じゃな」

「成程」

「しかしかなり探知に時間を掛けたおかげでワシの魔力は相当回復を果たした。もう少し待てばワシはお主を連れて『概念跳躍アルム・ノーティア』で『アレルバレル』の世界に移動をする事も可能じゃろう」

 その言葉はエイネにとっては、とてもありがたい言葉であった。

「そうですかっ! では今の内に魔人共の司令官とやらに魔族達を引き取り、そのまま龍族の元へ預けに行ってまいります」

「お主がこの世界の魔族達を龍族達に預けて戻って来る頃には、ワシの魔力は相当に回復できておるじゃろう」

 エイネがコテージの出入口の扉を開けようとした時、フルーフからそんな声が掛けられた。

「その時は先にお主を『アレルバレル』の世界へと向かわせよう」

「宜しいのですか? レアさんは『アレルバレル』の世界には居ないのでしょう?」

「構わぬ『アレルバレル』の世界で再び、レアの魔力を探せばよい」

「ありがとうございます! 助かりますフルーフ様」

 エイネがそう言うと、再びフルーフは頷くのであった。

「では、急いで魔人達の元へ向かいますね」

 そう言ってエイネはコテージの外へ出て直ぐに、カストロL・K基地へと足を向けて走り出すのだった。

 …………

 その頃カストロ基地では魔人達の副司令官である『レドラー・クラシス』が、この場所に向かってくると思われる龍族達の襲撃に備えて基地の現場の指揮を執っていた。

 レドラーは準備を整えつつも彼の頭の中では軍の司令官である『トマス』の様子がいつもと違う事に疑問を抱えていた。

(何故……トマス司令官は、暴れた魔族達を生かそうと考えられたのだろうか?)

 レドラー副司令はどちらかといえば魔人らしい魔人であり、バルザーのように魔族に対しては、自分達のていのいい弾除け程度にしか思っていなかった。

 そんな魔族が暴れたというのであれば、魔人達に逆らった罪で直ぐに処罰、いや、処刑を行うべきである筈だと考えていた。いつもであれば『レドラー』が『トマス』に何でも進言すれば『』と一任してくれて『レドラー』の好きにさせてくれていた。

 しかし今回に限っては『レドラー』があれだけ『トマス』に進言しても頑なに認める素振りを見せなかった。別にそれならばそれで構わないのだが、あの『トマス』の態度には『レドラー』は喉に魚の小骨が刺さっているようなそんなを感じていた。

(それにどこか目が虚ろだったのも気に掛かるのだが……)

 まるで他者に意識を奪われているような、感じられたのである。

 そしてレドラーがそんな事を考えていると、彼らが今居る場所であるカストロL・K基地に向かって歩いてくる魔族の女性の姿が目に映るのだった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。 元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。 登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。 追記 小説家になろう  ツギクル  でも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...