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愛娘を探して編
643.復讐のコープパルスドラゴン
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イルベキアでヴァルーザ龍王とその兵士達と別れた後、エイネは後からついてくる者達をおびき寄せる為に、速度を緩めながらゆっくりと空を飛び始める。
どうやら尾行してくる者達は、スベイキア大国の龍兵『コープパルス・ドラゴン』のようであった。大方彼らの王である『イーサ』龍王をエイネに殺されたことで、それに対する報復のつもりなのだろう。
このアサの世界では龍族達は魔人族と二分する力を有しているとされているが、実際に戦争となった場合には、魔人達は龍族には勝てないだろう。
そしてその龍族達の中でもスベイキアの龍種は他の龍種よりも優れた存在のようで、追尾してくる『コープパルス・ドラゴン』達は、自分達が最強の存在だと自負しているようだ。
そんな龍族達の矜持を著しく傷つけて、彼らの王を葬った一体の魔族『エイネ』を許すつもりはないらしい。
エイネは徐々に距離を詰めてくる大勢の『コープパルス・ドラゴン』達を見て薄く笑うのだった。
「自分の国の王様がやられて何もせずにいたらどうしようかと思ったけれど、流石に心配はいらなかったようね」
エイネはゆっくりと飛行していたが、やがて龍族達の陸の端の空の上で完全に止まり、後ろをついてくる『コープパルス・ドラゴン』達に向き直るのだった。
少し遅れてスベイキアの『コープパルス・ドラゴン』達がエイネを取り囲む。
「舐めた真似をしやがって! お前は確実に消す!」
どの龍達も似たような顔の大きな龍だったが、今喋っている『コープパルス・ドラゴン』がどうやらこの場に居る彼らの中でのリーダー的な存在のようであった。
そのリーダー格の『コープパルス・ドラゴン』の名は『キアラ』。
イーサ龍王や側近達を除いたスベイキア軍で圧倒的な強さを誇る司令官である『ネスコー』元帥に次ぐ強さを持つ『コープパルス・ドラゴン』である。
「大層な数でここまで来たようだけど、街でパニックになっている民達の避難は手伝わなくていいのかしら?」
エイネの予想外の指摘を受けて、苛立ちを表情に出している先程の龍は不敵に笑い始めた。
「心配は無用だ。我々スベイキアの軍の層は厚い。我々軍の一部の者達だけが抜けた所で心配はない。そんな事より自分の心配をしたらどうだ。何が目的か知らんが貴様は今日この日、この世界を敵に回したのだぞ?」
『スベイキア』にはイルベキアやハイウルキアといった強大な大国だけではなく、この大陸に住む他の国々にはまだまだ『スベイキア』に加担する同盟国が大勢ある。
何の後ろ盾もないたかが魔人族に隷属している魔族が、どう足掻いても勝ち目はないと目の前の『コープパルス・ドラゴン』は告げているようであった。
「私は今から魔人族との話し合いをしなければならないの。出来れば無駄な時間は過ごしたくはないのだけれど、私をこのまま見逃すつもりはないかしら?」
再び素っ頓狂な事を言い始めるエイネに、その場にいた龍達は一斉に笑い始めた。
「変わった逃げ口上を述べるのだな。それが『魔族』なりの『命乞い』なのか?」
この場に居る『コープパルス・ドラゴン』のリーダーは、エイネの『禁句』に触れてしまった。
「命乞い? 何故強者の私が取るに足らない者達に対して、命乞いをしなければならないのかしら?」
取るに足らない者達と言われて今度は『スベイキア』の龍達が怒りを露にし始めた。
「少しばかり魔族にしては『力』を持っているようだが、我々『コープパルス・ドラゴン』を甘く見るなよ?」
そう言うと目の前で喋っていた『コープパルス・ドラゴン』の周囲に『緑のオーラ』が纏われ始めていく。
(※エイネは知る由も無いが、龍化を果たしている状態で龍族が緑のオーラを纏う事は、非常に高難度であり、過去にソフィと戦った事のある『キーリ』でさえ、龍化状態での『緑のオーラ』を発動することは出来なかった)。
どうやら目の前の『コープパルス・ドラゴン』は、他の同種の者達よりもランクが一つ上のようであった。
それもその筈この目の前の『コープパルス・ドラゴン』は、イーサ龍王の側近の一人で、襲撃の際はイーサの命令で、城を離れて任務についていた為に『エイネ』の攻撃から逃れられたようである。
みるみる内に『緑のオーラ』に包まれた『コープパルス・ドラゴン』の戦力値が上昇していく。
8億……10億……、12億……15億。そして遂には20億まで上昇するのであった。
当然この世界ではイーサ龍王を除けばトップレベルの戦力値である。
『アサ』の世界では『コープパルス・ドラゴン』の最終形と呼べるに値する実力者であろう。
他の者達も側近程の戦力値までは上昇はしないが、エイネを取り囲む『コープパルス・ドラゴン』達は戦力値が10億を下回る者は居ない。流石は魔人達と戦争を起こしたとしても負ける筈が無いと彼らが豪語するだけのことはあった。
――しかしそんな戦力値上昇を見ても『エイネ』は平然としながら口を開いた。
「ふーむ。その『緑色のオーラ』はどうやら、私達魔族の『青』に匹敵するモノのようね? でも元々の貴方の戦力値からはそんなに上昇していないように感じられるのだけど、それは貴方自身が未熟で使いこなせていないと言う事かしら?」
「何を言っている? 強すぎる存在を相手にして気でも触れたか?」
「ああ。それともその『緑のオーラ』とやら自体が大したことがないのかもしれないわね。貴方が馬鹿にしている私達魔族は、更に『力』を増幅させる事ができるわよ? それは魔族の方が優れているという証拠なのかもしれないわね?」
そう言うとエイネは『青』のみのオーラを纏い始める。
――『青』の練度5.0。
「最後に言っておくわね? このまま素直に道を譲るというのであれば、貴方たちを生かしておいてあげるけど?」
『漏出』といった相手の力を測る魔法を使えない『コープパルス・ドラゴン』達は、エイネの言葉に耳を貸さずに戦闘態勢に入った。
「私は警告したわよ? これ以上は私に対しての『敵対行為』と認める。私は脅威から身を守るために、貴方達『全員』を殺すわね?」
一応の口上を述べた後にエイネは溜息を吐く。
彼らはここまでエイネが温情を掛けたにも拘らず、戦闘態勢を解くつもりがないようだった。
本来エイネはこの目の前に居る『コープパルス・ドラゴン』達を消すつもりはなく、このまま素直に魔人達の元へと行かせてくれるのであれば、このまま通り過ぎようと思っていた。
エイネにとっては正直に言えば『どちらでも良い』からである。
――だが、攻撃を仕掛けてくるというのであれば話は変わる。
たとえ相手が眼中にない路傍の石のような存在であってもエイネが煩わしいと思ったのであれば、それはもうれっきとした障害になり替わる。
障害である以上は排除するのが当然の行為だと『エイネ』は考えるだけであった。
「『魔族如き』が、偉そうな口を叩くなぁっ!!」
『キアラ』という彼らのリーダー格の存在である『コープパルス・ドラゴン』がそう怒鳴ると、一斉にエイネを取り囲んでいる龍達はエイネに向けて火を吐くのであった。
――絶技、『当身』。
エイネの目が金色に変わったかと思うと、エイネの身体が点滅するような錯覚を相手に覚えさせて、そして何と『エイネ』に向けられた火は、全てその火を吐いた『コープパルス・ドラゴン』に向かっていく。
「ギャアアッ!!」
『コープパルス・ドラゴン』達は、一斉に自らの吐いた火によって身体が燃え盛り苦しみだす。
「ヒィヤァァッ!!」
エイネという恐ろしい存在から逃げる為に必死になって、慌てふためき悲鳴をあげる龍達。その余りに無様な姿にがっかりした様子で見つめるエイネは、更にゆっくりと右手を上にあげた。
「私の思い描いた龍というのは所詮は幻想の生き物だったようね」
エイネは再び『女帝』と呼ばれる魔族に舞い戻り、その冷徹な視線を『敵』に向けながら詠唱を口ずさむ。
――神域魔法、『天空の雷』。
この場に居る全ての『コープパルス・ドラゴン』に閃光が向かったかと思うと、彼らを天からの一撃で命を絶つのであった。
……
……
……
どうやら尾行してくる者達は、スベイキア大国の龍兵『コープパルス・ドラゴン』のようであった。大方彼らの王である『イーサ』龍王をエイネに殺されたことで、それに対する報復のつもりなのだろう。
このアサの世界では龍族達は魔人族と二分する力を有しているとされているが、実際に戦争となった場合には、魔人達は龍族には勝てないだろう。
そしてその龍族達の中でもスベイキアの龍種は他の龍種よりも優れた存在のようで、追尾してくる『コープパルス・ドラゴン』達は、自分達が最強の存在だと自負しているようだ。
そんな龍族達の矜持を著しく傷つけて、彼らの王を葬った一体の魔族『エイネ』を許すつもりはないらしい。
エイネは徐々に距離を詰めてくる大勢の『コープパルス・ドラゴン』達を見て薄く笑うのだった。
「自分の国の王様がやられて何もせずにいたらどうしようかと思ったけれど、流石に心配はいらなかったようね」
エイネはゆっくりと飛行していたが、やがて龍族達の陸の端の空の上で完全に止まり、後ろをついてくる『コープパルス・ドラゴン』達に向き直るのだった。
少し遅れてスベイキアの『コープパルス・ドラゴン』達がエイネを取り囲む。
「舐めた真似をしやがって! お前は確実に消す!」
どの龍達も似たような顔の大きな龍だったが、今喋っている『コープパルス・ドラゴン』がどうやらこの場に居る彼らの中でのリーダー的な存在のようであった。
そのリーダー格の『コープパルス・ドラゴン』の名は『キアラ』。
イーサ龍王や側近達を除いたスベイキア軍で圧倒的な強さを誇る司令官である『ネスコー』元帥に次ぐ強さを持つ『コープパルス・ドラゴン』である。
「大層な数でここまで来たようだけど、街でパニックになっている民達の避難は手伝わなくていいのかしら?」
エイネの予想外の指摘を受けて、苛立ちを表情に出している先程の龍は不敵に笑い始めた。
「心配は無用だ。我々スベイキアの軍の層は厚い。我々軍の一部の者達だけが抜けた所で心配はない。そんな事より自分の心配をしたらどうだ。何が目的か知らんが貴様は今日この日、この世界を敵に回したのだぞ?」
『スベイキア』にはイルベキアやハイウルキアといった強大な大国だけではなく、この大陸に住む他の国々にはまだまだ『スベイキア』に加担する同盟国が大勢ある。
何の後ろ盾もないたかが魔人族に隷属している魔族が、どう足掻いても勝ち目はないと目の前の『コープパルス・ドラゴン』は告げているようであった。
「私は今から魔人族との話し合いをしなければならないの。出来れば無駄な時間は過ごしたくはないのだけれど、私をこのまま見逃すつもりはないかしら?」
再び素っ頓狂な事を言い始めるエイネに、その場にいた龍達は一斉に笑い始めた。
「変わった逃げ口上を述べるのだな。それが『魔族』なりの『命乞い』なのか?」
この場に居る『コープパルス・ドラゴン』のリーダーは、エイネの『禁句』に触れてしまった。
「命乞い? 何故強者の私が取るに足らない者達に対して、命乞いをしなければならないのかしら?」
取るに足らない者達と言われて今度は『スベイキア』の龍達が怒りを露にし始めた。
「少しばかり魔族にしては『力』を持っているようだが、我々『コープパルス・ドラゴン』を甘く見るなよ?」
そう言うと目の前で喋っていた『コープパルス・ドラゴン』の周囲に『緑のオーラ』が纏われ始めていく。
(※エイネは知る由も無いが、龍化を果たしている状態で龍族が緑のオーラを纏う事は、非常に高難度であり、過去にソフィと戦った事のある『キーリ』でさえ、龍化状態での『緑のオーラ』を発動することは出来なかった)。
どうやら目の前の『コープパルス・ドラゴン』は、他の同種の者達よりもランクが一つ上のようであった。
それもその筈この目の前の『コープパルス・ドラゴン』は、イーサ龍王の側近の一人で、襲撃の際はイーサの命令で、城を離れて任務についていた為に『エイネ』の攻撃から逃れられたようである。
みるみる内に『緑のオーラ』に包まれた『コープパルス・ドラゴン』の戦力値が上昇していく。
8億……10億……、12億……15億。そして遂には20億まで上昇するのであった。
当然この世界ではイーサ龍王を除けばトップレベルの戦力値である。
『アサ』の世界では『コープパルス・ドラゴン』の最終形と呼べるに値する実力者であろう。
他の者達も側近程の戦力値までは上昇はしないが、エイネを取り囲む『コープパルス・ドラゴン』達は戦力値が10億を下回る者は居ない。流石は魔人達と戦争を起こしたとしても負ける筈が無いと彼らが豪語するだけのことはあった。
――しかしそんな戦力値上昇を見ても『エイネ』は平然としながら口を開いた。
「ふーむ。その『緑色のオーラ』はどうやら、私達魔族の『青』に匹敵するモノのようね? でも元々の貴方の戦力値からはそんなに上昇していないように感じられるのだけど、それは貴方自身が未熟で使いこなせていないと言う事かしら?」
「何を言っている? 強すぎる存在を相手にして気でも触れたか?」
「ああ。それともその『緑のオーラ』とやら自体が大したことがないのかもしれないわね。貴方が馬鹿にしている私達魔族は、更に『力』を増幅させる事ができるわよ? それは魔族の方が優れているという証拠なのかもしれないわね?」
そう言うとエイネは『青』のみのオーラを纏い始める。
――『青』の練度5.0。
「最後に言っておくわね? このまま素直に道を譲るというのであれば、貴方たちを生かしておいてあげるけど?」
『漏出』といった相手の力を測る魔法を使えない『コープパルス・ドラゴン』達は、エイネの言葉に耳を貸さずに戦闘態勢に入った。
「私は警告したわよ? これ以上は私に対しての『敵対行為』と認める。私は脅威から身を守るために、貴方達『全員』を殺すわね?」
一応の口上を述べた後にエイネは溜息を吐く。
彼らはここまでエイネが温情を掛けたにも拘らず、戦闘態勢を解くつもりがないようだった。
本来エイネはこの目の前に居る『コープパルス・ドラゴン』達を消すつもりはなく、このまま素直に魔人達の元へと行かせてくれるのであれば、このまま通り過ぎようと思っていた。
エイネにとっては正直に言えば『どちらでも良い』からである。
――だが、攻撃を仕掛けてくるというのであれば話は変わる。
たとえ相手が眼中にない路傍の石のような存在であってもエイネが煩わしいと思ったのであれば、それはもうれっきとした障害になり替わる。
障害である以上は排除するのが当然の行為だと『エイネ』は考えるだけであった。
「『魔族如き』が、偉そうな口を叩くなぁっ!!」
『キアラ』という彼らのリーダー格の存在である『コープパルス・ドラゴン』がそう怒鳴ると、一斉にエイネを取り囲んでいる龍達はエイネに向けて火を吐くのであった。
――絶技、『当身』。
エイネの目が金色に変わったかと思うと、エイネの身体が点滅するような錯覚を相手に覚えさせて、そして何と『エイネ』に向けられた火は、全てその火を吐いた『コープパルス・ドラゴン』に向かっていく。
「ギャアアッ!!」
『コープパルス・ドラゴン』達は、一斉に自らの吐いた火によって身体が燃え盛り苦しみだす。
「ヒィヤァァッ!!」
エイネという恐ろしい存在から逃げる為に必死になって、慌てふためき悲鳴をあげる龍達。その余りに無様な姿にがっかりした様子で見つめるエイネは、更にゆっくりと右手を上にあげた。
「私の思い描いた龍というのは所詮は幻想の生き物だったようね」
エイネは再び『女帝』と呼ばれる魔族に舞い戻り、その冷徹な視線を『敵』に向けながら詠唱を口ずさむ。
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