642 / 1,915
愛娘を探して編
629.女帝の怒り
しおりを挟む
エイネがバルザーの提案に顎に手をあてながら考え込む仕草を見せた瞬間、バルザーはこっそりと右手を背中に隠した。
そしてバルザーはこっそりと、人差し指と薬指を立てて、背後に居る彼の部下に、合図を送るのだった。
バルザーからの合図を受け取った魔人数体は『スクアード』を纏う事で、殺気を放出しながらエイネを囲むように連携を取りながら、上手くエイネの視界に入らないようにして捕縛にかかるのであった。
バルザーは一瞬でエイネの周囲に近づいて見せた魔人達に笑みを送る。
空からエイネの頭目掛けて手刀を振り下ろしながら落ちてくる者。地上を恐ろしく速い速度で走り、エイネの視界外から一気に攻撃をしようとする者。一斉に数体の『一流戦士』が、それぞれ動きを見せたのだった。
どうやらこれは最初から決められた事であったようで、バルザーの指示によって、エイネが隙を見せた瞬間に攻撃する手筈だったようだ。
「愚かな……」
次の瞬間。エイネに攻撃をしようとしていた『スクアード』を纏った『一流戦士』三体は、全員が同時にエイネの身体から出現した鎖によって、手、足、首を同時に拘束される。
「へ……?」
驚愕に目を丸くしたバルザーは呆けた声を出す。完全にエイネの油断を誘った上で軍の手練れの『一流戦士』三体を同時に向かわせ裏をかいたというのに、今その精鋭の兵士は全員があっさりと、拘束されてしまったのだ。
バルザーが驚くのも無理はなかった。
「言ったわよね? 私に力を見せれば容赦はしないと」
「ひっ……! う、うるさいっ! 『魔族風情』が魔人様に逆らうのが悪いんだ!!」
バルザーもまた『スクアード』を纏いながら目を紅くして、エイネに向かって攻撃をしようと一歩踏み出すのだった。
――その一歩が、大魔王『エイネ』の間合いを侵す事となった。
先程までの澄んだ瞳をしていたエイネの目が、明確に『敵』を見る冷酷な瞳に変わっていく。
――絶技、『生命吸鎖』。
指揮官『バルザー』を含めた、四人の『一流戦士』は同時に『エイネ』の鎖に捕らえられる事となり、エイネの手が真横に振られた瞬間に鎖が発光したかと思えば、四人の胴体から首、手、足が引きちぎれて、首からは噴水のように血が噴き出すのだった。
騙し打ちにあった事で、軍の精鋭達によって命を落とす筈だった一体の『魔族』が、逆に軍のいち指揮官を含めた『一流戦士』四体の命をあっさりと奪うのだった。
事情を知らずに龍族と戦う為に、この場所に集められた軍の兵士達や、彼ら軍の最高司令官『トマス・ハーベル』は、一体何が起きたのか分からずがままに、この場所の空気を支配したエイネから、視線を外す事が出来ずにいた。
鎖を操りながら冷酷な目を浮かべたエイネは、足元に転がってきたバルザーの首を凄い形相で睨んだかと思うと、思いきり踏み潰した。
その行為に再び兵士達は『恐怖』というものを味わう事となり、多くの者達がビクリと大袈裟に身体を震わせた。
エイネからは明確な殺意が漏れ出ており、誰もエイネに話しかけることは出来ない。
まさにこの世界では経験した事のない魔人達は、魔族の行きつく先『大魔王』が纏う『独特なオーラ』に圧倒される。
……
……
……
「どうやらお主の思う通りには、いかなかったようじゃな……」
コテージの中から魔法でエイネ達の様子を窺っていたフルーフは、レアの魔力を探知しながらもエイネの表情を見て口を開くのだった。
「しかしそれにしても『金色』を纏っておらぬというのに、あやつは何と恐ろしい戦力値をしておるのじゃ……」
現在エイネが纏っているオーラは『青』と『紅』の『二色の併用』である。
しかし今のエイネの戦力値は『大魔王・最上位』と呼べるだけの実力を保持している。
『金色のオーラ』は『先天性の贈り物』と呼ぶべきものである為、如何に生を受けてから努力を重ねたとしても『金色』を体現する事は叶わない。
しかし現実にエイネは『金色のオーラ』を体現した者と遜色のない強さを持っているのである。
――果たしてどれだけの研鑽を積めば、この領域に到達できるというのであろうか。
今でもソフィが率いる『魔王軍』の最高幹部である『九大魔王』に名を連ねている彼女だが『金色の体現者』である他の『九大魔王』と遜色のない力を有しているのである。
では彼女がもし『金色の体現者』であったならば、彼女は『九大魔王』筆頭の『ディアトロス』よりも……と、そこまで考えたフルーフは、改めて彼女の評価を一段階あげるのだった。
もしエイネが敵意を持って今纏っている魔力を魔人共に向けるだけで、その余波で全ての兵士が、気を失って倒れるだろう。
『魔』を極めた者としてフルーフは『エイネ』が今無意識に操っている『魔力コントロール』の完成度の高さに溜息を吐くのだった。
「『九大魔王』……か。『金色の体現者』が揃っているだけでも、何ととんでもない集団かと思っておったが、まさか『金色の体現者』でもない者がこれ程の強さだとはな。他の者達も『金色の体現者』に関係がなく、まさにこれ程に力を有しておるのだとしたらじゃが……。大魔王『ソフィ』。お主はワシが思っておるよりも更に恐ろしい魔族だったのかもしれぬな」
別世界で同じく魔王軍を率いていた者として大魔王フルーフは、上に立つ者はそれ相応の力が求められるという事を誰よりも知っている。上に立つ者が生半可な存在では率いていく事が出来ない。だが、大魔王ソフィという存在は、この魔王軍の体制を少なくとも千年以上を維持し続けているのだ。
それがどれだけ想像を絶する偉業であるのか――。
『九大魔王』という『アレルバレル』の世界の大魔王達の存在は知ってはいたが、どれ程までの強さかまでは理解に及んでいなかったフルーフは、あんな領域に居る大魔王を数多く従える事の難しさを考えて苦笑いを浮かべながら、自身の友人の凄さを再認識するのであった。
……
……
……
そしてバルザーはこっそりと、人差し指と薬指を立てて、背後に居る彼の部下に、合図を送るのだった。
バルザーからの合図を受け取った魔人数体は『スクアード』を纏う事で、殺気を放出しながらエイネを囲むように連携を取りながら、上手くエイネの視界に入らないようにして捕縛にかかるのであった。
バルザーは一瞬でエイネの周囲に近づいて見せた魔人達に笑みを送る。
空からエイネの頭目掛けて手刀を振り下ろしながら落ちてくる者。地上を恐ろしく速い速度で走り、エイネの視界外から一気に攻撃をしようとする者。一斉に数体の『一流戦士』が、それぞれ動きを見せたのだった。
どうやらこれは最初から決められた事であったようで、バルザーの指示によって、エイネが隙を見せた瞬間に攻撃する手筈だったようだ。
「愚かな……」
次の瞬間。エイネに攻撃をしようとしていた『スクアード』を纏った『一流戦士』三体は、全員が同時にエイネの身体から出現した鎖によって、手、足、首を同時に拘束される。
「へ……?」
驚愕に目を丸くしたバルザーは呆けた声を出す。完全にエイネの油断を誘った上で軍の手練れの『一流戦士』三体を同時に向かわせ裏をかいたというのに、今その精鋭の兵士は全員があっさりと、拘束されてしまったのだ。
バルザーが驚くのも無理はなかった。
「言ったわよね? 私に力を見せれば容赦はしないと」
「ひっ……! う、うるさいっ! 『魔族風情』が魔人様に逆らうのが悪いんだ!!」
バルザーもまた『スクアード』を纏いながら目を紅くして、エイネに向かって攻撃をしようと一歩踏み出すのだった。
――その一歩が、大魔王『エイネ』の間合いを侵す事となった。
先程までの澄んだ瞳をしていたエイネの目が、明確に『敵』を見る冷酷な瞳に変わっていく。
――絶技、『生命吸鎖』。
指揮官『バルザー』を含めた、四人の『一流戦士』は同時に『エイネ』の鎖に捕らえられる事となり、エイネの手が真横に振られた瞬間に鎖が発光したかと思えば、四人の胴体から首、手、足が引きちぎれて、首からは噴水のように血が噴き出すのだった。
騙し打ちにあった事で、軍の精鋭達によって命を落とす筈だった一体の『魔族』が、逆に軍のいち指揮官を含めた『一流戦士』四体の命をあっさりと奪うのだった。
事情を知らずに龍族と戦う為に、この場所に集められた軍の兵士達や、彼ら軍の最高司令官『トマス・ハーベル』は、一体何が起きたのか分からずがままに、この場所の空気を支配したエイネから、視線を外す事が出来ずにいた。
鎖を操りながら冷酷な目を浮かべたエイネは、足元に転がってきたバルザーの首を凄い形相で睨んだかと思うと、思いきり踏み潰した。
その行為に再び兵士達は『恐怖』というものを味わう事となり、多くの者達がビクリと大袈裟に身体を震わせた。
エイネからは明確な殺意が漏れ出ており、誰もエイネに話しかけることは出来ない。
まさにこの世界では経験した事のない魔人達は、魔族の行きつく先『大魔王』が纏う『独特なオーラ』に圧倒される。
……
……
……
「どうやらお主の思う通りには、いかなかったようじゃな……」
コテージの中から魔法でエイネ達の様子を窺っていたフルーフは、レアの魔力を探知しながらもエイネの表情を見て口を開くのだった。
「しかしそれにしても『金色』を纏っておらぬというのに、あやつは何と恐ろしい戦力値をしておるのじゃ……」
現在エイネが纏っているオーラは『青』と『紅』の『二色の併用』である。
しかし今のエイネの戦力値は『大魔王・最上位』と呼べるだけの実力を保持している。
『金色のオーラ』は『先天性の贈り物』と呼ぶべきものである為、如何に生を受けてから努力を重ねたとしても『金色』を体現する事は叶わない。
しかし現実にエイネは『金色のオーラ』を体現した者と遜色のない強さを持っているのである。
――果たしてどれだけの研鑽を積めば、この領域に到達できるというのであろうか。
今でもソフィが率いる『魔王軍』の最高幹部である『九大魔王』に名を連ねている彼女だが『金色の体現者』である他の『九大魔王』と遜色のない力を有しているのである。
では彼女がもし『金色の体現者』であったならば、彼女は『九大魔王』筆頭の『ディアトロス』よりも……と、そこまで考えたフルーフは、改めて彼女の評価を一段階あげるのだった。
もしエイネが敵意を持って今纏っている魔力を魔人共に向けるだけで、その余波で全ての兵士が、気を失って倒れるだろう。
『魔』を極めた者としてフルーフは『エイネ』が今無意識に操っている『魔力コントロール』の完成度の高さに溜息を吐くのだった。
「『九大魔王』……か。『金色の体現者』が揃っているだけでも、何ととんでもない集団かと思っておったが、まさか『金色の体現者』でもない者がこれ程の強さだとはな。他の者達も『金色の体現者』に関係がなく、まさにこれ程に力を有しておるのだとしたらじゃが……。大魔王『ソフィ』。お主はワシが思っておるよりも更に恐ろしい魔族だったのかもしれぬな」
別世界で同じく魔王軍を率いていた者として大魔王フルーフは、上に立つ者はそれ相応の力が求められるという事を誰よりも知っている。上に立つ者が生半可な存在では率いていく事が出来ない。だが、大魔王ソフィという存在は、この魔王軍の体制を少なくとも千年以上を維持し続けているのだ。
それがどれだけ想像を絶する偉業であるのか――。
『九大魔王』という『アレルバレル』の世界の大魔王達の存在は知ってはいたが、どれ程までの強さかまでは理解に及んでいなかったフルーフは、あんな領域に居る大魔王を数多く従える事の難しさを考えて苦笑いを浮かべながら、自身の友人の凄さを再認識するのであった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる