上 下
618 / 1,915
マジックアイテム編

605.大魔王フルーフの逆襲

しおりを挟む
 フルーフは自分の極大魔法で開けた大穴を突っ切りながら、空を駆け上がっていく。

 やがて地下を抜けて地上にあるイザベラ城の一階に到着する。

 フルーフの開けた大穴から恐ろしい速度でヌーが迫って来るのを感じてそちらを一瞥し、フルーフはその場であたりを見回す。

よ! 止まれ、止まりなさい!」

 イザベラ城を見回していたフルーフは、声が掛けられた方を見る。

 そこには先程まで寝かされていた『煌聖の教団こうせいきょうだん』の最高幹部の一人である『』が居た。

 フルーフは一度だけリベイルの姿を見たが、次の瞬間には追ってくるヌーから逃げる為に行動を開始する。

 一直線に自分に向かってくるフルーフに、リベイルは一瞬動揺をさせられるが、直ぐに気を持ち直してオーラを纏い始める。

 そしてリベイルは直ぐにフルーフに対して、有効的な効果を発揮する『神聖魔法』を発動させる。

 ――神聖魔法、『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』。

「全くどいつもこいつも芸が無い! ワシがお主らの捕縛を解除して外に出てきたという事の意味を、少しは頭で考えぬかぁっ!」

 フルーフの目が金色に輝くと『呪縛の血カース・サングゥエ』の羅列を一部分変えた『』を無詠唱で発動させて、あれ程苦労して解除していた『神聖魔法』の特効をあっさりとしてみせる。

 神聖魔法の効力を失くして、ただの動きを封じる程度の魔法に成り下がった『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』をフルーフは強引に自身の魔力をぶつけて、先程編み出した『新魔法』を発動させる。

 青い光がリベイルの『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』を包み込み、次の瞬間には『リベイル』の魔法は無効化されるのだった。

「なっ……!?」

 魔族に特効を及ぼす筈の神聖魔法は、フルーフの『魔』のが完全に上を行き、消え失せた。そして先程とは比べ物にならない程の動揺を見せるリベイルに肉薄したフルーフは攻撃を開始する。

 ――呪文、『呪蝕カース・エクリプス』。

 リベイルの耐魔力が一気に全て消失し抵抗力を失う。

 エルシスが生み出した神聖魔法『聖光耐滅魔セイント・ブレイク』も似たような効力ではあるが、あちらはその者が持つ『耐魔力を一定値まで戻す』魔法であり、フルーフが生み出した呪文『呪蝕カース・エクリプス』は、相手がオーラ等で増幅させた耐魔力を普段通りにするのではなく、完全に『相手の防御力を』にしてしまう呪いである。

(※勿論反作用があり、使った詠唱者も一時的に耐魔力の半分を失う)

 一瞬でリベイルは魔法防御力というべき、耐魔力をゼロにされてしまう感覚を味わう。

「残念じゃが今のワシは少々苛立っておる。お主もワシに手加減を期待せぬ事じゃ」

 フルーフの言葉を間近で聞いたリベイルは、これから起こる事を予測して震えが走る。

「ひっ、ひぃっ!!」

『高速転移』で一気にその場から離脱しようとするリベイルの背後から『金色のオーラ』に包まれたフルーフはノータイムで魔法を発動させる。

 ――神域魔法、『凶炎エビル・フレイム』。

 現在では『魔王』レアの代名詞とも呼べる魔法だが、この魔法は『である。

 魔法抵抗力が消失しているリベイルを、黒き炎が飲み込み襲いかかる。

「うぎぃあああっ!!」

 一瞬でリベイルの身体が燃え上がり、次の瞬間には絶命してしまうのだった。

 耐魔力が一切ない状態で『金色のオーラ』で増幅されたフルーフの渾身の一撃ともいえる『神域魔法』をその身に浴びて生き残る事など出来る筈がなかった。

 リベイルの魂が肉体から抜け出して『代替身体だいたいしんたい』の方へと向かうが、更にそれを見たフルーフは呪いをリベイルに向ける。

 ――呪文、『苦呪追従カース・トラッキング』。

苦呪追従カース・トラッキング』は、その者が生前に起きた最後の苦しみを再び、来世に向かう者に与える呪いである。

(※この呪文を魔法に置き換えると『)。

 この呪いを掛けられたリベイルは、如何に『代替身体だいたいしんたい』に逃げ遂せたとしても、フルーフが発動させた時点で再びリベイルの記憶と共に、幻が意思を持つ事となり『』となった『凶炎エビル・フレイム』が、リベイルの身に降りかかる為、次から次に『代替身体だいたいしんたい』に魂を移し変えたところで、呪いはいつまでもリベイルを追いかけて永遠に絶命を繰り返させられる事だろう。

 フルーフが『苦呪追従《カース・トラッキング》』を解く意思を持たなければ、たとえ大賢者ミラによって状態異常を回復を試みられたところで、リベイルの身体は二度と解呪される事は無い。

 リベイルの魂に呪いを植え付けたフルーフは、もうリベイルなど無視をしてこちらに向かってきているヌーに対して身構えながらそのまま次の魔法の『スタック』を始めるのだった。

 ヌーが大穴から空を飛んでくるで『煌聖の教団』の最高幹部であった『リベイル』という大魔王は、フルーフに敗れてしまったのであった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

処理中です...