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ミラの次なる計画編

572.魔神の興味

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 ミラがヌー達とイザベラの魔王城の前で話をしていた頃、煌聖教団こうせいきょうだんの司令官であるルビリスは、必死に魔神を足止めをして時間を稼いでいた。

 大魔王としての領域は『上位中の上位』程度ではある『ルビリス』だったが、それでも『神聖魔法』を使いこなす彼は、何とか『魔神』を相手にしても生き残る事が出来ていた。

 もちろんこのルビリスが『大魔王』としての強さを持っているという事もあるが、それ以上に生き残っている理由としては『魔神』が『神聖魔法』という珍しい魔法に『興味』を示したからこそと言えるだろう。本来魔神という存在は『』を引き起こした存在を最優先で処理する為に現世に出現する。

 ――だが、この世界に現れた魔神は、どうやら好奇心が強く遊び心があるようだった。

 こういった魔神は珍しい部類ではあるが、これまでも全くなかったかと言われるとそうでもない。

 そもそも『アレルバレル』に出現した『魔神』は、調停者としての役割で『』を引き起こした存在である『ソフィ』と戦いを起こしたが、最後にはその戦ったソフィの強さに惚れ込んで『ソフィと主従の』を交わしてしまったのである。

 つまり『魔神』だからといって全ての『魔神』を一括り出来るモノではなく、こうした魔神も中には居るという事の証明であった。

 今回のダールに現れた魔神もまた見慣れない魔法を使う『ルビリス』に興味を惹かれたようで、彼をひと思いに殺さずに、まだ相手を続けているのであった。

 だが、あくまで『魔神』はであってルビリスの実力と、拮抗しているわけではない。

 その気になればあっさりと『魔神』は『ルビリス』を消滅させる事が出来るだろう。今もルビリスが反応出来る程のギリギリの『高密度のエネルギー波』を放ち、どうやって対応するかを見て『魔神』は楽しんでいた。

「『次元防壁ディメンション・アンミナ』に慣れ過ぎている。というのも考えものですね……」

 ルビリスは手加減されている事には気づいているが、それでも『時魔法タイム・マジック』による自衛が出来ない為に『転移』での緊急の回避行動や『神聖魔法』の『補助系魔法』で自身の能力を向上させる事で、何とかこれまで回避を続けられていた。

『魔神』のエネルギー波は、ルビリス程度の魔法では相殺が出来なかった。あくまでヌーがやっていたように、軌道を逸らすくらいが精々といえる。

 だが、ヌーの時に使用した『エネルギー波』と違って現在の『魔神』は手を抜いている為に、いつ気が変わって本気で撃ってくるか分からない。もし本気で撃たれた場合はあっさりとルビリスはその命を失うだろう。

 魔神の力の前では『代替身体だいたいしんたい』などいくら用意しようとも、無駄になってしまうからである。

 冗談でも何でもなく『魔神』は魂すらも浄化させることが出来る為に、一度絶命してしまえば『神聖魔法』による『救済ヒルフェ』であっても再生は不可能である。

(※生命ストックのあるミラは『』の瞬間に即座に蘇るために例外である)

「――?」(どうした、もっとその不思議な魔法で楽しませてみろ)

 魔神はそう言うと次々とエネルギー波を撃ち出してくる。

 ルビリスは神聖魔法の『聖身憑依セイント・アバター』を使いながら、上手く的を絞らせないように『転移』で回避する。

 ルビリスは回避するだけではなく『聖光耐滅魔セイント・ブレイク』を使って、魔神の耐久力を下げようと試みたり、直接『聖光波動撃セイント・ウェイブ』等を用いて攻撃を重ねるが、それでも『魔神』を相手に全くダメージを与えられていない。

「いやはや。これ程の差があるものなのですね……」

 大魔王としてであれば『九大魔王』の大半の者達とある程度は、互角に渡り合える程の実力者であるルビリスだが、魔神という『神格』を持つ神々の上位位置する存在を相手にしてしまえば、これ程までに惨めに力量差を感じさせられてしまう。

 大魔王の領域の中では『最上位』に位置していた『ヌー』でさえ、この『魔神』相手には逃げ回るのがやっとだったのだから、それは当然の事だといえた。

『神聖魔法』の『魔族』に対する特効効果を及ばさない『魔神』を相手に、ヌーよりも大魔王としての質が低いルビリスではこの結果は当然である。

 なんとか生き残ってもう一度総帥の元へと戻りたいと考えたルビリスだったが、最低限の役目を果たす事で良しとするしかないだろうと、諦観の念を意識し始めるのだった。

(ミラ様……。貴方に仕える事が出来た私は、とても有意義な時間を過ごさせていただきましたよ。どうかあの『』に一泡吹かせて下さい)

 ルビリスはそこからは『魔力』を惜しまずに、全てを使い切るつもりで一気に『スタック』を展開する。彼の周囲には『金色のオーラ』が一層強く纏わり始めるのだった。

「さて、です。存分に味わって下さいよ?」

 渾身の一撃を放つ準備を整えながらルビリスは、その言葉を最後に口角を吊り上げるのだった。

 ……
 ……
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