最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
581 / 1,985
ミラの次なる計画編

568.第一段階の成功

しおりを挟む
 これまで数回とラテールを守るための行動を繰り返してきたヌーだったが、魔神にとっては最初の一撃以降はヌーに興味を失くしたようだった。

 そして魔神はヌーには目もくれずにを引き起こした存在であるラテールを葬る為に手を伸ばして来るのだった。

「クソが。もう手はねぇぞ……。ミラ」

 何をしたところでこの距離に居る『魔神』に有効打となるモノは残されておらず、ヌーはここまでかと諦観の念を抱き始めるのだった。

「いや、まだ足りぬな。もう終わった気になっているようだが、お前にはまだ働いてもらわねばならない」

 魔神とヌー達の間に転移してきたミラが、金色のオーラに包まれた状態でそう口にする。突如現れたミラはラテールに手を伸ばしている『魔神』に向けて『エネルギー波』を放出する。

「――!」(これは……、まさか!)

 魔神は距離が殆どない状態でミラから放たれた『エネルギー波』を瞬時に弾き返した。弾かれたエネルギー波は、崖を突き破った勢いそのままに見えなくなるまで空へと飛んで行った。

「――?」(貴様が放った力は我ら神々の力か?)

 魔神はこの世界とは違う言語でミラへ問いただす。当然何を喋っているか分からないミラは、煩わしそうに顔を顰めた。

「どうやら上手く使えたようだな」

 ミラは何を喋っているか分からない『魔神』を無視しながらそう言うと、ヌーの肩に手を置いて、魔法を唱えるのだった。

 ――「『高等移動呪文アポイント』」。

 短距離移動の転移ではなく、移動呪文によって強引にその場から大きく距離をとって、ミラ達は離脱をするのだった。その場に取り残された魔神はとなる。

「――?」(矮小な存在が調子に乗るなよ?)

『魔神』は『金色』とは違う独自のオーラを纏いながら、山脈の地面部分を突き破りながら真っすぐミラの元へと向かっていくのだった。

『魔神』が纏うオーラに触れた瞬間。崖の岩は豆腐のように勝手に崩れていく。山が全く障害にならない為に、空を飛ぶのとまったく変わらずに岩中を突き進んでいく魔神は、ついに山脈の頂に到達して、そこに居たミラ達を発見する。

 突如として姿を見せた『魔神』を見たミラは言葉を発する。

「来たか。お前達やれ!」

 その場にいた『煌聖の教団こうせいきょうだん』の大魔王達は、ミラの命令で一斉に攻撃を開始する。次から次に極大魔法の爆撃が『魔神』を襲う。しかし魔神は防御すら取らずに、ゆっくりと無表情のまま『ラテール』の方へと歩き近づいてくる。

 大魔王達の攻撃などものともせずに、その瞳はラテールのみを見続けていた。

 ミラはその様子を見て直ぐに作戦を変更して『最高幹部』の者達を一瞥した。その視線を受け取った『最高幹部』達である『リベイル』や『ルビリス』は直ぐに行動を開始。

 まずリベイルが『転移』で一気に魔神の背後にまわると『魔神』の肩に手をおいて、用意していた『魔法』を発動させる。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

 リベイルは魔神を別世界へと運ぶ為に『世界間魔法』の魔法を発動させるが『時魔法タイム・マジック』が通用しない魔神には当然のように無効化される。

 魔神は笑みを浮かべた後に、肩に置かれているリベイルの腕を掴みあげる。華奢な身体をしている魔神のどこにそんな力が秘められているのかと思う程の握力であった。

 金色のオーラを纏っている大魔王『リベイル』だが、魔神に掴まれている手を引き剥がす事が出来ない。

(『時魔法タイム・マジック』が通用しない事は過去のヌーの報告で知ってはいたが、私の目にも『フルーフ』の魔法にも『発動羅列』は確認出来ない。つまり魔神の意思で『時魔法タイム・マジック』を無効化しているわけではないという事か……)

 ――アテが外れたとばかりにミラは舌打ちをする。

 魔神は掴みあげている『リベイル』の腕に更に力を入れる。キリキリと音を立てて『リベイル』の苦しみに歪む表情を眺めた『魔神』は、飽きたのかそのまま岩山へ放り投げる。

 リベイルは岩山に打ちつけられてたかと思うと、纏っていたオーラが消えた。どうやら魔神に、ようだった。

(もう少し粘りたかったが、リベイルがあの様では猶予はない……)

 リベイルが即座に意識を遮断させられた事を受けて、ミラは渋々と次の作戦に移行するのだった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。 元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。 登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。 追記 小説家になろう  ツギクル  でも投稿しております。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...