上 下
579 / 1,915
ミラの次なる計画編

566.現れたダールの魔神

しおりを挟む
 ダールの世界で派手に魂を奪い『生命のストック』を増やし尽くしたミラは、本来の目的である魔神を現界に降臨させる為に配下を犠牲にするのだった。

 そしての魔族は、ミラというに命令された事で、意気揚々とダールの世界に住む人間達を次々と亡き者にしていった。

 ――やがてこの『ダール』の『が起きようとしていた。

 明確に変化に気づいたミラとヌーは、瞬時に金色を纏い始めて互いの顔を見る。

「ヌー。では悪いが盾として早速役立ってもらいたい! アイツを連れてこの場所へ持ってきてくれ」

「この場にだな……?」

 ヌーは頷きを見せたミラを見て、直ぐに魔力感知を行いながら崖から飛び降りて、信徒を確保しに行った。

「リベイル! お前は中に居る『フルーフ』に『』を施させてこの場所で準備させろ」

「はっ! 仰せのままに!」

 リベイルはミラに返事をした後に『神殿』の結界の内側に居る『フルーフ』を連れ出しに行った。

「よし。準備は整ったな。後は『魔神』の出方次第だ……」

「ミラ様! バルド殿と本隊をこちらへ呼び寄せておきますか?」

 計画の為にこれから魔神と一戦構えようとしたミラに、ルビリスは盾となる数を増やすかどうかを尋ねてくるのだった。

「いや、バルド達はこれまで通りに待機させておけ」

 戦う相手が『魔神』である以上は『領域クラスの者達をいくら集めたところで意味は薄い。

 それならばこれまで通りに『アレルバレル』の世界で待機させておいた方がいいだろう。

 そう考えていたミラは唐突に、目を見開きながらを見上げるのだった。

「ルビリス。お前は全力でヌーと使を援護しろ」

「御意!」

 ――そして空に一筋の亀裂が入ったかと思うと、神々しいオーラを纏った『魔神』が現世に降臨した。

 ……
 ……
 ……

 ――魔神が『ダール』の世界へ現れる数分前の事。

 人間達が多く暮らす大陸で『ミラ』からこの大陸の生存者たちを消すように命じられた『煌聖の教団こうせいきょうだん』の信徒『ラテール・リジョア』はこの大陸の生存者たちを消して回っていた。

 人間達は悲鳴をあげながら逃げ惑うが、大魔王の領域に居るラテールは容赦せずに屠っていく。

 次々と生存者たちが命を落としていく中で空から大魔王『』がその『ラテール』の元に辿り着いた。

「おい! クソガキ! ミラが呼んでいる。さっさと戻るぞ」

 ヌーはラテールに声を掛けると、直ぐに空へと戻っていく。

「ミラ様が! 分かりました。これで最後にします!」

 ヌーの後を追従するように空を上がっていき、そして『魔力探知』を使って残っている人間達の方へと『極大魔法』を放つのだった。

 恐ろしい爆撃音が鳴り響いたかと思うと大陸の地形が変わり果てて、生き残っていた者達の『魔力』が途絶えるのだった。

 そして今の一撃で『魔神』が完全に目を覚ましたかの如く『ダール』の世界へと姿を見せたのだった。

 ……
 ……
 ……

『ダール』の世界に現れた魔神は『アレルバレル』の世界に現れた『』と呼ばれる女性の姿ではなく男性の姿をしていた。

 長身に似合う長い髪型で、眩い程の神々しいオーラさえ纏っていなければ見た目は『人間』や『魔族』と変わらない姿の魔神だった。

 魔神はどうやら自分からこの世界へ向かった様子では無く、一つの世界で大半の生物が居なくなる事で、が迫ったことによりこの場に姿を見せているようだ。の意思では無く、強引にこの世界へと出現だった。

 魔神は気怠そうにこの大陸の至る所に、視線を這わせながら目的の存在を探し始める。

 ――やがて使『ラテール・リジョア』に『魔神』の視線が定まった。 

「――」(分を弁えよ。矮小な塵芥の存在が)

 この世界の言語では無い言葉を呟いたかと思うと、魔神はゆっくりと神殿の方へ向かって飛び行くと『ラテール』に手を向け始めた。

「――」(消え去れ。塵芥)

と、次の瞬間には恐ろしい程の魔力が込められた『高密度なエネルギー』が放出された。

 ……
 ……
 ……

 神殿がある山の頂で『ミラ』は、魔神が攻撃を始めた瞬間に、魔瞳である『金色の目ゴールド・アイ』を発動させる。

 そして次にリベイルによって外に連れ出されてきた『フルーフ』の目もまた『金色』に変わるのだった。

 フルーフの意識は相変わらずないが、普段の虚ろな目をしてはおらず、まるで戦闘態勢に入っている時のように『金色のオーラ』を纏わせながら何かの『魔法』を発動させている。

 そしてその魔法の効果を増幅させるかの如く魔瞳で『金色の目ゴールド・アイ』を発動させていた。

 そしてその隣では大賢者ミラが、魔神の攻撃を瞬き一つせずに見続けていた。ミラが見ているのは、魔神の手から放たれた『』だった。

 他の者達の目には、単なる魔力が込められた魔法のようなものにしか見えていないが、現在のフルーフの目には『魔神』のエネルギーが『』に可視化されて映っていた。

 これは彼が編み出した新魔法の効力であり、この力は本来他者が使う『魔法』の『発動羅列』を読み解くモノである。これこそがミラ達が『フルーフ』を外に持ち出してきた理由であり、今回の作戦の要ともいえるものであった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...