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ミラの次なる計画編

565.計画の開始

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 何度も『仮初需生テンポラーヴォ』を使って『仮初』の命を増やしていったミラだが、突如ピタリと動きを止めるのだった。どうやら何かを察知して動きを止めざるを得なくなったようである。

 空を飛んでヌー達の居る山脈に戻ってきたミラは、神妙な面持ちを見せながら口を開いた。

「どうやらこの世界の『安定期』を越えたようだ。そろそろ『魔神』が意識してに入り始める頃だろうな」

 ミラはそう言うと先程声を掛けた信徒の一人の顔を見る。

「いいか? この大陸の南側に位置する人間達を多く生かしてある。

 どうやら『魔神』が動き出すギリギリのラインを見極めたミラは、信徒の者達でも簡単に殺せるように、人間達の数を計算して数を保持していたらしい。

「分かりました。見事に総帥様のお役にたって見せます!」

 ミラを心酔しきっている信徒は、魔神の犠牲になる為に行動を開始して、この場から去っていった。

 ミラは信徒が空を飛んで行く姿を眺めながら薄く笑みを浮かべる。そんなミラに声を掛ける者が居た。

「ミラ様。今回はかなりの『生命のストック』が増えたと存じますが、如何ほどになられたのですか?』

 ミラに声を掛けたのは『|煌聖の教団《こうせいきょうだん』の組織のNo.2である司令官『ルビリス』であった。

「んーそうだな。過去のピーク時はあっさりと越えただろうからな。今なら前回のように『エルシス』を相手にしても『ストック』がきれるような心配がなく、魔力消費を気にせず戦えるくらいだろうな」

 それはつまり両手で数えられる程ではなく、三桁以上の『命』の再生と『魔力』の貯蔵量を得たという事である。

 自分の都合で他者の命を奪い去り、自らの命の保険を手にするミラは、すでに『命』を冒涜する存在と言っても過言ではないだろう。

 しかしそれを咎める存在は身近には居らず、またそれを由とする者達に囲まれているミラは、果たして幸なのか不幸か。

 一つ言える事は大魔王ソフィという抑止力の存在が居なければ『アレルバレル』の世界もまた、遅かれ早かれこのダールの世界と同じ末路を迎えていたかもしれない。

 強き魔族達が蔓延る魔界を有する『アレルバレル』の世界とはいえ、この『ミラ』という恐ろしいと化した元人間を止められる者は、限られるであろう。

「ひとまず作戦の一つは完遂した。後は『魔神』の出現を待つばかりだが、 その前に今後の事をお前にも話をしておく」

 ミラはストックの話をルビリスにした後、その場にいるヌーの顔を見ながら口を開くのだった。

「さっきの『使用者』とやらの『ガキ』を『魔神』の奴から守ればいいのだろう? だが、今の俺でも『魔神』の攻撃を何度も受けきる自信は無いぞ」

 リラリオの世界では『』の攻撃から、逃げ切る事に成功をして見せたヌーだったが、それでも戦いにはなってはいなかった。ソフィとの連戦があった事でかなりの魔力を使った後ではあったが、それでもヌーは自分が五体満足時でも『魔神』には到底敵わないだろうと予想するのだった。

「魔神は善くも悪くも、に対して攻撃を仕掛けてくる。途中で他のモノが肩入れしようとも、最初のが、世界を脅かす力を無くしたと判断すれば他のモノには目もくれずに帰るだろう」

「貴様……。まさかあわよくば、この俺までも『魔神』にという腹積もりではなかろうな?」

 ミラはきょとんとした表情を浮かべた後に直ぐ、邪悪な笑みへと表情を変える。

「クククク! 安心しろ。私とお前は固い絆で結ばれた、だろう? その関係が続いている限り、私はお前を裏切らないさ」

 今のミラという人間の顔を見たヌーは、魔族以上に信用が出来ないのであった。

「ひとまず話を戻すがな。お前には出来るだけ魔神に攻撃してもらいたい。魔神との戦闘が長引けば長引く程に私の描く計画の成功確率が上がると思って欲しい」

「さっきのガキを死なせずに、戦えばいいということだな?」

「まあそう言う事だな。欲を言えば魔神にもダメージを与えて欲しいところだが、私やお前であっても、魔神には有効打などは与える事は、出来ないだろうからな」

「ふん」

 ――ミラの言葉は正論であった。

『魔神』という神格を持つ神は、同じ神格を持っている『死神』とは、比べ物にならない程の力を有するである。

『最上位神』と呼ばれる存在に立つ魔神には、勝てる奴などいないだろう。まさに今回の作戦は本来であれば『生命のストック』がいくつもあるミラでさえ、取るべき選択肢ではないと思いなのであった。

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