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支配の目編
547.利害の一致
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「さっきも言ったけど君の覚悟は受けとった。ボクが君を必ず強くして見せる。君がさっき斬って見せた魔法はね、ボクが生涯を懸けて『友人』の願望を叶える為に、編み出したボクのとっておきだったんだよ」
エルシスはリディアに自身が果たせなかった友人の願いを『託す』決心をつけた。この決断は並大抵の事ではない。何せ人間であったエルシスが、四十年以上という年月を費やして果たそうとした大事な目標なのである。そう易々と他者に託せる筈が無いのは、当然の事である。
しかしその大切な『目標』をソフィを倒すという目標を持つ『リディア』に自分の思いも託すと決めたのであった。リディアはソフィを倒すという目標。そしてエルシスはソフィの願望を叶えてやりたいという目標。全てが同じ理由という訳ではないが、両者の『利害』は一致している。
そうであるならばエルシスは、リディアの『未来』にかけるという覚悟を持っても悪くは無いと、感じたのだった。
「君の目標を叶える手助けをボクにさせてくれないかい?」
エルシスの申し出にリディアは首を縦に振り、力強く頷くのだった。
こうして少しだけリディアを強くしようと思っていたエルシスだったが、志を同じくとする人間に未来を託す事になった。
やる気を見せる二人のすぐ傍でユファは溜息を吐く。
(ラルフ、貴方も大変ね。この子を越えるという貴方の目標は、更に難しいものになったみたいよ)
ユファは自分の弟子の事を考えて、少しばかり同情の心を持ちながらも自分はラルフの為に、出来る事を考え始めるのだった。
……
……
……
その頃ソフィは再び屋敷の庭で『魔神』に『結界』を張ってもらいながら『九大魔王』である『ディアトロス』と『イリーガル』に同時に『紅』と『金色』を使ってもらい、レキが使っていた『支配の目』の再現が出来ないかを試してもらっていた。
――しかし当然ながら別の者達が同時に『魔瞳』を使ってみても、ソフィの時間を奪う事は出来なかった。
「ソフィよ。やはり何かの間違いだったのではないのか? 『魔瞳』を同時に扱う者など聞いた事もないしじゃな『金色の目』は魔族達の目指す一つの到達点だ。それ以上の『魔瞳』なぞ、聞いた事もない」
「親分。俺もディアトロス殿と同じ意見です。そもそも形態変化後のソフィ様を止めるなど『アレルバレル』の世界でも聞いた事がありません。ましてやその『レキ』とかいう者は『代替身体』だったというではありませんか」
『イリーガル』は魔王軍や『アレルバレル』の世界の大魔王達でさえ、不可能な事を『代替身体』の者が、自分の主を止められる者が居るなどとは考えられないと口にするのだった。
「ではお主達は『魔瞳』を使われておらぬのに『第二形態』の『三色併用』を纏う我が『代替身体』のレキに圧倒されたと思うのか?」
――それこそ有り得ない話であった。
魔瞳という小細工が無いにも拘らず、レキという魔族が『代替身体』の状態でソフィを圧倒したとなれば、そのレキという魔族が本来の力を取り戻した時、どれ程の強さを持つことになるのか。それが容易に想像出来るからである。
「ううむ……」
ディアトロスは渋い顔を浮かべながら、唸るように声を絞り出す。リラリオの世界の魔王であるレキという魔族が、本来の強さを持った場合下手をすれば、アレルバレルの世界を奪おうとクーデターを企む組織の者達より、厄介な相手になるかもしれないとディアトロスは考えるのだった。
それ程までに『第二形態』のソフィの『三色併用』は、絶対的な力を持つ。レキと戦ったこの形態のソフィを倒そうというのであれば、九大魔王達であっても個々の力では不可能である。
そんなソフィを『代替身体』の身で、たった一人で圧倒したと本人から言われた以上、その『魔瞳』の力が相当のモノであるという事にしなければ、彼らの立つ瀬が無くなってしまうのだった。
「どちらにしてもその『レキ』という魔族は危険な者であったようだが、お主が戦ったのだからしっかりとトドメを刺したのだろう?」
「いや。奴の『代替身体』は消滅させたが、魂だけはわざと見逃したのだ……」
――これである。
「はぁ……」
『ディアトロス』は長い溜息を吐いて、ソフィの顔を呆れながら眺めるのだった。
「いやすまぬがな『ディアトロス』よ。我はあれ程の力を持つあやつと全力で戦いたいのだ」
「お主が強敵と戦いたいという気持ちは昔からワシも分かっておる。しかし時と場合を考えぬかソフィよ。現在のお主は『組織』の連中に狙われているのだぞ? そんな状態で厄介事を更に抱えておる場合かよ。お前もそうは思わぬか『イリーガル』よ?」
ちらりとイリーガルの方を見る『ディアトロス』に『ソフィ』もつられるように視線を向ける。
「え、ええ。すみません親分。今は仲間をも危険に晒している状態です。ここはディアトロス殿の言い分に同意させてもらいます」
二人から正論を言われたソフィだったが、そこへもう一人の『九大魔王』が庭に顔を見せる。
「ディアトロス殿もイリーガルも何を言っているんだ! 『組織』も『レキ』とかいう奴も面倒になればまとめて全て破壊すればいいだけの事じゃないか」
ソフィに加勢するようにそう言いながら、ブラストが登場するのだった。
――ディアトロスはまた面倒な奴がきたとばかりに、頭に手を当てるのだった。
……
……
……
エルシスはリディアに自身が果たせなかった友人の願いを『託す』決心をつけた。この決断は並大抵の事ではない。何せ人間であったエルシスが、四十年以上という年月を費やして果たそうとした大事な目標なのである。そう易々と他者に託せる筈が無いのは、当然の事である。
しかしその大切な『目標』をソフィを倒すという目標を持つ『リディア』に自分の思いも託すと決めたのであった。リディアはソフィを倒すという目標。そしてエルシスはソフィの願望を叶えてやりたいという目標。全てが同じ理由という訳ではないが、両者の『利害』は一致している。
そうであるならばエルシスは、リディアの『未来』にかけるという覚悟を持っても悪くは無いと、感じたのだった。
「君の目標を叶える手助けをボクにさせてくれないかい?」
エルシスの申し出にリディアは首を縦に振り、力強く頷くのだった。
こうして少しだけリディアを強くしようと思っていたエルシスだったが、志を同じくとする人間に未来を託す事になった。
やる気を見せる二人のすぐ傍でユファは溜息を吐く。
(ラルフ、貴方も大変ね。この子を越えるという貴方の目標は、更に難しいものになったみたいよ)
ユファは自分の弟子の事を考えて、少しばかり同情の心を持ちながらも自分はラルフの為に、出来る事を考え始めるのだった。
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その頃ソフィは再び屋敷の庭で『魔神』に『結界』を張ってもらいながら『九大魔王』である『ディアトロス』と『イリーガル』に同時に『紅』と『金色』を使ってもらい、レキが使っていた『支配の目』の再現が出来ないかを試してもらっていた。
――しかし当然ながら別の者達が同時に『魔瞳』を使ってみても、ソフィの時間を奪う事は出来なかった。
「ソフィよ。やはり何かの間違いだったのではないのか? 『魔瞳』を同時に扱う者など聞いた事もないしじゃな『金色の目』は魔族達の目指す一つの到達点だ。それ以上の『魔瞳』なぞ、聞いた事もない」
「親分。俺もディアトロス殿と同じ意見です。そもそも形態変化後のソフィ様を止めるなど『アレルバレル』の世界でも聞いた事がありません。ましてやその『レキ』とかいう者は『代替身体』だったというではありませんか」
『イリーガル』は魔王軍や『アレルバレル』の世界の大魔王達でさえ、不可能な事を『代替身体』の者が、自分の主を止められる者が居るなどとは考えられないと口にするのだった。
「ではお主達は『魔瞳』を使われておらぬのに『第二形態』の『三色併用』を纏う我が『代替身体』のレキに圧倒されたと思うのか?」
――それこそ有り得ない話であった。
魔瞳という小細工が無いにも拘らず、レキという魔族が『代替身体』の状態でソフィを圧倒したとなれば、そのレキという魔族が本来の力を取り戻した時、どれ程の強さを持つことになるのか。それが容易に想像出来るからである。
「ううむ……」
ディアトロスは渋い顔を浮かべながら、唸るように声を絞り出す。リラリオの世界の魔王であるレキという魔族が、本来の強さを持った場合下手をすれば、アレルバレルの世界を奪おうとクーデターを企む組織の者達より、厄介な相手になるかもしれないとディアトロスは考えるのだった。
それ程までに『第二形態』のソフィの『三色併用』は、絶対的な力を持つ。レキと戦ったこの形態のソフィを倒そうというのであれば、九大魔王達であっても個々の力では不可能である。
そんなソフィを『代替身体』の身で、たった一人で圧倒したと本人から言われた以上、その『魔瞳』の力が相当のモノであるという事にしなければ、彼らの立つ瀬が無くなってしまうのだった。
「どちらにしてもその『レキ』という魔族は危険な者であったようだが、お主が戦ったのだからしっかりとトドメを刺したのだろう?」
「いや。奴の『代替身体』は消滅させたが、魂だけはわざと見逃したのだ……」
――これである。
「はぁ……」
『ディアトロス』は長い溜息を吐いて、ソフィの顔を呆れながら眺めるのだった。
「いやすまぬがな『ディアトロス』よ。我はあれ程の力を持つあやつと全力で戦いたいのだ」
「お主が強敵と戦いたいという気持ちは昔からワシも分かっておる。しかし時と場合を考えぬかソフィよ。現在のお主は『組織』の連中に狙われているのだぞ? そんな状態で厄介事を更に抱えておる場合かよ。お前もそうは思わぬか『イリーガル』よ?」
ちらりとイリーガルの方を見る『ディアトロス』に『ソフィ』もつられるように視線を向ける。
「え、ええ。すみません親分。今は仲間をも危険に晒している状態です。ここはディアトロス殿の言い分に同意させてもらいます」
二人から正論を言われたソフィだったが、そこへもう一人の『九大魔王』が庭に顔を見せる。
「ディアトロス殿もイリーガルも何を言っているんだ! 『組織』も『レキ』とかいう奴も面倒になればまとめて全て破壊すればいいだけの事じゃないか」
ソフィに加勢するようにそう言いながら、ブラストが登場するのだった。
――ディアトロスはまた面倒な奴がきたとばかりに、頭に手を当てるのだった。
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