上 下
555 / 1,915
支配の目編

543.支配の目

しおりを挟む
「どうしてそう思う?」

 闘技場の試合であっても使わずに温存していた力を見破られたリディアは、表面上は冷静を装っているが内心は相当に驚かされていた。

 リディアに問いかけられたエルシスは、右手に魔力を宿らせる。

「どうしてかと聞かれたら説明に困るのだけど。強いて言うならば、長年戦いに身を置き続けてきた者の勘かな?」

 大魔王の領域に居る者は、中位レベルであっても一癖も二癖もある者達である。そんな魔族達を十代の頃から相手にしてきた』は、相手が力を隠しているかどうか、対峙すればある程度は直ぐに見極められるようだった。

 ――そしてそれは見極められるようにならなければいけない、厳しい環境下で育ったせいともいえる。

「ボクからも質問なんだけど、どうしてその『力』を試合で見せなかったのかな? 始祖龍のキーリ君との戦いは相手の魔力切れを狙って勝利を収めたようだけど、その『力』を使えばもっと簡単に事を運べたんじゃないかなってボクは予想するのだけど?」

 すでにリディアには隠された力を確実に持っていると確信しているように、言葉を告げるエルシスだった。

「ふう……。貴様に隠し事をしていても、あまり意味は無さそうだな」

 溜息を吐きながらリディアは、自身の隠していた『力』の正体を打ち明け始めた。

「確かにお前の言う通り、俺には『金色』以外にもう一つ『』を持っている」

 そう言うとリディアは目を閉じながらを開放する。するとリディアの周囲に先程の『金色』ではなく『紅色』のオーラが纏われ始めた。

(魔族達の使う『』ではないな。いや彼は人間なのだから当然か)

 リディアが現在纏っているオーラは、確かに魔族の使うオーラではなかった。

 その力はレアがかつて過去にこの『リラリオ』の世界で滅ぼした『ディアミール』大陸に生息していた種族『魔人』と呼ばれる者達が使っていた力で『』と呼ばれる自身の力を増幅させる力であった。

(※『スクアード』とは『魔人』の『幹部級』の者達が使っていた『』で、使用者の基本値の状態の戦力値を1.5倍まで引き上げる事の出来る力を有すると共に『紅い目スカーレット・アイ』と同様に、自分より戦力値が低い者に対して、身体の自由を奪う強制的な支配権を得る事が出来る技法であった)。

(※2 魔人の王シュケインは、この力に目覚めた10体の『幹部級』の魔人達と共に、神々に近いとされていた一部の『龍族』達と互角に戦う事が出来ていた。レアが過去のリラリオの世界に姿を見せなければ、リラリオの世界の魔族達は、この『力』を持つ『魔人』達に支配された挙句、龍族達との戦争に利用されて駒にされていただろう)。

「それが君の隠された力かい?」

「いや違う。この力は『スクアード』という力らしいが、この状態で『金色』の力を使うとだな……」

(単に力を増幅させるだけであれば、そこまで脅威とは思えないが。何か他にもあのオーラには、秘密が隠されているようだね)

 エルシスの勘が『リディア』の『スクアード』と呼ばれる『力』を決して侮っていいモノではないと告げていた。そしてリディアが実際に『』を使いながら『』を纏い始めると左右の目が変貌を遂げていく。



「これは驚いたね。そんな目を持つ者をボクは今まで見たことが無いよ」

 そういうエルシスはこちらに目を向けているリディアを見て、と感じるのだった。

 戦闘状態に入っていないリディアが、単にエルシスを見ているだけに過ぎない今でさえ、この場を威圧するような『圧』がリディアから漏れ出ていた。

「俺にこの『』を教えたは、この目の事を『支配の目ドミネーション・アイ』と呼んでいた」

「『支配の目ドミネーション・アイ』か。何やら物々しい呼び名だけど、果たしてそれはどんな効力を持っているのかな?」

 エルシスがリディアに問いかけた瞬間。リディアの目が、キィイインという音と共に光り始める。
 そしてリディアの目がエルシスを捉えた瞬間。エルシスは身体の自由をリディアに奪われるのだった。

「成程……!」

 少しだけ慌てた様子をみせながら『エルシス』は『金色のオーラ』を用いてリディアの『支配の目ドミネーション・アイ』に抵抗しようとしたが、そのエルシスの『金色のオーラ』が発動出来ずに、ついにはリディアの支配から抜け出せなかった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...