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リラリオの原初の魔族編

535.国の王として

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 闘技場の初日に行われたエキシビションは大好評で終わり、トウジン魔国は再び賑わいを取り戻す事が出来た。先代であるトウジン魔国王から譲り受けた屋敷の縁側に座り、シチョウは庭を眺めていた。

 ヴェルマー大陸にある三大魔国『トウジン』『ラルグ』『レイズ』は長い戦争の歴史であった。シチョウは小さい頃から、トウジンの一国民としてこの国を支える為に、生涯を尽くそうと生きてきた。仲間や国を想う心を持つ者は三大魔国でもこのトウジン魔国が、一番で間違いは無いだろう。

 しかし現在の『ラルグ』魔国王となったソフィは、そんなトウジン魔国で長く生きてきたシチョウにも、トウジン魔国以上に仲間や配下の為に想う心を持っていると感じている。

 ラルグ魔国はソフィの出現によって大きく変革を遂げた。これまでこの大陸で行われてきた戦争の多くは、ラルグ魔国から引き起こされてきたと言っても過言ではない。

 シチョウが知る限りで原初の魔王とされているレアや、先代ラルグ魔国王シーマを主とする者達によって、古くからラルグ魔国は、侵略国家として他国から思われてきた。同じ大国であるトウジン魔国はラルグ魔国に飲み込まれないようにと、自国を愛する者達が必死に国を守る為に戦ってきた。

 ――その名残こそが、今のこの『トウジン』という国を作り上げたと自負できる。

 トウジン魔国がラルグ魔国と手を組んで同盟を結ぶなど、先代までのラルグ魔国からは、想像すら出来なかった。

 庭を眺めるシチョウは目を細めながら先日ここに訪れたソフィの言葉を考える。あの時のソフィは表面上はいつも通りだったが、何やら内心では思い詰めていたようにも感じた。そして帰り際のソフィの背中を見た時、このまま何処かへ去ってしまい、二度と会う事が出来ないようなそんな儚さを感じたのである。

 シチョウはソフィをとても気に入っている。この国を何度も救ってもらったという事もあるが、国の王という立場を度外視して個人であるソフィの男気に惚れている。

 あれ程に一国を支える『王』として、相応しい者は居ないだろう。他国の王であるシチョウでさえソフィの為であれば、この身を粉にして支えたいと思わせる程である。

 ヴェルマー大陸の中でも、強き者を信仰する性質を持つラルグの民や、彼の配下達であればそれ以上の想いを持っているに違いない。

 前にこの屋敷に来た時に話をしたソフィは、この『トウジン』の再興ぶりを考えて、大した国だと認めているようであったが、シチョウから見ればソフィという存在が居れば、ラルグ魔国はもっともっと発展を繰り返して、今以上に素晴らしい国にする事は間違いないと考えられる。

 何かを懸念しているようだったが、トウジン魔国を預かる身として彼と彼の国に手を貸せる事があれば、国を挙げてソフィとラルグ魔国に尽力するつもりである。

「レイズ魔国も同じ気持ちであろうな」

『シス』女王や『ユファ・フィクス』の顔を思い浮かべながらこの三国は、本当に変わったと考えるシチョウであった。

 ……
 ……
 ……

 そしてその頃。ラルグ魔国では、レルバノンやレヴトンといった国の主だったものが、ソフィに呼ばれてラルグの塔に姿を見せて会議を行っていた。

 レルバノンがレイズのギルド長を務めていた頃は、レヴトンが主にこの国の内政を務めていたが、ディネガーにギルド長の引継ぎを終わらせた事で、これからはレルバノンがラルグ魔国の主な決定権を持つ事が会議で決まった。

 ――つまりは宰相という立場に本格的に就く事になり、政治面から軍事面までの大きな権力を『レルバノン』は本日をもって明確に手にしたという事である。

「ではレルバノンよ。これからこの国をよろしく頼むぞ?」

「分かりました、ソフィ様。この話謹んでお受け致します」

 そういってその場に跪く『レルバノン・フィクス』。

 今すぐというわけではないが、ソフィが組織と本格的に争うという事となれば、アレルバレルの世界へ戻る事も出てくるだろう。

 それが短い期間となるか長い期間となるか分からないが、その間ずっと『王』が『不在』という状況は『国の在り方』としては非常によろしくはない。

 万が一ソフィの身に何かあったとき、この国の次の王となる者を内外に知らせておく事も必要であるとソフィが考えたのであった。

 当代の国王が直々に次の王を決めておくことで、無駄な争いを避ける事も出来るだろう。今後はレルバノン王体制となったときに混乱を招かないよう、ラルグ魔国の役職を変えていく会議が今後も逐一行われていく事だろう。

 ――こうしてソフィは組織と戦うという決意を固め直して、久しく離れていた『アレルバレル』の世界を踏む覚悟を決めるのだった。

 ……
 ……
 ……
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